euphemism むずむず、憚り、名ばかり

テスト前日ということで練習はオフ。
引っ越して来てから初の町内会の行事となる清掃活動に備えて昨日からスタンバっていたのだが、生憎の雨で順延とな。拍子抜け。
浮いた時間で中間テストの作問実作。
二つ完成。高2の英文和訳問題のパラレルな素材を、和文英訳の教材から見繕ったりしてみる。昔の教材って良くできているなぁと感心すること頻り。
思いの外、早く仕上がったので、学級文庫用のサイドリーダーの英文比較検討に移行。
臨機応変、O. ヘンリー。短編で、”The Gift of the Magi” あたりの比較から。

  • 小倉多加志訳注、『対訳オー・ヘンリー』 (南雲堂、1957年)
  • 松澤喜好監修、『オー・ヘンリー傑作短編集』 (IBCパブリッシング、2007年)
  • The Gift of the Magi and Other Stories (2000), Penguin Readers I, Longman

の冒頭の英文を比べてみた。例によって、自分が作者になったつもりで手書きでノートに写していく。
やっぱり、原文が一番良いのだなぁ。子ども向けのものとはいえペンギンのシリーズはmonotonous。既に「物語」の体をなしていない。いくら簡単な英文だといっても、これで英語を読んだ気になってはダメだろう。短編の名作だからこそ原文の雰囲気、登場人物の息遣いの聞こえるretoldが望まれるところだ。
この短編を取り上げたのには、狙いというか色気というか、今後の予定があるためである。

  • Chicken Poop for the Soul: Stories to harden the heart and dampen the spirit, Pocket Books, NY

という、David Fisher編著のパロディー集(1997年刊)に、

  • The Gift of Love (by Kathleen Fuller)

という現代の設定での『賢者の贈物』が収録されていて、これをなんとか高2か高3の読解で使いたいと思っているからである。パロディー故に、ブラックユーモアというか、内容からすれば「賢者」ではなくてむしろ、「愚者」なればこその感情移入を促すものなのだろうが、それも原典である”The Gift of the Magi”がわかっていればこその面白さ。日本の高校生には、まずは、O. ヘンリーの筆力の片鱗から。小倉氏の翻訳と註釈を読み、あらためて、「訳注もの」の良さを認識。どうすれば早く英語ができるようになるのか、昔の人はよく考え抜いていたものである。
小倉氏の「まえがき」より一部を引く。

  • 彼の作品には凡ゆる下層階級の人間が出てくる。殊にNew Yorkの下町の人々が出てくる。そしてそれらの人物は皆しっかり大地に根をはった生きた人間である。極ありふれた市井の出来事が、ほんの些細なepisode的事件が、巧みな話術と生きた言葉で見事に描き出される。/小説の重大な要素の一つは、飽くまでも面白いことである。作者の視点から一貫して構成された筋モチーフが緊密な連関をもち、そこに性格・思想・外形の明確に端的に描出された人物が配置されて、これが巧みな話術によって発展されねばならぬ。

子ども向けに書き換えられた作品がこの用件を満たしうるか、サイドリーダーの制作者だけでなく、多読の推進者にも耳を貸してもらいたいものである。

本日のBGM: People Like Me, People Like You (Clare Bowditch & The Feeding Set)