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今日は邪気にやられそうなので、明るいことにも目を向けて。

進学クラスの高3ライティングは、提出物の達成度がよろしくないので、「諭して倦まず」。
高2、高1に続いてActive English の紹介。昭和26年と言えば、戦後の学習指導要領試案 (英語版) が出た頃なのだね。崇高な理念に基づいていたはず。argumentationを大学入試の個別試験で求められるであろう生徒は、このクラスで1人いるかいないかなのに、これだけきちんと課題に取り組むことを求めているのは、結局、語彙と文法を談話レベルでまとめ直すことでしか、使える英語は身につかないのだな、という実感、もっと言えば「覚悟」のようなものを手にして、学び直すことがこの時期に必要不可欠だから。

  • 1学期の基本例文100題とその関連表現がいつでもスラスラ口をついて出てくるか?
  • 2年次の教材の『コーパス口頭英作文』の例文700は本当に「1秒」で反応できるか?
  • 『P単』のコロケーションの日→英は完璧か?「100個一気食い」の精度・速度は上がったか?

というような誠実な振り返りがなければ、それは単に教材を通過しただけであって、その学びは「ウソ」だということに気づくべし。ということで、田邉祐司先生の書かれたものから、「英文修業手習い」となるような記述を抜粋して説く。田邉先生、有り難うございました。一言一言が染みました。
Active Englishに加えて、

  • 木村忠雄 『高等英作文要覧』 (北星堂、1941年)
  • D. キーン、松浪有 『英文法の問題点』 (研究社、1969年)
  • 矢吹勝二 『高等自由英作文 改訂増補版』 (研究社、1978年)

などの、日本人学習者を念頭に置いて執筆され、活用されていた、または現在も活用されている、全編英語で書かれた教材を紹介し、これから先、大学進学後の英語学習・英文修業の見取り図をどう描いておくかを問う。

高1進学クラスは青森県の完コピリピートを経て、岩手県、宮城県の問題へ。基本的に「モノローグもの」、「ナラティブ」だけを選んで取り組んでいます。手順は基本的に同じです。
一回だけ聴いて、設問に答えるかメモを完成する。その後、前回と同様、私の範読に続いてリピート。長い文や構造でもたつきそうな文は、チャンクごとに分解したり、チャンクの切り出しを変えたりしたあとで一文を通してリピート。最後まで終えたら、自分の解答の修正。まあ、答え合わせの必要はないでしょう。岩手県の出題英文は以下のようなものでした。

Hello, everyone. My name is Daniel Johnson and I’m from America.
Since I came here, many people have asked me, “Is this your first time to come to Iwate?” The answer is “No.” When I was a student, I had a chance to study in Iwate, so this is my second time.
When I first stayed in Iwate, I was excited to see and enjoy many new things, like visiting festivals and eating wanko soba. But I loved the beautiful nature of Iwate the best of all.
Since then, working as an English teacher in Iwate has been my biggest dream. I hope you will have your own dreams. Let’s start talking about dreams in the class. Thank you.

どの文のリピートに一番てこずるか、予想がつくでしょうか?今回は2つ。
長さという点でもたいへんな、

  • When I first stayed ….

は、いわゆる不定詞と動名詞を無理やり入れたのか、と思える文で大変です。
主述の繋がりまとまりという点では、

  • Since then, working as an English teacher ….

の長い主語、私の授業では「ワニの口」と読んでいる「こと」の把握に時間を取られました。この時点では、まだスクリプトは見せていません。書いてあるものを見れば簡単に思える文構造も、耳だけで処理するのはなかなか大変です。スラッシュを入れて、”First in, first out.” よろしく先へ先へと進んでいくだけでは、このレベルの英語も血肉化が難しいと思います。次回、秋田県まで終わったところで、スクリプトの確認になりますから、そこでチャンクの切り出しを変えて復習のための構造の把握と意味の処理の両立を図る予定です。

今日は、宮城県のモノローグが短かったので、「ALTの女性の離任にあたって、新聞係が取材する」という場面設定の日本語を読んだところで、その場面でALTの発するであろう表現を日本語でまず想起する、というのを入れてみました。話形の蓄積の貧弱さがこういうところに端的に出てきます。
最初の生徒、

  • さようなら。

そこで、取材が終わってしまいますね。お世話になった先生が離任式などで体育館や講堂のステージに立ってスピーチをする場面には幾度となく出くわしているはずなのですが、「通過儀礼」になっている生徒が多いようで、そのことも問題ですね。というようなことも話してから、次々と。

  • ありがとう。

そう、感謝の気持ちは伝えるでしょう。では、なぜ感謝したいのか?そう、

  • 良い思い出をありがとう。

や、

  • 良くしてくれてありがとう。

ということで、 “something good about this school” とか”some good memories to share” 、”the kindness you showed” などが述べられるはず。他には?卒業の時とか、「寄せ書き」とか、書かない?あれって、何のため?と振って、

  • 忘れないでね。

ここが勘所。「あなたたちのことを忘れない」とか「私のことを忘れないで」などが頭に浮かぶのだから、forgetとかrememberなどがキーワードとなるでしょう。
などなど、その予想される英語表現を頭に思い浮かべて、出題された英文の聴き取り。一回だけ聴いて、メモを完成。その後、岩手県と同様、私の範読に続いて一連のリピート活動。もごもご読んでごまかさせない。意味の処理が追いつかないと、保持ができないので、内容を畳んで纏めて先へと引っ張りなさい、という「檄」。

宮城県の英文はこちら。

I want to say “Thank you” to everyone. I always enjoyed my classes at this school. Your English is much better now. I remember many things about this school. For example, in the culture festival, I sang with the students. I’ll never forget it. And in my last class, students gave me a lot of letters. I was so happy to get them. I will keep them forever.

