still working on the sequel

仕込みの段階から仕切り直しの商業科2年だったが、急遽時間割の変更で、その時限に移ったら移ったで「内科検診のため10分早く終われ」とのお触れが出て、あえなく短縮授業。<仕込みのB>でチャンク、連語での日→英をやってから、記号付けまで。

  • 「四角化で視覚化」が出来たということは、名詞の数のチェックが済んだということ。
  • 「とじカッコ」が付けられたということは、時制の確認が済んだということ。
  • 「とじカッコ」が付いたということは、主語となる名詞の「四角」との数合わせが出来ているということ。
  • 助動詞の番付表の形あわせが出来たということは、メインのとじカッコの確認が済んだということ。
  • 前置詞にほにょほにょ (= 波線) が付いたということは、次に来る「四角」、つまり「名詞」の働きをする固まりの確認が済んだということ。
  • 「四角」の中でも、「ワニの口」が付けられたということは、「人」「もの」ではなく、「ことがら」の確認が済んだということ。

だいたい、この辺りが1年次の復習になりますか。そして、これからの1年で、自力で出来るようにすることでもあります。記号付けにはさらに、

  • 接続詞は○で囲む。

というのもありますが、これは、等位接続詞と従属接続詞でも扱いが違うし、名詞節、副詞節で扱いが違うので、その都度まとめながら「頭の働かせ方」の書き換えをしていきます。
進学クラス高1もオリエンテーションが終わり、いよいよ最初の授業。まあ、ガイダンスですね。
使用教材の確認と、授業の狙い、自分の学び、そして「成績」と「英語力」について。
今年も恒例の「六掛け禁止令」をやってます。中学段階の理解定着が六割で、自分では「まあ、平均点に近いしだいたい大丈夫」と思って進んでいると、0.6 x 0.6 = 0.36で気が付くと、その理解定着は30%台に落ち込んでしまうということ。中1では分かっていたつもりでも、中2,中3と英語難民へ近づいていくことに…。
ということで、本校へと入学してきた彼らには「先取り不要」、「中学レベルの基礎基本の徹底」ということを繰り返し強調しています。

  • 高校英語は中学英語の貯金ではやっていけないのだ!

というような脅しは全くしていません。まず、中学英語で自分が充ち満ちた状態にあることを目指しています。焦って先取りしても、基礎が抜け落ちていて、六掛けどころか、四掛けで高校レベルの英語の言語材料や技能と取り組んでしまうと、気が付けば、0.4 x 0.4 = 0.16 で理解定着は10%台へ下降低迷することになりかねませんから。
春期課題の『短文で覚える英単語』から出題のテスト、50題を返却し終了。最後の念押しは、

  • テストが返却されると、すぐに答えを赤で書き込む人がいるけど、それは何のため?あなたは、試験の時に、そこにわざわざ、敢えて、別の答えを書いていたわけです。なぜ、別な目的地へと自分は進んだのか?その、「あなたの頭の中の間違った地図を書き直すこと」が、誤答に対してあなたがやるべきこと。だって、答えは『短単』に全部書いてあるんだぜ!? 知らなかったものは、むしろ簡単。これから理解して覚えればいい。でも、分かったつもり、出来たつもりで間違えたところの方が大変。壊したり、捨てたりするのは勇気がいりますから。

高2は、Part 1 のパラフレーズ第二弾のディクテーション。イカソーメンの出来る人数に合わせて、予め見せておく英文と書き取る英文を調整。出だしと真ん中付近の英文は既に印刷されたものを配布して残りの英文を書き取ります。
まずは、全文を聞いてから、ペンを取って書き出す作業を2ラウンド。出来不出来の差がはっきり出ます。次に、ペンを持ちながら1回。「持ちながら聞ける」とは言っても、聞いて書いている間にも私の範読はどんどん進みますから、メモ程度で聞いた痕跡を残すのが精一杯でしょう。音の痕跡、意味の痕跡をどう残すか、のトレーニングです。
次に、一人一文を配布し、2分で暗唱。教科書本文そのままではないけれども、教科書の内容が別の表現で言い換えられている英文を覚える訳です。で、イカソーメンと同じく、口頭で順整序を経て種明かし。
続いてホワイトボードに貼られた全文を見て、シャトルラン。ボードの前で1文ずつ覚えて自分の席に戻って、最初の「悲しくなるくらい何も書けなかった」人も多くいるはずのディクテーションを加筆修正。ここでは消しゴムを使わず、抹消線で消して余白に正しく書き直し。間違っていたところ、抜けていたところ、余計なもの、が自覚できることが大切です。「地図の書き直し」の作業のスタートです。
シャトルランで走っている間に短期記憶からこぼれ落ちるところがありますから、「回転寿司」よろしく、席を移動して、次々と自分が担当した「一文」を赤ペンで修正していきます。少人数クラスですから、この作業が上手くいくところまでを見越して、最初に一人に一文ずつ暗唱用の「イカの刺身」を配布しています。
表面は、自分の加筆修正と、担当者の赤ペンでグチャグチャになっている場合が多いので、

  • いつも両面印刷の私のワークシートですが、今回裏面はなぜ白紙?

