作問祭り、ひな祭り

怒濤の一週間でした。
卒業式を終えて、すぐさま自宅に戻り、着替えて空港へ。
本業関連、G大関連で上京していました。
せっかくの機会ということで、前夜には、かつての教え子たちとも一献。
iPad miniが活躍したのは嬉しいのですが、ファイルの整理やiCloudを使っての動画の管理など、操作がまだよくわからないので、若い人に訊こうと思います。
作問祭りは、大賑わいというか、大童。
高2ライティングは『表現ノート』持ち込み可のテストです。自分が興味のある話題で英語で何かを書く時、しゃべる時に、これを見れば役に立つ、というのが『表現ノート』ですから、私がひとり一人のノートを読んで、原文への突っ込み、コメントの肝、グロサリーを用いての作文、「ネタ」に切り口を作っての「意見・感想」などを引き出せるように、英語で発問していく、ということで、割り当ての問題が全員異なるわけです。
高2リーディングでは、選択問題を排したのですが、ちょっと易しすぎたようです。
まあ、あと試験のコマはあと3つ、作問祭りはあと一つ残っていますけれど、山を超えたところですので、高1のオーラルコミュニケーションでの「リスニング」テストのスクリプトに関して少々コメントを残しておきたいと思います。

授業では、「全国縦断…」企画の流れで、大阪の出題を取り上げました。

  • グリーン先生が生徒に話しをしています。その話しを聞いて…。

という設定です。スクリプトは、

Hello, everyone. I’ll leave Japan tomorrow. I enjoyed teaching you English for three years. I came to Japan five years. I came to Japan five years ago and lived in Kyoto for two yeas before coming to Osaka. I couldn’t speak Japanese well when I came to Japan but I tried to speak Japanese with many people. People around me were always nice to me. I enjoyed speaking Japanese with them and my Japanese is much better now. So, when you learn English, please enjoy speaking English. Don’t think it’s difficult. When I go back to America, I’m going to tell many people about Japan. Thank you.

となっています。オリジナルの設問は、

  • How many years did Mr. Green live in Kyoto?
  • What does Mr. Green want the students to do when they learn English?

なのですが、授業でまず、生徒に振ったのが、

  • 問題の状況設定で「グリーン先生」と読んだ時に、性別は男性・女性のどちらをイメージしたか?

ということでした。音声が男性のナレーションとなっているので、設問では “Mr. Green” としているのでしょう。このあたりの「人の名前」の扱いは、日本人が登場する場合でも、英語ネイティブが登場する場合でも、配慮すべきことが多々あります。全国の各都道府県での出題を見ていると、勉強させられますね。
今回着目したのはスクリプトの第2文。 “I’ll leave Japan tomorrow.”

  • これを発している「場面」は?

と生徒に問うて、「終業式」とか「離任式」などの集会だろうという「内容スキーマ」を確認。であれば、「明日日本を発ちます」という、”will” の持ち味「その場のその気」が出てしまうと、物凄く「唐突」な感じがして、そのショックを和らげる材料を前後に入れないと落ち着かない感じがします。というのも、その次の文が、”I enjoyed teaching you ….” という、「過去形」で述べられているから。この「隔たり感」が、

  • グリーン先生は何か嫌なことがあって、もう日本にいたくなくなったので、急遽帰国を決めた。
  • 嫌なことの原因は、きっとこの学校に関わる何かで、それをこの場で吐き出して帰国しようとしているから、帰国の前日に話している。

というような邪推を生んでしまいます。そう思ってしまうと、

  • なぜ初めは京都にいたのに、大阪に引っ越してきたのか?
  • “people around me were always nice to me” と過去形なのも、これまではずっと良くしてくれたのに、最近何かあったのか?
  • 生徒や同僚教員の立場からすると、”I enjoyed speaking Japanese with them” と三人称の “them” を使うことで、自分たちは「niceに接してくれた良い人たち」の中には含まれないのか?
  • 最後に、”I’m going to tell ….” のところは、もう既に心に決めているんだ、でも私たちのことはどんな風に帰国後のアメリカ人たちに伝わるんだろうか…。

と、邪推が邪推を呼んでいくことに…。
大阪では、別の問題で、

  • 次の表は「あなたはどの季節が一番好きですか。」という質問に対する生徒たちの回答結果を示したものです。ホワイト先生の話しを聞いて、その話しの内容と…。

というものがありました。スクリプトはこちら。

There are four seasons in Japan. I like summer the best because I can enjoy swimming in the sea. I asked you about the season you like the best. Now I’ll tell you about it. Summer is more popular than winter. But, fall is more popular than these two seasons. And the most popular season is spring.

英語に親しんでいる受験生は、この “I asked you …” “I’ll tell you…” の “you” のところで、びくっとするのではないでしょうか。語りかけているのは、生徒ですが、「受験生」はその中には当然含まれていませんから。もっともらしい場面設定・状況設定をすることが逆に内容の理解に当たって混乱を生みかねない要素となってしまう、という例と言えるでしょうか。もっと、「無味乾燥」であっても、客観視できる記述にするか、「どんな場面で」「どのような生徒を相手に」話しているのか、まで記しておくべきだと思います。そうそう、「ホワイト」先生の性別は分からず終いでした。

もうひとつ、こんな問題も。

  • 留学生のジョンが英語でスピーチをしています。そのスピーチを聞いて…。

という設定。名前に「色」がつかなければいけない、というルールはなかったようです。

Hello, everyone. I have been in Japan for about ten months. Our class sang an English song at the school festival last September. The teacher of our class asked me to teach other students how to sing it. Of course, I can speak English, but I didn’t think I could sing well.
Every student in my class practiced very hard with me for about a month before the festival. At the school festival, we sang very well. One student said to me, “Thank you very much. I enjoyed singing because you taught us how to sing.” I was glad to ear that. Thank you.

やはり、今へと繋がる振り返りには「現在完了」の出番でしょう。ただ、そこから、「文化祭での合唱」の繋がりが唐突過ぎるように感じます。違和感があったのは、その次、

  • the teacher of our class

とここで敢えて「名前」を出さないことに、いったいどんな意味があったのだろうか?と思います。”class” は、面倒なので、日本的な意味での「クラス」としておきますが、ここは「大爆笑」とか「失笑」を誘うところか、はたまた「名前」を言うことが憚られるような…。

  • 成功した合唱の後、ジョンの所には生徒がひとりしか礼を言いに来なかったのだろうか?それだと、最後の “Thank you.” の言葉は、そのひとりに向けられたものなのか?

などなど、考えさせられる良い出題でした。中学校の学習指導要領の制約下では、自然な話しを書くことが難しいことは重々承知しています。だからこそ、

  • より良い英語で、より良い教材
  • より良い英語で、より良いテスト

を目指す意味があるのだと思っています。
実際の「高校1年」での試験問題は日を改めて、抜粋し紹介したいと思います。

3月3日は「ひな祭り」の日ですが、その前日の2日は、恩師の
命日でした。その日に東京にいられたということで、勘弁してもらえるでしょうかね…。

本日のBGM: マーライオンの口は今日も開いたまんま (TOMOVSKY)