”The story is widely read in Japan, and ....”

高3ライティングは論説文・argumentationのガイダンス。
前任校時代の、ピアレスポンスからチェックリストで自己修正を経て提出された生徒作品、入試過去問のお題から60語、150語、300語と3パターンで解答した生徒作品、『パラグラフ・ライティング指導入門』から、高校生のargumentationでの典型的な不備の事例を参考資料を印刷して解説。現在使っているGTEC Writing Trainingのテキストの該当箇所との照合。アイデア・ジェネレーションと頭出しチャンクの使用が上手くいっても、結局そこから「文」を紡ぎ、パラグラフへと織りなしていくにはかなりのトレーニングが必要。タテ糸は指導者がお膳立てしておいて、ヨコ糸はしっかりと書き手に紡がせる指導から、徐々にタテ糸を書き手に任せていく、手綱を緩めていく指導手順に関しては『パラグラフ…ライティング指導入門』で書いたのだが、大学入試問題の方は確実に変わってきている。
過去ログでも言及した (http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20110310) が、今年の金沢大の出題は、紙と活字の辞書と電子辞書との比較で意見を述べる出題だったが、お題を与えて全文を書かせるのではなく、

  • いわゆる「序論」にあたる部分は、和文英訳で、自分の意見の主張としては与えられた英文のどちらかを選び、立論のサポートにあたる指示文を自分の英語で書く。

というもの。文章全体では、100-150語くらいの分量になるが、そのうち受験生が書くのは半分くらいの分量。しかも和文英訳と「自由英作文」の両方をミックスした合目的的な出題。東大の出題でありがちだった中抜きのライティングと比べると、受験生に優しく、指導者にも優しく、教室現場で過去問対策をするとしても、英語力、ライティング力の向上に充分貢献する出題となっています。
これまで私はいろいろなところで、

  • 紋切り型の意見文を50 - 80語程度で書かせるくらいなら、和文英訳で3択にしてしまう方がいいでしょう。

とか、

  • 全部書かせるから、採点評価も大変になるので、書かせる部分を限定して、しかしながら全体ではまとまったパラグラフとなるようなタスク設定を。

と言い続けてきましたが、やっと大学入試の方が落としどころを見つけてくれたように感じました。
今日の授業では、

  • 自分の主張、意見を述べた後で、その裏付け、サポートをするわけだが、そこで更なる意見を述べてはダメ。

という部分を強調しておいた。たとえ高校の教室で入試の過去問演習をやるにせよ、できる限り、事実・データを精査し、エキスパートからのお墨付きを調べ、それらが得られない時の方便として、大多数を納得させられるよう一般化した自分の経験などでサポートすることが大切。意見論述型の出題だからといって、意見を書かせるだけの指導ではライティングの質も量も向上していかない、ということに気づいている指導者は今後の技能統合型のカリキュラムやシラバスになっても生き延びていくことができるのだと思う。今はなきGWTのシラバスが、narrative → descriptive → persuasiveというテクストタイプの流れになっているのは、習熟に時間のかかるnarrativeを先に始めておいて、descriptiveなものに活かしつつ、それらが全て後々のpersuasiveな課題で使いこなせるように、という目論見があってのこと。
模擬試験や予備校の夏期講習など、いわゆる受験の業界で「過去問」の模範解答として示されるargumentationの英文の多くは英語としてのクオリティを満たしていないように感じている。自分の教え子が使ったテキストや授業中の書き込み、ノート、さらには別ルートで入手したテキストなどで説かれている、解法と解答例の英文 (過去ログ参照→ http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20101222) を見るにつけそう思う。
最近読んだ、某大手予備校のテキストでは、“arguing essay” という呼称でこのテクストタイプの作文を指導していた。どういうバックグラウンドの教師が執筆しているのか気になる。
一般的には、argument essay > argumentative essay くらいの大まかな使用頻度なのではないかと思うのだが。クラスでは、

  • “argumentative” という形容詞は、 “(showing disapproval) someone who is argumentative often argues or disagrees with people” (MED AmE) という定義でもわかるようにネガティブな意味合いが含まれることがあるので、私は普段はargument essayとかargumentation と言うか、もっと別のpersuasive essayとか、persuasive writingという言い方をするようにしている。
  • expository essay/writingに関しても、この類のライティングを “explaining essay” というのはどの程度common、popularなのだろうか?

