Rarity bites.

国体中国ブロック終了。
先週の強風波浪での順延から一週経っての再レース。
結果から言えば、私が監督している成年男子は4+と1Xで出場権を勝ち取り、全県枠の2Xを含めて3種目全ての千葉国体本選出場となりました。が、正直なところ満足できるレースとは言えませんでした。特に、度重なるレーススケジュールの変更で、選手の精神的・肉体的な疲労が刻一刻と濃くなっていくのを見るのが忍びなかったです。先週の代表者会議の席上で、誰も言わないので、私が最後に、

  • 9時のレースを7時半に繰り上げるのが可能なら、7時とか、6時半とかもっと早くできないのか。そうすれば、多くの種目で1回戦が消化できる。

という旨の発言をしたのだったが、会場のあちこちから、

  • そんな早くにレースをするなんて、この監督は選手のことを考えていないのか!

という聞こえよがしな反応があったのをよく覚えています。
私としては、できる時にやらないと次がある保証はない。そうなったら、選手にはもっと過酷な条件下でレースに臨んでもらうことになる、という思いがあったわけです。振り返ると、唯一、良好なレーンコンディションだったのは、先週の土曜日の公式配艇練習の時間帯だけでした。競漕委員会を早めに招集し決断すれば、夕方から日没までに、1回戦だけでも実力を発揮できる公平なレースができたかも知れません。所詮はタラレバですが…。
以下、私の個人的な備忘録ですので、県の協会の公式見解などでは一切ないことをお断りしておきます。

・ レースが行われる日曜日が2週連続の強風波浪の予報で、レース日程の繰り上げとなったが、その協議は前々日の金曜日でもなく、前日土曜日の各県チームの出発前でもなく、土曜日午後の艇運搬のために各県が次々と現地入りする、コース開放となっている時間帯で、到着した各県理事長に個別に連絡をし、招集となった模様。
・ 先週の再レース決定に際しては、ふるさと選手など、前泊ができず、当日の朝8時にしか現地入りできない選手がいたことから第一レース開始時間を11時と決め、配艇練習をその日の朝の10時までに設定し、その選手の参加する種目のスタート時間を12時20分とするという、ギリギリの判断を踏まえていたはずなのだが、前日の午後になって「第一レースの開始を11時から6時半に繰り上げる、該当種目のレースは最後に回すので、それに間に合うように現地入りさせることは可能か」、という要望というよりは通達のようなものが県理事長にあり、選手に無理を言って夜中に自家用車で現地を出て、6時に現地入りをしてもらうという不測の事態となった。
・ 前泊で現地入りしていた他のクルーも第一レース開始の6時半への繰り上げに対応するため、配艇・レースアップを鑑み、起床が3時半、朝食が4時で対応した。(宿の方々には、無理なお願いを聞いて頂き感謝の言葉もない。)
・ まだ風、波の比較的穏やかな予報が出ていた時間帯にもかかわらず、6時の段階で風も波も治まらず、競漕委員会が開かれ、レース開始を見合わせ、8時の時点でまた会議を持つことに。
・ 距離を500mに短縮し、レース開始を10時まで引き伸ばす決定がなされた。10時まで待って、ダメだった時の対応は、その時点でまた協議するが、「成年に関しては別日程での再々レースが難しいので、今日の2時までに決着をつける。その方法としては、エルゴも含めて検討」という競漕委員からの発言を信じて、待つことに。一方、待たされ、レースを引き延ばされる側の選手の集中力は落ち、疲労が目に見えて高まっていく。
・ 10時になっても、レーンコンディションはほとんど改善しない中、競漕委員会で再開の決定を下したことにより、各艇はレースアップに入る。ところが第一レースの成年女子1Xではスタートに揃えられない艇があり、時間が押す中、浸水の危険もあり全艇帰還の指示が出て、レースアップをしていた全種目全クルーが、揚艇となった。先ほどの競漕委員の発言をもとに、成年種目は「エルゴでの決着」を覚悟する。
・ 風、波の治まる気配のない中、12時半にレース再開という競漕委員会の決定が出る。レース順を大幅に入れ替えて、12時半に成年の大艇 (4+) からレース再開をすればレースができるという判断がなされたようなのだが、この判断を下す前に、種目の入れ替えの対象となる成年も少年も各種目の代表監督に打診はなく、参加選手の声を反映する窓口として開かれているのは、競漕委員会に出席できる各県理事長のみという状況。
・ その競漕委員会の決定と並行して、各県高体連を通じて少年種目だけ別日程で行う案の打診、理事長を通じて再招集の難しい成年種目はエルゴによる決定の打診など、水面下 (?) での動きが行われた。
・ レースに向けてランニングやストレッチなどのアップを始めなければならない約1時間前の11時半の時点でも、審判団への指示や準備も全く行われる様子がなく、県の理事長を通じて、「本当に12時30分にレースを再開するなら、早く正式にアナウンスを」、と要望し、11時40分の時点で再開の回答を得て、クルーにアップの指示を行う。

