聞くは一時の恥、聞かぬは…

開店休業だった本業も、新入生の見学者が4名。
クラブ紹介では、スカルオールを持ってただ話しをしただけだったのですが、何が興味を引いたんでしょうかね?まだ船にも乗っていないのに。明日は、体育館でエルゴです。この後どうなりますことやら。
かつて、G大端艇部のコーチをしていたころ、チームのwebsiteと連携して、受験生支援のための英語教室を連載していたことがあります。IT大臣が郷里へ帰った後は、若手OBのK君がweb関連の処理を担当してくれていて、それなりに回数を重ねた「英語教室」となり、新たな年度でのネタなどを考えている内に、私の山口行きが決まって連載が終了。その後K君の急逝に伴い、アーカイブのメンテナンスが出来なくなり、現在はリンク切れのままになっています。
今年度の「オーラルコミュニケーション」の準備をしている中で、この原稿が出てきたので、再録しようと思います。(http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20050219 の元原稿となります)

私自身、通信講座で『東大特講リスニング』 (ベネッセコーポレーション) を執筆しているので、聞き取りのトレーニング方法とそのコーチングに関して自信がない訳ではありませんが、前回の記事でも書いたように、

  • 絶対にダメだと言われていることも、やりようによってはうまく行ったりすることもあるのが人の世です。

ということで、「話半分」とか「半信半疑」とか「眉唾」とか、そういう意識はどこかに残したまま、以下、お読みになることをお薦めします。

第4回「聞き取りのこつ」の話
第3回の「連結・連動」でお話しした、コロケーションは意識していますか? 前回課題の答えです。
非常勤講師の給料はとても安い。
Wages of part-time teachers are very [grievously] low.
同じ「やすい」でも、cheap; inexpensive は「品物」などに用いる形容詞。「給料」「価格」などの名詞の場合には、low を用います。
今回は、いよいよ技能編です。多くの人が苦手と感じている「聞き取り」「リスニング」に関して、いくつか練習方法の見直しを考えたいと思います。
英語の聞き取りが苦手な場合に、

  • 音そのものが聞き取れない。
  • 聞き取れた音が表す意味がわからない。
  • 新たに入ってくる音により、聞き取れた音の理解度が低下する。
  • その都度理解しているつもりでも、はじめになんと言っていたのか忘れてしまう。
  • 最終的に何を言いたいのか、主題がわからない。

など、いくつかの段階があると思います。
大学入試でリスニングの出題される外語大などを目指す場合に、1 から順番に力をつけて、5 まで段階を踏んで練習しこうとすると、3 がクリアーできたかな? というあたりで、センター試験、などということにもなりかねません。最初っから全部やっちゃいましょう! ロウイングで、船に乗る前から「脚はこう、ボディーはこう、腕はこう……」、「リカバリーの時はこうやって」などと、いろんな知識を頭に入れていても、いざ漕ぐとなると体は縮こまり、自然な力が出ないものです。シングルスカルで、まずはどーんと漕いでみる。沈んだらそのときはコーチが助けてくれます。ミスを怖がりおっかなびっくり漕いでいるといつまでも上達しませんよね! 英語の聞き取りでも、常に、上述した 1 から 5 までを踏まえた練習を準備することが、結局は近道です。
準備するものは次の通りです。

  • 自分が前の年までに使っていた、または、弟、妹が使っている英語の教科書
  • その教科書付属の音声テープ、CD
  • B4くらいのまっさらな紙、または大判のノート
  • 黒ペンと、色ペン
  • 鉛筆かシャーペン

