やりとりとはなばかりでとられぞん?

「高大接続改革」とは名ばかりで、民間業者への利益誘導ありきではないのか、というほどグダグダの「英語外部試験(=民間英語試験)」利用の問題も、問題山積のまま時間が過ぎて行きます。

会場確保の見通しなど現段階で各試験実施母体・業者から、具体的に何も明らかにされていないのに、早晩、高等学校への「アンケート」とかが送られてきますよ。「貴校ではどの試験を利用する受験生が多いと思いますか?」ならまだいいですけど、「どの試験に向けて準備を進めていますか?」とかになったら利益誘導でしょうにね。いや、「お上」からのアンケートの話ですよ。英語科の先生方が検討する、というものではなく、「都道府県市町村の教育委員会」を通じて「所属長」から「進路指導部」などというところに送られてきて、1週間くらいで回答せよ、みたいな。職員会議に諮られるような時間的余裕はないのではないかと危惧しています。そして、その結果をもって「受験生の不利益を生じないように」などという「通達」がまた「お上」から。こんな「やりとり」で2020年度から実施なんかして大丈夫なんですかね?

中国地区では、広島大学が2020年度からの「民間英語試験」利用に関して次のように発表しました。

https://www.hiroshima-u.ac.jp/system/files/99092/%E5%B9%B3%E6%88%9033%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E5%BA%83%E5%B3%B6%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E5%85%A5%E5%AD%A6%E8%80%85%E9%81%B8%E6%8A%9C%E3%81%AE%E8%A6%8B%E7%9B%B4%E3%81%97%E3%81%AB%E4%BF%82%E3%82%8B%E4%BA%88%E5%91%8A%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6.pdf

具体的な記述で注目すべきはここ。

(2) 英語科目の取り扱いについては、大学入学共通テストの枠組みにおける5教科7科目の位置づけとしての英語認定試験を「一般選抜」の全受験生に課すとともに、平成35年度に実施する平成36年度入学者選抜までは、大学入試センターの新テストにおいて実施される英語試験を併せて課す。
(3) 英語認定試験結果の活用については、本学が定める要件をすべて満たした場合、本学を受験する年度の新テストの外国語(英語)の得点を満点と見なす。

中国新聞での報道はこちら。

基準クリアで英語は満点扱い 広島大、共通テストの民間試験活用で方針
https://this.kiji.is/371939476702053473

スコアは直接、合否判定に影響しない。「みなし満点」の判断にのみ用いる。基準は、複数の試験のスコアを比較できる語学力の国際標準規格「CEFR(セファール)」の「B2」以上となる見込み。現行の英検では準1級以上に相当するレベルだ。

 広島大は「読む、聞く、話す、書く―の4技能を問う民間試験を全学部の受験生に課すことで、グローバル人材の育成を目指す本学の姿勢や、求める学生像を示した」と説明する。

 共通テストで受験生は、大学入試センターに認定された民間試験8種類のいずれかを各自で受検し、スコアを志望校に提出する仕組み。どの試験のスコアを活用するかは各大学の判断に委ねられており、広島大は全てを対象にするとした。

「無茶苦茶だな」というのが正直な感想です。

因に、広島大学の現在の入試での英語外部検定試験の「活用」はこうなっています。

英語外部検定試験の一般入試等での活用について
https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/38253

これって、「活用」を希望する受験生にだけ当てはまるから、成り立っているんですよ。

今回、広島大学が発表した「予告」に従えば、「一般選抜」の志願者はみな、高額の「外部試験」の受験を義務づけられ、しかも、CEFR換算でB2レベルに満たなかったものは、「外部試験」のスコアやランクは合否に全く影響しないわけです。共通テストの英語の点数のみで評価されるということなら、そもそも外部試験受験の必要がない者が殆どではないでしょうか?

スーパーグローバルを謳う総合大学だから「高度な英語力を求める」というのも短絡的な発想だという印象がぬぐえませんが、「総合大学」だからこそ、慎重にハードルの設定をするべきでしょう。全志願者のうちどのくらいの割合が「B2」レベル以上の英語力を備えているでしょうか?確かに、高度な英語力を備え、それが「強み」となるものもいるでしょう。でも、皆が皆、そうではないし、そうである必要はない。入学選抜における「合否」は5教科7科目のテストと個別入試で決められているわけですから。

外部試験の「利用の仕方」は、各大学に任されているから、この「みなし満点」のみでの入試利用を広島大学が独自に採用する、というのであれば、みなし満点での合否判定を希望する受験生だけに外部試験の受験を求める、裏返せば「B2以上のスコアを持つ者だけ、みなし満点出願」の入り口を作れば済むことでしょう?名称は「きらきら入試」でも何でもいいですよ。何故、合否に影響せず「外部試験」の受験料が無駄になる志願者にも一律に外部試験の受験を課すのでしょうか?むざむざ、業者に受験料を流すだけではありませんか。
文科省、DNC、国大協からのガイドラインの段階で問題山積で「高校現場」の混乱必至なのに、この広島大学のように「使い方」が個々の大学で異なるのであれば、民間の「外部試験を使わない」というオプションを保証しないと!

