満腹で満足

土曜日課外終了。
今年の進学クラスは、1,2年ともに全科目を私が教えているので、二学年とも私が課外の担当。
高1は、その後、『エースクラウン』の学習頁の続き。補助器具の中でも大きめの、木製の三角柱タイプ

もちかた先生(R)グリップ 2個組

もちかた先生(R)グリップ 2個組


を日替わりで使わせているのだが、その書き味・使い勝手を尋ねたら、「まだ書いていません」というではありませんか。「じゃあ、昨日授業で扱った単語を思い出して書け」といったら、 “table” を書いていたので、

  • いろいろある中でも難しそうな語の綴りにチャレンジしてみたら?

とそそのかしてみたけれども、ペンは進まず。「どうした?」と訊くと、

  • 難しいのは思い出せない。

というダイレクトな反応。その通りですね、難しい語はお手本の視写レベルから始めないとできないわけです。というわけで、

  • communication

の縦書き練習を説明。音の固まりごとにお手本の下に書いていく訳だから、頭の中に音がないとダメ、と口で言うのは簡単。自信を持って書ける語や、まとまりは良いけれど、そうでないところでは間違えながら成長するもの。「間違えるにも『程』があるからね」と、

  • 発音と綴り字の原理原則から考えると、 “-cation” の前の “-ni-“ の “-i-” を名前読みしてもおかしくないのですよ。

ということを説明。それは正しい発達段階なのだから、と強調したのですが、納得はしていない様子。学級文庫の日本語書籍に、『現代用語の基礎知識・学習版』が見えたので、思いついた、

  • global

を板書。発音してもらうと、半分くらいは正しい音にならず。昨日扱った「長いものにはご用心」で、名前読みの母音

  • globe

を板書。「伸ばす音じゃないよ」、と斉唱で復唱。
で、続いて、

  • globalization

を『エースクラウン英和』と『現代用語の基礎知識・学習版』で確認。中学受験対策に熱心な小学校6年生でも知っている「グローバリゼーション」というカタカナ語では、英語の “i” を名前読みしていない訳だが、英語では、名前読みした発音も正しい発音として認められ用いられている、という事実を指摘し、communicationの発音に戻り、生徒それぞれの「程」の確認。
続いて、「筆記補助具」の配布。

  • その太い木の三角は書きにくいか?もうちょっと細い方がいい?

と前振りして、前の机に集合させる。三角柱形状で鉛筆を中に通すもの。

サンスター ペングリップ セクト 5C / 10セット

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エストラマー素材で、柔らかすぎないものを一人3つ。入学祝いにはちょっと遅いですが、連休中に沢山書くことになるでしょうから、活用して下さい。
カタカナ語の発音は、

  • cup vs. cop
  • bus vs. boss

のミニマルペアでの発音練習。基本を押さえたところで、同じ音を含む語をまとめましょう、という辞書引き課題。まずは cupとbusの仲間捜しを個人で、いくつか目星がついたら、集結してホワイトボードに板書。意味と音を確認しながら、仲間として「認定」か「却下」か、ホワイトボード上の単語を次々と捌いていく。

  • 例外に見える語は、基本語であることが多い。

という経験則を伝えて、フォニクスの原理原則を再確認。 “hutch” という語を調べて書いていた者もいたけれど、

  • この英語、今までに使ったことある?日本語でも馴染みのある言葉?

と問い、発音問題、綴り字問題を解くためだけの勉強ではなく、自分の守備範囲にある基本語の徹底なのだ、と認識してもらう。
誰かが間違えて、 “put” を書いていたので、

  • put vs. putt

を辞書で確認。英語の綴り字を初めて見た生徒が多いだろうが、日本語ではすっかりお馴染みの言葉である。
次の辞書引き活動は、当然copと bossの仲間探し。top, stopや、toss、lossなど、語頭の子音字を変えた語が見つかれば簡単だが、この活動での狙いはその次の段階

