マニア vs. オタク

朝からどんよりとした空模様。未明に目が覚めて、ゾクゾクしたので麻黄湯エキス顆粒をお湯で溶いて飲んで布団に戻り小一時間ほど様子を見る。アスリートは決してマネをしないように。

0限は高1。朝のHRで『P単』のテストをやってもらっているのだが、100個一気食いの回にあたっており、私の入室時にもコロケーションを書いたり音読したり英訳したりしていたので、あいさつに続いて、

  • 順調?

と日本語で問う。頷く者、首を傾げる者いろいろ。すかさず、英問。

  • 「順調」を英語で何というか?

これは結構悩んだ模様。ヒントで、「順風」の話をふる。「順風の順ってどんな意味?」

  • in the direction of your destination / goal

を経て、「順風」を受けると、ゴールへとより近づくことができるのだから、と

  • I feel I can reach the goal.
  • I’m going to reach the goal.

あたりの表現を確認。
で、窓の外に目を移し、

  • Look at the sky. It is going to snow.
  • Judging by the look of the sky, it’s going to snow.

へ発展。
”be going to” と”will” の使い分けはどのような判断基準だったか?と既習事項に戻る。
残り時間で、今月の歌第二弾。
山下達郎の歌う”La Vie en Rose” を初採用。タイトルは繰り返し聞こえているのだが、高1では、

  • Love be alone.

などと品詞、文法的にも意味としてもいびつなものに聞こえていた模様。
今の若い世代は圧倒的に、ボイスパーカッションなどをふんだんに取り入れた某グループの音楽に馴染んでいるので、こういうコーラスのみのDo Wopはほとんど初体験らしい。
一連の書き取りの作業は、

  • これが本物ですよ。

という私のコメントで締めくくっておいた。
高2は、しつこくセンター試験ネタ。しつこく”crucial”でいっておきたいことはあるのだが、今日は今年の出題で少々目立った口語表現というか決まり文句というか大佛次郎的知識に言及。
1995年の夏期講習で私が使っていたプリント教材、よくいえばコンピレーション、正直にいえば多くの資料からのいいとこ取りの「パクリ教材」から、基本動詞の語法を解説。
巷で「高校生が知らないだろう」などと言われているらしい、”run in the family” の用例も示しておいた。95年の夏と言えば今から13年も前。まだ、私が某O社の入試問題正解に執筆していた頃だ。語法マニアとかオタクとかを作るわけではないのだから、語法偏重の出題は今世紀に入って是正されたと思っていたので、今更、このような成句がセンターに出るとは予想していなかったけれども、センター試験に出ないからといって「高校生が知らない」とか「知る必要がない」という判断には、『グラセン英和』(三省堂)の旧版から載っている I couldn’t disagree with you more. を引いておきましょう。
私のプリントの例文は、おそらく、ケリー伊藤氏の著作か、小西友七氏の『高校英語研究』(研究社出版)の連載から引いたものだと思う。(小西氏の連載は、その後『英語のしくみがわかる基本動詞24』(研究社出版)となって1996年にまとめられたのだと思われる。)
Runのエントリーから一部を紹介。

  • 一定刻みで連続して動く
  • 首尾良く機能する・働かせる

という基本義に集約するように例文を配置し、

  • Your nose is running. I’ll get you a Kleenex.
  • The dress needs dry cleaning. If you wash it at home, the color will run.
  • A talent for languages runs in her family.
  • Cab drivers are usually too sensible to run risks when they are driving.
  • The recovery is going to run out of steam some time during the summer.

などを対訳で示している。このような基本動詞や前置詞・不変化詞に関しては、高校の英語教師であれば私家版英和・和英辞典よろしく、用例集やカードなどを作成していること思う。最近でこそ、「ハート」とか「コア」とか賑やかであるが、1980年に初版が出ている最所フミ編著『日英語表現辞典』(研究社)では、「家系のなかにある」として、run in the familyをとりあげ、

  • Dramatic talent seems to run in their family; he is a third-generation actor. (役者の血があの家には流れているらしい。彼の祖父も父親も役者、彼は役者三世だ)(p.142)

という用例を載せている。このエントリーの最初に述べられている最所のことばを引いておく。

  • run この言葉は英語のなかで最も使用法の多様なものの一つで、ここにあげるものはほんの一部にすぎないが、ごく日常的なものばかりである。(p.141)

結局のところ、入試におけるイディオム・成句の類は、「自分が慣れ親しんだもの」が出題されていれば妥当、そうでなければ疑義〜批判、といったところなのではないか?

午後は、教頭と一緒に中学校訪問。
本業の勧誘の一環。まずは、正しく知ってもらうことから。
土曜日は朝から県合宿なので、学校に戻り、日曜日の模擬試験の仕分けを済ませる。
週末は今シーズン一番の寒気到来とか。高確率で雪の予報。
合宿が滞りなく進むと良いのだけれど…。
日曜早朝には学校に戻って、朝から終日模擬試験の監督です。
Scotland Martにシャツを頼んでおいたのを思いだし、急いで道場門前まで車を飛ばす。閉店前に到着して安堵。他にも心惹かれるモノもあったのだが見て見ぬふり(英訳候補、1. ignore, 2. turn a blind eye to, 3. look the other way, 4. pretend not to see のうちどれが最適か?)。
書店に寄って、散財。

  • 『中島敦』(河出書房新社、2009年)

「中島敦アンソロジー」というコピーがあるのだが、「中島敦論」のアンソロジーということだろうと思う。
武田泰淳、吉田健一、澁澤龍彦などの文章も収録で楽しみ。

  • 小池昌代・林浩平・吉田文憲編著『やさしい現代詩 自作朗読CD付き』(三省堂、2009年)

意外に若い詩人が少なかったが、入沢康夫が入っていたので即購入。
今月は某書評に影響され、古本で取り寄せた篠田一士『詩的言語』(小沢書店、1985年)、『ノンフィクションの言語』(集英社、1985年)もあるので、しばらくは充実した生活が送れることと思う。

遅い夕飯は、ホウボウのカルパッチョに大根と小烏賊の煮物、キャベツと落とし卵の味噌汁。
晩酌のお供に本鮪の刺身。

本日のBGM: Few And Far Between (10,000 Maniacs)