That’s where you should belong.

ネット上で盛んに議論されている「グーグルブック検索和解」だが、他人事ではなく、自分のことになっていた。出版社から、「弊社にお任せ下さい」というお願いの手紙が来たのである。選択期限まであまり時間はないが、じっくり考えておきたいと思う。
高3授業は「精読のススメ」。「英作文的読解」といってもよい。
現在の英語力の守備範囲プラス1くらいの素材で徹底。前時で扱った冒頭の段落での、”they are not the same.”が比較を含意することを指摘し、the sameに類似した表現を口頭で示す。

  • parallel, comparable, equal // match, tie, equal, rank with // as good as, no better than

に加えて、

  • unrivaled (by) / no match for

あたりまで。「右に並ぶ」、「比肩しうる」 など日本語の慣用表現も指摘。
最後までの論理展開をたどり、各段落の具体例を大きく、A, B, C & Dと置き換えて整理して結論を確かめた後、前の段落へと戻り精読。

  • Others say that the kind of wood is not important and that it is more important to carefully cut the wood in a special way. It has to be the right size and shape. The smallest difference will change the sound of the violin. Some musicians think that the violin-makers from Cremona knew a secret about cutting wood.

での、第二文の主語となっている “It” を英語でパラフレーズ。少々気の利いた生徒なら、前文の過去形の動詞cutを過去分詞に置き換えて後置修飾の名詞句を括りだし、

  • the wood carefully cut in a special way

などとすることは容易だが、原文にあるように、全体から部分、素材から完成形を切り出すから、副詞句はこの順番となり、形容・描写に矛盾を来さないのであり、この名詞句を代入した文、

  • (?) The wood carefully cut in a special way has to be the right size and shape.

は意味不明である。The woodを限定したがために意味の整合性が崩れたことになる。では、

  • The wood has to be the right size and shape.

で良いのかと言えば、”the right” の基準となる内容が the woodに含まれなければならないので、これだけでは不十分。”the wood for any violin that sounds (as) wonderful (as the old ones made in Cremona)” とでも言うべき内容を読み取れて初めて「腑に落ちる」のである。
第3文のchangeを他の動詞で言い換えられるか問う。”affect”にせよ、”influence”にせよ、余波効果のようなイメージであり、”change”のダイレクトさとは立ち位置、肌触りが微妙に異なる。「パラフレーズや佳。しかる後、原文に戻れかし」、を強調。
次の段落では、

  • However, neither size nor shape may be the answer. Scientists carefully measured the violins from Cremona. They made new ones of exactly the same size and shape. But the new violins still do not sound as good.

のbutの対比、theの照応と、stillの理解を問う。これは訳させてみればすぐにわかること。

  • 大きさと形が素晴らしい音色の鍵を握るのだとすれば、科学者の支援で寸分違わぬ形状で製作したバイオリンは素晴らしい音を奏でそうなものだが、そうしてまで作ってもなお、新しく作られたバイオリンは往年のクレモナの名器のように素晴らしい音色を響かせることはなかった。

というような日本語で表されるような頭の働かせ方を経て、原文へと戻る。この後、本文は、

  • Other scientists think the secret may be the varnish. Varnish is what covers the wood of the violin. It makes the wood look shiny. It also helps the sound of the instrument.

と続くのだが、この第二文のwhatの用法で熟考。「先行詞を含む関係代名詞」という定義の難しさである。”varnish”という語がわからないから、定義・説明をしているわけであるから、この部分だけを見て、”liquid”とか”surface”とか、ましてや”coating”などとやるよりも、名詞の無いところに名詞を作るもの、としてwhatの働きをとらえた方が余程応用が利く。第4文のalsoは何に何を添加したものかを問う。その前文のshinyの「ぴかぴか」「つやつや」をプラスの評価をする形容詞と見なせば、もうひとつのプラスとして、helpを捉えられるので、ここでのhelpはimproveとでも言い換えられるだろう。とはいえ、helpと書いてくれているから、そのように処理できるということであり、ここが空所で何を入れるか?という時にhelpを入れられるか、と言われれば黙考だろう。和訳の代わりにどのような理解確認の手段を持っているのかが問われているといっても良い。日本語でのレスポンスを求めない課題だから、「今風」で、しかも「良い」方法だとは限らないのである。臨機応変に行きつ戻りつ、英語を身に着けることだ。
 なぜか4時限目が多く、内科検診や歯科検診で中断・短縮を余儀なくされる1年生の授業は、『エースクラウン英和』の学習ページで「カタカナ語」概論。コンセント、ペーパーテストを辞書で確認。レンジ、コンロ、ストーブ、オーブンを辞書で確認。対応する英語の語彙項目を示し食い違いを指摘。では、その日本語のカタカナ語はどこから来たのか?の一説を紹介。続いて、ロスタイム、(ズボンなどの) チャックを確認。fastenerから、fastenを経て、fastへ移行したのだが、『エース…』には形容詞での「固定された;安定した;しっかりした」の語義が無かったことに後で気づいて、副詞の「しっかりと」から対応する項目をメモ書きさせ、不時着。発音のlistenとの対比でfastenをクリアーしたのだが、詰めが甘かったと反省。softener (= 柔軟仕上げ剤) の発音まで手が回らなかった。残りの時間は『リスニングの基礎を固める』で、個々の音の識別と発音練習。軸足方式というか、ピボット方式というか、いつもの練習を仕込む。

