僕らの投げた夢は空に抜けたのか?

ひねもす娘と留守番。
本を読んだり、辞書を引いたり、ご飯を作ったり。
ネットで検索し、電話で年明けの勉強会第二弾の会場を予約。どこも年末年始はお休みの中、ホテルに隣接したリーズナブルな会議室が取れたので安堵。
少し落ち着いて今読み返しているのは以下の本。

  • 『現代英語教育講座 1英語教育論』(研究社、1964年)

冒頭の英語教育論を飾るのは、藤田たき、福原麟太郎、石橋孝太郎、岩崎民平、寿岳文章、中島文雄、成田成寿、小川芳男、大塚高信、朱牟田夏雄、高橋源次の諸氏。今や、教職課程の英語科教育法でも扱われないのではないか。英語教育課程を論じるのは宍戸良平氏。

  • 『現代英語教育講座 6 英語の文法』(研究社、1965年)

「基本文型」(pp.1-60) を中島文雄氏が執筆。「機能型」と「構造型」という観点で、文型の扱いの有効性と限界、指導上の留意点をしっかりと述べている。今回の新指導要領(案)で、「文型」という用語が姿を消し、「文構造」という用語にとって変わられたことをどのメディアも報じていないのだが…。

  • 若林俊輔『昭和50年の英語教育』(大修館書店、1980年)

福井保、「IV. 息を吹き返した英語教育 [昭和26年〜30年] 」(pp.81-92)。この部分に時代背景とともに、昭和26年の「学習指導要領外国語科英語編(試案)」登場が記されているのだが、実際にはその前の章の、「3.『学習指導要領』の出現」(pp.68-71) で鳥居次好氏が書いている試案の草案 (1947年) の和訳をこそ、当事者の証言としてしっかりと記憶しておくべきだろうと思う。
長文の引用には種々の問題があることを承知で敢えてここに引いておきたい。

  • 義務教育の年限が延長され、中学の教育が義務教育の範囲に入れられることになった。義務教育年限中の教科課程は社会の要求と子どもの興味に基づいて立てられるべきである。必修科目の数は、生徒が社会的諸団体に、喜んで迎えられるような一員となるのに必要な基礎的知識技能を与える科目に限るべきである。けれども、ある地域の子供は英語を大いに希望するかもしれない。けれども、田舎の子供には英語を習いたいと思わない者もいるかもしれない。これが英語を必須科目にしないで、選択科目にした理由である。/英語を習いたいと思う子どもには英語は最も魅力のある科目の一つである。それは発音や文字や意味が日本語と全く違っているというだけでなく、英語を通して外国のことを知ることができ、すべてのことが目新しく興味深いからである。言葉をかえていうと、英語は子供が世界を知る窓であるからである。/英語の学習にはその教授と学習の理論、内容、方法、場所、時間など幾多の問題がある。この問題解決の一助としてこの学習指導要領は編纂されたのであり、その編纂にあたっては特に教室における言語教授の理論と実際とに基礎を置いている。/学校が異なると土地の事情も全く異なるものである。したがって、この案を利用するにあたっては、教師と生徒の個性をよく考えた上で、その方法に変化を持たせることが必要であることを忘れてはならない。/最後に、この指導要領は完成したものとは考えていない。そこでこの指導要領が年を逐って改訂進歩するように、教師の側から本省に対して実際の経験に基づく意見を具申することを希望するものである。

比較的新しい本としては次のもの。それでも、既に17年前である。

  • 高橋正夫『身近な話題を英語で表現する指導』(大修館書店、1991年)

第II章 今なぜ「身近なこと」なのか (pp.58-76)
第III章「身近なことを話す」のは簡単か (pp.77-96)
あたりは、若い世代にも読んで欲しい内容だとあらためて実感した。
pp.71-76で述べられる「4. 言語活動の見直し」は教訓として覚えておきたい。
「おわりに」での次の言葉は、皮肉なものだと感じた。50年という時間の経過とともに、現場の実践や理論がリードしてきたはずの英語教育は、省庁からの「お達し」や制度的支援がなければ立ちゆかないものに後退していたわけである。

  • 英語教育をめぐる制度的情勢が変わらぬ限り、生徒が突如変身してぺらぺらと英語をしゃべり出すことはあり得ないと誰でも承知している。これまで数多くの話せるためのマニュアルが出版され、そのあるものは最新の理論で武装され、またあるものは現場の生々しい実践に裏付けされている。それらはそれなりのインパクトを与えてきたものの、英語教育全体を動かすまでには至っていないのも無理はない。

夜になり、TVでレコード大賞。流行・ブームの力、振り子の振幅を感じつつ、眺めていた。
今年で50周年ということで、これまでの名場面集を見ていたのだが、どの辺りから歌い手の名前と曲名を混同しているのかが少しわかったような気がした。アルバム賞候補に ”Captain Hate & First Mate Love” (鈴木慶一 produced by 曽我部恵一)が選ばれていたのには本当に驚いた。
ところどころ未だに現役の方たちがステージで受賞曲を生歌で披露してくれるのだが、そっと思い出として胸の内とか押入の奥に仕舞っておきたいものだってあるのですよ。

本日のBGM: Levi Stubbs’ Tears (Billy Bragg)