綴り字の o に引きずられて、copやbossと同じ母音を含む「仲間」だと思ってしまいがちな語を確認すること。

予想通り出てきたのは、come, some。これは「マジックe」の原理原則とは異なり、母音を名前読みしない語だということは分かっている証ではあるので、いい間違いには違いありませんが、「音」を掴まえ切れていない点では問題有り。他にも、doorとかdoubtとか、カタカナで表記しようとすると「ァ」の響きを含んでいる語の母音の棲み分けは難しいようです。北米系の音が今風の学習用教材では主流ですから、単純に「ァ」で置き換えてしまうと、今日取り上げた二つの区別は難しいのも頷けます。
大きな顎の開きとまん丸をイメージした唇の形を徹底して、発音練習。

書いてある通りに発音するのは実は簡単。間違えるにも「程」がある、その選択肢が少ないから。でも、聞いた音、聞こえた語の綴り字を正しく書くのはかなり大変。同じ音を文字で表す選択肢は思いの外多いから。

というまとめ。
最後は『ぜったい音読』の使用方法についてガイダンス。

  • 例文を自分で生き直すのです。

というこれからの授業で求められる姿勢を説いて、初の土曜日課外は終了。

高2は、パート3で扱った、

  • I’ve waited too long, son.

のパラフレーズの確認。

  • I can’t wait any longer [more].
  • I do mind the wait.
  • I don’t want to waste my time on those easy things shown bit by bit.

など、enough の語義、 “more … than is acceptable” を実感できるような言葉づかいで。
そこから、enoughを用いた表現の補足。

  • I’ve had enough (of something).

を辞書で確認。「ごちそうさまでした」で通じる飲食物など本来の意味と、「もう結構です」がネガティブな反応として使われる日本語と同様に比喩的な発展と。
“That’s enough.” などの関連表現を押さえてから、『グラセン和英』で「たくさん」を引いて

  • (be) fed up with

へ移行。fedの原形を問い、”feed” を得たので、語義の確認。
「口を開けて待つ雛に親鳥が餌を運ぶ絵」を板書し、雛の口から、胃袋までの断面図と親鳥のくわえるミミズを色チョークでハイライト。

  • いくら親心とはいえ、ミミズばっかりせっせと運んでは食べさせると?

と問うて、意味を実感。
高校用の教材は、とかく入試の過去問、つまり出題の履歴を元に演習問題を課す傾向にあるので、

  • be fed up with = be sick (and tired) of = be weary of = be bored with

などと選択完成での書き換えを求められることが多いのだが、それぞれの持ち味を感じてもらうことの方がよほど大事。その表現だけを見ていてもよく分からないもの。いわゆる「家電」に電話をすることはめっきり減ったと思うけど、親や兄弟姉妹が出たのに気づかず話し続けて、恥を掻くことが昔はよくありました。それも、話し続けているから気が付くこと。その表現が生じる環境、文脈をきちんと辿ることで、「似ているけど、交友関係まで拡げて見てみると確かに」と違いがはっきりしたり、「やっぱり、DNAは受け継がれているんだな」といった「その家系ならではの文化」が実感できたり。
私が大好きな『刑事ジョン・ブック』のハリソン・フォードのセリフを引用し、書き換え問題の虜になる愚を戒めておきました。
続いてパート4。
定義から該当語を探す課題では、proudの語義で難儀した模様。「プライド」という日本語でも「鼻につく」ネガティブな印象はあるのだが、英語のproudの持つ基本義は「プラス評価、肯定による快感・満足感」なので、生徒に相談タイムを与えている間に「学級文庫」の英英辞典から、適切な定義を載せているものを見繕って教室後ろのテーブルに何冊か拡げておき、横断読み比べの時間。
『ワードパワー英英和』 (Z会) の定義文の和訳を一人に音読させ、

  • 「訳語」にしたとたんに少しずつずれていくね。

と確認し、再度、読み比べ。proudと感じる対象は、「自分自身、または自分に近しい、密接な関係のある人や、その人に関わるもの、こと」ということで、先ほど「親兄弟」や「交友関係」の話しで enoughの類義表現を説明した話しに戻って解説。