という経緯で再開の第一レースは、県の命運のかかった成年男子4+。どのクルーも経験値が高い、ベテランが乗っているにもかかわらず、なかなか5艇がスタートに揃えられない状況で、奇跡的にスタートのコールが掛けられる瞬間がありレーススタート。大きな水飛沫を何度もあげながら、500mのスプリントと言うにはあまりにもうねった艇の挙動。本県はスタート時こそ最下位ではあったが、そこからどんどんスピードを上げ、波で思うように漕げない他艇を抜き、トップでゴール。安堵の瞬間。選手のポテンシャルの高さと、何が何でもここで決めるぞ、という選手の強い気持ちで勝ち取った1位と言えるでしょう。

このまま順調にレースが進めば良かったのですが、困難な状況は解消とはいかないままレースだけが進んでいきました。

・ 再開の第1レース発艇からも波浪は治まらず、各艇は強い風と波の影響を受け、スタートに艇がなかなか揃わないだけではなく、バウや二番などは、発艇コールを待つ間、ずっと全力に近いサイドロー (あるいはバックロー) を続けていなければならないこと。
・ 何分か苦戦しながらも、5艇が揃ってスタートにつけられないと判断した時点で、レース順を入れ替える指示が水上で出されるため、スタートは8分間隔で再レースの再開を決めたものの、実際には15分またはそれ以上かかっており、後に続くレースに出るクルーは更なる待機とレースアップとを様子を見ながら続けることを余儀なくされ、デッキスペースが閉じていない艇の規格 (2X, 4X+) によっては浸水の影響をひどく受けること。(最終レースへと先送りされた少年女子4X+のレースでは、浸水により、沈没寸前で、ペア漕ぎをしつつ、ゴールしたクルーもありました。同じ「規格艇」でも戦闘力の違いが出ていたように思える。)
・ 水面の強い反射と波浪でうねりの谷に入る白ブイがほとんど見えず、斜行・蛇行するクルーが続出し (レースによっては当該クルーの除外、着順によっては再レースとなっ) たこと。

とはいえこの「除外と再レース」の対象になったのが、本県の成年男子1X。レース後、被害のアピールをし、赤旗から協議の末、3位と4位での再戦となり、マッチレースを制し、本選出場権を獲得しました。「鍛え方が違うな」と思ったのは、T選手とY選手。波をものともせず艇を動かしていました。
こうして書いていてあらためて感じますが、本当に過酷な条件下での「選考」でした。競漕委員会としても苦渋の選択で、審判団もレースのコントロールが難しかったことでしょうが、何よりも、選手が本当によくやってくれたと思います。
先週からレースが引き延ばされ、さらには前日の急な変更で、未明に起床し、準備をしたにもかかわらず、度重なる先送りで2回もレースアップをして、4時に軽く食事をしてから、補食以外まともな食事もとれない中、12時30分に再開されたレースに臨み、発艇がすぐにできたレースはまだ良いものの、以降のレースがどんどん押していき、水上で2時間近く漕ぎ続けながら待たされ、文字通り「疲弊した」中、レースを漕ぎきった選手たちには、結果を問う言葉ではなく、労いの言葉こそがふさわしいでしょう。
本選出場枠をとれた種目も、クルーの実力を讃えるとともに、「幸運」にも感謝します。大きな波のうねりが、他艇ではなく自艇を飲み込んでいたかも知れないのですから。
本選出場までいったんは各所属チームに戻って、チームの目標を達成するために更なる研鑽を積み、再度集まる千葉では一つでも上の順位を狙って行きたいと思います。

