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とろろパワーで初校のファイルを送り、まずは第一関門突破。
かなりまとまった雨となった金曜日。
若干の時間割の移動。
高1は、『レベルアップ英文法』で、既習事項の確認。

  • How long have you known each other?

とか、

  • How long have you been married?

など、「いつから…ですか?」という日本語表現に相当する英語の疑問文は、その多くが、「期間」を尋ねる、

  • How long have you …ed/en形?

となることが多く、 “Since when…?” をいきなり使うことはあまりないこと。にもかかわらず、答えるときは

  • Since I was …. / Since we were ….

などと、sinceを用いることも多いこと、などなど。
今日の授業では深入りは避けたのだが、週明けの授業では、 “marry” の説明をしておかないと。
marryという動詞の語法は確かに面倒。入試にも出るらしいけれど、問題を解くだけなら、一回やったことのある問題の解答を覚えておけば済むのだからそれほど心配はいらない。

  • I will marry you. / She married him.

や、

  • She is married to a man she doesn't love and who doesn't love her. (BBCの English Literatureにある、 Of Mice and Menの解説より)
  • He is married to a woman named Fumiyo and has an adopted son, Yoshio Kobayashi, the leader of the boy detectives club. (Wikipediaの明智小五郎の説明文)

などでは理解に苦しむことはそんなにないだろう。
でも、

  • My parents have been married for twenty-five years.

という英文の「しくみ」、表現形式は、「marryは他動詞で、『嫁がせる』が基本」、というだけでは、うまく説明できない。『政村本』にも、このエントリーは無し。
いつも語源を確かめる、小川先生の『ハンディ語源英和』 (有精堂) でも、

  • ラテン語 maritus a husband

とあるだけで、英語の動詞としての語義には切り込めない。
大修館の『ジーニアス』だと、

  • ラテン語 maritare (結婚する). 「花嫁をあてがった」が原義

というありがたい語源解説。でも、さっぱりわからない。
困った時の、田中菊雄 『岩波英和』には、p. 540で、

  • と結婚する (をめとる; へ嫁ぐ)

とあり、

  • be married 結婚する; 結婚している (妻がある、妻になっている)
  • get married 結婚する

という英和辞典としてはよく練られた訳語が示されているものの、疑問は解消しない。
Oxford Dictionary of Englishでも、

  • join in marriage

が基本義として示されているが、marryの定義にmarriageを使わざるを得ない時点で、初学者にはほとんど意味を持たない。
複数主語で受け身の英文が可能なのだから、「むすびつける」とでもいう基本義を想定したうえで、「何と何を?」というときに、「男」と「女」、というような「意味の絞り込み」が必要となるなのではないか、と予想して、POD (私の持っているのは、第5版の14刷) にあたると、

  • Unite (man & woman)

が一番最初にあるではありませんか!
やっぱりPODがあるといいなぁ。本当に時々しか頼りにしないのがいけませんね。

高1の2コマ目は、不規則変化動詞での用例収集の旅。初シャトルランです。
ABB型とABC型でグループ分けをして、それぞれ5語を選び、辞書から用例を集めます。私の授業での「お約束」で、

  • ペンやノート、メモ用紙などは持たない。
  • 該当する英文を探したら、意味を確認し、read & look up をして、覚えて自分の席に戻り、ノートに書き出す。
  • 複数の辞書で、自分が求めている同じ語義・語法・用法を記述する用例を複数記録する。
  • どの辞書から拾った英文なのか、出典も併せて記録する。

というものです。教室後ろの棚、テーブルと自席との往復で、忘れないうちに書こう!と思えば自然と走るのですが、その途中で忘れたり、こんがらかったりして引き返すことも多いので、「シャトルラン」と呼んでいます。
いかに優れた英和辞典といえども、日本語訳や解説を入れるスペースが必要ですから、同じ語義・語法・用法を示すのに、もっとも相応しい用例を一つだけ選んで載せています。英語が出来る人はそれでいいでしょう。でも初学者にはその1文の珠玉の用例の価値がなかなかわからない。そこで、横並びならぬ、他の辞書の用例を横に並べて比べてみるわけです。

  • 『エースクラウン』→『グランドセンチュリー』→『ウィズダム』

と、初級から中級への発達段階を見ることも可能ですが、それよりも、

  • 『グラセン』、『コアレックス』、『スーパーアンカー』、『ライトハウス』、『ユースプログレッシブ』

などといった、同じレベルを想定した学習用英和の用例を並べることを念頭に置いています。
今日は、ターゲットが不規則変化をする動詞ですから、辞書の見出し語に載っている原形や現在形ではなく、「過去形」と「-ed/en形 (過去分詞)」の用例を拾います。

