若気の至り、私の怒り

今週の実作は、商業科2年からスタート。
酒井志延先生に送って頂いた『花はどこへ行った』のDVD を二回に分けて上映。酒井先生、有り難うございました。
進学クラス高1はSevern Suzukiのスピーチ。
語句の仕込みからフレーズ読みの記号付け、フレーズ訳からの日→英までやって、Read & Look upに戻り、さらに日→英の個人練習を経て、日→英バージョンでの対面リピート。フレーズ順送り日本語訳を見て、英語に直して音読し、パートナーはその英語のフレーズを聴いて英語でリピートするもの。文法の説明はその後で。
進学クラス高2は、Rachel Carsonの続き。
この課は、Book 1の巻末補充読み物として設定されている。つまり、高1の最後の教材としての位置づけ。それを高2の3学期にやっているのは、『沈黙の春』のオリジナル英文と読み合わせをしたいがため。教科書版を、オリジナルのretold版として読む作戦。教科書の課の後半は例によって「…について」作文の英文になるので、内容理解と言うよりは、構文の密度の濃いところを中心に精読。「四角化で視覚化」による結束性の確認、前置詞や不変化詞は授業傍用の『ハンドブック』の用例や解説を参照させて、解説することで進めている。

  • This impure water often surfaces in various places, killing plants and sickening cattle.

という文での述語動詞に閉じカッコを付けさせ、surfaceの名詞としての意味をまず確認し、本来名詞の語が動詞として使われる時の意味を、water, weedなど、他の例も交えて考えてもらった。

  • water

は名詞なら当然「水」。では動詞として使うとしたらどんな意味になるか?辞書を引かず、自分で考える。「水ル・水レバ・水レ」などと考えてみるわけである。「流す」とか「洗う」など、基本的な動詞が別にある中で、「水」という名詞の意味を前面に出した動詞とは?「水水 (みずみず) する」とでも言うべき動作は?
辞書を引けば簡単に訳語はわかる。でも、まずは自分で考えることも大事。
『智慧』の改訂3版では、他動詞の最初に

  • 1<土地・植物>に水をやる [まく]、…を潤す、濡らす

として、

  • water the flowers 花に水をやる

という用例を示している。その次は、

  • 2. <動物>に水を飲ませる

で、用例は「馬に水をやる」で water the horses
同じ他動詞の扱いでも、
『岩波英和』だと、

  • 水を…する

という基本義を示しておき、その後で、目的語別に、

  • 1 (馬に) 水飼う; (家畜に) 水を飲ませる
  • 2 (船に) 真水を積み込む; (機関に) 給水する
  • 3 (植物に) 水をかける; (土地に) 灌水する
  • 4 (道路に) 水をまく、打ち水する
  • 5 (酒類・牛乳などに) 水を割る (量を多くしまたは希薄にするため)

というように訳語と用法を示している。
私の授業でやろうとしているのは、この『岩波英和』的な頭の働かせ方を学ぼう、ということ。
では、

  • weed

はどうか?名詞なら「雑草」。では、動詞として使うとしたら?
この場合、「雑草ル」というような意味を想定しようにも、「水」のときのように、「雑草を生やす」ことで望ましい結果が得られるとは考えにくいので、やはり、

  • 「雑草を取る;抜く」

というような意味しか想定しにくい。
一口に「動詞化」といっても、英語を学んでいる途中では、行き当たりばったりのでたらめ、恣意的な印象は免れないので、「悩みどころでは悩み、迷い所では迷いなさい」といういつもの話しをして、そこから、sickenの語形成へ。
動詞化に際して、-enとなる語と、en-となるenlargeなどの解説を経て、soft + en + er でsoftenerの話し。最後は例によって、alsoでの添加をきちんと読み、何と何のレベルが揃っているかを考えてもらい、宿題として、次の段落のちょっと難しめの文で入れ子の構造を掴んでくるよう指示。

高3は、いわゆる「センター試験」直前の最後のコマ。
先日の『アエライングリッシュ』の英文をコピーして配布。段落をつくる「文と文の意味・論理の繋がり」、段落内の「意味・主題のまとまり」、を考えてもらう。これは、「センター試験」のディスカッションもどきの問題でも、最後の段落構成の仕分け問題でも同じこと。解説も配布し、種明かしはしたけれど、では、自分であの英文を修正できるか?といったら多くの高校生には無理だろう。書けるようになった人にとっては造作もないことなのだが、英文の「繋がりとまとまり」というものが分からない人には皆目見当がつかない。溝は大きいよ。やっぱり、高校卒業までに「ライティング」をきちんと、真面目に学ぶ必要があるね、という話し。
ということで、先日の『アエライングリッシュ』のライティング解答例の続き。

件の英文例は、過去ログでご確認下さい。
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20130109

この英文例に対して、編集部に問い合わせをしていたのだが、1週間経っても埒があかないので電話したところ、口頭での回答に加えて、文書で回答がされたので、こちらでご紹介。(回答はブログで公開することは先方に伝えてあります)

