後ろの正面

中国大会の壮行式などで時間割が変更。
商業科2年は、音読の確認。Read & Look upも書き込み無しのセクションと書き込みありのセクションで自己診断。対面リピートを経て、動詞の形合わせプリントを配布。ワークシートの上から重ねて一緒に持つと、表裏で行ったり来たりで確認と刷り込みの強化が出来る仕掛け。個々人の現在地に応じて、書き込みありの面にするか、書き込み無しの面にするか、さらには、フレーズ意味順送り訳の面にするか、を選択できるようにしてあります。あとはやるだけ。
その段階が終われば、Flip & Writeへ。まずは、20回くらいRead & Look upをやって、スラスラ口をついて出てくるまでやってから、書くように指示。
来週は新しい課に入ります。
進学クラス高2は、『やれでき』に一区切り。今日は、時制のズレで借り出される「大関の have」の働き。とじかっこを使わないことを選んだわけですから、時を表したくても「直接」「明示」することはできないのです。とじかっこで示された「基準時」との関係において「間接的」に「依存して」、時を表す、苦肉の策。どのような場合に、句のコンパクトさが生きて、どのような場合に、節を用いて、時制や助動詞が効くのか、実際の英語表現を生き直すべし、と普段から私が言っていることを実践するチャンスです。

進学クラス高1は、例によって『ぜったい音読』の本文のスカスカな隙間を埋める「目の付け所」「足場の積み上げ方」の解説。中2の教科書で、登場人物も中2の設定なのであれば、稚拙な英語表現も、論理の飛躍もしょうがないでしょう。でも、同じその生徒がその後、2年間英語学習を続けていたなら、きっと同じテーマ、主題で話しをしても、もっと「マシな」英語を話したり、書いたり出来るはずなのだと思うわけです。その成長した登場人物のことばを生き直し、自分が代わりにリベンジできるように準備して下さい。

それにしても、教科書の話題・トピックで、「環境問題」「ゴミ問題・リサイクル」など、社会性の高い話題や科学関連の話題というのが目立ちます。でも、時流に乗ろうとすると、あっという間に古びることにもう少し自覚的であって欲しいと思います。
英語の教科書を作る人たちは、多分、相当に英語の出来る人たちだと思うのです。そして、その教科書で教える教師もおそらくは、90%以上の中高生よりも英語が出来ると思うのです。とするならば、どの分野に将来進むか未定の学習者も、中高での学習段階でまずは、英語教師と同じレベルの英語力を身につければ、成功といっていいのではないかと思うのです。であれば、英語教師は、そして英語教科書の作成者は、自信を持って、自分の一番得意な分野を話題として、主題として教科書や教材を作るべきなのではないでしょうか?そう「ことば」です。以前、東外大の根岸先生だったでしょうか、高校生に最も人気のないトピックの例として「言語」をあげていたように記憶していますが、そんなことを気にせず、どしどし「ことば」を扱ってみたらどうなのでしょうか?自分の得意な分野でどのように「ことば」と向き合い、それを英語で何と言うのかを学び、言いたかったけれど言えなかった表現との出会いを求めるのか、それを教室で示せばいいのではないでしょうか?ただでさえ、「英語は英語で」というのが流行りだけではなく、御上のお墨付きを得てしまったので、苦手な話題を無理に取り扱うことで、教える教師が息苦しくなってしまっては本末転倒でしょう。英語教師自身が一番、呼吸の楽な水域で、一番得意とする泳法で泳ぎ続けることが大事だと感じています。
「和訳」については、古くからある議論の割には、日本の英語教育学者と呼ばれる方たちは「訳がどのように害となるか」「訳を排除することで、どのくらい英語学習が加速したか」という実証研究をしてくれてはいないように思います。「和訳」とか「日本語訳」というくらいなのですから、日本の研究者が世界のどこよりも有利なところにいる研究分野のはずなのですけれど。
私のスタンスは、このブログでも何度も繰り返しています。
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20110210
もう、かれこれ6年の月日が流れました。
別なところで呟いたこととも関連しますが、まずはこちらのオンライン記事。

(2)和訳なしQ&A授業 : YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/2

この連載は、教育の記事として取り上げる価値のある対象に切り込んでいくことも多いので、一概に全てを批判するわけではありませんが、英語教育が取り上げられる際の「話形」というものは、かくも紋切り型なのか、と思わされます。