  • あなたたちは、私の授業はいつも、次に何が来るのかよく分からなかったり、行き当たりばったりで、でたとこ勝負みたい、とか五里霧中、とか思っているんでしょう。

と振ったら、物凄く大きく頷いていました。

  • まあ、「五里霧中」っていうのは正しいかもしれないけれど、ちゃんと伏線は張られていて、長い目で見れば繋がっているように授業は組み立てられているんですよ。そのために朝3時半に起きているんですから。

と補足しておきました。だんだん分かってきた模様。

fullの定義 “holding or containing as much as or as many as possible” をよく読むと、さっき扱ったenoughとの比較でさらに「実感」が増すことでしょう。ここで、二番目の定義として “having no empty space” という言葉づかいを示していますが、これこそ、普段の授業で私が強調している「ひっくり返して元に戻す」発想と表現ですね。
残り時間を見て、『前置詞のハンドブック』の活用のための課題へ。

  • drop by のdrop の語義 “to make an unexpected, unannounced social call on someone” (The Two-Word Verbより) と、「位置・経由・媒介」のby。
  • come overの 「物理的・心理的な『隔たり』を越える」 over。日本語の「遙々」「わざわざ」。
  • after all の「場面と文脈」3種類。とりわけ、「だって…」の適切な使用例。

少し時間を取ったのは、「落ちる」という訳語では推測できない dropの使われ方。
動詞dropそのものの定義は、『ハンドブック』で解説した “Two-Word Verb” のものが「完璧」と思えるほどの言葉づかい。ただ、句動詞として見ると、不変化詞の「それぞれの持ち味」がやはり関わってくるので、使い分けは難しい。
Cambridge International Dictionary of Phrasal Verbs (1997年の旧版) だと、

  • to make a short visit to someone in their home, usually without arranging it before

で、drop byもdrop inもdrop overも全部同じ定義になっているので、ここは「悩み所・困り所」なのだから、まずは “drop” を実感することを優先しましょう。用例を見る場合は前後も含めて確認すること。Cambridgeでは、そうは言っても、適切な用例を適切に配置しています。

  • He said he might drop by later this evening.
  • I might drop over after work. Will you be in?
  • I dropped in on George (= I went to George’s house) on my way home.
  • Could you drop in at Sarah’s and pick up my books for me?

ここでの、 drop in のパラフレーズと用例の示し方は上手いですね。アルファベット順だと、drop in atを先に出しそうなものですが先に<on + 人>を示し、「…というのは、その人の家を訪ねる」ということですよ、と言い換えておいて、その次に、<at +その人の家>の例を示せば、説明を省けますから。
Chambers Universal Learners’ Dictionaryも一冊良いコンディションのものが手に入ったので、「学級文庫」入り。

  • I’ll drop by on my way home if I’ve time.
  • Do drop in if you happen to be passing!

byの持ち味に関しては、他の表現との比較、つまりdrop以外の動詞との使われ方を見てみるといいでしょう。Cambridgeでは、come by に対して、 “mainly American & Australian” と注記をつけ “to visit a person or place for a short time, often when you are going somewhere else” と定義を与えています。用例は、

  • You should come by some time after work---it would be good to have a chance to talk.
  • I’ll come by the office one day this week and give you my report.

同じ定義が stop byにも与えられていますが、こちらには注記はなし。

  • I thought I might stop by on my way home as I haven’t seen you for ages.
  • I’ve got to stop by the bank.


一語一語日本語に訳しているから英語が出来ないのだ、と批判をしたり文句を言ったりしていないで、「英語で置き換える」とか「英語で理解する」ということが、いったいどのようなプロセスを経て可能なのか、地道な努力を積み重ねていくまでです。

午後は本業の予定だったのだが、大学チームの新歓イベントがあるとのことで自主練。縄跳び2000回くらいはやっておいてね、と指示してありましたがどうでしょうかね?日曜日にはリギングと乗艇の予定。私と2Xです。
帰りがけにScotland Martに「顔を出して」から、帰宅。
乗艇に備えて、ストレッチと、コアのインナーマッスルのエクササイズをやってからちょっと仮眠。
夕飯は、手巻き寿司。
早めの就寝。
本日のBGM: Got to get enough (of your sweet love stuff) / Bo Gumbos