「助さん」「格さん」

朝一で、選手を整体に連れて行く。
最後はいわゆる「電気」。気持ちよさそうに寝ていました。身体の歪みは多少良くなった模様。何年もかけて出来上がった歪みなので、いきなりは良くなりません。感覚の修正も併せて行う必要がありますから、まずは負荷の低いメニューで再開。学校へ戻る前に、DEPOに寄りアイシングキットを購入。予算が足りず、クーラーボックスと保冷剤は次回に。選手用に肩胛骨周りや骨盤周辺の機能をサポートするインナーを数社見比べて、UVカット機能の高い某社の長Tだけ購入。各社とも体側から背面に向けて、収縮度の異なる素材を貼り合わせたり縫い合わせたりしているのだが、肩胛骨の動きは前鋸筋によってもコントロールされているので、その部分との連携 (kinematic chain) を考慮しないと気休めにしかならない。(私の場合で言えば、しばらく自分自身のトレーニングはできていなかったので、左の前鋸筋の筋量が利き腕である右に比べて落ちているのだが、乗艇後痛みが出るのはまず、左の肩胛骨の内側あたりの筋肉となることが多い。痛みを和らげるのに一番効果があるのは、ストレッチや背部のマッサージ以上に、左の前鋸筋と肋骨付着部分のマッサージ。)
学校でお弁当を食べさせている間に、準備室で採点と思っていたのだが、学校という場所は、いるだけでいろいろやることは生まれてくるもので、結局、答案用紙の移動のみで終わりました。
時間通りに学校集合・出発。
途中で、1名をpick upし、湖へ。
動きの原理原則だけ伝えて、1年生3人と交互に2X乗艇。
今日は、分漕で2kmくらい連続で漕がせて「ギュイーン」と艇を運ぶことを求めました。
エルゴでできるようになった身体の使い方の確認をし、その後は私と両舷で少し漕げるくらいまで慣れてきた模様。私は舳手の位置から、各人の身体の使い方を観察・助言。

  • ミスを怖がらない。ミスしても、やり直し、漕ぎやめをせず、次の一本に集中して立て直し。
  • 手元やブレードを見ないで、艇の動きを感じよう。艇から教えてもらうことはたくさんある。
  • 腕の力を抜いて、背中を柔らかく。
  • 脚と股関節をきちんと畳んだら、グリップは一番前にいるから、慌てずに、ゆったり。
  • 伊勢エビのひげのようにしなやかに強く。
  • ブレードが水から出る時は「イルカさんご一緒に」。

などというやりとりを経て、交代交代。
最後のひとりは、雨足も強くなってきたのでちょっとメニューを端折って揚艇。
初心者にありがちな「ぶら下がり」方としては、次のような「現象」がまま見られる。

  • 肩の部分に力が入って背中が反り、上腕部と体幹の成す角度が鋭角となって、腹部、とりわけ下腹部が緩む。
  • 大腿部と骨盤には隙間がないが、頭の位置が下がり、尻が逃げ下腿部と大腿部の成す角度と上腕部と体幹の成す角度が大きくなり過ぎ、腹部が緩む。

どちらも、下半身のコアから生まれる大きな力を艇に伝えるには不十分な「姿勢」となっているが、本人はいたって純真に「ぶら下がってます」と感じているもの。
グリップ、指の握り方・力のかかる方向と場所を自覚してもらうために、実際に片方の手・腕で私の指にぶら下がるようにして自分の後ろに体重をかけさせる。上腕部と体幹が鋭角でもダメ、鈍角過ぎてもダメ。鈍角でも、力が抜けず、力の伝わりが感じられる、自分の姿勢・ポジションがあることを自覚してもらう。乗艇時は、これに加えて、

  • インボードとピンヒルの設定によるアークの変化。
  • ハイトとデプスの設定による骨盤と肩胛骨の位置関係の変化。

があるので、初心者ほど、漕手それぞれの「デフォルト」ともいえる骨格に合わせたリギングは重要であるし、自分の身体を感じられるようになり、道具をうまく使えるようになれば、当然リギングの数値も変わってくる。コーチの責任は重い。ということで、自チームでは全て私がセッティングをしている次第。こちらでセッティングを変えた時に、その「感覚の違い」を言語化できる漕手は既に一流。外から観察しても、本人に合っているかどうかを見極めるのがコーチの腕。私は、まだまだですな。
雨足は少し弱まったが、ひとりは自宅まで送り届け、駅でひとり先に降ろして、学校まで。
そこからひとりには傘を貸し、もうひとりは駅まで送り届けてから、帰宅。
明日は、遠い方の湖でインハイ予選に備えたリギングです。
降水確率ではなく、降水量の予報が気になるところ。
こうして本業での一日は終了。
英語関係は、ネット巡回のみ。
「常時英心」でホットな話題を確認しつつヨコ糸紡ぎ。
井上大輔氏のtwitterでのF on F に関する鋭い呟きに耳を傾け、山岡大基氏の書評を読み、「文法」についてしばし黙考。思い出したことがあり、三省堂のサイトでバックイシューのアーカイブから、今井裕之先生の論考を読み返す。やっぱりわかっている人の言葉は違う。
寝る前にもう一度倫太郎さんの「格」の話し。

本日のBGM: Life Is Sweet (Natalie Merchant)