立っているものは親でも使え

今朝は寝過ごして、6時に起床。
まだまだ底冷えのする縁側を通り浴室へ。シャワーを浴び、ガーゼを張り替え、着替えを済ませ、そそくさとおめざと濃い番茶で出校。
今日も今日とて、授業は『王冠』と『金子本』より。
高1は、昨日導入した「今月の歌」の課題から。
私の授業の新たな定番となりつつある、The Divine Comedy の “Tonight We Fly”。今回は、空所補充の箇所に、単語の書き出しの文字だけを与え、第1の聞き取りタスクとして、2回聴き、その都度情報交換。その後、ワークシートの右ページにある、定義 (文) を見て、解答の確定という第2タスク。
ここで、ライブ映像のDVDを鑑賞。欧州で販売されているものなので、教室備え付けのDVDデッキとはリージョンが合わず、PowerBook経由のMini DVI出力というその場凌ぎ。モンスターケーブルがどこかに行ってしまったので、音は少々劣化。スピーカーがSONYのテレビモニターだからしょうがないけどね。
2003年のLondon Palladium、オーケストラを従えてのライブ。演奏も演出もクオリティが高い。金をかけて仕掛ければいいというものではないことがよく分かる、古き佳き時代の3分間のpopsのマジックが込められた楽曲。
今回は、全て名詞を抜き出し、分詞や関係詞での後置修飾の活用を見るのが狙い。その後、空所以外の語の定義をいくつか選び、英語で定義されたものを探し出す word huntへ移行するという第3のタスクで仕上げ。無理にオリジナルの英語定義までは作らせない予定。欲張りません。
合間を縫って、高3の国立大2次試験に向けた個別指導。
400語に満たない3段落の評論文を読み、和文で要約をしたものに、朱を入れる。まだ解答し終えるまでに時間がかかるが、解答内容自体は充分な達成度。模範解答は私が書いて、150字と100字の2段階。特に、メモ・下書きをいったん書き出してしまうと、字数を少なくするのは難しいのだが、行動と目的、原因と結果などの順序を逆転させることで叙述部分の字数が調整できたりすることを示す。テーマのある程度重なる別の文章 (短い方は全訳、長めの方は80字要約) を課し、次回までに解答を作るよう指示。
高2は、『金子本』から、和文英訳。無生物主語の活用などなど。
「うちの父は白髪なので年よりはふけて見えます。」
の英訳を踏まえて、

  • 年よりは若く見える
  • 年の割に老けて見える
  • 年の割に若く見える

の4つを考えてから『大世紀和英』で確認、整理。前置詞の for の用法を『前置詞のハンドブック』で補足。次回は、この裏返しで、

  • 見かけよりも若い

で復習の予定。
『王冠』で1年生で扱ったばかりの、

  • 彼の手紙を読んで、彼女は少し不安になった。

の英訳で、

  • His letter made her a little anxious.

を得て、そこから補語となりうる形容詞の候補を整理。uneasy / upset / uncomfortable / restless などをいつ、どのように仕込むのか?と問いかけ。『P単』と多読しかないでしょう。
「手紙を読んで…」という和文から、無生物主語を引き出すというポイントを確認しておいてから、前時までに扱っていた、

  • The newspaper account gave me the impression that he had nothing to do with the bribery case.

という英文の対訳がどうなっていたかを思い出させる。

  • 新聞の記事を読んで彼がその収賄事件に関係していなかったという印象を受けた。

結局、目の付け所だけで解決する問題ではなく、動詞を的確に選択できる力と表裏一体なのだ。
「詳しく調べてみた結果、この機械がどこか具合が悪いということがわかりました。」
は、無生物主語であれば、

  • A close examination revealed that something was wrong with this machine.

と、revealという動詞の選択が鍵であり、

  • When I examined this machine closely, I found that something was wrong with it.

という節を使った、人主語での文との対比を済ませた上で、
「詳しく調べたけれども、この機械のどこが具合が悪いのか、ということはわからなかった。」
へと発展させる。節で人主語の、

  • Even though I examined this machine closely, I couldn’t find what was wrong with it.

でまず着地点を均しておいてから、さらに無生物主語に辿り着けるかを問う。

  • (?) A close examination could not reveal ….

のように、無生物主語での助動詞can の制約を考えた時に、助動詞に頼らず「不首尾」をどのように表すことができるかという思案のしどころ。ようやく、一人、”fail” を思いついたので、

  • failed to reveal

まで漕ぎ着ければ、あとはツメを誤らなければ完成。
日本語の「どこか悪いところがある」「どこも悪いところがない」という「場所の比喩」に縛られず、

  • somethingもnothing も主語だったのだから「名詞」じゃないか。

と気がつけば、「どこが悪いのか」という日本語も、

  • what was wrong with this machine

という疑問詞を主語に立てる表現へと転換できる。examineとstudyの語義をそれぞれ確認。

「真夜中すぎまで寝つけませんでした」
の「真夜中すぎ」では、until after midnight がスラスラ出てくる高校生はかなりの英語力だと指摘した上で、「でも結局は、 afterとbeforeの運用力」を力説。

  • 昨日→一昨日→一昨々日
  • 明日→明後日→明々後日
  • 去年→一昨年→一昨々年
  • 来年→再来年→再々来年

の確認から。
「騒音がひどくて」のところは、現代の英語では、 terrific よりは terribleの方が誤解が少ないだろうと思う。
主語と名詞の徹底が一段落したので、次回もコテコテの明示的指導「1日で鷲づかみにする関係詞」をやって読解へ。

放課後に教材見本を送ってくれた出版社の営業の方が来校。九州地方の営業の帰りに、寄ってくれたらしい。全国各地を回られているとかで、I先生、Y先生、H先生など、私もお世話になっている先生方の名前が出る。採択状況や、現場の求める教材像など、おまけの情報も。
その後、卒業判定会議。
明日は、3年生の学年指導。記念講演など。
私の場合は、高3の平常授業がなくなった後も、高1、高2で15時間あり、空きコマがあまりないので、学年行事を入れられると結構辛いものがある。
帰宅後は原稿書きを少々。和英辞典の読み比べを少々。
煮詰まって、読書。

  • 『発達 No. 121』 (ミネルヴァ書房)

2010年の冬号。特集は、「発達のなかのことば」。面白い、重たい特集だった。
目次的には、

  • ことば --- この重宝にして困難なるもの
  • I ことば以前〜ことばの誕生期
  • II ことばの獲得・形成期
  • III 一次的ことばから二次的ことばへ

というもの。昨年他界された、岡本夏木氏追悼号でもあるらしい。
巻頭論文は、浜田寿美男氏。一部を引く。

  • おとなになってしまえば、ことばは当たり前のものになって、それを語彙と文法というようなかたちで整理してしまいます。しかし、そのように整理されるのは、出来上がってしまった状態のことばを前提にしての話しであって、その根元を洗えば、ことばの本来はむしろ人と人との対話という構図のうちにあることに気づきます。端的に言ってしまえば、人はことばを持つことで対話できるようになるのではなく、逆に人は対話的な関係を生きているがゆえに、その関係を土壌にして、ことばは生まれてくる。逆説的に聞こえるかもしれませんが、素直に人間のことばの現象を眺めればそのことは明らかです。(p. 4)

対話性と社会性の綱引き、あるいは綱渡りか。

本日のBGM: 春のうた (原田知世)