「砂嵐」は立てないけどね

『相棒』で柴俊夫。
子どもの頃の『シルバー仮面』時代からの記憶で、この俳優を見ると切なくなる。
シャツにアイロンをかけ、ネクタイを選び、気を引き締め、寒気が入ってきた週の折り返しを何とか乗り切る。
商業科1年は、ワークシートを集めて、誤って記入しているところがないかチェックして返却。
その後、ワークシートの最後に「ここまでやってきてまだ身についていないと思われる文」を3つ書け、というような欄を設けているので、そこに多くの生徒が書いた文の構造、文法事項の補足説明。1つは、<前置詞+名詞>がどどいつとして文頭へと移動できるか、それともその前の名詞句とひとかたまりなのかの識別。もう一つは、andのペアの処理。どどいつと名詞句に関しては、これからもずっと悩まされることになるのだけれど、まずは、名詞は四角化で視覚化のドリルから「崖の上のポニョ」と「イチローの大ファン」の回でしっかりと復習を繰り返すことです。
基本的にワークシートを元に授業中もトレーニングをしていますので、これがないとなにもしないという生徒もいます。教科書は「まっさら」な状態で残しておけ、と言ってあるので、種々のメモ書きや、頭の働かせ方についての記述がない状態で自分一人で何ができて何ができないか、ここが正念場。Flip & Writeへの橋渡し的活動として、表面に英文をチャンクごとに微妙にスペースを増やして印刷、裏面にそのチャンクごとの日本語訳。途中の合いの手も印刷してあります。表面で音読、Read & Look upを正確にできるようになったら、Flip and Sayではなく、そこに書いてある日本語のチャンクごとに英訳していく活動です。Read & Look upまでやったのに、その後で日本語訳を見て、英語に直すという活動は、退行しているように思えるかも知れません。が、空読みを防ぎ、「英語の語順は意味順」という回路を作っている段階だと割り切ってやっています。この段階まで、英問英答なども一切やっていません。
文法事項の指導には、別に例文の解説プリントを作っています。これも、中学既習が建前の事項である「時制」絡みがほとんどですので、普通科再入門講座で使ったワークシートから、解説の文言、提示する例文など改善点を修正した上で作っています。まずは、「助動詞の番付表」の形合わせと、話し手の気持ち、世界の切り取り方をどう摺り合わせるか。結局は、<この形を使っている時には、このように頭と心は働いている>という後出しじゃんけんを、上手に真似ることから。ある段階までは、キューティーハニーのテーマ曲にあるように、

  • だってなんだか、だってだってなんだもん!

を呑み込ませないといけませんから。

高3再入門講座は、関係代名詞の主格を用いて、文から名詞句の限定表現を作る練習。接触節との違いを徹底。名詞句を音読した時に、「その人」、「そのモノ」のイメージを頭に浮かべる。音読での音調は来週の課題。whoやthatは、疑問詞や指示代名詞のように読んではダメ。この名詞の後はすぐにとじかっこが来て文になるんじゃなくて、この名詞の続き、最終的に大きな名詞の固まりになるよ、という信号を短時間で出すのだから、軽く読まれるし、音調は下がりきってはダメ。でも、これが自分の身体に記憶されるには、その前に「文」としての語順、句のまとまり、というものが、意味と音で自分のものになっていないとダメなのですね。少しでもできるようになって卒業して下さい。

進学クラス高1は、全国縦断リスニングの旅からぶらり途中下車で音読三昧。

  • I was excited to see and enjoy many new things, like visiting festivals and eating wanko soba.

のところでリズムが崩れたので、文構造での留意点を板書して、小学校低学年の絵日記レベルの単文の羅列から、中学卒業レベル、そしてこの後期末考査に向けて、高1レベルの英語へとどう、文や表現が発達していくのか解説。

  • I visited festivals.

では漠然としすぎているので、普通は、

  • I visited local festivals.

くらいはいうでしょう。

  • I ate wanko soba.

では、文字通り味気ない。食べ方も普通ではないのですから、こういう時こそ乱用は慎むべきenjoyを利かせて、

  • I enjoyed eating wanko soba.

