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tmrowing2013-04-23

授業が始まって二週目に入りましたが、高1はまだ全く教科書を使っていません。
看護科は、「カタカナ語」を足場に利用した、強勢と発音の指導。前回までの復習は、ペアまたは3人のグループで、3題連続で日→英出題、先攻後攻を変えて3回戦。3の倍数になれば、3人組の所も、キリの良いところで終われますから。
「春 (シュン) は直前」、「動詞で –ateは2つ前」まで導入と練習は進みました。進学クラスよりもいい音を出している人が多いようです。

  • communication, education, navigation

の3語を扱うのですが、まずは、

  • communicationとcommunicate

のセットをお手本として提示・解説・実際に発音練習。そこを足がかりに、残りの

  • educationとeducate, navigationとnavigate

は自分で強勢パタンを記号付けしてみるという流れです。
その後で、確認のための発音練習。
本当に英語らしい響きが教室に充ちていました。「音節が多い語の方が難しい」、と単純には言えないところが入門期、再入門期の指導で難しく、また面白いところ。
今回は、名詞に対応する元々の動詞が存在する語だけを「恣意的に」取り上げていますから、当然、

  • communicate, educate, navigate

の-u-, -e-, -a- に強勢を置いての発音練習は容易です。高校段階で、この原則の例外となる語とはどのくらい遭遇するでしょうか?

  • translate
  • frustrate

などは、英音だけでなく、北米の英語でも第二音節 (-ate) に第一強勢を置く人も少なからずいるように感じます。ネット上で利用可能な、いわゆる「オンライン辞書」にも、クリックすれば発音してくれるものが増えました。「電子辞書」、「アプリ辞書」も同様ですが、英語母語話者の吹き込んだ音声ファイルをデータとして溜めておいて、それぞれの語に当てているものが主流でしょう。「音韻規則」に基づいて、発音する「エンジン」を搭載しているものがあるのかもしれませんが、こういう「地域差」「揺れ」への対応は難しいのだろうな、と感じます。
ロングマンから出ている、J. C. Wells の編んだ、『発音辞典』には、preference poll があって、それもまたこの辞書の「ウリ」だと思いますが、私の家にある第三版 (2008年刊) の、”translate” の調査の数字は、旧版 (第二版、2000年刊) と変わらず。調査年が記されていないのですが、前回と同じ調査結果をスライドさせているのでしょうか。第三版の序文を読む限りでは、2002年に北米で、2007年に英国で調査が行われていて、それを使っているようですが。
そうそう、「調査結果の年代」で思い出しましたが、「調査が古いからダメ」という考え方の誤謬を寺沢先生がブログ (「こにしき (言葉、日本社会、教育) 」)で指摘していましたね。流石です。

言語政策研究・外国語教育研究における「社会調査の2次分析」という方法論について
http://d.hatena.ne.jp/TerasawaT/20130423

「春は直前」、「動詞で –ateは二つ前」の話しに戻りますが、

  • 西川盛雄 『英語接辞研究』 (開拓社、2006年)

では、接尾辞の動詞形成の [-ate] の項 (pp. 271-272) において、

なお [-ation] はここでは [-ate] と [-tion] の結合による複合派生としたが、二つに分けることのできない単一の接尾語として考えられる部分がある。たとえば、「飢餓」を表す starvation はあるが、この接尾語の部分を分割して *starvate という語は不可である。

と有益な情報を与えてくれています。連休にでも、原口先生や今井先生の本を読み込んでみようと思います。

次回は、カタカナの小さい「ッ」 =「促音」を含む語の正しい発音を扱う予定。

一足先に、カタカナ語の「音声」指導と、「手書き文字」の書き方導入を済ませた進学クラスは、今日から「名詞は四角化で視覚化」のドリルを導入しました。「一筆でかけること」の意味をよく考えて欲しいですね。リスニングへも対応できるような準備ですから。

  • 大まかな「名詞の三分類」は「ヒト」、「モノ」、「コト (ガラ)」。
  • 「モノ」は「いきもの」と「そうじゃないもの」とに分けられて、「ヒト」と「いきもの」には、原則「性別」がある。
  • 「ヒト」は勿論、「モノ」の中には「数」を決めないと四角になる資格がないものがあるので注意が必要。
  • 「モノ」と「コト」の境界線は意外に曖昧。

という話し。
四角化ドリルのなかには、所謂「物質名詞」などの「不可算」名詞を散らかしてありますが、進学クラスの生徒には、毎年のように、こう説いています。

英語には「数えられない名詞」があるから注意、なんていう人がいます。ここでいうと、moneyとかですね。でも、日本語でも「お金」は数えません。1円でも1万円でも「お金」は「お金」。(?) 「金金」とか (?) 「がね」とか、語そのものの形態が変わることはないでしょ?強いて数えているとすれば「額」であり「円」。それでも、その「円」という単位を表す名詞さえ、日本語では「複数形」にはならない。そうですね。日本語の名詞は原則「複数形」がないのだから、むしろ、英語のそういうタイプの名詞は、日本語の感覚に近い、あなたたちにしてみれば得意技にできる名詞。それよりもなによりも、英語で日常当たり前に出てくる、「複数形」に変わることがある、「数えることがデフォルト」な名詞にこそ、日本語との大きな違いがあるのだから、来る日も来る日も来る日も来る日も…、四角化で視覚化を続けていき、ある日、鉛筆で四角を書かなくても、名詞を普通に扱える日がくるのだと思って下さい。

高2は「リーディング」で定義の見方。
前回の最後に、”honest” を取り上げて、語義と訳語のズレを指摘していましたので、その確認から。派生名詞の “honesty” でもそのズレに気づけるかという話し。ISEDから、

  • freedom from deceit, cheating, lying, stealing, etc.

