次の設問の答えを 1. - 3. より選びなさい。

問題: 「日本における英語の早期教育実施について、利点と欠点の両方を挙げ、自身の見解を明確に示した150語程度の文章を書きなさい」という「お題」で高校3年生にライティングを課すとしたら、あなたはどのような模範解答を用意しますか?以下、3択です。

1. 主題の理解と説得には支障を来さないギリギリのラインを見極めた上で、ところどころにローカルエラーをちりばめつつもグローバルエラーを避け、高校3年生にふさわしい語彙・構文・談話構造・論理展開を備えた英文
2. 公立高校入試のリスニングテストで使われる英文レベルの語彙・構文を用いて、高校3年生にふさわしい段落構成を備え、文法的誤りがないけれども、論理展開など主題から離れて説得力に欠ける英文
3. 学習指導要領の「英語I」の教科書で用いられることになっている基本的な語彙と構文を用い、高校3年生にふさわしい談話構造・論理展開を備え、文法的誤りがないだけではなく、主題に対してきちんとまとまった説得力のある英文

少し前のエントリーで、しつこく「自由英作文」の模範解答の「英語」、とりわけその「論理展開」について論じていましたが、それをお読みになった方から、こんな英語が送られてきました。

It is true that English has become an international language. You should be able to speak English if you work at a company whose official language is English or which has branches in foreign countries. We start to learn English from junior high school and mainly learn academic English. Some say we need to learn more communicative English at a younger age, but because of this movement and the deficit of the school system, the number of students with poor Japanese is increasing. We should not think lightly of our native language. Our mother tongue is related to our culture and our identity which we should not lose. We need to build up the ability to think logically in Japanese and build our identity when we are young both at school and at home. Otherwise, we Japanese would be rootless, and with empty minds, there would be no meaning in learning a foreign language. (154 words)

これは、 “THE STRATEGY FOR ESSAY WRITING” という、駿台から出 (てい) る高校採択用英作文教材の模範解答なのだそうです。執筆者は駿台の講師の方や、「駿台英語科」というチームではなく、高校の先生のようです。この英文を模範解答とする、という「観点」とか、大学入試に「勝つ」ための「戦略」とかが現段階で私にはわかりませんが、再考の余地があるように思います。私も現物を取り寄せて詳しく検討しようと思いますが、課題を与える際に、その「解答」として、何を設定しておくか、というのは、結局はその「課題」の構成概念とか、妥当性に大きく関わるということを常に肝に銘じておきたいと思っています。

今日読んでいた本は、John Bitchener & Dana R. Ferrisの新刊、

  • Written Corrective Feedback in Second Language Acquisition and Writing, Routledge

です。今日読んだところは、Part 1のSLAとcompositionの双方から見た、「誤りへの対処」の歴史的概観。50ページ足らずを読んだだけですが、手際よく纏められています。この後の展開にも期待が膨らみます。おそらく、今後のこの分野の研究にはまず読むべき本の1つとなるのではないかという予感もあります。ただ、研究者、特に日本で研究する若い方たちにお願いしたいのは、中高レベルの教師が教室の現場で、「ライティング」の指導評価を続け、教師としての技能・技量を身につけ、磨くにはとてつもない時間がかかるのだということへの理解と配慮です。Corrective feedbackはCFと略され、日本でも非常に多くの研究がなされてきています。ただ、高校で1年間、ないし2年間のシラバスを構築し、「お題」をデザインし、授業の運営を経た上で、ダメだしをしつつも、書かせ続けることで生徒の作文の質を向上させるのは大変です。気づきを待っているうちに、卒業してしまったりします。悔しかったり、残念なことの方が多いかも知れません。それでも、誤りが正されたり、英文の質が向上したり、説得力の増した英文を見ると喜ばしいものです。そうやって積み重ねられた「経験知」「実践知」「臨床の知」を可視化するところに意を砕いて欲しいと思うのです。彼我の差を強調し、日本の指導評価の状況を「ガラパゴス」などと断ずるのは簡単ですが、「日本の教室」という変数をどのように処理するか、私は教師としてのスタンスを忘れたくはないと思っています。
首都圏の中高英語教師の方で「ライティング」の指導評価に興味関心のある方は、ELEC同友会英語教育学会に「ライティング研究部会」という集まりがありますので、一度尋ねてみて下さい。研究部長は私が務めてきましたが、現在、私は山口県在住のため、副部長である長沼君主さん、工藤洋路さんを中心に研究会を進めてもらっています。(連絡先はこちらから→http://www.geocities.jp/elec_friendship/writing.html)

埼玉県で、anfieldroadさんが企画運営する研究会SETC&ASTEKで、公立高校入試に於ける「ライティング」の出題の分析が行われた (http://d.hatena.ne.jp/anfieldroad/20111127) ということで、資料を送って頂きました。深謝。地道な実践と誠実な研究とが協同、協調していくためのヒントがこのような研究会にはあると信じています。

GPシリーズ、ロシア大会、男子は羽生選手が優勝。フリーでは二度の転倒がありましたが、本当に僅差で勝利を呼び寄せました。日本から沢山のファンが駆けつけていることを差し引いても、観客の声援には温かいものがあり、まだまだこの国には「フィギュアスケートの芸術性を愛する人が沢山いるのだな」、と感じました。男子はポイントでは小塚選手と羽生選手は同点なのですが、「優勝」の有無が当落を分けました。羽生選手はファイナルに向けて4回転の精度を高めることと、より一層のスケーティング技術向上に期待。全日本もあるので、ケガだけはしないように祈っています。

録画してあった「教授」の番組で、高野寛さんのボーカルを楽しんでから就寝。The Beatniksの特番は放送時間があまりに遅かったので予約録画にしました、慶一さん、幸宏さん、ごめんなさい。

本日のBGM: Time wraps around you (Velvet Crush)