石の上にも三年

日曜は底冷えのする天気で、今ひとつ気持ちは乗らなかったが、物件視察。行ける時に行っておかないとね。
車での移動中に私の頭に鳴り響いていたのは、小田和正の歌声、『BETWEEN THE WORD AND THE HEART〜言葉と心〜』
「渡辺篤史の建もの探訪」のテーマ曲である。
この番組が長らく人気を博しているのは、家を建てようと希望する人が大変に多いこと、そして、建てたいけど夢のままなかなか実現しない人がほとんどであるからだろうと思う。
究極のヨイショ芸だとか、ペットを見た時の渡辺篤史のリアクションがワンパターンだとか、ツッコミどころは多々あるが、この番組で、家人の求める設計上の工夫とか、家への熱い思いなどが語られるのはよくわかる。「私は家が好き」「私の好きな家」の番組なのだから。
では、次のような企画にどんな意味があるというのだろう?

  • 『アエライングリッシュ』の ”My room お部屋拝見”

この雑誌、一応は英語(学習)に関する雑誌なのだと理解してはいるつもりなのだが、この「建もの探訪」もどきの企画では読者に何が伝えたいのだろう?これが、英語を仕事、実務で使っている翻訳家や通訳者の仕事場である自宅を拝見するとか、その方の書斎を覗く、というならわかる。

  • 英語ができる人は、こういう暮らしができるのですよ
  • さあ、あなたもこの雑誌の情報を取り入れて、こんな素敵な生活をしてみてはいかが

などというメッセージを、読者はどう処理しているのか?
「英語ができるとこんなに得」、といった貧しい言語観には辟易する。

明けて、今日は0限から。先週の基本動詞のコロケーションの復習でフレーズレベルの和文英訳(ということは『P単』と同じ再生を要求する活動になる)で誰1人としてまともに定着させようという意欲の跡が見られない出来具合だったので、説教をして自習。比例増減の定型表現を扱う予定だったのだが、断念。いつになったら高2レベルの英語素材を授業で扱えるのか、道のりは遠い。
高3は英作文のシリーズを最後まで。

  • Where did we go wrong?

を板書した時に、20年以上前の授業風景が頭に甦ってきた。懐かしいやら悲しいやら。
一息ついて、asの用法を含む英文読解へ。例文での提示を経て、短文での読解・和訳練習。今はなき、『マスター入試英語長文』(吾妻書房)でしつこく扱われていた例文からの抜粋。聖文新社から出ている中原先生の近年の著作でも類例が扱われているので、興味のある方はそちらでどうぞ。
高1はオバマのスピーチの続き。より内容に踏み込んで読解をする。わからない時にどのように見当をつけ、手がかりを作り、辞書を引くか、という基本中の基本を徹底。やはり、高1のこの段階でしつこく躾ておくことが不可欠なのだ。

あまりにも憤懣やるかたないので、退勤後、ベスト電器と書店を回る。職場で使っていたヘッドフォンが断線してしまい修復が難しいので、ビクターのインナーイヤーフォンを買う。その後、『英語青年』を見に行ったのだが、地元の大学前の書店に入っていなかった。勘弁して欲しい。この書店、英語関係の書籍の品揃えにいつももどかしさを感じる。大学の英語テキストもこの書店で販売されていたりするのだから、大学生協の書籍はここよりもさらに貧弱と言うことなのだろうか?まさかね?
というわけで散財リストは以下に。

  • 江利川春雄『日本人は英語をどう学んできたか』(研究社)
  • 吉田研作編集『21年度から取り組む小学校英語 全面実施までにこれだけは』(教育開発研究所)
  • 木塚雅貴編著『小・中連携を「英語」ではじめよう! 「小学校英語」必修化へ向けて』(日本標準ブックレット)
  • 日本言語技術教育学会編『言語技術教育17 論理的な「言語力」を育てる国語科の授業 「新学習指導要領(案)」の検討』(明治図書)
  • 全国国語教育実践研究会編集『実践国語研究10/11 読むことの能力の育成 --- 改訂と具体化』(明治図書)
  • むのたけじ『戦争いらぬやれぬ世へ むのたけじ語る I』『いのち守りつなぐ世へ むのたけじ語る II』(評論社)
  • カレル・チャペック『カレル・チャペックの警告』(青土社;田才益夫訳)

読後感はそのうちに上げていこうと思うが、今日はひとつだけ、最後の本から。

  • 「賛成または反対の立場に立つ」ことは、この立場がなにか高い場所であるかのような印象を与えます。たとえば、私たちがその上に上がって賛成か反対を表明する演壇みたいです。それは私たちが普通の話を単に地面の上に立ってするよりも大きな重みがあります。「立場に立つ」ことは、例えばある意見に到達するよりははるかに容易です。(p.145、「いくつかの立場」、1938年)

本日のBGM: Welcome to my house (TULIP)