生徒の発音で気になるのは、子音では、やはり /v/ の音。摩擦が聞こえない。母音では much の母音とclasses, sang, last, happyの母音の区別が曖昧。cultureの強勢のある母音は後続の音の調音点の影響で辞書の発音記号の表記通りには聞こえないことが多いので、また別の機会に、pulpとかgulfとかgulpとか出てきた頃にまとめて練習させたいと思う。
表現で気になるのは、”Your English is much better now.” と二人称を使っているのに、

  • I sang with the students.

と定冠詞でstudentsを用いているところと、

  • And in my last class, students gave me a lot of letters.

では、無冠詞複数形でstudentsとなっているところ。温度差が出てしまっているようにも感じる。この直語に、

  • I was so happy to get them.

とあるのですが、今日のリピートではこのthemでしっかりと意味が乗せられているかを確認。代名詞での受け継ぎでは、「手紙」という漠然とした捉え方では不十分で、「彼女が授業で教えた生徒達からの手紙」とか「彼女のクラスの生徒からもらったたくさんの手紙」というような名詞の後置修飾を必要とする「四角化」が英語でできることを求めています。
期末試験では、このような中学レベルの語彙構文では正確な表現が難しく、「気になる」部分、に手を加えて、個々の文を加筆修正したり、文を補ったり、削ったり、入れ替えたりして、高校生レベルの文章に書き換えてから出題の予定です。
今日はこの宮城のリピートで時間をとられ秋田の導入でチャイム。用紙を回収して、終了。
岩手県、宮城県は今年の高校入試が3月9日。この日も、地震によって試験の中断を余儀なくされた所もあったと聞く。その二日後に東日本大震災。忘れたいこと、思い出したくないこともいろいろあるだろうとは思うのだが、関係諸氏に改めてご苦労さまでしたと言いたい。

商業科1年は、音読のバリエーションまで。
まずオープニングは不規則変化の活用、A-B-C型で5分間各自で練習。表裏を行ったり来たりして表を口頭で完成させる。チェックのために私が日本語で意味を言い、生徒は活用を英語で即答。できていないところがあったり、声が出ていない生徒がいたりするので、「それじゃ、何のチェックにもなっていないぞ」とダメ出しして、再度個人練習。その中から、教科書で出てきた動詞を取り上げ、教科書で出てきたチャンク、コロケーションを問う。当然、3分の2以上の生徒はできないので、目的語をつけてリピート。どどいつにあたる副詞句をつけてリピート、その後、教科書のワークシートを開かせて、語句の仕込みのセクションから、チャンクでの英・日マッチングの復習。ここからが今日の本題。
ワークシートを二つ折りして、その表面で、記号付け、カナでの読み方や、発音の手がかりのメモが書いてある英文を一文音読。即座に、ワークシートをめくると、そこにはまっさらな英文が印刷してあるので、その英文を見て音読。上手く言えなかったら、表面に戻って確認。再度ワークシートをめくってまっさらな版で音読。
続いて、まっさらな版でRead & Look up。上手くできないところは、表面まで戻る。発音のメモ書き英文を見てもスラスラ読めないところは、構造と語句の意味の段階で躓いているので、その前のチャンクに戻って確認。チャンクが保持できない者は、その前の「語」のセクションに戻って確認。面倒でもこれを自力でやらない限り、英語は身につかないと繰り返し説いている。
で、「対面リピート」。この課は14文でできているので、前半7文、後半7文に分けて、攻守交代。私のやっている対面リピートでは、両手で紙を持って、自分の顎の下に紙の上端をくっつけさせて、相手に見えるように対面させています。相手の目線を下げないようにという配慮もあるのですが、横着した持ち方の生徒にはダメだしするだけでなく、実際に私がやって見せて、「顎の開き」のコントロールがトレーニングの初期、調音を身につけるまでいかに大切かを説いています。詳しくは、ジャパンライムから出ている『達セミ』のDVDで有嶋先生が指導されているのをご覧下さい。
1ペア終わったところで、気になる読み方を私がやって見せて、これではダメだよ、というところを確認。その後、私が正確な音読を1回だけするからよく聴くように、と言って範読。良い空気感ですね。
ペアを変えてもう1ラウンド。
次の授業では、始業のチャイムが鳴ったあと、私が来るまでにこの対面リピートをやっておくように指示して終了。明日は、Flip & Write への橋渡しの音読活動です。
夕飯は、自宅菜園でとれたニラでレバニラ炒め。糧工房から送られてきた生姜を利かせて。美味でした。濃いめの味に合う山廃を冷やで1合ほど。
録画してあったThe Beatniksを見て感動のうちに1日を終える。

本日の晩酌:常きげん・山廃純米吟醸・無濾過生原酒 (石川県)
本日のBGM: Happy Hour (The Housemartins)