セットアッパーの矜持

連休最後の月曜は娘の具合が悪く、余りハッピーではなかった。
この週末から連休にかけて、全英連鹿児島大会に始まり、多くの英語教育関係のイベントが行われたことと思う。全英連で奔走・奮闘されたkarishimaさん、本当にお疲れ様でした。熱い思いを胸に、それぞれの現場へと先生たちは帰っていったことでしょう。これだけ、ネット環境での情報発信が増えているのですから、マーケティングや宣伝を度外視しした、本音の声を各地から届けて欲しいと思います。
私はと言えば、今の熱気にひたるのではなく、あのときの熱気は何だったのか、の検証などをしておりました。

まずは、昨年の、9月に行われた広島大学附属福山中高の山岡先生の研究授業。
この授業の一端は、2008年の紀要、『英語教育』2007年11月号の「授業のここにフォーカス」に反映されているので、お手元にある方は確かめられたし。(山岡先生のサイトからもダウンロード可能でしょう)
最新の英語教授理論を知りながらも、それに流されることなく、かといって受験指導のみに汲々とするのではなく、ことばの授業として、高校生の英語力を伸ばしうる授業実践だと思っている。山岡先生のような教師は希有な存在なのかもしれない。周囲の高校の英語教員から見れば、「そうはいったって、中国地区の国公私立の中でもトップの学校で、中高一貫であり、選ばれた優秀な生徒が集まるんだから」という色メガネをかけてこの実践を見てしまうかもしれない。
でも、生徒が優秀で進学実績が高いからといって、その生徒達のことばが授業によって豊かになっているとは限らないのだ。やはり、良き師に恵まれることが大切。筑駒の久保野先生しかり、開成の青柳先生しかり。確かに、他校よりも優秀な生徒を抱えているのかもしれないが、彼らのことばを授業でしっかりと育てていた。現在、筑波大附属中学の植野先生も、桜蔭中高で教えている頃から受験を超えたことばの授業をしていたように思う。
最近の山岡先生のブログで掲げられた「継承」というキーワードが自分の中でこだましている。

今年の8月の英授研全国大会で加藤京子先生が語られた授業観、言語観も最近よく反芻しているので、ノートのメモ書きを何度も読み返し、自分に問う。

  • 子どもの学習の総時間はそれほど減っていない。教科書のレベルが下がっている。「週3」の中学英語は、狭い海で泳ぐ練習。
  • 小学校英語活動が始まり、中1のスタート時点で「不信感」「不安感」を持つ生徒がいるなかで、できるだけ中1の早い段階で「気軽に」「気楽に」発表させる。「楽習」。Gameを忘れない。
  • creativeなもの、教室でなければ味わえない楽しさを追求。教師の心の余裕。
  • team teachingの質は上がっているか?ALTを育てて、任せることが必要。
  • 中2では、創作スキット。習った文法項目を使いこなす場。繰り返し、聞き返し。教師の方で、レベルを上げてやることで、関心を持って、「聞く」生徒・クラスを育て、作る。
  • 良いリーディング教材をたくさん。中2の2学期から。予算の問題。
  • できる子を遊ばせない。
  • 教師は、リーディングとライティングの指導力を上げることが急務。高校入試への対応が、悪影響を生んではいないか。

数多の英語教師、研究授業を見てきて感じる。この人に見えているものは、他の人とは違う。英語教育における加藤実践が特別なものでなくなる日はいつやってくるだろうか?そもそも、その日はやってくるのだろうか?
今回の英授研関西支部秋季大会では、せっかく声を掛けて頂いたのだが、発表に向け準備をする余裕のなかった自分が情けない。一日も早く、ケンタロウのレベルで日々の授業の献立・料理ができるようになりたいと思っています。

札幌に呼ばれてライティングの講演をしてから1年が経とうとしている。この時の講演は、北海道でも有数の進学校の先生方が対象だった。GTEC Writing Trainingの販促という欲目もなかったわけではないが、語研、英授研、ELECなどとはあまり接点のない進学校の英語教員の方々に、波紋を投げかけたい、故郷の英語教育を支える人たちと話をしたいと思って引き受けた企画であった。お陰で、授業工房のmits_ecさんとも面識ができ、今井先生とも知り合えた。今井先生は相変わらずどころか、以前にも増して熱く英語教育に向き合っている。全国の英語教師を繋ぎたい、そんな夢のようなことばをあの体躯から迸らせる。私も点を繋ぐ役目を果たせればと思う。
というわけで、9月ほどの大きなイベントはできませんが、山口県英語教育フォーラム(番外編)を開催するべく、鋭意企画中です。講師(候補)の方々には個別に折衝をさせていただきますので、何卒よろしくお願いいたします。

連休明けの今日は飛び石の1,4,7限授業。
高2はリスニングテスト新機種試用テストのレポート。トレーニングの例として、今私がやっている今井邦彦先生の『英語徹底口練』を紹介。他にも、竹林滋、島岡丘、松坂ヒロシなど巨匠の著作やその指導法に言及。

高1は、『P単』のフォローアップ。小グループに分かれ、小テストの範囲から4語だけ詳しい解説をして欲しいものを選ぶ。グループ同士は相談してはダメ。出てきた語は以下の7語。

  • shortage / compromise / leisure / prospect / boast / secretary / labor

この範囲では17語が対象なので、これ以外の10語は与し易しということなのだろう。
発音と綴り字、既習語との関連、派生語の解説、実例の提示などを織り交ぜ音読で仕上げ。
その後、今月の歌。再度の聴き取りと、語句の確認で、Task 4のコメント書きの補足まで。教室の後ろで曲に合わせて歌ってあげた。
7限の高1、2コマ目は、午前中の『P単』フォローの内容の想起から。生徒から引き出すという原則通り。『短単』の語彙レベルとのギャップは否めないので、適宜、このようなフォローは必要だろう。以前、私立の女子校にいた頃に生徒から請われたことがあるが、週1コマを使って、使用教材を横断・包括するような語彙指導の時間が持てるとおもしろいと思う。急がば回れだ。
今月の歌は歌詞を確定し、最後のタスクで「感想の変化・気づき」をできる限り英語で書いてみる。全員ができなくても、チャレンジ、トライすることが大切。今回は、The Divine Comedyの ”Tonight we fly” を扱っているので、過去ログで使ったYouTube の映像を使おうと思ったのだが、既に削除されていた。他の映像を検索して見せ、1曲を通して聴く。良い時代かはさておき、便利な時代になったものだと思う。
残り時間で、後置修飾の口頭ドリル。SVOの英文を教材から抜き出し、Oとなっている名詞を前置するだけの単純なものだが我ながら良くできたドリルだと思う。

『パラグラフ・ライティング指導入門』の書評が、大修館の小冊子 G.C.D. に載る。評者は清水公男氏。ヨイショ評ではない、良い書評だと思った。

仕事を終え、郵便局に書籍代の振り込みに。ATMには行列。25日だからか。
ついでに、年賀切手を購入。昨年は父が亡くなったので、賀状を出さなかったから、今年は早めに準備。といっても、デザインやレイアウトは本職の妻頼みなのだが…。

本日のBGM: Nothing is new (Jules Shear)