という話しをしておいた。今時は、Google insights for searchで調べてみると大まかな傾向はわかると思うのだが、米国だと西海岸では若干のバラエティが認められるようだ。もっとも “persuasive essay”と言った場合、ジャンルやカテゴリー分けというより、個々の作文の「評価」として使われていることが多いので、使用頻度の「実態」が必ずしも「名前」と一致する訳ではないことには注意が必要。参考までに、snapshotで保存した画像を貼り付けておきます。(expository essay.png 直
argument essay.png 直)
過去ログでは、この辺りも参考になるでしょうか。(http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20091216)
ライティングを専門と謳う者としては、このテキストに載せられている解答例の英文の方を皆さんにお読み頂き、その可否、是非をこそ考えていただきたい気持ちなのですが、著作権等の問題もあるので、この分野に興味関心のある方は、19日の「山口県英語教育フォーラム」などで直接お会いした時にでも情報交換できればと思います。

高1進学クラスは、助動詞と時制のズレの「肌触り」「実感」をハンドアウトにある例文で確認してから、横綱単独の過去形の復習。

  • Can you pass me the rice?

のイメージが湧かなかったようなので、テーブルマナーの話しも交えて、制空権の比喩から英語の敬意表現に言及。

  • Can you pass me the pepper?

を、

  • Could you pass me the pepper?

で丁寧さを表す方法と、

  • Can you reach the pepper?

と、表現を遠回しにできる動詞を選択することで、丁寧さを表す方法とがある、という解説。
ここまでやっておけば、先週の段階で副詞節を導く接続詞の用法で、過去完了形を既に何例も何例も吟味しているので、仮定法の理解にはそれほど苦労しないでしょう。そこからは、用例の生き直しとシャトルランを経て、恒例の「流し素麺の三角飛び蹴り」の図解で駆け抜ける算段。さて、今年度の一年生はどうなりますか。
次回への宿題として、番付表での活躍場面の多い、ed/en形のうち、「規則変化」をする動詞の類型化。『エースクラウン英和』の学習ページにある規則変化をする動詞の過去形を発音と綴り字の双方から分類したマトリクスを参考にして、動詞の綴り字と発音の共通点を観察から見つける作業です。(授業で使ったstripsの写真はこちら→P1000219.jpg 直) 
ちょうど商業科の1年生は完了形を扱う課に入るところなので、「不規則変化」をする動詞の活用表に入りました。 “sleep – slept –slept” などと斉唱でやるわけです。でも、不規則変化する動詞に気を取られていて、基礎基本となる「規則変化」する動詞が身につかないのでは本末転倒ですので、「規則変化」する動詞の綴り字と発音を併せた指導は繰り返しその重要性を呼びかけたいと思います。(過去ログ参照→ http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20110928)
普通科3年の再入門講座は、小結の助動詞。いわゆる「受け身」「受動態」です。by + 動作主の説明に使ったGraham Bellの発音練習を少し、visitの受け身の例文にあった、touristsの発音練習から、tour, tournamentの解説をして、練習問題へ。

フォーラムの準備でバタバタ、じたばた。Dance while you can. ということだね。
買い直し、買い戻しの書籍が届き始める。

  • 國弘正雄 編著 『改訂版 英絵ハンドブック 名詞編・動詞編』 (パナジアン、1974年)

この腰帯には鳥飼玖美子さんの推薦のことばが書いてあるのを発見!ようやく、ハンドブック3冊が揃ったことになる。

  • 中村保男 編著 『英訳日本語らしい表現 600 「花よりダンゴ」を英訳すると…』 (日本英語教育協会、1986年)

これは、『サクセス和英』の増補とでもいうべき新書。項目数は少ないが、その分解説があるので、得るところは大きい。

  • 『フランダースの犬 英検3, 4級レベル やさしい英語で楽しむ世界名作シリーズ』 (日本英語教育協会、1984年)

retoldはSherry Jo Reniker氏、訳注は浅山龍一氏。
浅山氏の序文からことばを引いて、本日は終わりたいと思います。

ベルギーのある地方のことを題材にした作品なのですが、当時のイギリス人の心を大きく揺り動かしたようです。社会が発達する中で、大事なものが失われつつあることに気づいたのでしょう。人々は争ってこの本を読み、涙するのでした。それは貧しくとも美しい心を持つ者たちへの感動と、そういったものを失いがちな自分たちの恥じらいの涙であったと思います。そして今日まで世界中の人たちに読みつがれているのも同じ理由からではないでしょうか。
古くて難解な英文を、原文の味わいを失うことなく、みごとに現代英語によみがえらせていただいたレニカー先生に心から感謝したいと思います。そして、この本が皆さんの忘れられない一書となっていただければと願ってやみません。

本日のBGM: Sleep Song (Graham Nash)