緑の絨毯、赤の絨毯

本業は我慢比べ。
作問祭りもフィナーレ。
休憩がてら、Ustreamで東京国際映画祭の模様を見る。
かつての教え子が、この映画祭のために一時帰国していて、先日電話で少し話したのだが、一大イベントなのだなぁ。主演女優としてグリーンカーペットを歩き、インタビューに答える姿というか、受け答えの「声」が今まで聞いたこともないくらいに緊張していて、こちらがドキドキした。一般公開はいつになるのかまだわからないそうなので、DVDが出るのを待ちましょうかね。

さあ、いよいよ採点天国です。
今回も一番苦労したのは、進学クラス高1の「多読」をどのように反映させるか、という部分。Book review の延長で、ある程度は準備すればできるもので落としどころを見い出すことにしました。「英作文的読書」の前段階とも言えるでしょうか。
進学クラスは、超少人数という言い方も奇妙ですが、定期試験で筆記試験を課す必要がほとんど感じられないくらい、個々の生徒の英語力の profileが分かる人数で授業をしています (生徒同士もよくわかっていることでしょう) から、テストもトレーニングだったり、新たに「気づき」を深める場だったり、となることを期待しています。
その一方、商業科2年は40人を超す習熟度の激しく異なる集団ですから、観察する材料は多ければ多いほど良いと言えます。授業では、英語らしい良い音が響いてくるようになりましたが、「英語のしくみ」を覚えるのはなかなか大変。今回は、関係詞がターゲットとなっているのですが、高1からずっと扱ってきた「名詞は四角化で視覚化」を大きな視点で整理できる、いわば森を抜けたところにある見晴らしの良い「高原」とでも言えるテストの機会となりました。
授業では、名詞の後置修飾とwh-の名詞句を扱った後で、次のように整理していました。ハンドアウトから抜粋。

これに対して、次の例では、同じように名詞の固まりを作る点では同じですが、その中にとじかっこ (= 時制が決まった動詞・助動詞) が使われているところが大きく異なります。
6. the alphabet Semitic people invented around 1500 B.C
7. the shapes of the letters Romans fixed
8. letters that symbolized sounds
9. the first system that connected letters to sounds

とじカッコが使えるということは、
・ 現在、過去、未来を問わず、いつのことなのかを明確に表せる。
・ 事実だけでなく、可能性や願望、後悔などの助動詞的表現を自由に使える。
という利点があります。
以下、確認です。
10. 我々が学ぶ予定の新たな文字の形
the new shapes of letters we are going to learn *
11. 数年で世界的に有名になるであろう歌手
a singer who will be famous all over the world in a few years

次の2つの例では、「足あと」の有無を自分で確かめて下さい。
12. 20世紀に我々が使っていたコミュニケーションのしくみ
a communication system we used in the 20th century
13. 永遠に私の心に残り続けるであろう試合
the game that would stay in my mind forever

入試を意識した問題演習などとは無縁の授業ですが、英語らしさを少しでも身につけて、高校を卒業していって欲しいと思っています。私が国体で不在の時間が長く、「読み」の素材で進んだ分量が少ないので、教科書で扱った「アルファベットの歴史」とパラレルな話形の文章として「漢字の歴史」の英文を拵えて出題しています。授業で扱った、英語表現、基本的な名詞や動詞が定着しているかを見るものです。

進学クラスの高2の授業は現在、「読むこと」と「書くこと」との間でのシャトルランのような段階です。今回、ライティングでは「表現ノート」に取り組んでいるので、中間考査は行わず、「ポートフォリオ」のような評価としました。90年代の終わり、公立高勤務時代にやっていたことが、十数年後、姿を変え戻ってきたような、奇妙な感じがします。その他の科目は、基本的に「授業で扱った英語表現が定着しているか」を見るものがほとんど。一度読んだ英文の内容理解を形を変えて問うというようなことはしていません。「表現」に関する出題も、「リーディング」の試験では、次のようなものがあるくらいです。ここでも狙いは「英語を書くためには、英語を観察しなさい」ということを再認識してもらうことです。

