May you both ....

今日は「中高連絡会」という中学校の先生との情報交換の機会。
高1の授業がカットになるのは分かるのだが、高2、高3は関係ないだろう。試験前なのだから、少なくとも進学クラスを謳う以上、臨時時間割を組んででも授業時数を確保するべきだと思う。こういうところできちんとしないと早晩崩壊することになるのではないか、と危惧します。
ということで、今日唯一の授業である、高1のオーラルのコマが授業公開の対象となっていたようで、中学校の先生が途中で見に来ていたらしい。「3〜4人ですかね?」と隣の教室で授業をしていた同僚に訊いたら、「いやいや、10人以上は前を通って行ったよ。」とのこと。
前時に課題を与えて、ホワイトボードに書いておくよう指示してあったため、普通なら見学者がいるであろう教室の後ろのスペースで、ホワイトボードに朱を入れながら私が授業していたので、入ってこられなかったのでしょうね。窓は開けていたけど、生徒のこと以外はあまり気にしてなかったので、御免なさい…。
今日の内容は、後置修飾のおさらい。
接触節と主格の関係代名詞がメインのターゲット。
先週までに、『ぜったい音読』の緑本から、文→名詞句の括りだし、を練習しているので、その頭の働かせ方を実例を通じて確かめる狙いです。
使い始めてもう20年になるでしょうか、ピーナツのキャラクターが登場する見開き絵本で学ぶ「語学シリーズ」。今回は後置修飾で二冊を用意して、生徒各自が読んで、"A friend is someone …" のベスト5を選び、ボードに書かれたことばを音読し、そこに意味をしっかりと乗せ、それを皆で共有する、というような流れ。何か、productionがあるわけでもなく、新たな情報発信も自己表現もありません。ひたすら、自分の感性に引っ掛かった英文を音声化する、人の書いたことばを自分のことばとして言うだけの活動です。
“laugh” の北米系の音が中途半端な生徒がいたので、前の「黒板」に類例を書いて個人練習。

  • cat, cap, chance
  • mat, map, plan, hat

で、最初のグループは「拗音」でごまかせても、二番目のグループはきちんと唇で音をつくらないとダメ。グループ間の単語を行ったり来たりしながら、ターゲットの laughを練習。同じ音は同じ音で、を要求。ほぼ許容範囲内に収まったので、ついでに全体練習。
”trust” の母音が崩れている生徒には、板書で cutとupを並べて3つを音読。この母音の安定が、他の母音との棲み分けを可能にするので、いつも同じ顎の開きで、と言って繰り返し。
音読の際に、明らかに意味が乗っていないので辞書で語義を確認させたのが、動詞としての ”mind”。

  • A friend is someone who doesn’t mind if you cry.

で「誰が泣いて」「誰が気にしない」のか、をしっかりと音にしないとダメ。
基本的に個人指導で進めています。けれども、そのやりとりを自分に当てはめて聴いて、自分の中で繰り返して、ということをしておかないと、自分の番になって、同じミスを繰り返すことになるので、集中力は要求されます。

  • A friend is someone as sweet and pretty as your sister.

といった、形容詞句の後置修飾もあり、

  • A friend is someone you can call on in an emergency.

といった、接触節で、「足跡」が句動詞の後、前置詞と前置詞の間にあるようなものも出てきます。接触節は、<名詞1+名詞2+動詞句+足跡>という順番なので、<□1+□2+とじかっこ>と来たら、「おっ、これは足跡がどこかにあるぞ」と心の準備、と繰り返し言ってあります。上の例だと、someoneとyouが並んだところで匂いを感じることが大切。
途中で、joggingとprettyが出てきたので、子音字が二つ並ぶときのその前の母音の発音と語全体のリズムを指摘。runningもswimmingも原理原則は同じはず、という話しで、発音練習をして終了。

