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SLA研究は多くの新たな知見を我々にもたらしてくれたし、これからももたらしてくれると思うのですが、外国語学習自体は、そもそも「語学」とか、ESOLとかいう用語成立以前の太古からあるわけです。脳科学の進展のおかげで、脳の機能に関しても、科学的に解明され、我々が分かっている「事実」は増えたことは確かでしょう。けれども、我々の脳の機能自体が昨日今日で変わるものでない以上、外国語学習者にとって問題となることというのは本質的に昔も今もそうは変わらないと思っています。経験や勘に胡座を掻いていてはダメだと思いますが、臨床の知に誇りを持ちつつ、教室で地道に足掻こうと思います。

連休谷間の授業の最後のコマで3年生に伝えたのは、

私も一応、英語教育に関する様々な実践や研究をしてきました。けれども、授業であなたたちにやってもらっている課題は、科学的云々よりも、自分自身の英語学習者としての実感を優先させています。少なくとも、30年前、自分が高校生の時にやってみて挫折したようなことはさせていません。やりたかったけれど、物理的に出来なかった「辞書の横断」や「ホワイトボードの活用」は今試しています。市販の教材がなく、自分で工夫してやってきたことが、今では教材になっている場合は、その教材を採用しています。30年前のやり方をそのまま踏襲するのではなく、それがなぜどのように上手くいったのか、次の何に繋がるのか、ということを考えたうえで、今授業でやっているような「形」になって現れている訳です。

というような話しでした。
同世代や、自分より先輩の英語教師で、物凄い英語の達人を沢山見てきたし、一緒に仕事をさせてもらってきただけに、これまでの英語教育では「英語が使える」ようにならなかったなどと短絡的なことは軽々しく言えないと思っています。常時英心と同時に、"English as it is" というつもりで、今、ここで全力を尽くせればと。

ブログの検索ワードで辞書関連が増えてきたので、少し整理しておきます。

  • 私自身が英語を使う際に引く辞書
  • 教材研究で使う辞書
  • 「学級文庫」に置いている辞書

というような大まかなグループ分けで。
80年代初め、私の高校時代は、『新コンサイス英英』 (三省堂)、LDOCEの初版、『プログレッシブ英和』が出たばかりでしたが、その学習版のような位置づけの『新選英和』 (小学館) を使っていました。周りでは研究社の『新英中』か、旺文社の『英和中』を使っている人が多かったと記憶しています。辞書の学校指定、というのはありませんでした。自宅では、研究社の『英和大辞典』 (第4版) の類義語欄を引いては読んでいました。
大学に入ってからも、LDOCEは継続して使い、教官に勧められて『プログレッシブ英和』を買っていましたが、授業に持って行くのは、『コンサイス英英』が多かったように思います。大学の図書館に行けば、辞書はよりどりみどりだったので、それほど辞書を集めた記憶はありません。『リーダーズ英和』が出たのが、大学の3、4年生の頃だったでしょうか。
教職に就いてから、辞書の必要性を痛感しました。80年代終わりから90年代にかけては、World Book Dictionaryと『ロイヤル英和』 (旺文社、1990年) に、90年代にはCOBUILDとBBCのお世話になりました。
現在、自分で一番多く引く辞書は、

  • Macmillan English Dictionary for Advanced Learners

のアメリカ英語版の初版 (2002年) です。これはコンパクトなビニール装で日本だけの発売だったかも知れません。Amazonのレビューも書いています。
次に手に取る機会が多いのは、

  • 『岩波英和辞典』 (1958年新版)

です。編者は田中菊雄。古書で買い求めました。前オーナーは鳥羽博さんという千葉にお住まいだった方のようです。現代語がないとか、訳語にモレがあるとか欠点を上げればいろいろあると思いますが、辞書の備えるべき「分」というものを弁えた名作だと思います。
あとは、電子辞書 (今でもSIIの SR-E10000です) の用例検索で自分の頭に浮かんだ言葉づかいの裏を取る、という使い方でしょうか。

高校授業の教材研究となると、それだけでは到底足りませんから、いくつもの辞書にお世話になります。
語義のパラフレーズには、

  • World Book Dictionary
  • ISED (開拓社)

こちらに越してきてから入手した

  • 学習英語辞典 (令文社)
  • ショーター英英辞典 (旺文社)

