「100% 片想い」

高2英語G採点終了。低調。取り組みのお粗末さに、怒りさえ感じる輩もいる。言い訳をする前に、やるべきことをやれと言いたい。
今日は、3学年の総合英語(1年英語I、2年英語II、3年英語II)が出揃う。どういう理由なのか分からないが、同じ日の同じ時間に3学年(全クラス)とも英語が組んである。私のように担当が3学年に跨る場合は、当然、巡回も同じ時間にいき、答案は一度に出てくることになる。「時間割表を見た時に文字が揃って見た目がキレイという以上の意味は全くないこの時間割の組み方」をなんとかしたい。
明日は早朝から、国体ふるさと選手の指導で戸田へ。週末練習で、その後、山口に戻って強化合宿に顔を出す予定。中国ブロックまであと1週間。やるべきこと、やれるだけのことをやったと言うためではなく、結果を出すためにやるまでだ。
飛行機のなかででも読もうと、『2008 太宰治賞』(筑摩書房)を購入。
選考委員の言葉だけ、引いておく。評者の言葉の方が力があり、心が動かされるような賞ではまずいのではないかと思うのだ。

  • どうして大人の話を書かないのか、--- 書く野心を持たないのか、---と候補作を読んで不思議に思った。四篇のいづれも、主役は高校生かそれ以下の少年少女なのである。まだ志が定まらず、肉体的にも不安定な彼等が己の感情に振り廻されて一喜一憂する有様は、若い作家の懐かしみをこめた関心をそそりやすいのだらうか。自分が超えて来て間もない過去の時間に生きる人間は、要するに料理しやすいのか。そして彼等の周りの大人たちは、おほむね型通りに描かれるだけだから、重たい葛藤を含んだ物語は、なかなか生まれ難いことになる。(高井有一「なぜ大人を書かないか」(p. 12)
  • (前略)今回の三候補作は、そこの言葉がこちらへほとんど届いてこないもどかしさがあった。/なぜだろう。単にこちらの感受性が鈍っただけかも知れないが、あえて言えば、この書き手たちは現在の人間の相互関係の希薄さを描こうとして、あるいは無意識にそれを描いていて、けっきょく自分もその蟻地獄の中へ吸い込まれ、他者に向けての言葉を発することができなくなっているように思える。(柴田翔「高校グラフィティを超えて」(p.15)
  • (前略)四作を読み終えて、いざどれに丸をつけようか考える段になって、困ってしまった。手にはサラサラと砂がこぼれ落ちたような感触しかなく、鋭く皮膚をえぐる傷跡も痛みも、そこに残されてはいなかった。もしかすると私自身気づかないまま、皮膚の奥で浸み出した血が、魅惑的な模様を浮かび上がらせているかもしれないと、掌をじっと見つめてみたが無駄だった。私の掌は無傷だった。そんな物足りなさを拭えないままに、選考会は終わってしまった。(小川洋子「格闘と戸惑いを評価」(p.21)

今回をもって、選者から高井氏、柴田氏が降りて、次回からは荒川洋治、三浦しをんが加わるとのこと。つまり、

  • 加藤典洋、小川洋子、荒川洋治、三浦しをん

の4名が太宰治賞を決めるのである。小川は、去年から芥川賞、今年から三島由紀夫賞の選考委員でもある。小川、荒川、三浦は早大一文卒。高井は早大英文卒、柴田は東大独文卒だったから、ややバラエティが薄れた感あり。加藤は1948年、荒川は1949年、小川は1962年、三浦は1976年生まれ。世代のバランスをとった人選でもあるまい。選者が変わったからこの賞に何か明るい希望の光が差し込んでくる、などという予感がしないのだなぁ。1965年の記念すべき第一回に受賞作無し、とした志を今一度思い返す時ではないのか?今年の応募総数が1090作品というのにも驚き。猫猫先生は何ていうだろうなぁ?
高3の担任の先生から、個別相談を受けたので、個々の生徒のプロファイルを見て、適切な教材を見繕うことに。
上位者というか「突き抜けて行ってしまえ!」というレベルの生徒にはライティング特講。今追い込みの新刊が出たらそれを使うこととして、それまではGTEC Writing Trainingを流用の予定。監修者自ら添削指導ということになりますか。
中位というか、伸び悩み組は、語彙と文法の見直し。再入門というか、高3からやり直しで戻るには『鬼塚本』(学研)がいいと思います。読解や作文を考えると第3巻までやっておくのがいいのかね。動詞の活用にカナ発音がついていたり、活字のポイントも大きいので苦手意識の払拭にもプラスに働くか。私が受験生を指導する時の関係詞の扱いは鬼塚氏の影響を強く受けています。あと、「文頭のパターン」もシンプルで汎用性が高いものです。文法語法問題を解き終えた後で、例文の音読筆写と和文英訳でのドリルが必須。
下位というか、英語からできれば逃げ続けたいなどと思っていそうなグループには、『組田本』と『ぜったい音読』に加えて『コーパス口頭英作文』(阿部一・浦島久)で英問英答の総復習か。英問英答と言えば、去年県立大の英語面接対策で絶大な効果を発揮した『パターン別英文600』(小笠原真司)を使っての条件反射まで持って行ければいうことはないけど、まずは中学レベルのクリアで音読回路を作ることから。語彙をどう手当てするかが悩みどころ。『中学版・P単』早く作ってくれないかなぁ、と神頼み。
先日のエントリーでも言及した『ケネスの…速読』シリーズ(聖文社;聖文新社)は、今では創元社からCD付きで装いも新たに25話のアンソロジーとなって出ています。200語に満たない話から、1800語を超える長文まで、25話の合計は12307語。Reading Skillsの解説など、今風の蘊蓄が増えた分、肝心の語彙の手当がなくなってしまいました。「トピックセンテンスを見つける」「結末の文を見つける」「サインポストで展開パターンを見抜く」など、それぞれ格好良いことが書いてあるのだけれども、その見つけたり、見抜いたりした後、肝心の当該英文を読む読み方はボトムアップの読みになるのではないのでしょうか?その英文を読めない者には蘊蓄も御託も無用の長物。私が、このシリーズに求めているのは、リーディングスキルの蘊蓄ではなく、「語彙と構文をコントロールして書かれていながらも読んでいて面白い文章」「言語材料をコントロールして書かれたにもかかわらず、その英文から作られる英語らしいコロケーションが身につくドリル」という部分なのです。当時カセットテープで出ていた音源は今では手に入らないだろうけど、初学者や再入門用には昔のシリーズの方が良いと思います。
今風の「速読」「速聴」がいいのだったら、

  • 長沼君主・河原清志『L&R デュアル英語トレーニング』(コスモピア)

という教材があります。速読速読などと慌てなくても、きちんとボトムアップの処理が強化されれば早く読めるし速く聴けるのですから。現在、私が知る限り本邦唯一といってもよい、真の意味でボトム・ボトムに終わらない、トップ・トップでごまかさない教材です。お試しあれ。
もっとも、中学・高校の英語の授業を100%消化吸収してくれていれば、今ここにあげたような教材は使わずに済むはずなんですけれどね。ジレンマ、ジレンマ。

本日のBGM: ハイスクール・ララバイ(Little Creatures)