Cheers!

雨で順延となった野球の応援に行ってきました。
全校とまではいかないけれど、バス6台での応援団。
敗者復活戦のないトーナメント競技、初戦というのは難しい。
投手戦というか貧打戦というか、評価の難しい初戦でしたが、まずは勝って良かったです。
雨の準備だけしっかりしていったのですが、思わぬ晴天に日焼けしました。
2回戦はこの週末。私は本業の国体中国ブロック予選で広島県にいることになるので、応援には行けませんが健闘を祈ります。

夜になり、宅配便で中村一義の新譜が届く。
先行シングルで発表していた楽曲のアルバムバージョンに、こだわりを感じた。
今回も全ての演奏を一人でこなしているが、ミックスだけでなく、マスタリングエンジニアも高山徹氏。
まさに自分の耳を育ててきてくれた音の系譜。10年ぶりのフルアルバムというのはこういうことになるわけだなぁ。
未明に仕事部屋で聴いていたボーナストラックの

  • ただ、救われた私が誰かを想う

という一節がAKGに木霊した。

教科書の精査も引き続き。
「コミュニケーション英語 I」を眺めていて痛感するのは、指導要領の「改悪」ということです。
多くの出版社で、難易度の異なる教科書を作っているのですが、その「やさしめ (= easier)」な方は、ことごとく「写真」や「挿絵」が多いのです。「英語は英語で」と、改訂に当たってAAO派が息巻いたのは結構です。でも、結局、その写真や挿絵を見ている生徒の頭の中に「英語」が浮かぶのでしょうか?もし、浮かぶとすれば、それはどんな「ことば」になっているのでしょうか?
大修館書店のやさしめ版は、『Compass English Communication I』 。
このLesson 1は書き下ろし。アンジェラ・アキ、野口健、毛利衛の三人が、『十五の君へ』ということで英語で手紙を書いてくれています。

  • オープニングを飾るのはアンジェラ・アキ。ジャージ姿で「体育座り」の中学生と思しき生徒に向かって、アップライトピアノの前に座ったアンジェラが話しかけている写真。

で、このパートの「問い」は、「アンジェラ・アキさんの歌が生まれたきっかけは何だったでしょうか。」です。

  • 多くの観客に囲まれ、コンサートのステージでライトを浴びて歌うアンジェラ。
  • 立ち上がって観客に向かって両手を拡げるアンジェラ。

で、このパートの「問い」は、「アンジェラさんが歌に込めたメッセージはどんなものでしたか。」です。
これらの写真によって読みは深まるのでしょうか?さらには、「発問」に深みがでるのでしょうか?

さらには、「やさしめ」の教科書は英語の表現と論理がスカスカです。

Hello, I am Angela Aki. I am a singer-songwriter. At fifteen, I wrote a letter to myself. I wrote about my feelings. My mother kept the letter. Fifteen years later, she gave it to me. I read the letter from my past. Then, I wrote a song about that letter. The title is …. (以下略)

某放送局が主催する中学生の合唱コンクールの数年前の課題曲にアンジェラ・アキさんの曲が使われていましたから、今高校生になった者は皆、彼女のことを知っている、と考えた訳でもないのでしょうが、まずこの冒頭を読んで「?」がいくつか浮かびます。

  • アンジェラがシンガーソングライターになったのはいつなのか?

職業として、でも、デビューする前でもいいので、その記述がないと、「15歳」という情報の唐突さ、そして「曲」ではなく、「手紙」を書いたという情報の唐突さが際立ちすぎると思うのです。
そして、「母がその手紙をとっておいてくれた」という文でのギャップ。

  • I wrote about my feelings then in the letter.

とでもいう情報が含まれていれば、

  • My mother kept the letter.

の “the letter” に繋がるのではないかと思いますが、それにしても、まず「自分への手紙を出さなかった」ことを何も語っていないのです。実際に「投函しなかった」とも書かれていないし、「引き出しにしまっておいた」ということでもなく、「母が持っていた」ことへどのように繋げるのか。
この部分が重要で必要なのは、「15年後に、母から『あの手紙』を手渡された」という文を引き出したいが為でしょう。

  • She kept my feelings back then, as well as the letter itself.
  • What she really kept is all the things I felt when I was fifteen years old.

とでもいう内容を、「やさしい英語」でどのように表現するかが著者の腕の見せ所なのだと思います。
であれば、

  • 「『あの手紙』を読んだ」 = 「15歳の頃の自分と再会した」

という記述が欲しいところです。それがあって、初めて、

  • Then, I wrote a song about that letter.

への接点ができると思うのです。

  • Then, I put all those things about the letter into a song, and named the song ….

とでもいう内容を「やさしい」英語でどう書き表すか。

このような視点で読み直せば、このレッスンの内容理解の問い方にも変化が出てくるだろうと思うのです。

  • When did Angela Aki start writing songs?
  • How old was she when she wrote a letter to herself?
  • When did she read the letter?
  • What did the letter tell her?

そして、ここまで考えてきて思うのは、

  • そもそも、この手紙はアンジェラさんが英語で書いたものなのか?それとも、日本語で書かれたものを編集委員会が英訳したものなのか?

ということと、

  • ここで取り上げられている歌そのものが「手紙」という形式をとった作品であるのに、この本文も「手紙」である必然性はあったのだろうか?インタビューで、作品の背景を聞き出す、というような内容の方が相応しかったのではないか?

さらには、

  • 三人を並べる順番からいえば、アンジェラさんは最後で、しかも、曲・歌詞だけで良かったのではないのか?

というようなことです。折角、英語ネイティブも含めて優秀なスタッフで作っているのですから、「やさしめ」ならではの「ことばへのこだわり」を見せて欲しいと思います。
私は、この「曲」を初めて聴いた時から、この「タイトル」に違和感を持ち続けていたので、その背景が明らかになるような記述であれば大歓迎です。
「やさしめ」教科書では、どうしても「スキマ」ができます。それは仕方がない。でも、その「スカスカ」な英語表現を、いつ「充ち満ち」としたものにできるのか、ということを教科書著者、そしてそれを扱う現場の先生には考えて欲しいと思います。「コミ英 II」や「コミ英 III」とステップアップした時に、新たな題材で、ではなく、同じテーマ、同じトピックで、より成熟した「表現」や「論理」が紡がれていることに気がつく「チャンス」を、そして、あのときには言いたくても言えなかったあんなことやこんなことが言えるという「チャンス」を是非与えて欲しいと思うのです。

最後に、「幼き日、若き日の自分との対話、再会」というテーマであれば、こちらを是非。

本日のBGM: Dream Fighter (Perfume)