高校 3 年生の人は、中学3年や高校1年の教科書あたりから始めるのがいいでしょう。
1. まず教科書を閉じたまま、ペンを置いたまま、音声のみを聞く
英語の聞き取りに自信のない人は、Lesson 1 / Unit 1 などはじめのところからでかまいません。会話文でも論説文でも結構です。中学校の教科書だと、1〜3 段落で、高校 1 年の教科書だと 2 段落から 4 段落くらいでセクションの区切りがあり、いくつかのセクションで一つの課を構成していることが多いと思います。できれば、その一つのセクションを通してCDをかけてください。そのセクションの終わりまできたら一時停止です。(ナレーターが次のセクションのはじめには「セクション スリー!」とか必ず言うはずです。)
2. 何を言っていたか、文章や対話のテーマ・主題を「英語で」書き出す。
英語で書くのがポイントです。はじめは、悲しくなるくらい何も書けないかもしれません。でもこの部分をクリアーしないといつまでも主題をわしづかみにする力がつきません。ですから、教材はやさしいものから始めてください。
3. もう一度ペンを置いて音声のみ聞き、2 の繰り返し。
「これが主題だ!」と自信が持てなくても、「この語句がキーワードっぽいぞ」、というものをメモしましょう。できるだけスペースをとって、鉛筆ではなく、黒ペンで書いてください。(このときに鉛筆や消しゴムを使ってはだめです。黒ペンで書くことであなたならではの情報処理のクセがログとして残ってくれるのですから!)
4. 自分が書き出したテーマ・主題を頼りに、ペンを置いたまま、どのような話の流れなのか、聞き取りを繰り返します。
聞きながら書いてはダメです。聞き終わってから、大まかな流れをメモします。できるだけ、英語でメモしてください。この繰り返しの作業の中で、テーマの修正がある場合には、線で消して書き直して下さい。(修正液やテープなどは絶対に使わないこと。)
5. 少し疲れたら、自分がメモした大まかな流れを眺めてみましょう。
以前に学んだ教科書であれば、ほぼ概要は思い出したはずです。でも、細部を英語でなんと言っていたか? 中間テスト、期末テストの時は覚えていても、2年も経つと殆どの人が忘れています。
6. CDならトラック指定でリピートにして、書き取りをします。
このときも、途中で止めません。かけっぱなしにして、それを黒ペンで書いていきます。また、悲しくなるくらいついて行けないでしょう。読むスピードより書くスピードは遅いので当然です。ですからリピートにしておくのです。聞き取れない部分は、スペースをふんだんにとって書きましょう。何回か聞いて、音は聞き取れたが、なんと言っているのか英語がわからないところは、カタカナで書いておきます。疲れたら休憩です。
7. 今度は、1文ずつ音声をかけていきます。
(この 1文、とわかること自体、かなりの聞き取りの力なのですよ)。 ここでもペンは置いて、ボタンを押して音声をかけ、止めてからペンを持って書き取って下さい。「いちいちめんどくさい!」といわずに、この手順を守ることが大切です。セクションの最後まで行ったら、自分の書き取った英文(?) の全体を黙読して下さい。主題・テーマに照らしあわせて、足りない情報は何か? 英文として不正確な部分は? など、いろいろなものが見えてくるはずです。
8. さあ、黒ペンを取って聞きながら書きましょう!
修正・訂正は線で消して上下の余白に書いて下さい。カタカナで書いたところを英語になおしたところも同じです。もうこれ以上は書き取れない! というところまでやったら、初めて教科書を開いて下さい。人間の心理として、また私が教えてきた生徒の殆どが、この段階で赤ペン訂正をしたがりますが、まだ我慢して下さい。
9. まず、音声をかけながら、教科書を目で追います。
内容確認です。次に、音声にあわせて(ほぼ同時に読むつもりで)音読します。スラスラ言えないところは書き取れていないことが多いものです。この作業を踏まえた上で、自分の書き取りの訂正・修正に入ります。
10. 殆どが正しく書けている人は、教科書の英文を見て、一文ずつ自分で音読してから、書き取った英語を赤ペンで直して下さい。 足りない部分も赤ペンで書き足します。
11. かなり間違えている人は、教科書を見ながら、1文ずつ音声をかけて、そのあとで自分で音読してから、同様に訂正・補足して下さい。
12. 訂正・補足が全部終わったら、どんな部分が聞き取れていなかったか確認しましょう。
その部分を意識しながら全体の音読を繰り返して下さい。
13. 「準備するもの」のなかで、まだ使っていないものがありますね。
鉛筆・シャーペンです。まっさらな紙を使った人は、浦、ではなく裏に、ノートを使っている人は新たなページに清書します。このときも、音読して、裏返して、清書、という手順でやると時間はかかりますが英語は残ります。
さあ、ものすごく手間暇かかる練習でしたが、どうでしょうか?
だいたい授業でこれをやると、1時間の授業で処理できるのは 300 から 400語くらいでしょうか? 一つ一つの作業をテキパキと、切り替えを速く、とにかくどんどん進めていくことが大切です。ですから、いきなり入試問題の過去問でやるのではなく、中3、高1くらいの教材から始めて下さい。教科書を全部やろうと思わず、高校の教科書であれば 1冊で 10から 12課収録されていますから、そのうち前半、中半、後半と 3分の1 くらいの課をみつくろって、1週間に 1課 (中3レベル) で、3週間で 2課 (高1レベル) くらいのペースでやってみて下さい。2ヶ月くらいで、自分のクセが見えてきて、だんだんとこつがつかめてきます。そこから、入試レベルに挑戦してみて下さい。
まず、シンプルに、がーっとスピードに乗せること。スピード感覚を常に持って、細かなところのフィーリングを養うこと。まさに、ロウイングに共通する要素ですね!

私の本業のrowingに関わる記述、描写も出てきます。この連載執筆がアテネ五輪後ということもあり、私が最も尊敬する選手の名前を捩って笑いを取ろうとしたために、関係者にご迷惑をおかけしているかも知れません。元原稿に手を入れず再録しておりますので、この場を借りてお詫び致します。
「聞き取り」に関しては、過去ログの、

も合わせてお読み頂けると、私のアプローチが少し分かってもらえるかも知れませんので、ご参考までに。

本日のBGM: Lonesome Trip (HARCO + カジヒデキ + 河野丈洋)