捨てられないもの

山口国体の総合閉会式も無事終了。
紀子様に久しぶりにお会いした。枚方の国体以来かな?
他県を見送った後は、山口県選手団の解団式。天皇杯、皇后杯を囲んでの記念撮影に続いて、県知事の胴上げに加わって来ました。
正業は、中間考査に向けて国体期間に与えてあった課題のフォロー。
商業科1年は、「四角化ドリル」を踏まえて、Charlie Chaplinの題材で実践、板書してモデルを示す。
指示語、代名詞での受け継ぎ、名詞の単複と動詞の呼応、接続詞andを利用した形容詞のペアによる意味の類推などなど、を解説し、チャンクの切り出しを行ったり来たり。ただスラッシュで切って、先へ、先へと進むのではなく、

  • Charlie was always on the side of weak and poor people.

であれば、

  • Charlie was on the side of people.
  • Charlie was always on the side of people.
  • the side of weak people
  • the side of poor people
  • the side of weak and poor people
  • on the side of weak and poor people

という切り出しの「仕切り直し」を求めています。
今日は、形容詞の補足。「反意語を援用した語義の理解」の導入で、weak に対して、strongを、poorに対して、richとwealthyを指摘。Nationやおかじゅんに怒られそうですね。
いわゆる「アウトプット」を急いだり、「アウトプット」を課すことによって理解を促したりする前に、「意味処理」と「形式の処理」とを保証することに重点を置いています。
普通科3年の再入門講座は、「関脇は懐が深い」と題して、いわゆる「進行形」の用例を提示解説。
今週はハンドアウトの例文

  • We are arriving at Shin-Yamaguchi station soon.
  • It is getting colder and colder.
  • The bus is standing in front of our school.
  • The bird is dying.
  • Someone is knocking on the door.

に加えて、

  • Children are throwing snowballs at each other.

を補足し絵に描け、という指示。この用例は20年くらい使っているように思う。名詞の数と、「進行形」の、繰り返し、スローモーションまでを説明。
同じことを進学クラスの1年生でもやらせてみました。
こちらのクラスは、国体期間で私の授業がない間、サイドリーダーを何冊か読んだわけですが、その自分が読んだものの中から、ターゲットを示して、用例を抜き出しノートに整理する課題を与えています。(高1 英語? 「おいでませ.doc 直)

1. 単独の横綱の助動詞 (will, can, must, may ) + 付き人 (原形)
2. 単独の大関の助動詞 (have / has) + 付き人 (-ed/en形)
3. 単独の関脇の助動詞 (be =is/am/are//was/were) + 付き人 (-ing形)
4. 単独の小結の助動詞 (be = is/am/are//was/were) + 付き人 (-ed/en形)
5. 横綱+大関の合体ロボ攻撃 (will have –ed/en形 など)
6. 横綱+関脇の合体ロボ攻撃 (will be –ing形など)
7. 横綱+小結の合体ロボ攻撃 (will be –ed/en形など)
8. 大関+関脇の合体ロボ攻撃 (have been –ing形など)
9. 大関+小結の合体ロボ攻撃 (have been –ed/en形など)
10. 横綱+大関+関脇の合体ロボ攻撃 (will have been –ing形など)
11. 横綱+大関+小結の合体ロボ攻撃 (will have been –ed/en形など)
12. それ以外の合体パターン

生徒によって、読み終えた本が違っていたり、かぶっていたりするので、当然、抜き出した用例にはパターンによるバラツキがあり、用例を見つけられないこともままあります。それこそがこの課題の狙いです。理論的には階層性と形あわせのルールに従って、全ての組み合わせが考えられますが、実際にその全てのパターンが同じように重要であるわけではありません。

  • よく使われる組み合わせとそうでない組み合わせがある、ということ。
  • それぞれのパターンでも「典型例」と「そうではない例」がある、ということ。

を実感できるまで、この年度内でさらに何回か、この作業をしていくつもりです。
この作業では、他の生徒が読み、抜き出した用例を参考にして、自分のノートに補足していくわけですが、自分が読んでいない本の例文だけでは、「意味内容」がよくわからないことが普通です。まず、自分自身がサイドリーダーを読んでノートに抜き出した英文がどんな場面で出てきたのか、くらいは頭に残っていないと、他の生徒からの質問には答えられないように仕向けています。一度読んで安心ではなく、何度も読み返し、重ね塗りのように理解を厚くしていくことを期待しています。
一定時間で用例を確認させた後で、典型例の補足。
「小結+付き人」としての、<be + -ed/en形>で抜き出した用例では、主語にあたる名詞を四角化させ、抜き出したこの文の前に、この四角化した名詞がどのように出てきたのか、それを再確認して下さい、というさらなる重ね塗りの指示。情報構造、とか、旧情報・新情報などといわずとも、レディネスは作れるでしょうから。
今日の授業では、<大関+関脇の合体ロボ攻撃>を迎え撃つための補足で、

  • I’ve been studying English for years, but I can’t speak it well enough.
  • Who has been using my iPad?

