fine tuning

今日は3コマ、2限・進学クラス,3限・商業科,7限・進学クラスという三段跳びです。切り替えが大変。
進学クラスの方は、やり直し課題の精度を高めるために、表現を比較する、という時の「目の付け所」を解説するハンドアウトを作成・配布。英語表現の実例は、これまでに読んできた副読本の中からそのまま抜粋したり、その物語の中で特に記憶に残っているであろう場面をイメージして私が書いたりしていますが、当然、解説は日本語です。
商業科は、前時に前半部分の内容理解、語順・意味順での構造確認、音読が済んだことを踏まえて、日→英の復元から。週3コマしかない授業だったら、月・水・金で入っていてくれればどれだけ楽かと思うこともままありますが、連続しているなら連続しているで、そこで充分に加速させればいいことです。

  • So, they have a note which has its picture on it.

では、指示語の指す具体的な内容を、日本語訳ではなく英語で確認する問いを発します。ここは意外に難しいのですよ。 “they”の指す、具体的な複数形の名詞はその前に書かれていませんから、「意味」を考えないとダメ。関係詞の処理でまごまごしていると、”its picture on it”のitがよく分からなくなる。その前に書かれている、”a picture of the kiwi, the national bird” を確認し、お手本として、まずは、”its picture” から。

  • a picture of the Sphinx

という「解凍」が自分でできたら、「崖の上のポニョ」。

  • 「ポニョの上のポニョ」とか「崖の上の崖」とか「坂の上の坂」じゃ変でしょ?

と「四角化ドリル」での<名詞+前置詞+名詞>のシリーズを思い起こさせて、最後の ””it” が決してpictureではないことを実感してもらう。それより前にある「単数形の名詞」を探す時に、四角化は便利だな、と一人でも気づけばそれは豊かな収穫になります。他人のを写して誤魔化すのではなく、自分の頭で処理することが不可欠。
読み取りは、いよいよ後半へ。範読を聞いて、記号付けの確認。限られた語彙の知識と並べ方・形あわせのレベルでの「頭の働かせ方」を活用して、自分で実感が持てるように。今日は、Howeverでの論理展開を重点的に。<A → However, → B>という流れの中で、Aに来る内容を「きちんと」読むことで、Bに来るであろう内容を予測でき、その自分の予測を確かめるためにも、今度はBを「きちんと」読むのです、という授業展開。キーワードをもとに対照するだけなら、英語が苦手な生徒でもだいたい予測ができますが、そのキーワードだけでは「文」にはならないので、<英語としての並べ方と形合わせ>がどうなっているか、実際に読んで確認。範読を聞いて、語順通りに理解の確認。裏面の<順送りフレーズ訳>を利用しての日→英→日→英、行ったり来たりで終了。
今回、生徒には斉唱も個人読みもやらせていません。後半部分に入ってからは「記号付け」の際に2回、Howeverの論理展開を確認した後に2回、最後に通して2回と合計6回、範読していますが、最後の2回での生徒の聞く「集中力」が増していることは、教室の空気で直ぐに分かります。「内容理解・意味が伴った音読を」というのはよく言われますが、教師による「範読」を「きちんと」聞くことだって、意味の理解を伴って初めてできる学習者も多いのです。

7限は再度進学クラス。
「表現」での目の付け所を経て、「語義・定義・パラフレーズ」の話し。
ここでは、『オリバー・ツイスト』で扱った

  • Shivering with fear, Oliver walked the length of the room.

という1文から、”shiver” という動詞を取り上げ、語義の確認。英和辞典では訳語が直ぐに手にはいるけれど、それで安心してはダメ。英英辞典の記述を見る。
ISED (開拓社、1941) を引くと、

  • tremble

とある。が、そこまで。で、次にtrembleを引く。

  • shake; shiver

とある。「振り出しに戻ったね」、とクラスに投げかけ、別な辞書との比較対照へ。
shiverに絞って、

  • (to) shake with cold or fear (学習英語辞典、令文社、1962年)
  • make quick shaking motion of body, specially as effect of cold, fear etc (The General Basic English Dictionary, 北星堂、1960年)

といった絶版の辞書からの定義を板書し、「では、語で置き換える時に、shiver, tremble, shakeの3つの語のうちどれが一番易しくてよく使われるのか、『エースクラウン』の扱いを見てみよう。」と3語の引き比べ。色文字とフォントの大きさで比較すると、shake > tremble > shiver の順。流石は投野先生の作った21世紀の辞書。
辞書の語彙項目として、「語」のエントリーでの頻度や重要度は現代コーパスでよく分かるのだが、「品詞」や「意味・語義」での重要度は?というと結構難しい。
私が教材研究でいつも使っている、

  • Cambridge English Lexicon (1980)

で、語義による重要度・基本語表記を見てみると、

  • 3 shake 5 v. tremble: her voice shook with emotion (p. 133)
  • 4 tremble 4 v. shake involuntarily: he trembled with excitement (p.156)

という記述があり、1970年代までの使用実態を伺うことができる。shiverは予想通り扱い自体が無し。ただ、意外にも、この語義では、trembleの方が重要度が高かった。

教室に置かれている数多の辞書の中から、英英辞典を取り上げ、補足追加。

  • shake because you are cold or afraid (Longman Basic Dictionary)
  • shake because you are cold, frightened or ill (Oxford Elementary Dictionary)

といった、子供用の薄い辞書からもヒントは得られる。with emotionとかwith excitementなどの<前置詞+名詞>による「副詞句」を使いこなすことが難しければ、生徒には意外かも知れないが<接続詞+SV>という「副詞節」を使えばいい。その中で、frightenedという自分の呼吸が苦しくなるような語ではなく、afraidに置き換えれば少しは楽になるだろう。

  • When you shiver, your body shakes slightly because you are cold or frightened. (COBUILD)

のように文脈ごと移し替えることで説明することも可能、というところまで、巡り巡って、自分の課題の見直しへ。
大事なのは、

  • 理解したことを表すには、日本語訳ではなく、定義・言い換えが大事。それは確か。でも、その言い換えで、自分が使える語句・表現は、いったいいつ身につけるのか?

ということ。
そこを踏まえておかないと、名詞としてのshiverの、

  • a sudden shaking movement of your body because you are cold, ill, frightened or excited (Oxford Learner's Thesaurus)

という定義も有難味はないし、その類語である、tremble, shaking, quiverなどとの共通点を括りだしてくれている、

  • These are all words for a continuous or sudden shaking movement or feeling, especially one that you cannot control.

という「上手な」説明を受けても実感は湧かないだろうと思う。
「パラフレーズ」はその前段階の指導と定着こそが肝。

職員会議を経て、帰宅。
水曜日は『相棒』の日。
ミッチーの過去が少しずつ明らかに。
ほどほどに晩酌。
ほどほどに睡魔。

本日の晩酌:
義侠・純米・生・滓がらみ・山田錦 60% 精米 (愛知県)
勝駒・新酒生酒・純米・五百万石 50% 精米 (富山県)
本日のBGM: Pastorinhas (Baden Powell)

教材研究の友、定義の味方。下段の右から2番目が『学習英語辞典』 (令文社) です。こうしてあらためてみてみると全て絶版ですね。

紙と活字の辞書にも「ならでは」の良さがあります。

友を呼ぶ類。