いつもアエラ・イングリッシュをご愛読いただきまして、誠にありがとうございます。
ご連絡いただきました件で、お返事が遅くなりまして、大変申し訳ありませんでした。

ご質問の件に関して、お答え申し上げます。
まずこのTOEICのスピーキング/ライティングテストの特集に関しては、すべて安河内哲也先生への取材を元にライターが記事を執筆し、ゲラもすべて先生に目を通していただいています。
また、問題例、および解答例の英文に関しては、すべてSWテストを毎回受けて研究しているネイティブスピーカーの講師が作成しております。

SWのテストにおける正解は1つではなく、またその採点の判断基準は外部にはわかりえませんので、今回の解答はあくまで1つの例としてご紹介しています。
そもそもSWのテストにおいては、ネイティブスピーカーが話し、書くレベルをめざすというよりも、ビジネス現場での課題を英語でこなせるかどうかを評価するテストであるため、英語習熟レベルの高い解答例よりも、簡単だけれども課題をこなしているという点で満点に近い点がとれるであろう解答例をSWに詳しいネイティブ講師が作成し、掲載しました。

ご指摘いただいた点については、今後の誌面づくりの参考にさせていただきます。
ご連絡いただき、誠にありがとうございました。
また今後とも、アエラ・イングリッシュをどうぞよろしくお願い申し上げます。

アエラ・イングリッシュ編集部

いやはやなんとも。
「課題をこなす」ということが何を意味しているのかが全く分かりません。「実際にSWテストを受験した上で、記事・解答例を書いている」のだから、そこから先は、SWテストの側の問題、とでも言わんばかりの対応でした。「実際に周りのノイズがある中で解答の英語を書く、というビジネスの現場と同じ条件で、課題を如何にこなすか、という点に重点を置いている」ということを頻りに強調するので、私は、

  • いや、課題をこなすも何も、英語のライティングとして、あれでは英語そのものの質が低いでしょ?

と言ったのですが、電話口で担当者が言うには、何回もSWテストを受験して、熟知している英語ネイティブのライターが書いた英文であり、「今回のような英文で満点がとれるのであって、英語として習熟度の高い英文を書いても得点は変わらない。英語ネイティブが書いた英文でレベルが高いと、一般の読者は、自分にはこんな英語書けない、と引いてしまうので、これで大丈夫ですよ、と自信を持ってもらう」ために、安河内氏も読んだ上で、あの英語にしてあるということのようです。

  • そんなこと、誌面のどこにも書いていないんですよ。

といったら、「読まれた方は、不親切だと思われたかも知れません」という、最近流行の語法で返答が来て、悪びれた様子は微塵もありませんでした。

  • TOEIC SWテストを受けさせたいが為の trailerの特集なんですか。何か、癒着でもあるんじゃないかと勘ぐりたくもなりますよ。

ということは伝えておきました。私は東京にいた時分に某私大のエクステンションセンターでTOEFL (R) の対策講座を持っていたことがあり、その時はエッセイの指導もしていましたが、その時の評価の基準であれば、5段階で3くらいにしかならないだろうと思います。高校3年生の「ライティング」を指導する際の基準で言っても、A+ (=Exceptional Performance), A, A-, B+, B, B- ,Cの7段階評価でかろうじてB+くらいです。今教えている3年生のある生徒には、この英文を見せて、

  • あなたが2学期末テストに書いていた英文を思い出して。あれだけダメ出しされ続けていたけど、あれと同じレベルか、あなたの方が上ですよ。

といいました。その生徒は、結局私のフィードバックを受けてリバイズの後に、A-くらいの英文になるまでには修正が利く訳です。そこには指導があるから。今回の雑誌の特集のような解答例を見た学習者・受験予定者は、自分の英文を improveする手だてが何もないまま、ただ読むだけ。「英語ネイティブらしさ全開の英文で萎縮、尻込みさせる以前に、この英文をお手本にしてしまうことは『害』ですよね」と言ったのですが、平行線でした。このレベルの英文が満点だと思わせてしまうことの持つ意味を、この雑誌の作り手も、監修したと思しきカリスマ講師も何も感じていないことこそが大問題だと思っています。
FBでこのことを話題にしていたのですが、私の友人のある英語の先生は、

心ある英語指導者の知事英語ツイート批評に「批評の批評」の集中砲火が起こったのを見て、日本人の英語の道は険しく遠いとうちひしがれました。目指すべきものが見えていないのでしょう。英語で何をしたいのかが具体的に描けないと「その英語で通じる」云々の堂々巡りですよね。一方で英語英語、グローバル人材グローバル人材の大合唱は、まるで実在しない想像上の動物を語るような、あるいは各々が勝手な夢を持ち寄って鵺を描いているような荒唐無稽さです。だから実際に日本語と英語に橋を渡して実務をこなす人が出現すると、見たことも想像したこともなかったその動物に我慢ならなくて攻撃するのかもしれません。

と問題の核心を鋭く捉えたコメントを下さいました。
この言葉を反芻して、本日はお別れです。

本日のBGM: She (Jeff Lynne)