午後4時過ぎに艇の積み込みを終え、遅い昼食をとり小休止。私はふるさと選手を空港まで送り御礼。帰路も一人で運転。
帰りは日没後の運転が長くなるので、SAを選び「早め・こまめ・長め」に休憩をとり、おおよそ6時間半かけて自宅まで。私の自宅は県の真ん中くらいに位置しているので、幸いにも日付が変わらないうちに到着しました。生徒引率のバスや車は、そこからまだ距離があるので、さらに1時間から2時間はゆうにかかっているでしょう。
妻がまだ起きていてくれたので、シャワーだけ浴びさせてもらい、たまったメールの整理をして、就寝。
翌朝は、遠い方の湖で9時から艇の積み降ろしのため、7時半にお願いした朝食をいただいて出発。大学生のサポートも得て、1時間ほど格闘した後、私はいったん自宅に戻り、軽くお腹に入れてから、学校に。
午後は自チームの乗艇練習。
約2時間。
インターハイに行く1Xはオールを換えてフィーリングの確認。低レートの精度が低いというか、「ぬるい」漕ぎで喝。
1年生のフロート付き1Xは2時間の放牧。
1年生の2Xは8キロくらい漕いだところで、ペットボトルの水がなくなったというので、いったん船台に戻って艇をつけ、水分補給をするよう指示。再開後、しばらくは順調に漕いでいたものの、私が1Xに指示している間に、少し上流域の何でもないところで「沈」。
この2X艇は、デッキスペースが閉じているので、めちゃくちゃ重いのだが、沈からの回復は至極簡単。カタマランから指示を出す。

・靴から確実に足を抜いたのを確認、艇に掴まりながら艇を返すよう指示。
・整調にリガーを押さえさせて立ち泳ぎをさせている間、バウにオールの向きを揃えさせる。
・艇のガンネルを自分の方に引き寄せるのではなく、自分が向こう側へとダイブするつもりで、大きくバタ足から艇に乗り上がる。
・立とうとか、足をかけようとかせずに、とにかく銀しゃりにのった大ぶりの寿司ネタのように身体が艇に被さるように乗せ、向こう側のオールをとるよう指示。
・オールがとれたら、乗り込んだ手前側のグリップと重ね、艇を安定させたまま、向きを直しレールに立ち上がるつもりで姿勢を直す。
・シートを直し、着席し、足を直す。
・バウにブレードで水を押さえてバランスをとらせているうちに、整調にも同様に、「寿司ネタ」のように艇の上に身体を乗せさせる。
・以下、バウと同じ。

回復後も、片道2kmをしっかりと漕がせてから揚艇。元気で何より。水を出して、艇を拭き、オールをなおして、ストレッチ。先週は大雨で乗艇ができなかったので、充実したモーションになったことでしょう。今日のような「沈」とその回復を見るに、高校生を指導する者としては、

  • この艇をもっと軽くして、規格艇にしてくれればいいのに…。

と普通に、単純にそう思います。

明日は、10時半から12時まで高2の夏期課外。
その後、1時に学校出発で乗艇練習の予定。
今日はもう早く寝ます。

本日のBGM: Groovin' (The Young Rascals)