Something to fall back on

ライティングが専門と言っている手前、本業以外に日々英語力の研鑽にも励むわけだが、ネット上で有益な情報を発信してくれているサイトやブログにも足を運んでいる。
今のところ一番信頼を置いているのは、関西大学の中邑光男先生のサイト。ブログも書かれているようだが、websiteが充実している。
英語教師には大修館のG4のコーパスや雑誌『英語教育』の「クエスチョンボックス」の回答者でもお馴染みだろう。私は、『基礎から学ぶビジネス・ライティング』(研究社、2003年)でファンになり数年経つ。日本人が到達しうる英語力のひとつの目標となる人だろうと思う。直接お会いしたことはないのだが、私が離れた某社ライティング教科書の著者をされているのはなんとも不思議な感じがする。サイトでは、大学入試(さらにはそれを超えた)レベルの長文の和文英訳が丁寧に扱われている。受験受験と騒ぐような教師は必見・必読と言って良いだろう。
若い英語の先生たちの話を聞くと、中高時代の英語教師の評価というのはあまり芳しくなく、どちらかというと、予備校で教わった英語講師に影響を受けていたり、(応用)言語学やSLA関連で著名な大学の先生に影響を受けていたりする様な印象を受けることが多々あるのだが、やはり英語の研究も、英語の授業もきちんとしている人、さらには英語を実際に使っている人の姿勢に襟を正すことこそが必要だろう。
予備校系の英語の指導者でも英語力、指導力共に備えている方が無料で貴重な情報を提供してくれている。
例えば中澤幸夫氏。
受験生には『話題別英単語リンガメタリカ』(Z会出版)の著者としての方が有名か。
平日発行のメールマガジンの『中澤幸夫の1日1行英作文』は私の早朝の愉しみでもある。構成はシンプルの極みで、的確な用例と過不足のない解説。これは出来そうで出来ないなぁ。いや、英作文の解答が、ではなくて、こういうスリムな記述が、ということ。編集後記では豊富な人生経験からさまざまな事柄が論じられており、本編以上に興味深い。ギミック満載の変な学参や問題集に手を出すくらいなら、このメルマガがお薦めである。
メルマガといえば、かなり以前に発行されていた、成田あゆみ・日比野克哉コンビのものはめずらしく自由英作文を扱っていた。これはその後、Z会の『英作文のトレーニング [自由英作文編]』という学参に結実しているので、学参といえどもピンからキリまでということだろう。中澤氏のものもそのうち書籍化されるといいのだが…。
さて、
授業は淡々と。
高2は例によって個人作業。公文式の教室ってこんな感じなのかね?

  • I’m tired. Let’s take a rest for a while.

の ”I’m tired.” を「私は疲れています」とするものが結構多かったのがショック。駆け出しの頃によく読んだ村田勇三郎著『機能英文法』(大修館書店、1982年)では、4つのbeを詳しく説いていた記憶があるが、そこまでいかずとも、「beには気をつけなければ」と思うものだろうに。

  • I’m finished.
  • I’m home.

と例文を提示し、具体的な場面をイメージさせた。

  • I’m tired. Could you turn down the radio?

