「紙の言葉に すがれない」

鈴木祥子さんのサイトを見ていたら、来年でデビューから20周年とか。キョンキョン(Kyon2と書くべきか?)の歌った『優しい雨』(1993年、作詞:小泉今日子、作曲:鈴木祥子) がよりによって、杏里にカバーされるとは。トホホ…。でも、鈴木氏はこの夏に、矢部浩志(カーネーション)のソロプロジェクト ”MUSUMENT” に参加していることが判明した。このアルバム、全曲、矢部氏の作曲。聴きたいっ…。ちなみに、矢部氏は生けるギリシア彫刻のようなイケメンかつ、40過ぎのオヤジの胸をキュンとさせるようなポップマエストロです。

高3のセンター対策は文挿入問題2題。1題では、

  • The notion that the Moon and the Earth were formed at the same time as proposed by the double planet theory is troubling since it suggests that they should be more alike than they actually are.

のS+Vの確認。<名詞は四角化で視覚化>、<be動詞、時制が決まれば、“ )”(=綴じ括弧)>といういつもの呪文を唱えながら、サクサクっと書き込み。基本時制が現在形であることがわかれば、ほぼ疑問は無くなるはず。
このnotionから、「考え」グループの名詞類語の発展整理を板書。

  • idea / concept / thought / image // theory / hypothesis // belief / opinion / judgment / view // principle / faith

など、第一弾。解説文や論説文を書くときに同意表現の反復か、それとも新たな概念の提示か、を誤解させないように、と作っていたものだが、高校段階でのライティングでは結局そこまで到達しないので、読解の資料で活かすことになった。
次回以降、hint グループ、proofグループ、researchグループ、mannerグループ、degreeグループ、partグループ、toolグループの名詞類語整理。次々と処理しないと2学期中に終わらないので。結構大変。
もう1題は British Englishなので、二三、辞書のお世話になる。draughts (= drafts)が一瞬分からなかった自分に「喝!」。
establishedが植物に使われる例が、『新グローバル』には無かったので、補足。MEDでは、become establishedに、

  • to start growing successfully in a new place

という語義を当て、The plants quickly produce new roots and become established. の例を示している。

  • Plants can be crowded together if space is limited --- they will prefer to be warm and crushed up rather than cold and neglected.

で、crush up の受け身が出てくるのだが、andのペアを確認してから辞書引き。ここでは、crowdedの言い換えと見て良い例。ここで「粉々」とか、「くしゃくしゃ」といったイメージを持ってしまうのでは、いくら英々辞典を使おうがパラフレーズしようが無意味である。
prefer A to B で、不定詞を目的語にとる際には、誤解のないよう toではなくrather thanで対比することを確認し公式・構文の妄信に警鐘。あとは音読の指示だけして、先を急ぐ。
続いては図表・グラフ問題の導入。
GTEC Writing Trainingのグラフの説明・書き方のコピーを配布。「グラフが英語で説明できれば、読むのは楽勝」とハッパをかける。もともとは、北大のライティング対策で想定していたグラフや表などの統計ものなのだが、肝心の北大が、この出題を止めてしまったので、使い回し。一昨々年までの関西学院大の300語ライティング、昨年の東北大の英文読解英語要約など、良い問題を持続させる努力を大学側には強く求めたい。
高1は英語 I 教科書の続き。一人ハンドアウトを忘れてきたものが申告に来たので、英語で言わせて着席。珍しく一人欠席だったので、shapeを辞書で引かせる。

  • be in (good) shape

のイメージを絵で描かせてコンペ。私の力作も板書。一コマでイメージが掴みにくい時に変化を2コマ、3コマで捉え直してみる工夫を見せる。辞書の例文を音読、read & look up させてから、ワークシートに転記。
さらには、この反対の

  • be out of shape

を確認させ、イメージを問う。ハリがあって、嵩がある状態が、そうではなくなる、という変化を、break downに繋げて、break downの用例を辞書で確認。だんだん、辞書引きにも慣れてきました。
新たなセクションのフレーズ読み。範読1回。裏面のフレーズ訳の活用、メモ書きを経て再度範読1回。
さらに、今度はペンまたは定規をフレーズの下に当て、範読に合わせて1行ごとにずらして目でフレーズのまとまりを捉えながら聴いていく。
続いて、「名詞は四角化で視覚化」の作業。今日は動名詞がターゲット。主語や目的語になる動名詞の固まりを□で囲めるか、を見る。一人、「my living roomは?」と問うてきた者がいて、ニヤリ。

  • これは「生きている部屋」?違うでしょ。昨日の部屋はin good shapeだったけど、今日はout of shapeだな、なんてことはないね。このlivingも動名詞の働きの一つ。a room for livingというような意味。」

と、とりあえず説明。動名詞をしっかりと学ぶレディネスができつつあるということか。

  • Being able to read them is the best part for me.