という定義を紹介。この定義での名詞 “freedom” とその元になっている形容詞 “free” も訳語とのズレに注意が必要な語ですね。生徒には「シュガーフリー」「アルコールフリー」の「フリー」だよ、と補足。
“honest” の語義は過去ログだと、

「ペアと伏線と選択肢」
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20090501

で扱っていましたね。もう4年も前になりますか…。

「英語は英語で」という掛け声だけでなく、日本語の足場との行き来ができないとまずいと思うのですよ。文を読んで、左から右に進みながら、部分の記述から統一した全体の文脈を整合し、さらに部分の記述を読み進める内に、自分が整合した「全体の文脈」を修正していく、という作業を実感してもらうために、昨日の授業では

  • ♪あっという間に可愛いコックさん♪

の絵描き歌をやってもらっていました。当然、日本語でですよ。
いきなり、

  • 棒が一本あったとさ

で「縦棒」を書いた者がいて大騒ぎ。

  • 葉っぱじゃないよカエルだよ
  • カエルじゃないよアヒルだよ

の件が好きですね。
最後は、YouTubeで「今風」の音楽に乗った動画を見せて確認しています。
今日は、『奇跡の英文解釈』から、定義文を拝借。

A round juicy fruit that is usually red. It is eaten as a vegetable, either raw or cooked. It grows on vines. Ketchup is made from it.

という定義文で、答えは簡単でした。

  • tomato

ただ、定義文の中で、「fruitであり、vegetableとしても食される」という記述で、「?」。その疑問から、それぞれの定義をホワイトボードに書き出す作業へ。「学級文庫」が大活躍。「ことば」の辞書と、「ものやことがら」の (百科) 事典の持ち味の差を感じることくらいはできたろうと思います。『子どもの疑問に答える本・事典』が数冊ありますから、

  • fruitってどういうもの?
  • ○○もfruitなの?

などという項目が扱われているか、そういった本の「さくいん」にアタリをつけられるようになる人が出てくるといいのですが、しばらくは私がやっておきましょうかね…。今回は、「ピーナツ」のキャラクターが出てくる、子ども向けの百科事典に「トマト」や「ナス」を含んだ、簡潔な説明がありました。Wikiの英語頁にある「ベン図」が一目瞭然ですが、それを言葉で説明するのが大変なんですよ。

家庭訪問の予定を確認してHRも終了。
準備室に残り、ワークシートと格闘していました。
自宅のPBG4には、Sassoon系のフォントを入れていましたが、職場では窓機なのでいちいちpdfに変換して印刷時の書体の崩れを防いでいたのですが、今年は思い切ってフォントのベーシックセットを4300円で購入しました。

  • Sassoon Infantのレギュラーフォント
  • 基線付きレギュラーフォント
  • なぞり書き用のドットフォント
  • Sassoon Primaryのレギュラーフォント

の4つが使えます。「これで、職場でも作成・印刷できる!」と喜んだのも束の間。
職場のファイヤーウォールの関係なのか、私の窓機のアンチウィルスソフトの関係なのか、ダウンロードした後のインストールに数十分費やしましたが、最後はインストーラーに頼らず、手作業で移植。無事使えるようになりました。
見た目は今日のエントリー冒頭で示した「写真」をご覧下さい。DL可能な同じ写真はこちら↓
Sassoon系ベイシックフォント.jpg 直

入門期・再入門期の「書写・視写」の指導で使えると思いますので、中学校だけでなく、高校の先生も検討してみては如何でしょうか?
今日、帰宅途中で、ワークシートをクラス別に整理するため「紙に穴を開けずに済む、バネ式のレバーで留めるバインダー」を買おうと思い、隣の市にもあり、この市内で最も「おしゃれな」文房具屋と評される某店に寄った時の話し。
「バインダー」の棚は、ことごとく「ルーズリーフノート用」の品揃え。「ファイル」の棚はことごとく「リング」タイプ。「クリップボード」の棚には「クリップボード」しかありません。
どこにあるかよく分からないので、ちょっと離れたところで手帳の店頭在庫の確認していたと思しき男性店員に、上に記したような説明 (「紙に穴を開けずに済む、バネ式のレバーで留めるバインダー」) をして、どこにあるかを訊ねたところ、私が探した「バインダー」と「ファイル」の棚2個所と、「クリップボード」の棚を見てから、

  • うーん。ウチでは扱っていません。ファイルもここにあるだけで、バインダーはノートのバインダーです。

とのこと。

  • えーっ!もうああいうやつは作っていないんですかね?あれですよ、こうバネ付きのレバーで細い平たい金具が紙を押さえて、穴を開けなくても紙を挟んで束ねられて、引っ張ってもずれないような…。

と説明すると。

  • 見たことないですね。

と、一蹴。
自分が古い時代の人間であることを思い知らされたような気がしたのですが、そこは昭和の人間、もう一度、棚の隅から隅まで探し、リングファイルや、紙に穴を開けてプラスチックの「触手」のようなものに通してから金具で留める「ファイル」がある棚の一番下の左隅に「レバーファイル」という文字を発見。少ないながらも、数種類の製品がそこで生きていました。
色違いで2つを買い求め精算。cashierのお嬢さんに、

  • これって「レバーファイル」っていうんですね。彼に教えておいてあげて下さい。

といって店を出ました。
モノを言葉で説明することの難しさを痛感した一日でしたとさ。

本日のBGM: Katachi (トクマルシューゴ)