「泣かぬので 殺されてしまった 時鳥」

ネットブラウズ中に、茂木健一郎氏が下関に来ていた(10月21日)ことを知る。むーん。もっと早く知っていたら。
『クオリア日記』(http://kenmogi.cocolog-nifty.com/qualia/)を見ている人は多いと思うのだが、私は、時々、英文版のThe Qualia Journal(http://qualiajournal.blogspot.com/)の方にも目を通している。更新頻度は遙かに低いが、発見は多々あるもの。また、The Origin of Consciousnessではレクチャーの音声ファイルも聞ける。(http://origin-of-consciousness.blogspot.com/
私にとって、今、茂木健一郎氏が気になるのは、中学生の頃に寺田寅彦が気になっていたのとパラレルな気がする、今日この頃。

授業は、高1のみの日。進学クラスに行くと、教室の前にスリッパが揃えてあった。教卓に付くと、カセットデッキがセットされている。どうしたことか?まあ、スムーズに授業に入れるのはいいことだ。中間試験後の課題として、後置修飾も含む「名詞句の限定表現」の総整理。『名詞句の限定表現』といえば、池内正幸氏の名著(新英文法選書6・大修館書店、1985年)のタイトルだが、私の授業はそんな大層なものではなく、

  • 名詞の左に来る修飾語と、右に来る修飾語の持ち味、違い
  • 現在分詞、過去分詞の「分詞」の「分」とは?
  • なぜ関係詞があると便利なのか?

という程度のもの。
文を書かせる前の段階として、名詞句を取り出す指導は多くの高校ライティング教師の課題であると考えている。この充実なしに「読んでいれば書けるようになる」というのはあまりに乱暴である。
市販教材の確認問題を利用し、問題を解き終わった後、名詞は四角化で視覚化の作業。さらには、日本語の文での四角化作業。日本語では常に□は下線の最後、右に来る、つまりは名詞句の限定表現は名詞の左方にしか来ないことを確認させる。既に解いた問題の用例をもとに、動画(-ing)と静止画(-ed/en)の識別をさせる。いつものように、教卓の縁で辞書をじりじりと押しだし落下させ、drop/fallと板書。どこから-ingを感じたか?どこで-ed/en感を得たかを問う。自動詞・他動詞と能動・受動、そして進行・完了のマトリクスは綺麗に分類しようとすると意外に大変なのである。「ハートで感じる」お膳立ては言葉によって支えられているのだ。「英語では、一つの文に動詞は一つ、が大原則、そこから、下位のルールは整備されていく。一見、ルール違反に見えるところは、新たなルールが適用され、ルール違反にならないようにしている。例外や破格、はそれを違反とすることで、その違反よりももっと大きなマイナスが生じるときに認められる。」
ということを説き、

  • 分詞は「もともとは動詞だったのに、そこから『分かれて』違う生き方を志向するようになったことば」
  • 分詞は「もと動詞としての成分をもつので、『分』詞」

という考え方を刷り込む。関係詞の問題を解かせた後、なぜ関係詞が必要なのか?なぜ、分詞では不十分なのか?を考えてもらうのに、

  • 「泣いている赤ちゃん」、「彼によって歌われた歌」という名詞句を合体させるとどうなるか?

と問う。名詞の修飾に使う動詞の時制を変えられる、つまり「時を表すことができる」のが、関係詞の利点であること、裏を返せば、分詞は「動詞の特徴のうちで、時制を放棄し、動詞ではなくなった」ことで違う生き方を手に入れたのだ、と説明。分詞だけでは、

  • さっきまで泣いていた赤ちゃんが彼の歌う歌を聴いてもう笑った

などという文を作れないことを確認。
個々の用例に戻る。
続いて、動詞を使えるということの利点として、「主語を選択できる」「別な主語を立てられる」ことによる関係性の拡がりを指摘。また、個々の用例に戻り目的格の関係詞の持ち味を感じる作業。
持ち味を知り、仕組み・理屈が分かった後は、既習の英文から、関係詞を含む文を抜き出し、

  • 二つの文を一つにするのではなく、まず名詞句の大きな固まりを作る練習
  • 正しく関係詞が使われている英文を二つに分ける練習

に移行。
まずまずの出来ではなかったかと思う。
普通科は、willとbe going to 。この二つの表現の使い分けを、実際に英語を使わずに身につけるのは難しいだろうなぁ。テキストでそうなっているから、とはいうものの、なぜ、現在形の文を、be going to を使う文に書き換えさせるんだろう?間違えなさいと言うようなものだ。とにかく、この教科書ではダメだ。
放課後は本業の練習へ。湖には4時に着いたのだが、1Xを出すのに手間取り、乗艇は1時間程度。山間なので、日が傾く5時以降から先が早い、5時半には太陽が見えなくなり、6時にはもう真っ暗で漕げなくなる。西日本なので、もっと日が長いと思っていたが、10月末でこれだと、冬場は厳しいなぁ。朝は朝で、6時過ぎないと明るくならないし…。
大学生の新人W2Xを励まし、帰路につく。学校に7時少し前に戻り解散。
切らしていたジャルダンのコーヒーが届く。ちょっと安心。小市民。
山口に来てから、ガスパッチョのCM(東京ガス)を見なくなったのだが、信長編の最新作の情報を今頃得て、サイトに覗きに行った。ピエール瀧と妻夫木聡を使えることもすごいのだろうが、やはり演出の関口現氏の力が大きいのではないか?会心の一作と見た。

  • 「大切なのはagencyの内実である」(by 茂木健一郎)

本日のBGM: Wounded Bird (Graham Nash)