剣呑

このところ文字指導の話しを少し書いているのだが、高校を主として教えているといろいろなことが当然視されてしまい、問題の所在がなかなか見えないものである。
私の場合は、「痒いところに手が届く」以前に、「ここ、本当に痒くないですか?」ということを声高に叫んでいるような感じですから、険難性といわれればそれまでです。
次にあげるのは、元ネタが特定できないが、以前話題になったもの。

  • Aoccdrnig to a rscheearch at Cmabrigde Uinervtisy, it deosn't mttaer in waht oredr the ltteers in a wrod are, the olny iprmoetnt tihng is taht the frist and lsat ltteer be at the rghit pclae. The rset can be a toatl mses and you can sitll raed it wouthit porbelm. Tihs is bcuseae the human mnid deos not raed ervey lteter by istlef, but the wrod as a wlohe.

この日本語バージョンは、anfieldroadさんのブログでも紹介されていた。

こんちには みさなん
おんげき ですか?
わしたは げんき です。
この ぶんょしう は いりぎす の
ケブンッリジ だがいく の 
けゅきんう の けっか 
にんんげ は もじ を にしんき
する とき その さしいょ と 
さいご の もさじえ
あいてっれば
じばんゅん は めくちちゃゃ でも
ちんゃと よめる という
けゅきんう に もづいとて
わざと もじの じんばゅん を
いかれえて あまりす。
どでうす? 
ちんゃと よゃちめう でしょ?
ちんゃと よためら 
はのんう よしろく


語研の研修会で筑波大の卯城先生も同様の英文を示していた記憶があるので、これはもともと、

  • 読解のプロセスでの、「語形態の認知」

という切り口で語られるべきものだとは思うのだが、この現象を初学者にとっての「視写」の困難点、という切り口で眺め直してみると、文字指導で単独の文字を書くことから、語を書く指導に移行する “process & procedure” での配慮すべきことがらが少し浮かび上がってくるのではないかと思う。
この「語」以上の単位での視写における困難点とほぼ同様のものは、特定の音を含む文字を、ある単語の中から見つけ出すという作業が、教師が思う以上に困難であるところにも現れる。(過去ログ参照→ http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20071011)
中級者以上であっても、

  • practitioner
  • narcissist

などの単語で苦労した経験のある人もいるだろう。
そう、私です。(私は高校生の時、procedureを「ぷろせでゅーあー」と覚えていたくらいですから。それでも、大学入試の模試で、全国一位とかとれてしまうのだから、模試の結果がいくら良くたって英語力があるなどと安心はできないのです。)

単語の綴り字の習得をただ、正しいものを4線 (これは、基線のみでも同じ)の右方向に繰り返し書く練習だけで済ませていると、学習者の持つ潜在的な欠陥に気づかない可能性がある。発音と綴り字の関係の習得は、教室で「フォニックス」を導入したり、フラッシュカードを使ったりするだけでは解決しないし、「フォニックス」の原則通りの綴り字を発音できたからといって、自分で、ある語の綴り字を正しく書けるか、といえばそれはまた別問題である。(文字指導関連の過去ログでは、次のエントリーも参照されたし→http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20060801)

土曜日は高1の課外。午前中90分2コマの英語の授業。
「ラウドスピーカー」で書き取った英文を赤ペンで修正し、そのワークシートを使って、音読、重ね読み、Read & Look upと、背中合わせ一人一文読み、対面リピートまでをこなしてから、Flip & Write。音源で40秒程度のパートを書き終えるのに、早い者で約4分。遅い者は8分程度かかります。短文レベルでもFlip & Writeを入れる狙いというか効用は上述の困難点を考えて頂ければ、英語教師には理解してもらえるのでは、と思います。生徒は、自分ができるようにならないと納得しないでしょうね。
続いて、前後のパートのdictoglossもどき。書き出しの3語程度のみを与えるバージョン。この書き出しのみ、というのは「なんちゃってRead & Look up」の裏返しだと捉えています。目標言語での保持のトレーニングはとても重要だということを早い段階で生徒に実感させるよう工夫をしているところです。

音読・暗写・多読の効用に関して、今井先生の本を生徒に紹介し、昨年の英授研全国大会で収録した大田先生、今井先生、東谷先生、久保野先生の「生徒向け激励メッセージ」のビデオを見せた。多読に関しては、今、高2の教室にある副読本のセレクションの持つ意味を解説。『ぜったい音読』の入門編の腰帯についている、TOEICの目安 (470点) と、先日地元の国公立大のAOで示されたTOEICの最低限のスコア350点とを比較。セルハイや英語コースなどで「きちんと」英語を学んでいれば、留学経験無しで高3時にTOEICで700点くらいにはなるものだ、という経験則を述べる。授業シラバスの過小評価も困るけれど、TOEICを過大評価されても困るので、私が受験した際の公式スコアのシートを回して、「こんな紙切れで英語ができるできないを評価されちゃうんだよ」とバランスをとることも忘れずに。
彼らは、少人数で、他のコースとは全く接点なく英語の授業を受け、しかもほぼ私だけに英語を教わるという環境にいるので、他の高校の英語の授業というものを時々見せてあげようと思っている。中間考査明けに、セルハイフォーラムで東谷先生にいただいたDVDや、久保野先生の筑駒の授業を見せてちょっとびっくりさせてあげようと画策。私の前任校での「プレゼンテーション」や「ディスカッション」、「英詩と過ごす夏」など、それ以前の高校での授業風景のビデオも準備しておくつもり。
午後からは本業の乗艇トレーニング。
中国地区の強豪校が合宿に来ているので、修理したてのカタマランもお預け。Oコーチ、F先生、M先生にご挨拶。私は船台からメガホン。
艇を下ろすときに無造作な扱いで艇をぶつけた者が一人いたので、乗艇をさせず、約90分のランニングを課した。用具・道具は自分の身体の一部。大切にしない者は成功しない。臨時のトラフィックルールを設定して、迷惑がかからないように離岸させたのだが、案の定帰艇時に、逆漕。喝!
引き上げる頃にまとまった降雨。稔りの薄いテスト前最終練習となりました。

本日のBGM: Mugiminipichi (Acoustic Dub Messengers)