「お殿様?」「いや、autonomous learners。」

検索語で ”Jennyちゃん” が目立ってきたのだが、いちおうコメントを。
私が「ジェニーちゃん」と読んでいるのは物語で、児童作家のLilian Mooreの作、 ”A Tree For Miss Jenny Miller” のこと。このお話は、

  • Humpty Dumpty’s Magazine for Little Children

の1968年9月発行の号初出、その後、児童モノのアンソロジーに収録されたと思われる。私は、全英連のテスト部委員として仕事をしていた十数年前に、N先生から教えてもらったのが出会い。未だに授業で使っているもの。N先生は、この類の児童文学のアンソロジーなどお宝書籍をたくさんお持ちであった。他にも、T先生、H先生、N先生など、英語のみならず、教材観や目の付け所なども鍛え、育ててもらったと思う。大学入試を全く考えなくてもテストが作れるようになったのは、この時の仕事に負うところが大きい。全英連のテストそのものが各種模擬試験に駆逐されてしまった今では、単なる懐かしい思い出だが…。
高1は、disorderからdiseaseへと至る語彙指導。

  • disorderの意味は?「無秩序」。それってどういう意味?「秩序がない」。それってどういうこと?「無秩序」。それじゃ振り出し。「不規則」。それは説明になっている?「…」。じゃあ、disorderの反対は?「秩序」。それじゃあ、説明にならないでしょ?「整っていること」。そうだね、そこまで来て初めて自分の頭で考えたことばとの接点が出来たわけだ。では、disorderは?「整っていないこと」。

というように、英語以前の問題をクリアしてから、eating disorderの説明に移り、diseaseを板書。意味を考えさせる。「病気」などという訳語はすぐに返ってくるので、再度「意味」を問う。disorderとの共通性を見出させて、 “ease” という語幹を取り出し考えるところまですぐに辿り着いた。ま、これも「反意語を援用した語義の理解」の周辺ということですかね。「…というのはどういうことか?」を突き詰めていくトレーニングでもあります。
高2は、比較の続きから、増減と比率・割合、分数、小数へ。最後は、98年総括票からコメントの読み上げ。
昼に、銀行と郵便局へ。
本業に関わる各種の支払で振り込み。銀行であまり待たされなくてスムーズに進んだ。
午後の空き時間で、

  • 『世界のトップリーダー英語名言集 Business』(Jリサーチ出版、2009年)

を読む。学級文庫には既に、

  • 加島祥造『英語名言集』(岩波ジュニア新書、1993年)、『ハートで読む英語の名言(上・下)』(平凡社ライブラリー、1996年)、岩田一男『英語一日一言』(祥伝社、1970年)

が入っているのだが、それに追加する方向性で思案中。語彙レベルも構文も難しいけれど、こういう本物のことばこそ、繰り返しを経ずとも腑に落ちるものでもあるから。
他にはマーケットプレイスで頼んだ、

  • Webster’s New World Dictionary of Synonyms (Simon and Schuster, 1984)

が届く。こんなにコンパクトだとは予想していなかった。網羅的な一般用辞書と言うよりは、仕事でことばを使う人のガイドブックのような感じ。

  • instance, case, example, illustration
  • strength, power, force, might, energy, potency
  • talent, gift, aptitude, faculty, knack, genius

などのセットを引いてみる。語義はしっかりと記述されているが、実例が少ないので、使いこなすには相当の英語力が必要だと感じた。逆に言えば、英語ができる人にとっては、この位シンプルな方が使い勝手がいいのかも知れない。
放課後は生徒の部活が終わるのを待って面談。
待ち時間を使って、David Littleの講演をシャドウイング。(音源や資料はこちらからアクセス→http://www2.warwick.ac.uk/fac/soc/al/research/groups/llp/circal/12mayevent/david_little/
ハンドアウトを見ずに、初見(初聞?)でトライ。
全部で1時間くらいあるので、疲れました。途中で舌や口の筋肉が電池切れみたいになり、ブレイクを入れながら完遂。
40分過ぎくらい(アイルランドの事例あたり)から、ものすごくおもしろくなるので、講演を聴くだけでもオススメです。Learner Autonomyの分野が不慣れな方、CEFRやELPに詳しくない方は、パワポのスライドを見ながら聴くのがいいでしょうか。
私は、今回の指導要領の改訂に自分が不満を感じている一因が、あらためてはっきりと自覚できました。

さて、

  • 『ユリイカ』2月号、特集「日本語は亡びるのか?」(青土社、2009年)

をようやく入手。
すでに、いろいろなところでこの特集にも反響があるようだ。今回の執筆者に入っていない人の中では仲俣氏の「海難記」でのスタンスが私にとってのbenchmarkとなるだろうか。過去ログでも触れた、松村由利子氏の視点は注目に値すると思う。紅野謙介氏の『週刊読書人』での書評を読んでみたい。
特集も、原典(?)もこの週末に読んでじっくり考えてみようと思うのだが、一点だけ現時点でのコメントを。特集にも寄稿している吉原真理氏が自身のブログで語っていたことにも関わるのだが、

  • 「論理的で」「明晰で」「美しい」文章なら、それを読んだ人はみんなその論を理解し、その論に賛成するべきである。

という「普遍語の論理」に基づいた前提をこそ疑うべきだろう。その3拍子が揃っていたとしても、それが「正しい」保証はどこにもないのだし、さらにはそれが ”popularity” を獲得できるのかは全く別の話だろう。
今回の特集の執筆者では、蓮實重彦氏や、巽孝之氏はもっと切り込んでも良さそうなのに、肝心なところで深くコミットするのを避けているような印象を受けた。巽氏の言及した “Renunciation”に関わるエッセイ(http://minae-mizumura.com/Documents/MizumuraRenunciation1985.pdf)と、コーネル大での講演(http://minae-mizumura.com/Documents/FinishingtheUnifinished20080303Website.pdf)をダウンロードし読んでみることにしたので、何か収穫があれば週明けに書くかも知れません。
今週の月曜日、津田塾大の「英詩の会」にゲストとして阿部公彦氏が登場した模様。大盛況だったとか。
Steivie SmithとWallace Stevensを併せ読む、という切り口だけ聞いて中身を想像するのは誠に焦れったい。そうそう、機会があれば、阿部氏による水村評を聞いてみたいものだ。
寝る前に、『20世紀少年』。最後の最後だけ。
音楽監督が白井良明だったことを初めて知った。もっとも、最初はみんな初めてなのだけれど。この映画を見に行くことはないだろうな、漫画で見てるから。
本日のBGM: The Wreck of the Beautiful (The Divine Comedy)