雨の日に靴を磨くかのように

昨日のエントリーの続きで、brush upに関する自分の知識をbrush up しておきたいと思う。
米系の辞書は素っ気ないという印象は、米系に学習用のESL/EFL辞書がほとんどないことを考え合わせると、ちょっと厳しすぎる評価であろう。
WBD (1987年) では、比喩的として、

  • to refresh one’s knowledge of; review

という乾燥トマトのような定義。
句動詞辞典なら詳しいかというとそうでもなくて、
NTC’s Dictionary (1993年) だと、

  • to improve one’s knowledge of something or one’s ability to do something

程度の記述でお終いです。
ちなみに、ESL & EFLの学習教材の定義を持ち出すと、Barron’s から1993年に出た、 “The Ultimate Phrasal Verb Book” の

  • When you brush up or brush up on something, you study or practice a skill or subject you used to know but have forgotten or partly forgotten.

というのが参考になるかと。
英系のMED でもAmerican English版 (2002年初版) だと、

  • to practice and improve your skills or knowledge of something

とあるだけで素っ気ない。
COBUILDもSchool Dictionary of American English (2008年) だと、

  • If you brush up on something, you practice it or improve your knowledge of it

としており、COBUILD得意のifの従属節中の目的語となるsomethingに限定をあれこれ付加することにより語義を浮き彫りにするという小細工も無しになっている。素っ気なさはその辞書の個性ということだろう。
Oxford系でも通常のOnline版だと、

  • work to regain (a previously learned skill)

という味も素っ気もない定義。
ODEだと、

  • improve one’s existing knowledge or skill in a particular area

と幾分親切。
これがOALDのOnline版になると、

  • to quickly improve a skill, especially when you have not used it for a time

とようやく「鈍り具合」が感じられる定義に。このOnline版の記述は現行の第7版と同じだろうと思われる。
これが、第5版 (1995年) だと、

  • to study or practise sth in order to get back a skill that one has lost

とあり、ISEDの匂いがまだかすかに残っている。
現代の学習版英英辞典と目される、Oxford Wordpowerの第3版 (2006年)では、

  • to study or practise sth in order to get back knowledge or skill that you had before and have lost

とあり、簡潔さだけでなく初学者にも具体的で明確な記述となっている。
LDOCEの第4版から、最新版とおぼしき Online版までは、

  • to practise and improve your skills or your knowledge of something that you learned in the past

という定義であり、これより前の第3版 (1995年) での、

  • to quickly practise and improve your skills or knowledge

というスリムな定義と比べると、初版から第4版までの間にかなりの変更が見られることがわかる。
今、LDOCEの第2版 (1991年) が手元にないので、申し訳ありませんがこれ以上調べられません。お持ちの方、ご存じの方はお知らせいただければ幸いです。

授業は高2のみ2コマ。基本動詞の続き。Give とGetです。いや〜っ、進まない、進まない。
give in to では、外部からの圧力と内なる反撥の拮抗から、境界の決壊、流入までの「政村」式図解からyieldに行って、交通標識の話から、give way toという流れ。

  • Garlic gives off a strong odor when it is cut.

では、offの放射線状に拡散するイメージを図解とエピソードで。

  • Discussing that matter will get you nowhere.

では、ビートルズの曲の一節を口ずさみ、

  • When the going gets tough, the tough get going.

ではマイケル・ダグラスの映画の主題歌 (sung by Billy Ocean)の良さに言及し、

  • I finally got a ticket for Dreams Come True!
  • I got a ticket for speeding on my way to work.

では、一見同じに見える for の働きの違いを説明。「等価交換」って漢字で書けるようで安心。
明日は、keepとturnをクリアーして、コミュニケーション関連の動詞で一区切りの予定。
高3は、明日予定しているUpgradeのPt.28の小テストにむけて、春期課外で課した問題と該当箇所の照合。今年度は奇しくも数研の教材となってしまったのだが、べつに『ネクステージ』 (桐原書店) でもいいんです。高2が『やればできる英文法』(河合出版) を選んでいることでもわかるように、出題頻度 (順) とか、出題校というものに重きを置いてはいません。
頻度順とか頻出問題精選といったところで、言葉の発達段階をたどっているわけではないので、理解しやすかったり、覚えやすかったりという要素は必ずしも満たしていないことをしっかりと認識すべきでしょう。
データが新しく、頻度の統計に信頼性があるといっても、2005年刊行の時点での過去10年ですからね。句動詞、慣用表現、イディオム関連の大学入試教材で量の多いものは90年代の出題データをもとに作成されて2000年代の前半に発刊されたものであることが多いようです。
ちなみに私の手元にある入試英文のデータは国公私立難関大の2000年〜2005年の入試長文、約1500題。延べ約80万語です。Powerbookで確認するときはAntConcを使ってワードリストやコンコーダンスラインなどを調べていますが、文法語法語彙問題での出題は空所が多かったり、並べ替えだったりと入力が面倒なので、データの整理は未だに出来ていないのですね。結局、市販教材や予備校・塾の教材の後手に回るという体たらくです。
やはり個人での努力には限界がありますから、全英連とか、JACETとかの全国組織も、「英語教育」を謳うのであれば、しかるべき予算と人材を確保して、いわゆる「受験対策」のためではない、「入試英語」の実態を調査・分析・研究して欲しいものです。

本日のBGM:Let it shine (Randy Newman)