ならまた話は変わるのだが、それは次回以降に扱う予定。
高3は、途中で出てきた完了形で、単純完了形と完了進行形の差異を端的に示す用例を板書し解説。
amphibian lossという名詞句では、見た目は形容詞でも、形容や描写以外に多様な働きがあるのだ、ということを指摘。 the loss of (the) amphibian(s) と置き換えていわゆる「名詞構文」を扱おうと思ったのだが、この学年が指定されている参考書には該当項目がなく、次回までに簡単にまとめたハンドアウトを作成することに。今日の授業ではlossのもとになる動詞loseを取り上げ、辞書で「いなくなる」という自動詞用法が基本的にないことを確認。この場合は他動詞用法を引き継いで(人など)が、”(have come to) lose the amphibians” という目的格に相当する内容が圧縮されていることを説明。あとは、いつものように、日本語の「の」の格関係に留意することを説くための、「魔女の宅急便」「クロネコヤマトの宅急便」「日通のペリカン便」などでイメージ化。授業終了時に入試問題の原文にあたる英文を配布。どこが書き換えられているか、に注意して読んでみる生徒はどのくらいいるだろうか。
高1は、久々に教科書の読み。
文頭の接続詞に注意させ、主節を予想して待てるかどうか、という練習。フレーズ訳の日本語を見せ、聴き取りから導入し、後続の英文を予想させ、読みで検証。いくつか、動名詞句が出てくるので、「前置詞は、名詞の前におく詞(ことば)」の合い言葉を唱えて、形合わせの確認。最後は対面リピート。
放課後は中国大会参加に伴う様々な書類の提出。
いくら普段の練習のガソリン代は全部自腹とはいえ、さすがに、県外の大会の出張旅費は出ないと困るからね…。
一周忌法要の前に床屋に行っておきたかったのだが、寮の当番というのを忘れていて、断念。明日は放課後に湖で練習とオールの積み込みで、明後日の朝出発だから、この頭で帰省ということだな。
カップ麺とバナナで軽食。
夜の9時まで、寮監室で仕事。
宿直に引き継いで帰宅。このところ、毎週のように寮の当番が入るなぁ。

久保野先生に先日コメントをもらった、形容詞の「中立化」について少し考えていた。次のような一節を発見したので、ちょっと長いが引用。

比較構文において用いられる形容詞、例えば、oldなどについて注意するべき点をもう一つ、次の (7) においてみておくことにしよう。
(7) a. John is older than Mary.<ジョンはメアリーよりも年上だ。>
 b. John is three years older than Mary.<ジョンはメアリーより3歳年上だ。>
(7) において注意すべきなのは、この表現が二人とも若者である場合にも用いられるという点である。すなわち、(7a)におけるoldには「老齢な」という意味はない。しいていえば、その意味は、「年のとり加減」、すなわち、「生まれてからの時間の長さ」を意味している。「ジョンは何歳ですか。」は次のように言う。
(8) How old is John?
すなわち、比較構文に用いるoldは、(8) のような疑問文に用いるoldと同種のものである。
次に、上の (7b) に関して注意すべきなのは、three years の部分である。「何歳年上か」ということが数字によって示されている場合、例えば、three yearsを、いわば、はだかのまま、olderの前に投げ込んでいるのである。結局、three years はolderを修飾している副詞的語句ということになる。それは、three yearsという名詞句が、そのまま副詞的に用いられていることになる。これは、考えてみると、ちょっと不思議なことであり、文法学者は、このようなthree yearsの用法に「副詞的対格」(adverbial accusative) という名前をわざわざ与えている。(安井稔・角谷裕子著『英作文要覧』開拓社、1998年、pp.154-155)

後半、副詞的対格の話になっている(この「ちょっと不思議」と思っているのが安井氏なのか、角谷氏なのか不明なのだ)が、それよりも大事なのは、

  • John is older than Mary.

と数値で差を示していない文であっても、形容詞の意味は中立化されるので、「比較級」自体が表しているのは、「差の部分のみ」であるということだろう。この場合に、例えば、ジョンが18歳、メアリーが16歳だとすれば、実際2歳分の差があるわけだが、ハッキリと数値は言わなくとも、この「生まれてからの時間の長さ」に差がある、ということを示すのが、-erなのだと考えておくのがいいのだろう。

こういうところを日々の教材研究で吟味していくのには、やはり日本人の著者の手による信頼の置ける文法書が必要だろう。江川本、安井本に続くのは、今なら安藤本か?
わたし自身が普段自宅や職場で調べる際に繙くのは、こちらの本など。
http://www.amazon.co.jp/lm/YUNVFP0L0UST/ref=cm_lm_byauthor_title_full

夜遅くや明け方にCGELを隅から隅まで調べていた20代の頃を振り返ると、本当に気力・体力に溢れ、ストイックだったなぁと思う。今、もう一度学び直さなければと思うのは、「英語史」と「英詩」、そして「英語教育史」かな。

本日のBGM: The Standard (斎藤誠)