more faith in honest doubt

2学期の実作も淡々と。
商業科2年は、教科書の後半を先にやっておこうということで、「アルファベットの歴史」から入ることにしました。
夏休み前に大名力先生に送っていただいたファイルで教材研究。
夏休みに手島良先生に送っていただいたファイルで文字の練習。
有り難うございます。
授業での導入は、Wikipediaの「変体仮名」の頁にあった「看板」で。 (http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/e/e4/Soba_restaurant_by_nyaa_birdies_perch_in_Gunma.jpg/300px-Soba_restaurant_by_nyaa_birdies_perch_in_Gunma.jpg)
この思いつきは、夏のELECの研修の準備で「文字指導」を扱うかどうか思案していたときに読んでいた、

  • 板倉 聖宣 『変体仮名とその覚え方』 (仮説社、2008年)

から。
自宅に置いてあった、

  • ローラン・プリューゴープト 『アルファベットの事典』 (創元社、2007年)

  • 田中美輝夫 『英語アルファベット発達史―文字と音価』 (開文社、1970年)

も教室へ持参し紹介。
授業の進め方は、1学期とほぼ同じ。
日→英での「仕込み」から。(2012_C2_NW2_L9_仕込み.pdf 直)
1から14まで順番に日→英をやっていると、分かったつもりになってしまうことがあります。そこで逆順とか、ランダムに3つ連続で、とか負荷を変えて、個人→ペアで取り組みます。その合間合間で、私の範読。静聴と斉唱。全体での練習と個人作業とペアワークに取り組む中で、私が発する「モデル音声」の聴き方、聞こえ方は変わってくるでしょ?という話し。
裏面の、「連語での日→英マッチング」で、表面の「仕込み」が活かせない者もやっぱりいるのですよ。そういう生徒には机間指導の際に、「A of B でBのA」など、1年生の1学期から、しつこく繰り返してきた「四角化ドリル」を思い出させることまでやっています。
多くの生徒には、「語句を覚えてから読み取りに移る」というよりは、「読みの素材を利用して語句を覚える」といった段階の学習が足りていないように思うので、その前段階の「仕込み」に一工夫いるわけです。聡い生徒のためには、英英での語義の定義文から、当該語を答える課題も付けています。教科書本文のワークシート (2012C2_NWII_L9.pdf 直) も先に配布してあるので、先に進める人はどんどんと。

進学クラス高1は、alsoとtooの徹底。戯け者のおかげでクライマックスを迎える前に終了。
高2は、語法と語義。
朝、登校してきた生徒の後ろ姿を見て、左の後頭部の輪郭線に力がないな、と感じていたので、

  • 最近、頭をぶつけたりした?

と質問するところから。「輪郭線」ということで、名詞の、

  • outline, shape, figure

の確認。figureでは当然、キム・ヨナ選手と浅田真央選手の話です。今の若い人たちは、「コンパルソリ」を知りませんから。そこから、shapeにスポットライトを当て、“in” と “shape” とが結びつく用例を辞書で確認。

  • an angel in human shape
  • I stay in good shape by going easy on fats.
  • The affairs of that company are in very poor shape.

の3つを板書。冠詞の使い分けや名詞の単複も納得の用例。この辺りまで授業で扱って、あとは『ハンドブック』で “in” の項目での出会いを重ね、「学級文庫」の辞書群と仲良くしてもらうことに。
宿題にしてあったのは、名詞 opinionの用法・用例だったので、ホワイトボードに抜き出された「珠玉の」用例を取り上げ解説。