「東京五輪」という以外に何の意味もない、「2020年」という期限を無しにして、2024年の新課程完成年度の卒業生に合わせて、大学入試センターが責任を持ってライティングとスピーキングのオプションを作り、大学が四技能のどれを使うか選択できるようにすれば十分だと思います。民間の試験は、AOや推薦で活用するという今のままでいいでしょう。

そして、2024年を待たずに、「新学習指導要領」の「英語」に関わる、小学校から高等学校までの中身の精査をきちんとすることが重要です。

「シン・ガクシューシドーヨーリョー」と呼びたくなる新課程では、「アクティブラーニング」という用語こそ消えましたが、「伝えあい」や「やりとり」などが前面に出てきて、英語では「即興性」の高い活動がよい活動とされる空気が出てきました。
教科書を読んでも分からず、教師の話を聞いても分からないのに、生徒同士では分かるのか?という疑問が募ります。

「やりとり」では言葉を交わすわけですよ。「意味」とか「話者の意図」とか「お互いの前提」とか「双方の利害とゴール」とかいろいろ絡んでくるわけです。

公立高校入試レベルでの私の危惧はこちらで表明していました。

毎年「ライティング」系の出題に注目している埼玉県の公立高校入試問題ですが、今年はリスニングで「⁈」となりました。
https://twitter.com/tmrowing/status/969317219518697472

センター試験「リスニング」での “xenophobia“の扱いに関しての疑義・違和感の表明はこちらのツイートで。

https://twitter.com/tmrowing/status/972937098587119616

この元になったブログ記事は

What’s the story?
http://tmrowing.hatenablog.com/entry/20160131

「新指導要領」の英語の「聞くこと」「読むこと」では、「必要な情報を聞き取り、話し手の意図が把握できる」「概要や要点を目的に応じて捉えることができる」とあるのですが、「聞くこと」で要点を捉え損なった者は、同じ原稿を「読むこと」で、どこが重要な情報とそうでない情報の分岐点かを確認する必要があるでしょう。

それでいて、「話すこと」の「やりとり」では、「情報や考え、気持ちなどを伝えあうやりとりを続けることができるようにする」という努力目標では飽き足らず、「読んだり聞いたりしたことを基に、〔中略〕論理性に注意して伝えあうことができるようにする」という、大それた努力目標まで掲げているのです。

教科書や教材でプロが書いたものを読んでもよく分かっていないのに、そこで「読んだことを基に」何を伝えあうというのでしょうか?まずは、「論理性に注意して、事実と意見を区別して整理、理解する」というような下位技能をこそ広く求めるべきだろうと思います。そこが担保されていない教室で、いったい何をお互いに伝えあう?

では、「プロが書いたもの」ならAさんは的確に理解できたとしましょう。では、そこから、「論理性に注意して」Aさんが伝えたものが、Bさんには伝わらなかったとしたら、教室ではどうするのでしょうか?

1. Aさんの「伝え方」に問題があった。
2. Bさんの「聞き方」に問題があった。

夫々、次にどうする?
1. Aさんの「伝え方」改善には、伝えるという気持ちを高めれば解決?否。まず理解には問題がない前提で、その理解の伝達における、情報の再構築とその言語化を分析できる「他者」が必要になります。その「他者」はA,B以外の生徒、たとえばCさんで適任ですか?本当に35人学級で、他の33人に適任者がいる保証は?

2. Bさんの「聞き方」不全の解決は更に厄介です。まずBさんの「教材」の理解が的確か、から始めないといけないから。その上で、Aさんの「話し方」が適切であるか否か?適切でなければ、Aさんが、前述の 1. の課題を解決した後で再度、やり直しとなる。そんなまどろっこしい営みを教室は許容できるのでしょうか?

更に悩ましいのは、先程の、2からの流れで、Aさんの伝え方が適切だった、とした場合。Bさんは、Aさんの話の何をどのように聞いて「敢えて、間違った道を辿り、間違ったゴールへと進んだのか?」または「ゴールを見失い、先へと進めなくなったのか?」を明らかにすることはかなり難しいと思います。

この最後の課題を、同じ教室で「即興」で解決することは至難の業。「いや、実はこういうことが言いたかったんだけど、うまく英語で言えなかったんだ」という生徒の中にある意味とのすり合わせとギャップを埋め合わせるフィードバックは誰が与えるのか?それって、母語を排除してできるの?

その昔、大村はま氏は、「三十五人の三十五の書きだし」といって、教室での表現活動に教室でのリアルな読者を設定し、一人一人が異なる作文を書き発表する活動をされていました。英語でのやり取りが「35 人の最大公約数のtext〔テクスト;ことば〕」になるときに、どうやってその公約数を大きくできるか?これって、高校にスタディサプリとかクラッシィとか入れたって解決しないと思いますよ。

ということで、約20年前に、高校3年生の授業で「英語による生徒同士のマイクロティーチング」を、10年程前に、「ディスカッションとサマリー」の授業を通過させてきた古い世代の英語教師の一人として、今以上に「英語を使ってやり取りをしている雰囲気」だけが教室に充満しないことを願っています。

本日のBGM: Suspicious Mind (Carnation)

群れるな、連なれ、今

高大接続での英語の「外部試験」利用に関する問題について、中国新聞に情報提供してきました。先月も新聞各社に投書をしていますが、どれも採用されていません。中国新聞にも駄目元で送っています。中国新聞に送ったものに加筆修正して、こちらに私の問題提起、個人的な意見を載せておきます。各種メディアの方々はこちらをお読みになって、もう少し報道のあり方を考えていただきたく思います。


2020年度から導入されるという大学入試での「民間試験」の活用に関して、問題が山積にも関わらず、それが広く周知されていないがために、一般市民どころか、当該の受験生や学校現場でも問題の深刻さに気付かないまま事態が進んでいることに大きな危惧を覚えるものです。