と問うて、「Flip & Write」で仕上げです。直すところがほとんどなく、早く終わってしまう生徒は、今回書き取った英文と、前回、私がパラフレーズした少しレベルの高い英文と、教科書の英文と、3バージョンの読み比べです。やっていることは、学級文庫の同じ物語を難易度の異なる複数バージョンで読む多読の活動と同じ類の「言葉を読む」活動。前回のエントリーで引いた、自分の問い、

それでは、そのパラフレーズやサマリーで生徒自身が用いる英語はいつどのように身につけ(てい)るとお考えなのか?そして、生徒のパラフレーズが不適切、 不十分だった場合に、その修正・訂正をも英語で行う効率の悪さをどのように補うのか?そもそも、他の生徒が行ったパラフレーズの意味が理解できなかった生徒に、どのように意味を理解させるのか?

に対する答えでもあります。

本日、職場に届いた買い直し教材を紹介しておきます。私と同世代の人には懐かしいものかも知れません。

  • 安田一郎 『NHK続基礎英語 英語の文型と文法』 (日本放送出版協会、1970年)

カセットも揃って、950円でした。1970年初版・第1刷ではなく、平成10年・第54刷の書籍版テキストと同時購入したと思しきテープの方は、平成7年・第34刷。恐る恐るカセット再生。懐かしの声が響きました。テープ教材で17年経っていますので、現在のCD教材のクリアーな音とは比べられませんが、-sh-や-th-、-f-の音も充分なクオリティで再生できて安堵。
カセット版のテキストの方から安田一郎先生の言葉を引いておきます。 (pp. 5 - 6)

各課の<本文>については、次の手順で勉強します。
(1) まず、<語句>と<意味>のらんを参考にしながら、よく下調べをしてからテープを聞く作業に移ります。
(2) 聞く作業は、活字を見ないでも耳から入って来る英語がそのまま「ことば」としての意味内容を伝えるようになるまで何回もくり返して聞きます。耳から入ってくる英語が、いったん日本語にかわってから意味内容が頭に浮かぶような段階ではまだ「聞く作業」は完成していません。
(3) 次に、「言う作業」に移りますが、このカセット・テープの<本文>には復唱練習をするためのスペースを省いてあります。 (中略)
(4) 「言う作業」は、初めone sentenceごとに行いますが、model reading (範読) のスピードはもちろん「強・弱」と「高・低」も正確にまねすることがたいせつです。一つ一つの文が正確にまねできるようになったら、複数個の文をつづけて聞いてから「停止ボタン」を押して、それを正確に復唱する練習に進みます。とくにAとBの対話形式になっている課では、AあるいはBの発話全体を対象として復唱練習することがたいせつです。一度に複数個の文を聞き、それを耳に残しておいて、あとで全体を正確に再現できる技能は語学の勉強にとって最もたいせつなものです。このような「聞き取りの幅」をイヤー・スパン (ear span) といいますが、イヤー・スパンがのびればのびるほど、英語を言う能力も増大するのです。

全部で60課あるテキストですが、その中には対話だけではなく、モノローグもあります。Lesson 40 (p. 47) から73語の英文を抜粋。

The other day when I came home from school, I happened to see a traffic accident. A car came down the street, and it suddenly made a U-turn in the middle of the street. The driver didn’t notice another car coming up behind. I saw the two cars crash into each other. In a few minutes I saw a crowd of people gather at the scene. But fortunately both drivers were all right.

確かに、教材用に「作られた」英文です。しかし、良くできているのです。
「パタン・プラクティス」とか「オーディオ-リンガル・メソド」、「プログラム学習」などの、過去の英語教育理論を否定して「コミュニケーション英語」を標榜した高校英語の教室に今、このレベルの英語でこのレベルの音声がこだましているか、自問自答です。
桐英会のブログで土屋澄男先生が、「英語学習の自己評価」を書かれています。
その第13回から、連続で「リスニング」の問題が取り上げられています。
「大学入試センター試験」の問題批判に始まり、具体的な改善の提案も含む、頷くことの多い内容です。私が感銘を受けたのは特に次の記事でしたが、是非この前後も含めて、通して読むことをお薦めします。

http://kiyofan.com/blog2/?p=919
http://kiyofan.com/blog2/?p=925,
http://kiyofan.com/blog2/?p=936,

もう一つ、書籍の紹介をして本日は終了です。
久しく入手困難な状態にあった良書が再び市場に戻ってきました。

  • 政村秀實 『図解 英語基本語義辞典』 (国際語学社、2012年)

1989年に桐原書店から出たものが旧版にあたります。今回の新版の「はしがき」から抜粋、

旧版執筆時と現在を比較してみると、時代の進展により内容のそぐわぬ場合もある。そのため用例文や説明を綿密に検討・点検をし、必要と思われる修正・加筆を随所で行った。ただし、図絵やその解説文などをあらためる必要はなく、また当初の気概・雰囲気を生かすために大きな改稿は行わなかった。いずれにせよ、この辞典で訴えたいことの根本は少しも変わるところはない。

同著者で、大修館書店の『英語語義イメージ辞典』、小学館の『イメージ活用英和辞典』が、桐原からの旧版の後に相次いで出た訳ですが、この2冊では、肝心要の「イメージ」を表す「図絵」がほとんどありませんでした。ということで、その「図絵」を補うべく、「学級文庫」に収録する旧版をヤフオクや古書で買ってきた私ですが、その私も、心から喜べる新版です。著者にあらためて御礼申し上げます。

本日の晩酌: 久礼・純米吟醸・無濾過生原酒・槽口直詰・吟の夢50%精米 (高知県)
本日のBGM: 君が愛し続けるならば (鈴木博文)