  • 高2の9月ということで、入学後1年半近く、私の授業を受けてきた訳だけれど、これまで問題集を使ったり模試や入試の過去問を使ったりという「問題演習」を一切やっていないんだよね。『P単』だけは、朝の小テストでやってもらっているけれど、他には「小テスト」の類も一切無し。中学校の頃と比べてみて。あまりの違いにびっくりするでしょ。でも、その頃の方が英語が出来ていたなぁ、って思う人はいないはず。なぜなら、この授業では問題演習ではなく、ずっと「英語」をやっているから。ホワイトボードに、辞書から用例を引き写すのは授業でよくやっているけれど、これはただ「横のモノ」を「タテのモノ」にしただけ。そこで終わってはダメ。大事なのは「自分のもの」にすること。だから、ホワイトボードの用例を、綺麗にノートに写してもダメですよ。それはまた「横のモノ」にしただけで、「自分のもの」にはなっていないから。

そろそろ、「目の前にある適切に用いられた英語の用例を生き直す」ということの意味が分かってきたのではないかと思います。

シャガールの課の復習では、教科書で出てきた、

  • He feared for his safety and moved to the United States in 1941.

という英文からfear for のfor を取り上げました。というのも、句動詞や成句でのforの多くは、「目的・用途・追求」、あるいは「等価交換・原因・理由」で用いられることが多いのですが、このfear for の場合はこのどちらとも相容れないような意味を表しているからです。
現在改訂作業進行中の『ハンドブック (5訂版)』の基礎資料から英文のみ抜粋。

  • What are you looking for?
  • That’s what I am here for.
  • We don’t think the prime minister’s visit to the country will make for peace.
  • Thank you very much for your kindness.
  • A number of my friends feel that they are not properly paid for the work they do.
  • I’ll answer for my mistakes.
  • He bought me a dinner to make up for being late the day before.
  • My parents cried for joy when they heard I passed.
  • John has a reputation for picking fights when he’s drunk.

これに対して、fear forは、というと、
Cambridge International Dictionary of Phrasal Verbs (初版、1997年) では、

  • to be worried about something, or to be worried that someone is in danger

と定義をして、次の用例を示しています。

  • John had not been seen for over 24 hours, and she feared for his safety.

そして、この用例にさらにパラフレーズとして、

  • (= She was afraid that he might not be safe.)

という補足をしてくれています。親切ですね。
このような forは、

  • Parents are afraid for (the safety of ) their daughters. 両親は娘 (の安否) を気づかっている。 (G大)

で用いられている、for などと同じと考えて良いのだろうか、という疑問が、これを取り上げた出発点。
COBUILDでは、afraidのこの「安否を気づかう」用法を次のように定義しています。

  • If you are afraid for someone else, you are worried that something horrible is going to happen to them.

そこで示されている用例は、

  • She’s afraid for her family in Somalia.

です。
NTC’s Dictionary of Phrasal Verbs and Other Idiomatic Verbal Phrases (NTC, 1993年)
では、fear for に対して、次のようにbe afraid forを用いて定義をしていて興味深いですね。

fear for someone or something
to be afraid for the safety of someone or something; to worry about someone or something. □ I fear for Tom. He has gone to a very dangerous place. □ I don’t want to go there. I fear for my car.

他にも、allow for … = take … into considerationなどの用法などとも比較検討して、もう少し、実例の検証を重ねて整理しておきたいと思います。

前時に扱った、memory の復習と定着も兼ねて、
Foundation for the Memory of the Shoah
のサイトから、オランド大統領のスピーチの英訳 (http://www.fondationshoah.org/FMS/IMG/pdf/President_Hollande_Speech_-_22_07_2012.pdf) の抜粋。
さらには、Foundation Brochure (http://www.fondationshoah.org/FMS/IMG/pdf/Brochure_FMS_-_engl.pdf) を印刷して、情報をコンパクトに集約しつつメッセージ性の高い文体のサンプルとして提示。
私はフランス語が全く出来ないので、固有名詞の「音」がまるで頭に残らないので、困りました。
クロード・ランズマン監督の映画、『ショア』 (1985年) は英語版もあるようなので、一度観てみたいものです。

夕飯は、蓮根の挟み揚げ、厚揚げとゴーヤと茄子の麻婆風肉豆腐 (?)。

本日のBGM: 反骨の人 (寺尾紗穂)