中国新聞は東大の阿部先生のインタビューを掲載するなど問題意識の高いことを知り、こうして情報を発した次第。頻りに「2020年に改革を」と期限が叫ばれているような印象を受けますが、今回の「民間試験の導入」は、次期学習指導要領の改訂 実施のタイミングとは全く連動しておらず、単なる「東京五輪」への便乗でしかありません。「民間業者」への利益誘導ありきのような「改革」には頷くことは出来ません。

文科省(そして大学入試センター(DNC))の「認定」では、複数の異なる試験団体の試験が認められていますが、その試験会場は全ての受験生に公平に開かれてはいません。現行のセンター試験では、出願締め切りまでに申し込めば、全ての受験生が必ず(どこかの会場で)受験することが可能です。これに対して、民間の英語の試験では必ずしもそうはならないのです。

認定された試験は確かに多いのです、

英検 / TEAP / TEAP CBT
GTEC / GTEC CBT
TOEFL iBT
TOEIC
ケンブリッジ英検
IELTS

では、この選択肢の中である受験生が希望しさえすれば、その試験が年2回受験できる保証はあるのでしょうか?
甚だ疑問である、としか考えられません。

例えば、英検ではTEAPという4技能型の試験を実施していますが、このTEAPの会場は中国5県全体で広島に一ヶ所のみしか設けられていません。

英検に問い合わせたところ、次のような回答を得ました。

TEAP運営事務局です。
さて、TEAPの受験会場について、以下より回答させていただきます。

1. 中国地区でどの都市に何ヶ所試験会場があるのか?
2017年度は広島1会場のみで、2018年度も引き続き広島のみでの実施を予定しております。
また、四国地区になりますが、2018年度は新規で香川県での実施も予定しております。

2. 九州地区でどの都市に何ヶ所試験会場があるのか?
2017年度は福岡1会場(博多)のみで、2018年度は福岡(博多)、熊本(市内)にてそれぞれ1会場での実施を予定しております。

試験会場については、以下のウェブサイトからもご覧いただけます。

その他でもご不明な点がございましたら、お気軽にお申し付けください。
何卒よろしくお願いいたします。

なんともありがたい情報です。
平成30年度のセンター試験の志願者は広島県だけで約1万5千人。私の住む山口県に は試験会場はありませんから、広島に受験に行くとすれば、約5千人が加わります。年2回受験可能として、二県だけで2万人X 2という計算での延べ4万人規模の受験生を英検のTEAPではどのくらい「受け入れる」予定なのでしょうか?
岡山、島根、鳥取の他県を合わせたら、中国5県全体では、どのくらいの受験生規模になると文科省では想定し、外部試験の認定が行われているのでしょうか?「山口はあんなにたくさんの新幹線の駅があるのだから、広島じゃなく、福岡・博多に行けばいいじゃないか」と言う人がいるかもしれません。福岡県単独でのセンター試験志願者は約2万5千人。広島よりもさらに1万人多いのです。しかも、TEAPの試験会場は、九州全域で博多一ヶ所だけなのです。これだけの受験生規模を、一ヶ所の試験会場でどう捌くおつもりなのでしょうか?

従来の英検は中学高校の会場を「準会場」として、教員の監督によって実施しており、さらに、1次試験の合格者のみ、面接でスピーキングの試験をしているこということが判断材料となってか、「落選」という報道に注目が集まっていました。しかし、この英検も新たに「公開会場」での4技能試験として認定されています。これまでに実施した実績がないにも関わらずです。「公開会場」といえば聞こえはいいのですが、試験会場はどう確保する算段なのでしょう?

会場として、高等学校の校舎を使わずに先程示した受験生規模に対応できるのでしょうか?試験監督は高校の教員を使わずに賄えるのでしょうか?試験監督を英検から派遣するとなった場合に、英検の職員で人数は足りるのでしょうか?見通しは暗いと思います。

では、万が一、高校が会場として認められるような場合に、自分の通う高校が会場となる生徒と他校の生徒で有利・不利は生じないのでしょうか?

この問題は、英検だけでなく、ベネッセのGTECでも同じことです。GTECは4技能対応の試験であれ、これまでに「公開会場」での実施実績はありません。全て、高校が団体申し込みをして、高校を試験会場として、高校の教員が監督をして行われてきました。年間数十万人という受験実績はこのようにして積み重ねられているのです。2020年までに、全ての都道府県で試験会場を設けることを条件として認定されていますが、具体的に何処が会場となるのか、どの程度の収容規模なのかは、現時点で全く不明です。

「大学入試英語成績提供システム参加要件」なるものが、大学入試センターの理事長裁定で2017年の11月1日付けで出ているが、有名無実も甚だしい。
http://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00011205.pdf&n=1_

6. 毎 年 度 4 月 か ら 1 2 月 ま で の 間 に 複 数 回 の 試 験 を 実 施 す る こ と 。
当 該 複 数 回 の 試 験 は 、 原 則 と し て 、 毎 年 度 全 都 道 府 県 で 実 施 す る こ と 。た だ し 、 当 分 の 間 、 受 検 希 望 者 が 著 し く 少 な い 地 域 で は 、 近 隣 の 複 数 県 を 併 せた 地 域 で 合 同 実 施 す る こ と が で き る 。こ の 場 合 で あ っ て も 、全 国 各 地 の 計 1 0 か 所以 上 で 複 数 回 の 試 験 を 実 施 し て い る こ と を 要 す る も の と す る 。そ の 試 験 に 申 し 込 ん だ 受 検 希 望 者 の 受 検 機 会 の 確 保 に 努 め る こ と 。