選択問題 E: 次に示した表現は、全て「動物園 (a zoo)」の定義である。この定義を参考にして、次のXI かXII のうちどちらかの設問に答えよ。選択した問題を明記せよ。
a large place where many types of wild animals are kept, usually in cages, so that people can see them (MED)
an area in which animals, especially wild animals, are kept so that people can go and look at them, or study them (Cambridge)
a place, usually in a city, where animals of many kinds are kept so that people can go to look at them (LDOCE)
a place where many kinds of wild animals are kept for the public to see and where they are studied, bred and protected (OALD)
XI: 「水族館 (an aquarium)」の定義・説明を書きなさい。

XII: 「図書館 ( a library)」の定義・説明を書きなさい。

どこまで、「名詞句の限定表現」好きなのか、と生徒には思われていることでしょう。
「英語II」でも、入試対策の和文英訳とかイディオム問題、などを取り立てて扱っている訳ではなく、授業で扱ったことをまとめる意味で、次のような出題をしています。

V. 次の日本語の意味を表すように、( ) のうち、適切な語句を選択し、英文を完成せよ。
1. 彼は九死に一生を得た。
  He narrowly ( escaped / escaped from ) death.
2. 「夏」と言ったらあなたは何を思い浮かべますか?
  What ( brings / comes ) to mind at the word “summer” ?
3. その飛行機は炎上中だった。
  The airplane was (on fire / in the fire).
4. 事故は突然起こるものだが、戦争というのもは勃発するものではない。
  An accident may happen, but a war itself cannot ( break in / break out ).
5. 私たちの上にはボスがいる。
We have a boss ( over / above) us.

ここでは、授業傍用の私家版『前置詞・副詞のハンドブック』の例文が多く取り上げられています。教科書・教材ででてきた前置詞や副詞 (不変化詞) を授業中に説明するためにも、この『…ハンドブック』を使っているのですが、それよりも「前置詞」との良い出会いを重ねてもらうために、いろんな種を蒔いているといった方が良いかも知れません。このテストを契機に再度、『…ハンドブック』を読むことの方により大きな意味があると思っています。前置詞って、「イメージ」をいくら言葉で説明されても、自分でそのイメージを実感・共有できなければ意味がないし、そのイメージを自分で言語化できなければあまりご利益はないんですよね。次の出題例の、2. の “for” なんて一筋縄では行きませんから。(過去ログ http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120911 参照)

VI.  1 〜 3 のa. – c. の日本語を英語に直す時、 a. – c. の (    ) に共通する1語を答えよ。
1.
a. 人の姿をした天使   
an angel in human ( )
b. 脂肪を控えめにしたら、ずっと調子が良い。
I stay in good ( ) by going easy on fats.
c. あの会社の経営状態はガタガタだ。
The affairs of that company are in very poor ( ).

2.
a. 私は自分の失敗の責任を取ります。
I’ll answer ( ) my mistakes.
b. 両親は合格の知らせを聞いて喜びのあまり叫んだ。
My parents cried ( ) joy when they heard I passed.
c. トムの安否が気がかりだ。彼は危険地帯へと行ったのだから。
I fear ( ) Tom. He has gone to a very dangerous place.

3.
a. 彼は靴を左右あべこべに履いている。
He is wearing his shoes on the ( ) feet.
b. 済みません、番号間違いだと思いますよ。
Sorry, you have the ( ) number.
c. 悪く思わないで下さい。             
Don’t get me ( ). 

これは、どれか一つが分かれば正解はすぐにわかりますから、生徒の英語力の「弁別」にはほとんど機能しません。パズル宜しく空所補充に現を抜かすのではなく、一つ一つの「語」の意味や働きを、用例を通じて自分で「生き直し」てくれることを願っています。

明日は、「第5回山口県英語教育フォーラム」のスタッフ間での打ち合わせ。
各講師から講演資料も届き、「いよいよ感」も増してきました。
フォーラムの開催は11月3日 (土・祝) です。申し込みはまだまだ受付中です。
県内の中高の先生方はもちろん、県外の方も、せっかくの連休なのに…、ではなく、せっかくの連休だから「おいでませ」山口へ。お待ちしております!!

詳細はこちら→ http://cho-shu-elt-forum-2012.g.hatena.ne.jp/tmrowing/20120916
申込用紙等はこちらから→第5回英語フォーラム案内文書・完成版.docx 直

本日のBGM: 名前を呼びたい (真心ブラザーズ)