  • 外と内とでの対比で、いかに内にあたる方が機能していないかを力説。
  • その機能していない内の常識が旧態然であることを強調。
  • 内同士の対比で、一方が他方に対し著しく優位に立っていることを力説。
  • その場合、優位に立っている方が、外の常識と結びついていることを強調。

結局、二項対立での単純な価値判断から抜け出せていないことが多いのです。
この記事でまず一点確認しておきます。
この高校で英語教育の成果が上がっていることは事実でしょう。素晴らしいことです。そして、その「成果」を引き合いに出して、文科省は新指導要領の「理念」の正当性を裏付けたいのだろうな、ということも十分理解できます。ただ、私は、「和訳を排除したこと」が「成果が上がったこと」を100%説明するとは思えないのです。この高校の公式サイトには、英語の授業で用いられた資料が公開されています。
(リンクは張りませんが、新聞の連載にも取り上げられるのですから、検索してでも読む価値はあるのではないでしょうか。)
その公開された資料のうち、「生徒が使うことを想定された」授業補助プリントなどを見ると、高1から高3まで「日本語」による説明や意味の記述が極めて適切かつ効果的に施されていることが分かるでしょう。教師の指導用マニュアルのようなファイルは、指導手順や生徒に投げかける発問まで、全て詳細に英語によって書かれていますが、それが可能なのは、生徒が使う「補助プリント」が巧みに作られているからでしょう。日本語の効かせどころ、日本語による足場のかけ方が適切で効果的だからこそ、その先に「英語」を積み上げたり、積み重ねたりできていることをこそ見ないといけません。
たとえば、そのレッスンでの重要表現をまとめ、記憶に資するための「クイックレスポンス」を授業や個人のトレーニングで取り入れようという時に、「日本語」による意味の記述を排除することは可能でしょうか?ちょっと無理があると思います。では、語彙の仕込み段階での英→日や日→英の変換は許容されるけれども、教科書本文の逐語訳は排除すべきなのでしょうか? では逐語訳をしないとして、学習者の頭の中では日本語は排除されているのでしょうか?直訳や逐語訳は排除すべきだけれども、大まかな内容理解のために日本語を援用するのは許容されるのでしょうか?好ましくないけれども、咎める事はしないのでしょうか?どこまでが良くて、どこからはダメなのか?「和訳」の何が本当の問題点なのか、英語教育学者と呼ばれる方たちの説明責任は大きく重いものだと思います。
そういえば、今年の8月の全国英語教育学会の大会では筑波大の卯城先生らが、このあたりのテーマに切り込むのではなかったでしょうか?予定調和でも平行線でもない落としどころを皆さん見たいと思っているのでしょうね。
さて、
上述の記事では、「発問」の効用にもスポットが当てられていました。これも今流行の最先端です。そして、私はそのような流行にはいささか懐疑的です。
私のスタンスは、国語教育が長きにわたって蓄えてきた知的財産を少し分けてもらいましょう、というものです。過去ログでは、http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20091017 で扱っています。その更に前に書いたものも、その過去ログから辿れるようになっています。国語教育という観点では、米国における国語教育で取り入れられている「発問」について、http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120330http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120317 で、DL可能な資料をつけ言及しています。面倒でも一度は読んでおいて欲しいと思います。

今日の学び直しは、handwritingの指導マニュアル。
手島先生に言われて、改めて見直す必要性を感じました。

  • Peter Smith (1993) New Nelson handwriting: Cursive Copymasters Teacher’s Manual. Surrey: Nelson.
  • Peter Smith & Louis Fidge (1997) Nelson Handwriting: Teacher’s Book. Cheltenham: Nelson.

“New Edition” と書かれているものの、それでさえ97年刊。15年前です。F on FとかCLILとか、CEFRとかの輸入にはあんなに熱心で拙速とも感じられる取り組みをしているのに、この「手書き文字」の指導に関しては、まともな教材の翻訳さえないのが現状。誰かやりませんか?
現行のNelsonの6冊のシリーズとはかなり違うカリキュラム、シラバスに基づいているようで、文字の選択からして、自分の知識を揺すぶられます。

本日のBGM: There’s a Starbucks (where the Starbucks used to be) / John Wesley Harding