  • hot, jogging, lot, pot

のうち、最も得意なものを軸足にして、hot-hot-hot-joggingというやり方である。次のセットの、

  • birds, fur, hurt, heard

はやや難しかったと見えて、軸足が定まらなかったようなので、4つ追加。

  • girl, turn, learn, early

を含む8つのうち、一番いけそうなものを軸足に、残りの7つも片づける個人練習。続いて、奥歯の内側を舌の両サイドで支えて、舌の中央部をもっこりさせない「コツ」を自分の身体を使って披露。コーラスでの練習中でさえ、劇的に音が変わったことがわかる生徒がいた。ただ、自分一人になるとまた元に戻ってしまうものなので、継続が大切。次回は、『ぜったい音読』での実地。
高2の読解は、名詞句の限定表現で後置修飾の把握がターゲットの課。
説明文・論説文の構造として、話題と主題の識別を説く。ハンバーガーと串カツを例にとって段落構成の説明。食物アレルギーや苦手な食べ物もあるので、喩えというのは本当に難しい。個人的に、”I’m never ever lovin’ it.” という話もしておいた。好き嫌いで済ませているうちは可愛らしいのだが、他に食べるものがないなら我慢できるのかもしれないが、積極的に薦めたり、勧めたりするものではないだろうと思う。
生徒の一人の机の袖引き出しの上に、某カリスマ教師の単語集が載っていたのを見つけてしまったので、さあ大変。

  • 私の授業では決して、絶対に、金輪際二度と、机上に出したり、目の届くところに置いたりしないこと!!

と堅く、強く、深く釘を刺しておいた。この著者の学習教材としては、ある出版社 (仮にA社としておく) から出ている方はまだ編集者の目が届いているようなのだが、別な出版社 (仮にB社としておく) からの書物の方は英語教材としてあまりにもクオリティが低く、使用に耐えないだけでなく、製作・宣伝・広告から販売に関して、良識・良心の点で看過できないものがあるので、なぜ評価に値しないかを説明し、単語集に関しては、

  • 「日本語から英語へ」、「100の単位で何回も繰り返し記録する」、「要所要所で動機付けを維持したり向上させたりする教師からのメッセージ」「使用した先輩からのアドバイス」「音声CD付き」など、全て『P単』で実践済みのことであるだけでなく、収録するコロケーションの選定を著者自身が日本語にも堪能な英語ネイティブ話者と膝突き合わせで行っている点でも『P単』の方が数段優れた教材となっていること。

を丁寧に説いておいた。積極的に教材を買ってきた志は評価するが、私が英語教師でいる間は、自分のクラスや学年でこの著者の教材を採用することは絶対にないだろうと思う。
7限後に本業の陸トレ。エルゴを漕ぐのはアップだけで、残りはコアスタビライゼーションの導入。高校1年では、まだまだ、体幹は私の方が強いのだが、焦らずに、しかし、きちんとトレーニングを積むこと、ねらいを理解し、納得の上でトレーニングすることを繰り返し繰り返し話して聞かせる。そういう私も、次の日には筋肉痛ではあるのだが。大学の艇庫に置かせてもらっているバランスボールやストレッチポール (= フォームローラー) も学校に持ってきたいのだが、練習場所はあっても部室がないので、保管しておく場所がない。結局、私の車の中が物置と化してしまうのが悩ましい。
帰宅途中の道路がやけに空いていてあっという間についた。奇妙な感じ。県内市内の「車に乗らない日」だったのか?家に着くと、某オークションで落札した、

  • 赤尾好夫編『英語単語熟語の綜合的研究』 (旺文社、1977年)

が届いていた。非常に良いコンディションで満足。単語熟語合わせて7500語収録の「ミニ・ディクショナリー」であり、この当時の入試の実態を推測する上でも貴重な資料である。ことわざなどを中心に例文をいくつか抜粋。

  • Affection blinds reason.
  • I am abhorrent of flattery.
  • Oil will not unite with water.
  • Better be alone than in bad company.
  • Without wisdom, wealth is worthless.
  • The love of money is the root of all evil.
  • Her life is adorned with worldly splendor.
  • The worst wheel of the cart makes the most noise.
  • Praise makes good men better and bad men worse.
  • We need not use unnecessary energy to perform easy tasks.
  • Older men declare war. But it is youth that must fight and die.
  • Everyone has to view the world from his own limited point of view.
  • Power tends to corrupt, and absolute power corrupts absolutely.
  • Businessmen advertise to make us feel like buying what they sell.
  • They repudiated one authority, but they had to seek out another.
  • The first faults are theirs that commit them, the second theirs that permit them.
  • It is sometimes a good thing to be able to close one’s eyes to ugly surroundings.
  • Despite the new tunnel, there are still a few people who prefer to cross the bay by ferryboat.
  • The only sensible procedure for a critic is to keep silent about works which he believes to be bad.
  • An individual with an eloquent tongue is apt to be regarded as being somewhat shallow in thought.

確かに教訓めいていて時代を感じさせるものも多いが、その用例によって何かを学ぶ、ということが真っ当であった時代の産物とも言える。

遅めの夕食を済ませ机に向かっていると、G大コーチ時代の選手から、「日本代表入り」の報告メール。まずは、1Xでワールドカップへの参戦。その結果によって世界選手権派遣の可否が決まるとのこと。自分のことのように嬉しい。誰よりも喜び、そしてここまでの道のりが「長かった」と実感しているのは本人だろう。でも、この世界の住人であることを選んだ以上、ここがスタートライン。私にできるのは、「約束の地」へとたどり着けるよう、ただ祈ることだけです。

本日のBGM: Birthday (元ちとせ)