天国と地獄

なかなかハードな一週間でした。
看護科1年は、「お弁当」課題提出完了。私がフィードバックをして書き直した後、ビデオ収録の予定。
今回は写真をiPad miniで撮り、それをモノクロで出力した画像を使ってのプレゼン。カラーでも、コロッケなのかメンチカツなのか、豚カツなのかは説明の要があるけれども、「色彩」がなくなるととたんに、素材感も失われ、卵焼きなのか、リンゴなのか、それとも沢庵なのか、「ことばで」説明しなければならなくなる、という擬似的なニーズの設定です。いや、本当に、説明しないと分からなくなるんですよ。英語でする必要は全くないんですけどね。
授業中の活動での「しかけ」って、いかに日常生活らしさ、もっともらしさを競うのではなくて、その制約をゲームとして楽しめるかどうかだと思うんです。教室の外にある、母語でなら「自然で、意味のある」活動だからといって、それをそのまま英語教室に移入したとしても、学びとして上手く行かなければ、それこそ「意味がない言語運用」であり「学習活動」になってしまうのです。

約40人分の課題を提出後に読み、適切なフィードバックを与えるには結構な時間がかかります。
その間は、「名詞句の限定表現」の学び。いわゆる「現在分詞」と「過去分詞」による名詞の修飾です。
明示的指導って、とかく肩身が狭くなっているようだけれども、実体験とか実感、リアリティ、生き生きとした創造力などという裏付けがあれば、辞書の例文を取り出して解説を加えることでだって、学びは成立するものです。
今回、お弁当をネタに課題を設定した背景には、

もともと動詞だったものを -ed/en形として使えると、色んなモノが説明できて、しかも、「モノ」として扱える。

という便利さに気づくための「種まき」をしようという目論見もありました。
原稿作成の前には、「品目」や「素材」のリストを渡していますが、網羅はしていません。

合いびき肉  a mix(ture) of ground beef and ground pork
揚げ物    deep-fried foods
鰻の蒲焼   broiled eel
梅干し    pickled plum
おにぎり   rice ball filled with pickled plum, salted salmon, etc.
そぼろ    seasoned fish flake; seasoned ground meat

などといった、-ed/en形による、前置修飾も、後置修飾も一度に出てきます。目の前のお弁当に入っている「それ」を英語で何というか?という答えで、しかも全体で「名詞 = モノ」ですから、生徒も「発音」と「綴り字」に気を付けるくらいで、とりあえずは切り抜けていきます。
ただ、自分が言いたいものが、リストにない場合も出てくる、というか、その方が多いくらいでしょう。

  • 竜田揚げ   cut-up chicken marinated in soy sauce, wine and ginger, coated with starch, and deep-fried

という難しそうなものはプリントのリストで与えておいて、

  • チキン南蛮

を生徒と一緒に考えるわけです。今回はこのあたりに収まりました。

  • fried chicken with vinegar and tartar sauce

他にも、

  • 肉野菜炒め   stir-fried meat with mixed vegetables

から、

  • 豚の生姜焼き

を考え、

  • アスパラベーコン asparagus wrapped with bacon

から、

  • 肉巻きおむすび

  • ハムチーズ巻

を考えるというような取り組みです。
既習事項の組み合わせでできる表現としては、

  • ふりかけ     dried food to sprinkle over boiled rice for a richer flavor

などというのは、まあまあではないかな、と思います。

進学クラスの高3は、FBにも書いたけれど、argumentationの課題が「選挙権を得る年齢を18歳に下げるべきである。」で賛否を表明するものをやっているところなので、今週の授業では2008年の「第3回全国高校生英語ディベート大会」のDVDを見せました。この年の論題は、"Japan should lower the age of adulthood to 18."
今扱っている課題の参考になるような論理構成や表現に着目させたかったのですが、ハイライトとして決勝の前に収録されている準々決勝では、早口でまくし立てる選手が目立ち、「なんだかなぁ〜」という印象が強く残りました。ここから既に5年経っているので、今では、もっと、落ち着いて「議論」できるチームが勝ち上がるようになってくれていると信じています。
ディベートもいいのですが、その土台となる「ライティング」をもっときちんと指導しましょうよ。そして、「スピーチ」にしても、もっと呼吸から、そしてarticulationの段階ではっきりと音声で伝えられるよう指導しましょうよ。
こういうことを真面目に考える先生が、全国にはたくさんいると思うのですが、その目的に合致していない「英語表現」の検定教科書が多すぎるのではないでしょうか。新課程生が、2年、3年に進む、来年、再来年、悲鳴が聞こえないことを祈ります。今、市場に出回っている受験対策の「学参」の類では、残念ですが、真っ当な英語表現に辿り着くことは難しいと言わざるを得ません。高校の授業でこそ、「ライティング」をきちんと扱うべきなのです。

「呟き」で、@writingislife (https://twitter.com/writingislife) から回ってきた、ブログ記事を紹介しておきましょう。

TED Talksのファンならずとも、storytellingの何たるかを学ぶのに有効でしょうから、是非ともお読み下さい。

さて、
フィギュアスケートのGPシリーズの舞台は東京。日本での大会は、まず間違いなく、「ほぼ満席」という客の入りになります。
満員で、しかも完全に日本選手贔屓の空気の中で、外国の選手が実力を出すのは本当に大変だと思います。男子シングルは、高橋大輔選手、女子シングルは浅田真央選手が優れたパフォーマンスで優勝。高橋選手は、よくSAからここまで復調したと思います。浅田選手のSPを見たときには、浅田選手の伸びやかで滑らかな滑りに魅了されると共に、佐藤信夫コーチは、このような「絵」が3年前から見えていたのだろうなぁ、と尊敬の念が増しました。女子のSPで情感たっぷりに観客にアピールした鈴木明子選手はフリーでミスが続いて、「撃沈」といっていいスコアで3位。2位に入ったのは、フリーをほぼノーミスで滑りきった14歳の新鋭、ロシアのラディオノワ選手でした。この二人の獲得ポイントは24点で並んでいますが、2大会のトータルスコアでは、ラディオノワ選手の方が上位ですので、鈴木選手のフィアナル進出は難しい情勢となりました。後、残すはフランス大会とロシア大会。誰が福岡へとやって来るのか、目が離せません。
多くのフィギュアスケートファンが楽しみにしている某動画ブログでは、英語やロシア語、ドイツ語など、スポーツ専門局での中継動画もアップされているので、私はよくEuro Sportsの解説を聞いて、英語の表現を学んでいます。ただ、ここ何年かは、自分の応援している選手のライバル (になるであろう選手) に対する、本当に見るに堪えない、酷いコメントが飛び交っていて、悲しくなることも多いのです。批評精神、批判精神は大事ですが、「品性」を失ってはいけません。
美しいものを美しいと認める感性を錆び付かせたり、腐らせたりしないようにしたいものです。

日曜日の放送では、アイスダンスも取り上げられていました。
ホワイト、デイビス組は本当にミスがないことに驚かされます。伸びやかで精度の高いスケーティングスキル、しかも女子選手が深いエッジを使いこなす様子には溜息が出ます。
アイスダンスの解説で呼ばれていたのは樋口豊先生。エキシビション (Galaなどとも言ったりしますが) の前後でのインタビューというかトークも、樋口先生の時間となっていました。そこで高橋大輔選手が、「生まれ変わったら何になりたい?」という質問に対して、

  • メリルのパートナー

と答えていたのは何か凄くよく分かる気がしたのでした。

本日のBGM: 愛のさざなみ (ハンバート ハンバート)