『エミリー・ディキンスンの着衣を剥ぐ』(国文社)

今日は高1の「奉仕活動」。
朝方は霜が凄くて、自動車のフロントガラスが凍り付いていた。早めに出ようと思っていたのだが、結局いつもと同じ時間に出校。
先日の北海道イベントで知り合ったK先生が東京の高校で英語教育で成果を上げているところを視察したいというので、私の尊敬するK先生に打診。朝イチで出勤しているはずなので、学校に電話。快諾を得る。後は、学校間での調整。刺激的な出会いになることでしょう。北と東と西と南が繋がることで何かが動くような気もします。
奉仕活動は9時に出発式。校長の挨拶に続いて、諸注意など。
私の担当は、校外清掃活動引率指導。近隣の駅までの通学路を生徒と共にゴミ拾い。駅では周辺の清掃。捨てられたビニール傘など多数。その後、別ルートで学校まで戻る間沿道のゴミ拾い。帰ってきて職員室で休憩。N先生にお歳暮で頂いた葛湯で暖まる。
午後は進度表の記入を全クラス終え提出。冬期休業中の課外補講の教材作成に時間がかかる。基本的にはリスニング演習だが、スクリプトの音読・シャドウイングは必須。生徒の復習の便を考えると、CDのついたテキストを新たに買った方が楽なのだが、全員となるとそんなにサクサク教材買わせられる学校ばかりではないのですよ…。

昨日の「私家版『英語教育』時評」に続いて、『新英語教育』(三友社)の1月号を取り上げる。
まずは、「今月の詩 (Poetry for this month)」。今月は Emily Dickinson。なぜ,数あるEmily Dickinsonの中でこの詩なのか、というところが新英研らしい。ディキンソンといえば、阿部公彦氏の『英詩のわかり方』(研究社)での次の評は授業で詩を扱う人に目を通して欲しいと思う。

  • とくに、ディキンソンのような詩人の場合、自分の感覚とか、気分とか、妄想のようなものを自分でもよくわからないまま言葉にする傾向があります。(中略)つまり、自分の感覚や言葉や理性までもが自分のものではなくなっていくような違和感こそ、ディキンソンの表現したかったものなのかもしれません。そうすると、そのわからなさを変に理解してしまうことよりも、わからなさ具合そのものを読み取ることが大事になってくるわけです。(『英詩のわかり方』 p.123)

1月号に戻って、特集は『入試を超える』。申し訳ないが、食い足りない論文、実践報告が多い。
巻頭論文の柳沢民雄氏「世界の課題と結んだ受験教育を」( pp.7-9)で紹介されている、新英研の授業実践は私も高く評価している。しかしながら、高校のうち、半分くらいの高校では「受験」や「入試」がドライブとはならないのだ。「入試を超える」と言ったときに、その半分の高校生達に対しても英語を学ぶ意義・価値・歓びを与えてきた新英研の実践を進学実績で置き換えているような書き方はいかがなものかと思う。大学への進学実績を超える「豊かな実り」を提示することが今の英語教育に求められていることであり、私が新英研に期待することでもある。
高校入試問題分析では、「都立高校」の一般入試が取り上げられている(pp.10-12)。
そのうち、「2. 自由英作文問題」では、採点方法がどうなっているか知りたいという素朴な要望が示されている。都立高校の場合はこの作文の採点のみ各学校に採点基準が任されており、実際にどう採点したかという詳細を教育庁に報告するという流れになっていると思われるので、各高校に個別に打診するか、都議会で取り上げて都民への情報公開というような動きにでもしてみてはどうだろうか。それよりも気になるのは、そこでの実践報告である。サッカー大好き生徒の作文例 (p. 11) で、

  • I like playing soccer. I want to pay it in England like S. Nakamura. So it is important for me to study English.

という英文が示されているのだが、この紋切り型作文では入試を超えた「自己表現」にならないのではないかと危惧する。この後に、一文を足して、

  • However, it is (all the; even) more important for me to practice soccer every day.

などと「熱さ」「身震い」などの生身の思いを引き出してきたのが、新英研実践ではなかったか?
神奈川だけでなく、全国的にも活躍するH先生と秋のELEC大会で上京した折にも似たようなテーマで話したのだが、これまでの財産を若い世代ももう一度学び直してみてはどうだろうか。今後の展開に期待しているファンだからこその苦言である。

今晩歴史は凍えるほど寒い墓地で忙しい
金槌とノミで死の日付を墓石に刻み込み
人生を抱え込んでくれる括弧を閉じる
長い文章の後に添えられる付け足しのように
(ビリー・コリンズ『ノートン英詩選集』
小泉純一訳)

本日のBGM: I’ll wear it proudly (Elvis Costello)