常識的に考えて、受験生そのものが少ない地域は受験希望者が少なくなるに決まっています。その場合には隣県での合同実施でよい、などと認めていたら、地方在住者は居住都道府県で受験出来る試験の選択肢がないままじゃないですか。

さらには、「受験生となる高校生をその高校の教師が監督をしたり採点をしたりしてはいけない」というような限りなくグレーな文言もあります。

9. 試 験 監 督 及 び 採 点 の 公 平 性 ・ 公 正 性 を 確 保 す る た め の 方 策 を 公 表 し て い る こ と 。
そ の 際 、 次 の ( 1 ) 及 び ( 2 ) の 要 件 を 満 た し て い る こ と 。
(1) 会 場 ご と の 実 施 責 任 者 及 び 各 室 ご と の 試 験 監 督 責 任 者 が 、 受 検 生 の 所属 高 等 学 校 等 の 教 職 員 で な い こ と 。そ れ 以 外 の 試 験 の 実 施 に 協 力 す る 者 と し て は 、 同 教 職 員 の 参 画 を 認 める が 、 こ の 場 合 に は 研 修 の 受 講 や 誓 約 書 の 提 出 を 課 す こ と 。
(2) 受 検 生 の 所 属 高 等 学 校 等 の 教 職 員 が 採 点 に 関 わ ら な い こ と 。

驚きです。これって、高等学校を試験会場として想定し、試験監督さらには採点者まで高校の教員を想定しているということですよね?

現行の「センター試験」でも、高等学校を試験会場で使用しているところが、全国で五十数校あると思いますが、その年一回実施のセンター試験でさえセキュリティー管理にどれだけ腐心しているか。それを年複数回行えますか?当該高校の教育活動にいったい年間延べ何日の制約を課すつもりなのでしょうか?

受験機会の公平性を担保する、などという「お題目」で、高等学校を会場として「公開」を謳った試験の実施を認めなさい、というような運用になっていくのではないかと危惧しています。例えば、大規模のA高校の試験会場はA高校の教員が監督でB、C高校の生徒が受験。B高校会場では、B高校の教員が監督し、A高校の生徒を受け入れ、過年度生とともに受験のように。高等学校の教員が監督をする試験を、「大学入試」として認めて本当にいいのですか?模擬試験の監督じゃないんですよ!
さらに、その「採点」で他校とは言え高校教員が関わるなど、言語道断でしょう?誓約書を書けばいいってものではありません。

大都市圏には、試験そのもので複数の選択肢が与えられているのに対して、地方ではその選択肢自体が限られ、さらに地方の中でも居住地&受験地によって、その格差が拡大するという状況を詳しく調査し、報道していただきたいと思います。さらには、「大学入試」という大きな意味を持つ試験で、その監督や採点に高校教員が関わりを持つ、ということの是非を広く問うて、問題意識を喚起し、国民的な合意形成に資する報道を、是非ともお願いします。

「問題山積です」というだけなら私でも言えますから。


本日のBGM: Gypsy (Suzanne Vega @ Solitude Standing Live 2012)

Modality bites.

桜は散りましたが、緑葉も映え始め、夕方の陽も随分と長くなりました。
本来なら「ウキウキ」していていいはずの季節ですが、SNSにしろ旧来のメディアにしろ、ニュースを見るたびに憂鬱になります。
この土曜日には数万人規模で市民が集まり、国会議事堂周辺〜首相官邸へとデモが行われたとのこと。「モリ&カケでの公文書改竄と隠蔽」「自衛隊〜防衛省での日報の隠蔽」「厚労省〜東京労働局での裁量労働制の違法適用に関する特別指導」などなど、タガが外れ、底が抜けたこの国のありように対しての正当な異議申し立てであり意見の表明だと思っています。

その一方で、

  • 英語の「外部試験」を取り巻く喧伝&喧騒。
  • 「小学校英語」の教科化と前倒しを睨んだ「先行実施」なる取り組み。

などを眺めるたびに、移行措置の「措置のされ具合」を一般市民は理解しているのだろうか、と危惧は募ります。

本来は、新課程への移行措置や先行実施も見据えた、小中、中高、高大の接続を「改善」していくことが最優先のはず。


学年進行.png 直

教育って、この「12年間」くらいの長期的なスパンで見て、取り組んでかろうじて「成果」の検証ができるかも?というくらいの緩慢な営みなんです。
小学校新学習指導要領に基づく教育課程の正式開始は2020年度。その児童が6年間の新たな教育課程を修めて中学校に上がるのが2026年度。その生徒たちが中学を卒業するのが2029年。高校にそのまま進んだとして、卒業するのは2032年ですよ。それよりも前に、「学習指導要領」の何をどう検証評価するというのか?

2006年度生まれの児童は今年度は小6。この児童は中学校に進んで、中3の時に、いきなり新課程の全面実施にさらされるわけです。中1、中2は移行措置があるとは言え、現行の学習指導要領に基づく教育課程と教科書で学んでいて、中3のたった一年間だけ新課程での授業。それでも、高校に上がれば新課程1期生として扱われます。どのような移行措置を経てきたか、出身の中学校によって学力のプロファイルはバラバラのまま。

この問題は戦後ずっと続いています。「移行措置」と簡単にいうけれど、公教育の教育課程や教材よりも、塾や予備校での教材や指導に重きを置いて「勉強している」人以外は、公教育段階の同じ授業時数で今までよりも豊かな学びを保証されることは稀でしょう。スムーズな接続ができていない学習内容のそこかしこに「穴」ができたまま上級学年上級学校へと進んでいるのです。

2008年度生まれの人からは、中学校は3年間新課程で学べるでしょ⁉という人は、2008年度生まれの子が小学校の新課程で学ぶのは小6だけで中学校に進む、という事実をあえて見ないようにしているのでしょうか?小1〜小5までの5年度分の「ズレ」は、どのように埋め合わせや修正するというのでしょうか?