を引いています。新語が収録されているか、とか語法解説が精密緻密か、ということよりもまず「意味」ですから。
最近よく使っているのが、

  • Essential Learner’s English Dictionary (Merriam-Webster)
  • COBUILD School Dictionary of American English (Collins)
  • Chambers Universal Learners’ Dictionary (Chambers)

です。
一時期、

  • New Oxford Dictionary of English (Oxford)

を使っていましたが、何分、大きくて重いので最近は書棚で寝ています。WBDの二分冊というのは、今さらながら良いものだと思います。
このうちの多くは「学級文庫」にも収録されています。辞書を複数用意するのは、

  • 触れば体温を感じられる用例。
  • 斬れば血が出るような用例。
  • 話している人の顔が見えるような用例。

を生き直すため。受験用の教材で、よく頻出表現を、二つも三つも一つの例文の中に押し込めた英文を載せているものがあるけれども、そんな不自然極まりない英文ではなく、英語ということばを掌に修めた人の眼鏡に適った用例を辞書から拾うことに意味を見いだしましょう、ということを繰り返し説いています。
類義語に関しては、過去ログ

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20090125
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120416

が詳しいかと。
慣用句・成句に関しては、東京時代は1993年版の

  • Oxford Dictionary of English Idioms
  • Oxford Dictionary of Phrasal Verbs

をまず確認というのが習慣で、
口語に関しては、大学1年から使っている、

  • 『アメリカ口語辞典』 (朝日出版社、1983年)

を引いていました。
最近では、

  • 『英和イディオム完全対訳辞典』 (朝日出版社)

を引く回数が多いと思います。
気になる時は、

  • 『英語慣用句小辞典』 (研究社)
  • 『英語イディオム事典 [身体句編]』 (大修館書店)
  • 『しぐさの英語表現辞典』 (研究社)

や、

  • 『新クラウン英語熟語辞典・増補新版』 (三省堂)
  • 『新クラウン基本英語熟語辞典・修訂版』 (三省堂)
  • 『英米故事伝説辞典・増補版』 (冨山房)

などに手を伸ばして調べたりします。
語源に関しては、いろいろレファレンスはありますが、

  • 『ハンディ語源英和辞典』 (有精堂)

で分からないものは、授業で深入りしないようにしています。後、自分で語源について勉強する際は、辞典や難しい本ではなく、

  • 小川芳男・前田健三 『英単語物語 その誕生と生い立ち』『語源を中心とした英単語の力の付け方』 (有精堂)

  • 太田垣正義 『英語の語源 I &II』 (創元社)

など、読み物系です。
現在の高2の学級文庫にある辞書類はこちらの写真をご覧下さい。

教室後ろのテーブルに、ターゲットとなる語、語句を調べて拡げて置き、例文をread& look upで覚えて、自分の席に戻り書き取るのが、「シャトル・ラン」と読んでいる作業です。私が当たりを付けて、後ろの棚から辞書を選び出して準備することが多いのですが、時々生徒に手当たり次第引かせたりもします。この写真の一番右上の白い表紙は『ワードパワー英英和』(Z会) です。英英の定義文も翻訳してある画期的な双解辞典ですね。レイアウトを見やすくして改訂してくれないでしょうか…。

語源の『田代本』から、中教出版の『英語基本語彙辞事典』や『政村本』などの基本語、最初フミの『類義語活用辞典』、さらには『クラウン受験英語辞典』まで後ろの棚に用意してあります。時々、ここから1年の教室や3年の教室へと借り出されたりもします。

本日は本業で、近い方の湖まで。
新人の乗艇も分漕とはいえ、いよいよフルスライド。

  • 腕の力を抜いて、前から大きくぶら下がる。
  • 「伊勢海老」のようにしなやかに身体を使って加速。

というのが今日のフォーカス。
午後モーションの前に、再度エルゴで動きを確認。

フィニッシュからオールを乗せて、ハンズが先、乗せたら乗せっぱなしで手を伸ばしたまま脚を畳んでいく。肩をリラックスさせ、オールの重さを感じて、キャッチ。

というところを反復してから、ドライブで加速。ボディを振って腹筋で巻き巻き。
私は2モーション、2Xのバウを担当。今日は水上も少しうねりが出て、早くも筋肉痛です。

県選抜チームは熊本遠征中。
メールや電話で様子を聞く限りでは激しい戦いが繰り広げられた模様。
夏に向けて我がチームも加速できるよう、深く脚を畳んでおきます。

本日のBGM: そばにあるすべて (gomes the hitman)