men, women and grammarians

週明けの月曜より中間テストが始まった。
本業は自主練なので、作問と評価に集中。
高1の英語I では「達成度」の洗礼。大問のI、IIは靜式。I は楽勝でできても、IIは英語が残っていないとダメ。III は英文中の指定箇所を和文英訳。取り組みが甘い。IVで対話文の聞き取り。ライブリスニングですから私が一人二役。Vは『短単』の例文完成空所補充5題。うち、2題は書き取り。といっても「丸暗記」で対応可能です。やっぱり空所に補充すべき英語が1語だけではなくなると途端に正答率が落ちるね。IVは『エースクラウン』のカタカナ語の発音とアクセント。VIIで「名詞は四角化で視覚化」など授業中の合い言葉の説明。具体例を挙げて、という部分で、授業をどれだけ消化吸収しているかがわかるもの。VIIIは規則動詞の過去形、発音と綴り字のマトリクス。これは、本当に全国の高校1年生に徹底させたい項目ですね。IXは初見の英文の中で指定された語 (動詞、形容詞の活用、名詞の単複) の形を問うもの。
まあ、素材が中2レベルでも、十分に英語力を評価できる問題です。
高2の英語II は入試での読解問題を素材文としたテキストになったからなのか、同じ靜式でも撃沈の者多し。復習が足りないのだよ。復習が。人数が人数なので、テストはやらなくても個々の英語力はわかるのだが、取り組みを変えてもらうためにもこのテストを活かしてもらいたいものだ。説明文のボディーの部分、具体例が示されるところで、「本文で示された例以外の適切な具体例を考えて、日本語で答えよ」という設問を久々に入れておいた。主題が本当にわかっていれば、パラレルな具体例の想起もできようというもの。
高3の英語IIは受験演習なので、大問Iは昨年と同様に指示語や因果関係など「というのはどういうことか?」をしつこく問い重箱の隅をつつきまくる出題。対して大問のIIは、超大雑把。IIIで文章中の動詞の時制や準動詞の語形を全て適切なものに変える問題。高1と形式は同じですが、問われる項目は複雑です。IVでは、授業で解いた4択の文法語法問題を和文英訳の形式で出題。続いて、Vで「一度やったことのある問題だからできるっていうんじゃ、英語力の評価にならないけれど、1問12秒以内のペースで解くくらい問題数が多ければ、英語力の片鱗くらいは顔を覗かせるのではないでしょうか」という出題。全て4択で文法語法の空所補充が40題、同意表現での書きかえ選択が15題、怒濤の計55題。
明日の高2英語Gの作問を終え、最終日の高1オーラルのオリジナルのスクリプトを書き上げ、校外巡視。
いつもより早めに帰宅。
県立図書館へ。
開架で結構なスペースがあるのだが、目につく英語関連のセレクションは貧弱。書籍を検索して書庫にあるものをいくつか出してもらって借りてきた。
まずは、福原麟太郎 『日本の英語』 (研究社選書、1958年)

  • 岡倉由三郎先生は、何か教室で雑談のついでにネスフィールドで価値があるのはEnglish Grammar: Past and Present くらいのものでしょうと言われた。そして、ConditionalだとかSubjunctiveだとかいう面倒なことを言わないで、Suppositive Moodとしたらどうでしょうなどと言う話をされた。一体教室の雑談で和漢洋を通じて音韻、語原、文法論など、広汎な例をあげては、多分先生の得意なかどかどを話して下さった。(中略) そのころPoetic Dictionなど Wyldのパムフレットをすこし読んでいた。西脇順三郎氏がまたしきりにワイルドの話をするので、大塚さんにワイルドの本貸してくれないかなあ、と言ったら、君にはむつかしすぎると答えたので、止めにした。そこで私の文法史は終わりである。/ 私に文法論的な考え方の基礎を与えてくれたのは、やはり岡倉先生の教室における雑談であった。(pp.138-142, 「英文法を学んだ頃」)

カードの帯出一覧を見ると、1958年から59年に学生中心に借りられていた模様。最後は1972年になっていました。
他には、小川芳男・前田健三『英単語物語』(有精堂、1982年)、毛利可信『英語の背景を読む --- 文化コンテクストの話 ---』 (大修館書店、1987年) など計10冊。3週間でどこまで読めるかしら。
1冊、禁帯出のものがあったので、書類に記入し複写の許可を取る。

  • 毛利可信『ジュニア英文典』 (研究社、1973年)

一応、全体の半分までが複製を許されているので、普段気になっている項目を重点的に。本当によくできた英文法書だと思う。当時はこれが高校初学年用だったとは信じがたい。

  • 本書で扱う事項はすべて英文法の基礎ではあるけれども、解説にあたっては、常にこの原点を意識し、あるいは原点に立ちかえり、そこから出発して、統一的に、有機的に説明するようにつとめた。つまり、全巻がひとつの体系としてまとまり、説明はひとつの原理で首尾一貫するようにした。基礎の本だからといって、安易な行きあたりばったりの説明をしてはならない、むしろ、基礎であればこそ、ことばの本当の生きた姿を描き出すような解説法をとるべきだというのが著者の主張であり、とくに<時制><仮定法><法の助動詞>の説明にあたり、この主張を強力に実践し、スッキリした説明をするようにつとめたつもりである。(はしがき)

粗製濫造の目に余る昨今の英文法本や入試対策本とは比べものにならない。山貞の『新自修英文典』など研究社の復刊シリーズに、この一冊が加わることを期待したい。英語ということばが本当に掌にある人の筆による極上の英文法の参考書。しかも入門書にして精解・精説なのだから。

  • Grammar is something to grow with.

といったのは誰だったか?
今年も、英文法のレファレンスということで、不本意ながら渋々の消去法による選択で『フォレスト』(桐原書店) を生徒に持たせているが、いわゆる「準教科書」などといった劣化コピー本は持たせず、参考書本編を持たせ授業中には例文と挿絵・図解などを参照活用している。「イメージ」というものが常に理解を助けてくれるとは限らないので教師のフォローが不可欠である。それ故に、準教科書ではなく、参考書を使って授業をした方がよいと常々主張しているのである。
たとえば、高2で不定詞を扱った際に、『フォレスト』を使ってseem/appearの語法・文型を確認したのだが、その解説に添えられたイラストに大きな誤りがあることに気づき、生徒に修正させた。これはイラストを描いた人に罪はないだろう。著者がこの "seem"という語彙項目で本当に大事な事柄を伝えきれていないが為のミスであり、その意味では深刻なミスだともいえる。大ベストセラーを謳い、何回も改訂を進め、何十万人という高校生がこの教材を所有し、何百人という英語教師の目をくぐってきたはずだからこそ。お手元に『フォレスト』のある方は該当箇所を探してみては如何?
こういうイラストの効き目に関しては、今は絶版だが三友社から以前出ていた『よくわかる新高校英文法』が日英語の比較対照も相まって出色だったように思う。教師になりたての頃、この学参が旧ソ連の教本 "Situational Grammar" をお手本にしていたことを知り、頑張って原典も入手したのだが、今やどちらも手元にないのが残念。お持ちの方で譲って頂ける方はご連絡をお待ちしております。
図書館で借りた他の本をちらちら眺めているうちに夕餉。
暑くなってきたので、ガッツリと蛋白質系で攻めてみた。
明日は写真撮影。採点もほどほどによく寝ておきたいと思います。

本日のBGM: Grow Old With Me (anthology version) / John Lennon