を確認し、音読の指示をして終了。

『英語教育』11月号では、「書評」で加藤京子先生が、『HOPE 中高生のためのスピーキングテスト(エンハンスドCD付)』(教育出版)を取り上げていた。兵庫だから、今井先生繋がりなのか?このHOPEは私も是非活用したい。大学の先生と中高現場の教員のコラボが結実した格好の例ではないかと思う。東京では外語大の根岸先生と中学校の先生との連携で、『コミュニカティブ・テスティングへの挑戦』(三省堂)が既に出ているが、これからもこういったものが増えてくれることを願う。
今月号のFORUM欄で気になったこと。
高校のライティング指導で、学習参考書や入試問題集を利用している教員はどのくらいいるのだろうか?いるとすれば、何を授業で扱うのだろう?ライティング力の何を養成しているのだろう?
語彙?文法?表現?構文?
「日本語をかみ砕く力」「和文和訳の目の付け所」というのは確かに重要だけれども、ライティングの授業はそこから先の仕事だろう。だったら、初めからかみ砕いた日本語をもとにした和文英訳を課せばいいのだ。
日本語の表しているideaを英語のideaに置き換える、という時に、よく言われるのが、

  • 背伸びをしたり、こんな表現を知っているのだ、とあやふやな知識で英語を書くのではなく、自分で使いこなせる中学校レベルの英語で、間違えずに書くのだ

というアプローチ。では、次の日本語を読んで欲しい。

  • お礼の手紙おそくなっちゃってごめんなさい。なんか○○から帰ってきた後、2,3回電話したんだけど、かからなくて、学校はじまっちゃって、だから宿題といっしょに手紙おくろうかなあとか思ってて、でも全然返してくれなくて、それで、今日になっちゃいましたってゆう感じです。

中1の生徒の日本語である。この日本語を次の日本語と比べてどう感じるだろうか?

  • お礼の手紙を出すのが遅くなり申し訳ありません。○○からの帰国後、二三度ほど、電話をかけてみたのですが、上手く繋がりませんでした。そうこうしているうちに、2学期が始まったので、宿題が返却されるのを待ち、その宿題と一緒にお礼の手紙を送ろうと思っていたのです。しかし、先生がなかなか宿題を返却してくれないので、今日、手紙だけでも書いておこうと思った次第です。

Native speakersは存在しても、native writersは存在しないのである。言葉を成熟させることもライティング指導に課された重要な役割である。ライティングとなると、いつまでも、幼い英語に逆戻りすることを推奨するのではなく、ライティングを課すことで、より英語力が高まるようなアプローチをめざす同志が欲しい。
Questions children ask and how to answer it (A Dorling Kindersley Book) (http://www.amazon.co.jp/Questions-Children-Ask-Miriam-Stoppard/dp/0751333336/ref=cm_cr-mr-title/249-5035814-2694768)などに見られる、母語話者の2歳から11歳くらいまでの言葉の発達段階を入試対策に熱心な英語教師も辿って見て欲しいと思う。

ライティング指導の根本がはっきりしないのに、「パラグラフライティング」だの、「エッセイライティング」だのを要求し、それを「自由英作文」などという乱暴な用語で括ってしまうのを何とかしたい。大学入試の対策をするな、などとは誰も言わない。上述のように、私も入試問題の良問は活用するし、アマゾンのリストマニアで英作文からライティングへの橋渡しとなる参考書の評を書いているから。
ただ、「自由英作文は難関大学では配点も高く、高得点をとることで差をつけることができる」、とばかりに、入試過去問を類型化し演習を課して、高校英語を卒業させることが高校ライティングの授業でいいのか?タテ糸・ヨコ糸はきちんと紡げているのか?その活動を「ライティング」と呼んで良いのか?という自問は常にあるべきだろう。

本日のBGM: 幸せの洪水の前で(Moonriders / AOR (1992年)より)