さて、
新課程の教科書選定もいよいよ大詰め。
私のところに話しに来られる営業の方は大きく分けて二種類。
・ 著者や編集部から「要注意人物」と伝えられたり、これまでの営業の経緯から、随分警戒・用心して来られる方。
・ 私のことを全く知らずに、近隣や県内の高校と回る順番を考え、たまたま来られたら私がいたという方。
某T社の方には、「私自身はもう二度と、お宅の教科書を選ぶことはありません。」と宣言してあるので、私には全く声を掛けず、英語科主任のところに行くようです。
某B社の方は、初めてお会いしました。「教科書の英文に関する問い合わせがある」という話しから、あれこれ。

  • 定番教材は、原文を易しく書き直したり、端折ったりするので、原文と教科書の英語表現とに大きな差があるのが普通で、その表現に関しての問い合わせをする、というのは高校の英語教員なら普通だと思いますよ。

と伝えておきました。指導書を書くなら、「なぜ原文ではこうなっているのに、教科書ではこう書き換えたか」、というようなことをこそ書いて欲しいんですけどね。もっとも、教科書そのものを3段階くらいの英語で書いた「課」がいくつかあっても良いと思うのです。
最近だと、入江泉さんの作る教材とか、昔であれば、宇佐見光昭さんが編著で出されていた『サクセス長文読解』 (旺文社、絶版) など、学習者の発達段階に配慮した良質の教材は世に出ているのですから。
某S社は教科書編集の方と直接お会いできましたので、じっくりとお話しさせていただきました。また、先ほどとは別の某T社の営業の方は、著者直々に「山口ではここに行くように」という指示があったことに加えて九州方面に営業に行かれた時に、私に関していろいろと噂を聞いたらしく、随分緊張されていました。そんなお二人とも、今ではこのブログをお読み頂いているとのこと。有り難うございます。
某K社の営業の方には申し訳ないのですが、『英語表現』に関しては残念至極。これが「現場での評判が良い」と聞いて、その現場にも残念至極というのが偽らざる心境です。
そんな営業の方との情報交換で気になったのが、「デジタル教科書」とでもいうようなもの。
とある県では、県立高校の生徒に「タブレット」などの端末を配布し、授業で用いる政策だとか。当然、採択する教科書は、「デジタル版」も出しているところに限られてしまいます。私は個人で使うのはさておき、教室で行う授業でICTに頼るのが嫌いなので、できるだけ、そういうことは考えないようにしているのですが、世間では本気で、そんなことを考えて実現させようと努力しているのでしょうか?お金をかけるところはもっと他にあるのでは、と思います。
今週の授業で2年生にその話しをしました。

  • 普通は1日6コマ。あなたたちなら7コマ授業がある。もし、途中で充電が切れたら?

冗談はこれくらいにして、大事なことを。
タブレットを一人一人の生徒に配れるような予算が潤沢にある自治体の政策決定権を持つ方へ。
そして、そのような自治体の方に営業で売り込みに成功した教科書会社の編集製作に携わる方へ。
もし、「タブレット」を活用するなら、「教科書」を入れるのではなく、何と言っても「多読用教材をデータとしてタブレットにインストールすること」です。サイドリーダーをレベル別に合計で100冊分くらい、一人一人が持っている、というのであれば、好きなものをどんどん自分のペースで読めるし、かさばらないし、意味や音声で疑問に思ったらすぐ確認できるし、と良いことずくめです。CasualConcのようなコンコ−ダンサーが入っていれば、用例検索など新たな使い道も出てくるでしょう。
教室では教室でしかできないことに人的リソースを振り分けないと、と思う私は、もう時代に取り残されているということでしょうね。

晩酌は忘れずに就寝。
妻の淹れてくれるコーヒーに感謝しながら、明け方に作問の予定。

本日の晩酌: 満寿泉・生純米吟醸・山田錦58%精米 (富山県)
本日のBGM: all your goodies are gone (Dennis Coffey featuring Meyer Hawthorne)