Pumpkin & Cinderella

新高2の春期課外は、全課題の提示・指示が終了。
あと10日ほどをかけて、これまでの1年間の取り組みで何が身についていて、これからの一年間の取り組みで何を身につけるべきか、「見えてくる」ことを期待します。
課外講座そのものは終わりましたが、新高2では「リーディング」のコマも担当するので、新年度の準備。これまでの自分の実践を振り返り、語彙・構文・ジャンルでの素材の難易度、発達段階と指導手順、生徒の誤読しやすい躓くポイントなどを確認。
課外の最終日に生徒に伝えたこと。

言葉が成熟して読んだ言葉が自分のモノになるには時間がかかる。初めのうちは、自分の中で言葉そのものの処理が追いつかないにもかかわらず、自分は言葉に乗っかっていかなければならない。そうしないと処理のサイクルに言葉を回せないから。でも、自分で乗り続けるには、また乗り続けるための力が必要なのに、その力がまだ足りない。だからこそ「物語」。「語り」の力で、読み手を引っ張っていくのです。だから、最初から「定義」とか「論理」を求めても上手くいかないもの。英語の「読み」でまずやらなければならないのは、「物語」に乗ることです。そして、「内容・意味」を読んで、楽しんで、安心したら、ちゃんと「言葉」を読むこと。

この1年間教えてきた生徒には、「日本語の助けを借りてもいい、浮力を借りてでも、自分が楽に呼吸できる水域でのmileageを積み重ねること。」とよく言っています。「多くを読む」という意味では確かに「多読」ですが、流行の「百万語多読」とのアプローチとも違うし、新指導要領が求める「英語は英語で」ともかなり違います。生徒の方では、「最後は英語で」くらいの理解で取り組んでいると思いますが、私としては「結局のところ英語は英語なんだから」という思いでやっています。「良い英語で良い教材」を使い続けるだけです。
かつての教え子や同僚は覚えているかも知れませんが、20代の頃、高校英語とはいえ、定期試験には頑なとも言えるほど一切日本語訳を求めていませんでした。30代で少し考え方が変わり、今では、柔軟に日本語訳も求めています。
私が90年代後半に担当していた「英文速読」という講座でやっていたのは、

読むのではなく、設問に答える聞き取りから始まり、部分の記述の理解から統一した主題を引き出す中で、必要な情報を書き取る作業に進み、スクリプトを全て確認して、音読からFlip & Writeまで行い、日本語の対訳とも照らし合わせた後で、当初に問われていた設問を再検討し、英語で答えられるかを問い直す。

というものでした。当時の生徒のワークシートの写しがこちら。

英文速読1.jpg 直
英文速読2.jpg 直
英文速読3.jpg 直

大まかな内容理解だけであれば「英語は英語で」のアプローチでもやりくりできるでしょうが、細かな論理展開や主題を突き詰めて争点を浮かび上がらせたり、自分のことに照らし合わせて内容を深く考えたりという時には、「パラフレーズ」にせよ「サマリー」にせよ、自分の中から引き出せる英語のレベルでしか自分の読みが成立しない訳です。過去ログでも貼り付けた「マサチューセッツ州の教員の会」で作られた「読解と発問」の資料 (http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120317) を見てもらえばわかると思いますが、このような質問にスラスラと英語で答えられるなら、このような英文を「内容理解を問う素材文」として読む必要はないレベルに既にいる訳です。この問いに答えられるだけの英語力が身につくには、それ以前にどのような英語の消化吸収が求められるのか、指導要領の策定に関わった人たちは現場の教員に説明しておく必要があるように思います。その部分を曖昧にして、「最新」の理論をいくら現場に導入しても、高校で「上位」といわれることの多い「進学校」の英語教師達の心には響かない可能性が高いし、「底辺」といわれることの多い、大学入試の形式や内容には授業が影響を受けることのない高校の生徒の役には立たないと思われるのではないでしょうか。
過去ログでは随分前になりますが、
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20080823
に、「読み」に関連した過去ログのリストを作ってありますので、是非お読み下さい。

さて、
フランスではフィギュアスケートの世界選手権。
女子シングルのショートプログラムを地上波で見る。
ロシアの江利チエミと私が呼んでいるレオノワが首位発進だったのは意外といっては失礼か。モロゾフ・マジックということにしておきましょう。
浅田真央選手は、現地入り後のTV局のインタビュー映像でも身体が引いていて言葉が輪郭線に充ち満ちておらず、6分間練習の時から表情も固かったのが気になった。自分の演技に入る前も、フェンスからいったん離れかけて、そこからもう一度佐藤コーチとのやりとりがあり、心配していたのだが、オープニングの3+は高さも不十分で失敗。その後のスケート自体もあまり「圧せて」いなかったように感じた。3+は成功すれば、8.5点。3T+3Tの8.2は確かに上回るのだけれど、GOEの加点を考えると、失敗した時のリスクはとてつもなく大きい。このSPでは、ダウングレードの判定で基礎点は3.3に下がり、GOEはマイナス1.5なので、結局1.8点しかもらえていないのだ。さらに転倒での減点が1。これだけ採点で引かれて4位にいられることが凄いことだと思う。
今シーズン飛ぶ鳥を落とす勢いの米国のワグナー選手もスピードが今ひとつ、癒し系シズニー選手はミスから立ち直れず演技の途中で自分が泣き顔になってしまっていた。鈴木明子選手はオープニングの3T+3Tは良い出来映えだったのだが、ルッツの入りでエッジを気にしたのか、溜めすぎで矯められずに、ロングエッジでしかも2回転。ほぼ唯一の残念なところだった。世界のトップレベルの選手でも実力を出すのが難しいことが充分伝わってきた。対照的に、良い演技だったのはロシアのマカロワ選手と日本の村上加菜子選手。マカロワは、シーズン序盤は全く滑れていなかったが、今大会は仕上がりも良く、美しい演技を見せてくれた。村上選手は今季のプログラムでもかなり滑れるようになってきて、スピード、キレは充分。射程圏内で2位につけた。課題はフリップかな?GOEと 5 componentsで得点操作がいかようにもなるので、このくらいの得点差では勝利の行方は全く分からない。レオノワのフリップにGOEで2をつけたジャッジと-1をつけたジャッジがいるかと思えば、村上のフリップも2をつけたジャッジと-1をつけたジャッジがいる。採点の「仕分け」に外野が文句を言っても仕方がない。ただ、グルジアの舌を噛みそうな姓を持つエレーナ選手のオープニングが3Lz+3Tで、GOEもついて、11.0というのは注目しておくべきだろう。多くの女子選手がまだ3T+3Tで足踏みしているところ、バンクーバー五輪のキム・ヨナ選手ばりのジャンプである。そう、彼女のコーチはあのブライアン・オーサーなのであった。
さあ、今日は男子のSP。得点のことを考えると馬鹿らしくなるので、順位だけがつく競技なのだと思い込んで、それぞれの選手の素晴らしい演技を楽しもうではないですか!
本日のBGM: Make Believe (James Iha)