それに加えて、「小学校英語」の教科化と外国語活動前倒しの見切り発車が関わってきます。変数があまりに多く、学校単位での、また個々の教師での対応は困難でしょう。文化資本&経済力が高い家庭のお子さんがいつも入学してく(れ)る所謂「進学校」の高等学校はまだマシで、公立の小学校、中学校、中堅以下(嫌な言い方ですが)の高校は混乱必至です。

そして、学習指導要領と無関係になし崩しで導入されるかのような、英語の「外部試験」と「新共通テストの記述問題」。
英米で作られた外部試験は学習指導要領を踏まえて作成されていません。そして、新たに示された高等学校(その前の中学校、小学校も含めて)学習指導要領の外国語・英語の記述中のどこにもCEFRとの対応など書いてありません。そりゃそうですよ、日本は欧州じゃないのだから。当然、CEFRが日本の教育課程や学習指導要領を意識したり、参照したり、取り込んだりなどということもありません。つまり、「新学習指導要領」に基づいて組まれる「新課程」の出口でさえ、CEFRとの対応など望むべくもないのです。

そもそもの話に戻して恐縮ですが、2020年度から導入されようとしている「外部試験」を受ける受験生は現行の指導要領で学んできた高校生だということを忘れていませんか?

2019年度の受験生も2020年度の受験生も同じ学習指導要領の下で、同じ教育課程で学んできたのに、何を法的な根拠にして、異なる選別方法を課され、しかも更なる課金までされなければならないのか?理不尽です。

来るべき、「外部試験」導入に備えて、全国数万の英語教師が各種業者の英語試験を受けるようになったら、それこそ特需の助長。でも、そのうち、英語教育における「ほけんの窓口」みたいな仕事ができるのでしょう。商品を売らないのになぜ儲かるのか不思議なのですが、あの相談員たちが全ての保険に加入しているはずがないでしょう?実受験体験を誇るようなマウンティング合戦は不毛です。

こちらの呟きに貼った画像でもお楽しみ下さい。

高校教員しながら受験指導するより、学校の外から受験指南した方が得な時代が来る?高2までにたくさん受けられる人が有利だから、その相談に乗ってあげる?でも高2で受けて本番の参考になるスコアって出る?CEFRの6段階といいつつ各段階の境目は1点刻みのスコアになってる試験が殆どでは?善意の舗装?
https://twitter.com/tmrowing/status/982815155099648000


大学進学希望者以外も根こそぎ抱え込もうというかのような、「学びの基礎診断」まで始まろうとしています。この「基礎診断」って、単位認定とか卒業認定を左右するような法的な根拠がありますか?もし、法的な根拠を持たせるとしたら、民間に丸投げで許されますか?「賛成も反対も試験を受験してから物を言え」などという論は、この試験には全く当てはまりません。システムとしてまだ始まってもいないのだから。

有識者は一体誰の顔を見てシタリガオをしているのでしょうか?
業者は試験作って、採点して儲かれば美味しいだろうけど、現場は複線で複雑な対応を迫られるだけ。現場の「中身」が痩せ細っていけば、システムは早晩に立ち行かなくなることを想定しているのかな?

先日、私の勤務する高校の進路指導部からアナウンスがあって、いよいよ来たか、と思っているのですが、従来の「調査書」の内容が様変わりすることに合わせて、e-ポートフォリオなるシステムを高校現場に取り入れようという動きも出てきました。

入学前には「進研ゼミ」。入学後は「クラッシー」で学習内容を押さえ、ビッグデータを入手。「e-ポートフォリオ」で、学習成績から高校での様々な活動内容、実績や評価、資格を記録・蓄積し、出口では「学びの基礎診断」や「外部試験」を受験。

何も、ベネッセに限らず、リクルートでも同じこと。

生徒一人一人にタブレット端末、コンテンツには各種外部試験対策教材。授業は「外の人」の映像配信。家庭学習での記録などを全てビッグデータとして集約管理。可視化しやすい行動様式が項目として立てられ、全国的に「つまみ出す」「掬いあげる」ことのできる情報が「有益な」指導&学習法としてまた現場へ…。「高校教員なんかもういらないじゃない!」

という現実がどんどん広がっていくのでしょう。

どんなに素晴らしいプラットフォームを構築整備しようとも、コンテンツがお粗末では何も生まれません。そんなことは分かり切っているはずなのに、「分かったつもり」にさせてくれる情報を雛鳥の口に運んでくれるような「商品」が持て囃されるようになる。暗澹たる気持ちになります。

先日、ベネッセと朝日新聞の共同で「保護者の教育に対する意識調査」が報告されていました。
こちらに一部分だけ、引いておきます。

4-1 教育改革や大学入試改革の認知
4-2 英語教育改革の認知
4-3 現在の教育改革への賛否
4-4 今後の教育改革への賛否
https://berd.benesse.jp/up_images/textarea/Hogosya_2018_06.pdf

ここまでくると「調査」ではなくて世論誘導。ベ社はまだしも、朝日新聞はこれ迄に何を報道してきた?
「大学入学共通テスト」に変わることをどれくらい知っているか?に対して変更を知らない&内容を知らないで8割近いのに、今進められている教育改革にはおおむね賛成って…。
ベネッセやナガセ、リクルートなどの「揺篭から墓場まで」系の企業体に情報を握らせることに対する危機感をこそ世論調査するべきだと思うのだけれど、そういった調査を実行し分析ができるだけの基礎体力を持つ独立した機関やメディア体がなくなったということなんだろうな。