という例を与えて、「活動そのものにスポットライトを当てる」という肝を解説。
その後、課題の「その2」、として与えてあった、「接続詞」に焦点を当てて、

  • by the time と来たら、もう、「大関単独の出番がありそうだな」という予感がするでしょ?

と、「番付表」を活かす補助線を与えておきました。
「助動詞の番付表」は、初任校で始めて以来かれこれ20年以上授業で扱っているのですが、<be + -ing>の活用が一番厄介だと感じています。口頭でのドリルでも、いわゆる「タスク」での計画された自発的発話でも、be動詞の脱落というか欠落を完全に防止することができない生徒がいます。日本語の干渉といってしまえばそれまでなのでしょうが、動詞と形容詞、動詞と前置詞といった品詞とその働きはいつかどこかで整理しておかないとダメなのだと思います。

福山の山岡大基さんのサイトで、助動詞という呼称で指導するのではなく、「強動詞と弱動詞」という枠組みを用いての指導が提案されていました。(http://hb8.seikyou.ne.jp/home/amtrs/anfieldroad_2%283%29.html)
山岡さんの提案を読んで、自分が「番付表」を作ってきた過程を振り返る機会を得たように思います。深謝。
私の「番付表」という実践では、「位を持った力士」と「その付き人」という枠組みで「力関係」を示し、形あわせのルールを説明しています。さらに、「力士の位」にも階層性があることを示し、複数の力士が共存する際にも、形あわせのルールに従うことを徹底しています。

  • 自分の方が位の高い助動詞であれば、自分の直属の付き人の形を自分に合わせることが出来る。
  • 形あわせを自分の思い通りに出来るのは、自分の直属の付き人のみ。
  • 自分より位の高い助動詞がいる場合には、自分も頭を下げ一歩退いてその助動詞の付き人として形を合わせる。
  • たとえ形を合わせたとしても、自分にも助動詞としてのプライドがあるので、自分よりも位の低い助動詞は、自分の直属の付き人として形あわせを要求できる。
  • 力士としての助動詞が複数存在する「相撲部屋」では、番付の一番上にいる「部屋頭」には、その部屋のリーダーとしての責任があり、疑問文では自分が表に出て、否定文では「そうなのか、そうじゃないのか」の目印 notを従える。
  • 三役以上の助動詞と、平幕のdoは一緒にちゃんこを食べてはいけない。
  • でも、「平幕」の do もいつかは「横綱」に、という夢があるので、付き人には<原形>を要求する。

などと、折に触れ相撲の話しを交えてルールを組み立てて行きます。
読解の際には、面倒でも慣れるまで、一々、最も位の高い助動詞の前でとじかっこをつけさせ、付き人との形合わせを図示させています。作文の際には、書き上がった英文の「検算」で同じことをさせています。私の文法指導の基本は「四角化」での名詞句の限定表現の拡充整理、「とじかっこ」からの拡充整理のための「番付表」徹底、が基本となっていることを再確認しました。この馴染みのある枠組みも、いつか捨てられる日が来るのでしょうか。

大きな作問が1つ終わったので、自分のご褒美に、

  • 荒川洋治 『昭和の読書』 (幻戯書房、2011年)

を。「書評空間」で、阿部先生が取り上げていて、気にはなっていたのですが、読み始めると戻ってこられなくなりそうだったので、ここまで我慢していました。学級文庫にはいつ入れられるかなぁ…。
夕飯は、鯵と烏賊の刺身。
娘が手を伸ばした先に醤油の皿があったので、危機を未然に防ごうと皿ごと取ろうとして、ランチョンマットの上で醤油を零し、妻に叱られる私。
菊姫のひやおろしで慰める。1週間くらい経ってちょうど良い感じにこなれてきたのだが、四号瓶だとその頃には飲み終えてしまうのが残念。って、また買うんだけどね結局。

本日のBGM: もったいないけど (ハンバート ハンバート)