”I’m stubborn as a mule.”

平和を考え直す日だったはずの日。
某局でグルジア関連の特集、古館氏と大新聞論説委員の事故米ニュースへのコメントを聞いて、自民党総裁選のてんてこ舞いを考える。
日本は平和なのだろうか?
安倍内閣でうやむやのうちに成立した教育三法案。教員免許更新制度もこの時に決まったのである。

  • たとえ、昔に教員免許を取っていたとしても、教員には安心させてはダメ。教員としての資質や能力に欠ける者を見つけて排除することが、この国の教育を「再生」するのだ。

などといった思いこみで、日本では他にも「センセイ」と呼ばれる、医師の免許には更新制度がないのに教員には適用されることとなった。その制度を決めた張本人の安倍内閣は首相自らが職務を投げ出し、引き受け手のない内閣を福田氏が任されて1年余り。予備講習などがスタートしたばかりの教員免許更新制度を整備するはずの文科省大臣も安倍内閣から後、次々と替わり、福田首相自らが、「私はあなたとは違うんです」と辞任。首相を辞任しても、任期満了か、解散総選挙がなければ、失職にはならないのも「センセイ」なのだ。しかも、国家試験も免許も何も要らない。要るのは、地盤・看板・鞄。二世議員がこれだけはびこり、有形無形の害をまき散らしている一方で、大分では、自らの二世を教員に、という教師の親心が不正を生み、膿が表に出ることになった。ここでも、責任を取って辞めるのは現場の教員(になりたかったけれど、なれないかもしれないと思われた人)。
溜息。
教育というもの、教育そのもののイメージアップを国を挙げて行う時だろう。
英語教師もその英語力の欠如が戦後はずっとやり玉に挙げられている。だったら、英語力に長けた、実社会でバリバリ英語を使っている人が、今の仕事を投げ捨ててまで「英語教師になりたいっ!!」と思って、採用試験に行列を作るような仕組み、世界を作ることだ。10年かけて、環境を整備して、英語教師がそういう人ばかりになっても、生徒の英語力がさほど向上しなかったという時に、初めて「教師の指導力」とか「人間力」などというものに光が当たるのかも知れないのだけれど、それではやっぱり困るでしょう?
英語力はそこそこ、でも人間はすごい人もいて、人間はそこそこ、でも英語力には長けた人がいて、それを横目で見ながら、どっちもそこそこでこなしていく人もいて、どっちもだめだけれどもあきらめない人もいて、はなからそういう枠組みで教員を分類しようという思惑には与しない人もいて教員の世界は回っていくのが健全なんじゃないのかと思う。
斎藤喜博を読む。
学級文庫に入れるとしたら何が良いか思案。

  • 『君の可能性 なぜ学校に行くのか』(ちくま文庫、1996年)

をとりあえず、候補に。オリジナルは1970年。

高1で、スピーチ活動のマッピングに入る前に、カタカナ語の扱いを整理しておこうと思い、slipper(s)とmule(s)を辞書で引かせて、日本語として定着したものほど要注意という話をした。
高2の授業では、学級文庫を活用して、その発展形。

  • slipper(s) / mule(s)
  • sock(s)/ stocking(s)/ hose

などなど。
手元の『ウィズダム英和』『グランドセンチュリー和英』(ともに三省堂)ではことばの説明・定義だけで絵をうまく描くまでには至らない。
私が学級文庫の辞書や書籍の該当ページを後ろの棚に拡げて並べておき、生徒は後ろに来ては見て自分の席に帰っていく、というシャトルランのような作業。
『アプローチ英和』(研究社)、『カラーアンカー』(学研)、OALDなどは挿絵や写真が豊富なので生活語彙を確認するのに役立つ。教室でネット接続できれば、グーグルなどで画像検索でも同様のことが容易に出来るのだろうが、それは今の環境では夢物語。

  • 脇山怜『暮らしの英語がわかる事典』(ジャパンタイムス、2001年)
  • 山岸勝榮『単語博士 いちばん知りたい暮らしの英語』(小学館、2003年)
  • 田崎清忠『アメリカ日常語辞典』(講談社、1994年)

などの書籍からも貴重な情報が得られるものである。女子生徒で、「シンデレラのガラスの靴」を”glass slippers”というのだと知った生徒は、おそらく繰り返しに頼らなくともこの記憶は定着するだろう。AHA! 体験をどれだけ仕掛けていけるか、ここでも「はずれくじ10枚理論」である。
高2で何を今更(今頃?)とは全く思わない。蘊蓄ではなく、ことばの授業を教室に取り戻すためなら、何でもありなのだ。
後半はコモンエラーの話し。
学級文庫にようやく「表現系」、英作文やライティングの書籍を入れられるようになってきたので、「日本人の英語での典型的な、頻出する誤り」とどう付き合うかという観点。

  • 長谷川潔『新研究英作文』(旺文社、1979年)

から、英作文10則を板書、さらに、正確な英語を書くために知っておくべき、誤りの上位10項目を、カウントダウンで板書。私の主張はかねてより、日本人に共通する誤りの上位にくるものは、直すのも防ぐのも時間がかかるのだから気長につきあい、下位に来る誤りは、間違えたらすぐに直してできるだけ未然に防げ、というもの。今回の長谷川リストの1位は「冠詞と名詞の数の誤用」。これは、いくら気をつけても日本語で普段の生活をしている限りは間違い続けるのだから、気長に付き合う工夫をすることが肝心。「名詞は四角化で視覚化」はそのためにあるのですよ。意味も、語彙も構文も、スラスラ感を得た英文素材であらためて四角化をしていくことでほとんどの冠詞の用法は確認できる。迷ったらそこが文法書の出番でしょう。学級文庫のありがたみを実感して下さい。
英語特有の構文、英語の文型を知るために『グランドセンチュリー和英』巻末の文型一覧を説明。案の定、この有益な情報をほとんど誰も使っていない。使わせるようにし向けていない教員は誰だ?
済みません、私でした…。
高1も、高2もアウトプットの2学期ということでご容赦を。

本日のBGM: Is anybody there? (John Hiatt)