この調査では、「格差容認6割」の部分に世間の注目が集まっていたかと思うのですが、その「格差容認」に関して、名城大学の藤原先生が面白い「追試」をしていました。面白いけど、笑えません。

「学校教育に対する保護者の意識調査」(2018)の「教育格差「当然」「やむをえない」6割超」の結果には注意が必要です。
https://twitter.com/yasuhiro008/status/984998480866295809

来週の保護者会では何を話しましょうかね…。

本日のBGM: My Ever Changing Moods (The Style Council)

shadow boxing

新年度もスタートしました。

  • 高等学校の新学習指導要領(案)に対するパブリックコメントの結果の発表
  • 高等学校の新学習指導要領の公示
  • センター試験に代わる新共通テストと併用されるらしい「外部試験」の認定
  • 国大協からの指針表明

など、高校現場に関わることだけでも問題山積のままのスタートです。
小学校英語関連の「移行措置」「先行実施」は大丈夫なのでしょうか?

私は私で、自分に「できることだけを続けていくだけ」(inspired by Motoharu Sano) なんですけど。
取り急ぎ、「外部試験」関連では新聞への投書はしてみました。いまのところ掲載はされていない模様。
私自身がこれから大学を受験しようというときに、英語だけこんな無駄に金を払う不公平なシステムに、プロセスも不透明なまま変更されたら、異を唱え抗議すると思うんですよね。なぜ、いつもいつもいつも、上の方で「誰か」が決めた、「誰得?」な制度変更に、振り回されなければならないのか。意思決定にどう関わって影響を及ぼせるのか見通しが立たなくて、振り上げた拳の行き場に困るでしょうけど。


その他にできること、といえば「英語ということばはどんなことばなのか」を教えること。
新年度の新入生を想定して過去ログでも言及したことのある「名詞の三分類」を見直していました。

大事なところだけ過去ログから再掲。

• 大まかな「名詞の三分類」は「ヒト」、「モノ」、「コト (ガラ)」。
• 「モノ」は「いきもの」と「そうじゃないもの」とに分けられて、「ヒト」と「いきもの」には、原則「性別」がある。
• 「ヒト」は勿論、「モノ」の中には「数」を決めないと四角になる資格がないものがあるので注意が必要。
• 「モノ」と「コト」の境界線は意外に曖昧。
という話し。

四角化ドリルのなかには、所謂「物質名詞」などの「不可算」名詞を散らかしてありますが、進学クラスの生徒には、毎年のように、こう説いています。
英語には「数えられない名詞」があるから注意、なんていう人がいます。ここでいうと、moneyとかですね。でも、日本語でも「お金」は数え ません。1円でも1万円でも「お金」は「お金」。(?) 「金金」とか (?) 「がね」とか、語そのものの形態が変わることはないでしょ?強いて数えているとすれば「額」であり「円」。それでも、その「円」という単位を表す名詞さ え、日本語では「複数形」にはならない。そうですね。日本語の名詞は原則「複数形」がないのだから、むしろ、英語のそういうタイプの名詞は、日本語の感覚に近い、あなたたちにしてみれば得意技にできる名詞。それよりもなによりも、英語で日常当たり前に出てくる、「複数形」に変わることがある、「数えること がデフォルト」な名詞にこそ、日本語との大きな違いがあるのだから、来る日も来る日も来る日も来る日も…、四角化で視覚化を続けていき、ある日、鉛筆で四角を書かなくても、名詞を普通に扱える日がくるのだと思って下さい。
http://tmrowing.hatenablog.com/entry/20130423


日本語の名詞に原則複数形がない、というのは「原則」という言い方に優しい嘘を含んでいますけど、 一見「複数」の意味と対応している「名詞」の殆どが、 不特定多数;諸 を表わすものである、というような意味合いで言っています。 日国から。

神神

人人

木木

日日


実際に具体的に数に言及している場合でも、強調のために何かの数で代表している場合でも、その名詞が複数形にはならないというのが基本です。

これまた日国より。

二人三脚

五臓六腑

十人十色

千差万別

正確に言うのはかなり大変ですが、「名詞の複数形は存在しない」というよりは、「数の概念は、名詞そのものに数を表す形態素を持たせることでは示さない」とでもなるのでしょうか。日本語では単位を表す数量詞にも複数形がありませんが、だからといって数の概念がいい加減ということではありません。

この辺りまでを眺めておいてもらうと、私の一連の「呟き」も楽しめるかと。

https://twitter.com/tmrowing/status/980687678298456064

本日のBGM: サゥザンド・ナイツ〔原田真二)

「本当に欲しいもの」

某局の語学番組の「基礎英語 1」は、新年度も田中敦英先生が続投です。

一昨年は、四線の間隔が真ん中が広いもの(私は「ファットミドル」と読んでいますが)になり、昨年は、手書きに近いSassoon系のフォントを採用し、新年度はBetween 3フォントの採用が決まりました。
こうして、年々「文字」の扱いが改善されているのは、とっても喜ばしいことです。
田中先生の英断に拍手!

