少数派

授業は淡々と。
高1進学クラスは、96例文でのトレーニング。かけ算九九で、3X6ができるのに、6X3になると、戸惑っているうちは、スラスラ暗算が出来ないのと同じ、と思えるかどうか。
試しに、高2でもやってみました。頑張ってね。
高3普通科の卒業試験作問、終了せず。
帰宅して、

  • 1以下(未満) の少数の単位、動詞との呼応

が気になり、書棚の書籍の頁を繰る。

  • メディア総合研究所語学教育センター 『ネイティブが教える 英語表現辞典』 (メディア総合研究所、2004年)

では、数値が「1」以外は複数扱いと、極めて明確に自信たっぷり (?) にルールを示している (p.73) のが気になった。
私が覚え使っている「1以下の少数は単数扱い」というのは今では少数派?と思い、書棚に手を伸ばす。

  • 宮田幸一 『教壇の英文法・改訂版』 (研究社、1970年)

では、「57. 1.5 metreか1.5 metresか」 (p. 136) で、

(前略) 英語で書かれた数学の本や物理学や化学の本をいろいろ開いてみました。 (中略)
0.01597 gram
0.3850 gram
0.99991 gram
1.049 grams
1.39 grams
1.714 grams
498.07 grams
これによって、1よりも小さい値をもつ少数は単数の単位名を伴い、1よりも大きい値をもつ少数は---たとえ2よりも小さい場合であっても---複数の単位名を伴う、という原則が帰納されます。
このような実証的調査をいったんしたあとで、同僚のアメリカ人教師にたずねてみましたところ、やはり同じ原則を教えてくれました。

とありました。

  • ジェームズ・キーティング『ネイティブチェックが自分でできる 英語正誤用例事典』 (ジャパンタイムズ、2000年)

では、 コラム「数字の表記10 小数 (decimal units)」 (p. 284) で、

1以下の数は単数扱いなので、sはつけない。逆に1を越える数は複数扱いとする。
0.02 percentage point, 0.9998 ton, 1.000001 tons

とあります。最初の実例percent pointは厳密に「単位」と言えない気がするので、この3つの例を並列で示したのはあまり賢明ではなかったような印象を受けます。

  • デイビッド・セイン 『朝日スタイルブック』 (朝日出版社、2000年)

では、「H-2. 分数と小数」 (pp.127-128) の中の「4. 少数の複数形」という項目で、

1.0以下の場合は単数、1.1以上は複数として扱う。
0.01 inch long
0.08 inch long
1 inch long
1.5-inches long
25-inches long

として、実例をあげているのですが、日本語の解説の「1.1以上」という条件設定では「1.09」の扱いで悩むことになるのと、ここで示されるlongのついた実例があまり「ピンポイント」で効いていない気がします。

  • 市川繁治郎 『数と量 英語の語法表現篇 第1巻』 (研究社、1968)

では、上述の宮田の初版での記述「§175 '1.1 metersか1.1 meterか'」も引いた上で、次のような考察を記しています。(pp. 100-101)

筆者も数学の本を、四、五冊読んでみたが、その通りであった。しかし、Evans (CAU s.v. Fractions) は3/5 miles, 0.58 gramsと複数形をとるものだと言い、International3 (e.g. ‘Measures and Weights’ table) にも 0.373 kilograms, 0.550 liters など多くの例がある。どちらが一層慣用的であるかは筆者にはわからないが、理屈の上からは単数形の方がよいと思う。

「数」と「単位」の話しですから、やはり「数学」とか「科学」に拠り所を求めるというのは、私にとっても自然な思考の流れです。1962年と少々古いですが、W. E. FloodとMichael Westの編んだ、

  • An Elementary Scientific And Technical Dictionary, Third Edition, Longmans

をパラパラとめくっていると、”vernier”の項 (pp.396-397) に、次のファイルにあるような記述がありました。
2010OC2MT035.jpg 直
画像ファイルの頁右上にある図を言葉と数値で説明しています。「1に満たない少数は単数扱い」をしているのが分かります。

ここで、もう一度、宮田が化学のテキストから拾った「実例」をみて欲しいと思います。

0.01597 gram
0.3850 gram
0.99991 gram
1.049 grams
1.39 grams
1.714 grams
498.07 grams

宮田は他にも何冊か読み、単位が単数になるもの、複数になるものの例を、相当数見てきたはずですが、ようやくこの本で自分の確信を得て、そこから上記7例を引いたのだと思います。
「何を例に、何を、どう比較するか」。着眼点、観察力、分析力。名前を付けてしまえば陳腐な響きになりますが、語学の教師として求められる資質がここに顕れているように思いました。

もっと新しく、もっと手軽にアクセスできて、参考になりそうなサイトはこちら→http://mathforum.org/library/drmath/view/57224.html

米式、仏式という観点も興味深かったのですが、一番印象に残ったのは、ここでのやりとりでの「ドクター」の次の言葉。

English (and especially American English) has no "official" rules for anything, though there are many "experts" who claim to give such rules. But with or without regulation, this is definitely a linguistic issue rather than one of mathematics or logic. Each language has a different set of rules for number as well as other aspects of grammar - for example, some languages have not only a singular and a plural, but a "dual" for exactly two, which would raise additional questions when applied to, say, 2.001. Different rules may be equally logical, and different languages may have different needs.

良い教訓となりました。

床屋に行って、さっぱり。
原稿書きの合間に、『英語教育』の2月号を読む。
これでは、A先生でなくとも、不満を漏らそうというものだと思う私はすでにメインストリームから遠く離れているのだろう。
「英語」「達人」「学習法」がキーワードであれば、今回の執筆者の一人、斎藤兆史先生ははずせないと思う。
あとはやはり、竹内理氏、というのがこの分野に興味関心のある英語教師が思いつく人選ではないか。
あとは、今風の英語教育を牽引する松本茂氏とか、向後秀明氏。
SLAの切り口から白井先生とか、村野井先生とか和泉先生とか、高島先生とか。「第二言語習得」のエキスパートの方たちに、ご自身の「学習」について訪ねる頁があると、とってもよかったと思う。
過日、anfieldroadさんがブログで企画した「英語学習歴」の方が私には面白かったなぁ…。

夜になって、寒波が入ったか、気温が急に下がった気がした。
夕飯は手巻き寿司。
奮発して、本鮪の中トロと萩産の雲丹も。
47歳最後の晩餐。
今年の義侠は、「澱絡み」というよりも一般的な「無濾過」という感じ。

本日のBGM: Who's gonna die first? (Moonriders)