  • mean

という動詞であれば、

Art meant everything to him.
I meant it as a joke. (以上『グランドセンチュリー』)

The meal was meant for another customer.
I meant it as a compliment. (以上『ウィズダム』)

It was meant as a warning.
No offense (was) meant.
I can scarcely say what she meant to me. (以上『ロイヤル』)

などといった用例を比較吟味し、ふるいにかけることで、その活用形が語義と結びついてスラスラと出てくる、自分にとっての「リアル」な用例を残すことを求めています。
これから先、何度走ることになることか。まずは導入で、初シャトルランです。

高2は、『やれでき』の形容詞例文生き直しに続いて、wh-の名詞節で「ワニの口」。
投げ込み教材として、「常時英心」で扱われていた、女子レスリングの吉田選手の記事を紹介。丁寧に語義を確かめることを説く。最後に、「百科事典」シリーズへの新入りとして、Q&A本を追加。

  • Highlights Book of Science Questions That Children Ask

編者は、Jack Meyers、Boyds Mills Press社で95年刊。対象年齢は (英語ネイティブの) 6歳から10歳の模様。「学級文庫」と呼んではいますが、学校から予算が出る訳ではなく、完全に私物なので、私が古書で買っています。今回は、Billおじさんと、Kathyおばさんから、Christinaへのクリスマスプレゼントだったことが表紙裏の手書き文字でわかります。その文字を微笑ましいと思ったり、どうして手放したのか想像してみたり。良い本と末永くお付き合いを。

放課後は体育館でエルゴ。
お手本を見せて、筋肉痛。

帰宅後はサッカー世界杯予選。
本田選手の、ただ速いだけはなく、『スカートつき』 (byカイ・シデン) が滑るように、すり抜けていきながらボールを触れる動きに驚いた。
内田選手のコンディションが心身共によく見えただけに、得点もあるか、と期待したのだが、今後にお預け。ケガだけはしませんように。

勝利を見届けて自宅に届いた書籍を整理。

  • 多田幸蔵訳注 『英和対訳 ふしぎの国のアリス』 (旺文社英文学習ライブラリー、1959年)
  • 宮内秀雄、佐藤健一 『高校生のユーモア英作文』 (学生社、1963年)

は優れた内容。『アリス』は、訳者が多田氏というだけではなく、原版の挿絵が使われていることも特筆。『ユーモア』の方は、昭和30年代に、この水準の教材があったのに、なぜ…、という思いは尽きない。
ライティングの分野では、次の本は初見。

  • 朝比賀昇 『美しい英文の書き方』 (大学書林、1967年)

書名は英語では、 “Write Better English” とあり、日本語で時折言われるような「美文」ではなく、「簡潔な文ほど力強くなる」ことを説くものである。

第一部 よい英文  英米の名文から採集した凡例を挙げ、翻訳のしかた、書くスピード、語数、推敲、修辞法等を説く。
第二部  文章 著者実際の体験から生まれた、文を短くする方法、文のひきしめ方、あいまいな文章の避け方等個々の文例に応じて指導。
第三部  まちがい  われわれが正しい英文を書くのに落とし穴になる単語の位置、類似語の誤用、スペルの誤り等文章作成上の盲点を示す。
第四部  英語の使い分け  日本人にとってもっとも難しい英語のfeelingの差違---formal Englishとinformal English、話しコトバと書きコトバ、同意語のニュアンスの違い等を教える。
第五部  規則集  日常英文を書く場合、手許において便覧できるように著者永年の経験から集めた細かな文法規則を網羅。

となっている。著者名は本当に本名なのか、と疑問は残るが、しばらく読み込もうと思う。

ELEC協議会の夏期研修会が告知された模様。
夏期研修会の当該ページは、開いた途端に音声が流れてくるので注意して下さい。私のように音声が気になる人は、こちらからpdfがダウンロード可能 (http://www.elec.or.jp/teacher/kensyukai.pdf) で、申し込みもweb上で出来るようになっています (https://www.elec.or.jp/teacher/teacher_form2.html) ので、よろしくおねがいします。
私の講座は、8月15日の午後の部です。
前回の2010年の講座では、誇張ではなく、書籍18kg分を会場まで持参しました。今年は空港からホテルまで運ぶのが大変なことを学習しましたので、郵送か宅配便を考えています。過去ログをお読みになって、現物が見たい、というものがありましたらリクエストをメールでお送り下さい。

本日のBGM: I mean you (Thelonious Monk)