それに対して、残念というか、私が危惧した通りになっているのは、新講座「基礎英語 0」での文字の扱い。「基礎英語 1」より下位のレベルを扱う、小学校英語の教科化とその先取り実施を見越したプログラムのはずなのですが、せっかく手書きに近いフォントをテキストの本文で使っているのに、ドリル練習になった途端に、均等四線でBall&Stick体とは…。

ということで、これまで何度も何度も何度も、このブログで示してきましたし、昨年の7月の大阪、11月の広島、と公開の場での発表、セミナーもしてきましたが、最近の知見も含めて、少し文字・フォントに関する情報を提供しますので、まずは「知ること」から始めてみて下さい。

補助線のある有料フォントセットの例

私は手島良先生に影響され、かれこれ20年近く、Sassoon系のフォントを使ってきていますが、文字の手書き (handwriting) 指導をする際に、補助線を一緒に出すことがままあります。

上から順に、

  • Sassoon Infant Line Regular
  • Sassoon Infant Standard
  • Sassoon Infant Tracker B
  • Sassoon Infant Dotted B
  • Sassoon Write Line ENG

となっています。
・フリーでダウンロードできる手書きに近いregular/standardフォントもありますが、補助線付きとなると有料です。
・fonts.comなど大手のフォント販売サイトで現在も販売しているかは各自でご確認下さいますようお願いします。

・サスーン系でつけられるのは「基線のみ」です。サスーン系は基線での落ち着き先が決まれば個々の文字のバランス、プロポーションが整いやすいデザインになっています。
・Infant 以外にもWrite やSans USなど教育的フォントで補助線がつけられるものがあります。(個人的には Sans USという妥協の産物を余り評価していませんので、私はline版のフォントは購入していません。)
・Writeは同じポイント数で入力しても、かなり小さめに表示されるので、和文との混交文書だと注意が必要かもしれません。特に、「行間のオプション」で「固定値」を設定する場合、ディセンダー(お猿さんの垂れ下がった尻尾の様な部分)が消えていないか必ず確認してください。


アイスランドでは、かれこれ四半世紀以上の歴史を持つ、Briem Script のシリーズでは、このHandwriting Italicで四線が一緒に出ます。

・最大の問題は「今、どこで入手できるのか?」です。私は恐らく十数年前に購入したものを使っているのだと思いますが、そのサイトでは既に扱っていませんでした。
・Briem はItalic が基本で、Capital line を設定してデザインされているフォントですので、大文字の頭の高さよりも、小文字のアセンダーの先端の方が高いバランス、プロポーションになっています。だから、大文字の I がセリフじゃなくても視認性が保たれているわけです。
・ジグザグの形状をもとにデザインされ、「慣れて後にそこから巣立つ」練習用/矯正用のフォントです。習熟してもなお、この形にこだわって書き続けるものではありません。欧文フォントに慣れ親しんだ文化圏でも好みが分かれるであろうフォントですが、とりわけ日本では好意的に受け入れられているという印象がないのがとても残念です。もっと活用・普及していいだろうに、というのが正直な感想です。
・表示にはItalicとありますが、BriemのもともとがItalicの手書き練習用フォントなので、一般のフォントをイタリックにしたほどには傾かないので安心してください。一般のフォントで、イタリックにするとどのくらい傾くかは、豪州のタスマニア学校区のフォントでのレギュラー対イタリック、Sassoonが入手できない場合の候補として考えられるフリーフォント、Imprimaでのレギュラー対イタリックでご確認下さい。


Ball & Stick体との訣別を!

私が使っている、手書きに近いフォントのサンプルを示しておきます。
(有料のものもあれば、無料のものもあります)

1. Sassoon Primary (regular/standard)
2. Sassoon Infant
3. Sassoon Sans US
4. Ruluko
5. Imprima
6. Andika New Basic
7. Between 3
8. Flora ICG
9. Segoe UI (Italic)
10. Tasmania Tight Text GT
11. Sassoon Write Line Eng Regular
12. Briem Handwriting (Italic)

比較の観点

どこに着目してフォントを比較するか?選択の際の優先順位は人夫々でしょうが、私は、おおまかな目安として

□ アセンダー、xハイト、ディセンダーの比率
□ nmhruy の来た道を戻る際の分岐点(branching point)
□ adgqとbpのカウンターの形状と分岐点(adのexitストロークの有無&形状)
□ 小文字のijlと大文字のIの高さとexitストロークの有無&形状
□ fとtのダウンストローク〔長さと形状)
□ 小文字のyとv
□ 小文字のyとgのダウンストロークの長さと形状
□ 小文字のkと大文字のK
□ MNWの平行線と山と谷
□ BRPEFHの一階と二階の高さ
□ RKの肩幅と歩幅
□ OとQとSの身幅
□ 算用数字と混交になった場合の識別の容易さ

を考えています。


3 or 1?
「基礎英語」で注目を浴びることとなった、Between 3 ですが、小林章さんのBetweenファミリーには1-3まであり、3が一番手書き風です。
「基礎英語 I」のフォントは日本の学習環境に配慮したのか大文字の I にはセリフ(上と下の短い横棒つき)で、小文字のyはディセンダーが直線のまま終わるものにしているようです。こちらのフォント見本と比較してみて下さい。

2018/03/18追記


たかがフォント、されどフォント。
ホントに大事なんですよ。

本日のBGM: 99 blues (佐野元春)
2018/03/18 追記:
既に書店では、新年度号が並んでいるかとは思いますが、

『実践障害児教育』2018年3月号(学研プラス)
連載【英語のつまずきポイントと子どもにつまずかせないユニバーサル指導】
しっかり取り組もう! アルファベット(2) 
村上加代子/松井孝志