などとしていけばいい。

  • I saw many local festivals.
  • I enjoyed eating many bowls of wanko soba.

などと肉付けしていって、それらの経験を踏まえて、

  • and so I was excited.

というのは簡単。でも、感動の余波はない。その感動に臨場感を与えるように形にしていくのが、オリジナルの文。ここでの<to+原形>は「未来志向」ではなくて、「その感情の源泉はどこにあるのか、と訪ねたら→」と過去の経験に遡るもの。さあ、そういう気持ちで再度音読。

ワニの口を耳だけで処理するのは容易ではないので、やはり音読の時にいかに「その英語を生き直しているか」が問われると思います。

  • Since then,

で大関を予想していれば、

  • working as an English teacher in Iwate

までの間に、とじカッコはないのですから

  • has been my biggest dream.

のところで頭の中でベルが鳴るはずです。そこで、自分の読み方を修正して再度音読。

残り時間で、次回への宿題。
「-ed/en形の識別」。前置・後置だけでなく、知覚動詞や使役動詞で用いられる例も含んでいます。
<to+原形>、<-ing>と動詞型も含めて扱いましたから、これで期末試験前は一段落でしょうか。範囲は広いのですが、ある状況、場面で、この3つのうちから適切な形を選択できないと意味がないので、頑張ってもらいましょう。

先日、某辞書出版社の方とお話ししていて、

  • 「革装」は腕の立つ職人さんも減ってきているのと、厚みやハリ、コシなど質の良い革が入手しにくくなっているので、金が上手く乗らないことがある。

と聞いて今さらながら『コンサイス英和辞典・第13版』 (三省堂) の革装をヤフオクで購入。ようやく現物が届いた。新品。どうだろう。単価は高くなっても良いから、残していって欲しいものです。

書店に寄ったが、お目当ての本は見あたらず。

  • 木村俊介 『物語論 物語が紡がれていく過程 17人の創作者が語る』 (講談社現代新書、2011年)

腰帯のコピーではなく、副題が長いのは最近の傾向なのか。荒木飛呂彦さんの名前を見たので、全くの衝動買い。

  • 『NHKラジオ 基礎英語1』 12月号

終わりの方に、いわゆる「筆記体」の書き方が載っているのだが、これは見て参考にはなるが、実際の筆写指導で使う際には気をつけて欲しいと思う。とくに続け方、joiningで問題が多い。日常、26文字を続けて書くことはまずない。その指導の前に、handwritingでのそれぞれの文字の持つストロークの特徴を踏まえた上で、一定パターンのjoiningを課すことが大切だからである。「今の子どもは筆記体も読めない、書けない」という教師や、古い世代からの声や、「子どもは書きたいと言うんですよ」という親の声が大きいのだろうと推察する。文字指導は、ライティング指導の第一歩。第一歩だからこそ、きちんとした指導が必要なのだ、ということを繰り返し繰り返し言い続けたい。参考になるだろう文献資料としては、

  • 『英語科ハンドブックス第三巻 語學的指導の基礎 (中)』(研究社、1959年)

に収録されている、寿岳文章「英習字」をあげておきたい。(写真はこちら→英習字1.jpg 直英習字2.jpg 直英習字3.jpg 直)

自分の英文修業。

  • 宇野尚志 『オリンピック競技の英語』 (研究社、1963年)
  • 吉田一彦 『現代英語紀行』 (大修館書店、1997年)
  • 加藤裕子 『「シャキッと炒める」を英語で言うと』 (幻冬舎、2002年)

この手の本で他人の褌宜しく、借りもので足場を固めて、手持ちの道具を二三揃えたら、次はネットで実地検証に出たいと思う。
佐橋佳幸氏であろうギター (※コメント欄にて訂正) の音触につつまれて就寝。

本日の晩酌: 鳴海 (なるか)・純米吟醸・兵庫県産山田錦50%精米・無濾過生詰 (千葉県)
本日のBGM: ステイションワゴン進む (大江千里)