『和文英訳研究』

近くの図書館で見つけたので借りてきた。昭和61年に刊行された山田和男氏の遺著。
昭和40年代後半からの『英語青年』の連載をまとめたものであるが、この当時の学習参考書のレベルの高さを垣間見る思いがした。
編集にはまだコンピュータは導入されていない時代なのに索引がきちんと作られていて、最近の雑な作りなものとの違いは明らか。
若い世代にも一読を勧めたい、などといったら鬼籍の山田氏から叱責を受けそうだ。というのも、この中のエッセイに、次のような下りがあるからである。
「ある人が某英語雑誌に、最近Gardnerを8冊読んだが大いに英作文の参考になった。本誌の読者にも是非勧める、と書いてあるのを見て、たった8冊で『大いに参考になった』なんてすさまじい、と思った経験があるからである。(中略)しかし、こういって人に勧めるのは少なくともこの10倍は読んでからにして欲しいと思う。要するにーーーとはいえないけれど、とにかく私は、日本人は一般に英語がよく読めずに、また英語をたくさん読まずに、英語を書こうとする。だから英語らしい英語が書けないと思う。これは人様に向かってだけいう言葉ではなく、自戒のそれでもあるが、とにかくそう信じている。」
とにかく、もっと読まなければ、と痛感した達人の言葉であった。