”longer than the road that stretches out ahead”

父の一周忌で故郷へ。
前回戻ったのは、札幌でのライティングの研究会の講師を務めたときだから、半年ぶりくらいか。先週まではストーブを炊いていたそうなのだが、空港を降りたら猛暑と感じるくらいの陽射しと気温。朝の東京がどんよりしていたせいで余計にそう感じたのだろうが。
空港へは兄に迎えに来てもらう。
この世に残された肉親はもうこの二人だけなのだと思うと「寂寥」などという漢字が頭をよぎる。車の中で、塾通いの小学生〜高校生の話。機内では、大村はま著『新編 教室をいきいきと I』(ちくま学芸文庫、1994年)を読み返していたので、私の話にも力が入ってしまった。
法要は淡々と。
兄夫婦のところに一晩お世話になり、朝の特急で千歳へ。羽田まで飛び、品川から新幹線で山口までの帰路。フル充電でも稼働時間3時間くらいの古いPowerbookでも車中で仕事が出来るので、N700はありがたい。
ちょっと留守した間にこのブログのコメント欄も賑わっていたようだ。コメント欄が一人歩きしてしまうのは避けたいが、「学び」につながるのであれば許容範囲と言えようか。(ただし、基本的にこれは私のブログであって「掲示板」ではないので、第三者同士のコミュニケーションのためのコメント欄使用はお控え頂きたく思います。)
大統領選挙の話題で言えば、レーガン政権が始まったタカ派の時代に高校生だった私は、『Business View』(グロビュー社)という英語に重点を置いた雑誌を購読していた。(他に読んでいたのは『翻訳の世界』と『工業英語』。特に、『翻訳の世界』での飛田茂雄氏の出題と解説が好きでした。)
レーガンの演説の音源で、closingで ”What are we waiting for?” と訴えかける一文があり、とても印象的だったのを覚えている。

  • As Tom Paine said 200 years ago, "We have it within our power to begin the world over again." What are we waiting for? God bless you, and good night.(Address to the Nation on the Program for Economic Recovery September 24th, 1981)

今全文を読み返すと、ものすごくマッチョで、可愛らしくさえ思う。英語の教師としては、こういう切れ味のある英語を目指させるべきなのだろうなぁ。
この雑誌は特集というか、「松本道弘責任編集」という謳い文句で、ケネディ vs. ニクソンのTVディベートをテープとスクリプトにした教材も出していて、暇さえあればそれを聞いて学んでいたという記憶がある。効率は全くもってよくないのだが、学年の先取りなどしなくとも、入試の過去問などに頼らなくとも、良い英語がそこにありさえすれば、いくらでもリスニング力(ひいては英語力)をつけることは可能なのだなと改めて思う。

  • 進んで引こう、はずれくじ。集めて換えよう英語力…。

そうそう、兄と話していて思い出したのは、隣の部屋でステレオをかけて耳コピする兄の姿にヒントを得て、隣の部屋で英語の音声を流したものをこちらの部屋でリスニングをする、という奇策も使っていたこと。兄の録画していたチャーと坂崎の対談を見ていて、「完コピ」の話がでてきたので、幾重にも重なる音の中から、狙った音を聞きとる醍醐味が甦ってきた。もともと、FENは中波では綺麗に入らないので短波で聞いていたのだが、日中はノイズの方が多いくらいだったから、日常のリスニング練習が結果として実践的だったということか。何事も自らの環境を活用する工夫が大事。ストラテジーよりタクティクスと言ってしまうと乱暴か。別に英語学習って戦って倒す相手がいるわけじゃないからね。
番組の中でチャーが「ビートルズで持っていたアルバムって『リボルバー』だけだから…。」と言っていたのを聞いて、ますます好きになった。
達セミを終えたkarishimaさんに労いのメール。自分の授業がDVDになるって凄いことだなぁ…。
家に着いたのは夜の9時過ぎ。
メールを整理して、明日の教材研究。
振り替えた分の時間割が変更になっているはずなので、いちおう0限からの心の準備をば。
今日読んだ一節を最後に引いて終わりにします。「マッチョ=力強さ、というわけではない」という感性を備えた教師でありたいものだ。

  • もっと、人、人の世というもの、そういうものを本気で大きく見て、そこでは多くの努力がどんなにむなしく消え去っていくものか、報われることはいかに少ないかということを覚悟して、そんなことで自分を見失わないようにならないと、人の子を育てることはむずかしいのではないでしょうか。(大村はま、「教室の毎日から」、『教室をいきいきと』、p. 25)

本日のBGM: Two of us (TULIP)