で、村上先生の連載に寄稿しました。
見開き2ページですが、入門期、再入門期の指導に関わる多くの「必須」の知識を整理して盛り込みました。特別支援関係だけでなく、小学校の先生だけでなく、中学校や高校の英語の先生、そして教員養成に関わっている大学人にも読んで頂きご意見をお聞きしたいです。
オンライン書店での取り寄せ、電子書籍版での購入など、入手は可能だと思いますので、よろしくご検討下さい。

実践障害児教育 2018年3月号 [雑誌]

実践障害児教育 2018年3月号 [雑誌]

駆け込みで、パブリックコメント第二弾

駆け込みで、「次期高等学校学習指導要領(案)に対するパブリックコメント」の第二弾を提出してきました。

意見の提出方法
(1)提出手段 郵送・FAX・電子メール・電子政府の総合窓口の意見提出フォームから
(電話による意見の受付はいたしかねますので、御了承ください)
(2)提出期限 平成30年3月15日(木)必着

電子政府の意見提出フォームはこちらから。

パブリックコメント:意見募集中案件詳細
教育
学校教育法施行規則の一部を改正する省令案及び高等学校学習指導要領案に対する意見公募手続(パブリックコメント)の実施について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000958&Mode=0

以下、第二弾の内容です。

件名: 高等学校学習指導要領案について
氏名: 松井孝志
性別:男
職業:高等学校教諭

意見: 高等学校学習指導要領案「外国語(英語)」に関して
意見の分類番号:(11)

「論理・表現」という科目の内容は、「英語コミュニケーション I」の内容に基づくものと謳われているが、技能統合・連関の観点で整合性を欠くものであり、根本的な見直しを求める。

「論理・表現」科目(I-IIIに共通して)においては、「話すこと(やりとり)」「話すこと(発表)」「書くこと」という領域における「内容」「言語活動」、「言語の働き」とその取り扱いに関する言及として「効果的に関連付け」や「総合的な指導」があるが、技能統合・連関に関しての基本的な枠組みが表層的、短絡的である印象が拭えない。


例えば、「書くこと」の領域において「表現」するものとして、「情報や考え、気持ちなど」が挙げられ、「論理」が求められるものとして、「意見や主張」が挙げられている。
では、その「情報や考え、気持ち」「意見や主張」の源となるものは、「聞くこと」「読むこと」の領域で示されている知識や技能とはどう関わっているのか、また、「話すこと(やりとり)」「話すこと(発表)」での聞き手としての知識や技能とはどう関わっているのかが不明である。


「論理・表現」で求められている知識や技能は、「英語コミュニケーション I」までに身に着けた(または身につけることを想定されている)知識や技能に基づいている、と記されているが、「英語コミュニケーション I」の「聞くこと」「読むこと」の記述のどこにも「論理」「論理的」「論理性」という文言はない。


一方で「英語コミュニケーション I」の「話すこと(やりとり)」「話すこと(発表)」「書くこと」の三領域では、「情報や考え、気持ちなどを論理性に注意して」という文言が共通して用いられている。これは、「論理・表現」という科目で主として扱う領域はこの三領域であるという表層的、短絡的な技能統合・連関の考えに基づくものではないか。


そもそも、「聞くこと」においては、「論理性」が全く問われていないのに、いったいどうやって「やりとり」「発表」での「話し手に求められる論理性」が理解され、定着すると言えるのだろうか?「読むこと」においては、「論理性」が全く問われていないのに、いったいどうやって「書くこと」での「書き手に求められる論理性」が理解され、定着すると言えるのだろうか?


技能統合や技能連関という目や耳に優しい「バナー」を掲げて済ませるのではなく、実態・実際の「言語運用」での、下位技能と発達段階に関して、言語教育の専門家の声を聞き、ガイドラインたるものを構築していただきたい。

この「論理・表現」の案を作った人は、よっぽど「ディベート」「ディスカッション」という「形式」を教室に入れたくて、それが「行われていさえすれば」それで満足なのだな、という印象です。

書くためには読めなきゃダメですよ。しかも論理性を担保して書くためには、少なくとも「論理性が高い文章を読むこことで、その論理性を高めている要因が何なのか」を学ぶ必要があるでしょう。私には「自明」なことも、「なぜ、そうだと言えるんですか?」と問う人とのギャップを埋めるためにはいくつものハードルを超えなければなりません。
今回の「案」を読む限りでは、そんなハードルなどないかのようです。
「ライティング」という技能に長く関わってきて、「書くこと」がそんなに簡単だったら本当にいいのにな、としみじみ思います。

本日のBGM: Perfect Production (佐野元春)

次期高等学校学習指導要領(案)に対するパブリックコメント

後々振り返れば、「未曾有」の出来事が起こっていた一週間だったんだな、となるのでしょうか。
そんな中、「次期高等学校学習指導要領(案)に対するパブリックコメント」の締切が迫っています。

意見の提出方法
(1)提出手段 郵送・FAX・電子メール・電子政府の総合窓口の意見提出フォームから
(電話による意見の受付はいたしかねますので、御了承ください)
(2)提出期限 平成30年3月15日(木)必着

電子政府の意見提出フォームはこちらから。

パブリックコメント:意見募集中案件詳細
教育
学校教育法施行規則の一部を改正する省令案及び高等学校学習指導要領案に対する意見公募手続(パブリックコメント)の実施について

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000958&Mode=0

私は取り急ぎ、1件、先ほど提出しました。

件名: 高等学校学習指導要領案について
氏名: 松井孝志
職業:高等学校教諭

意見: 高等学校学習指導要領案「外国語(英語)」に関して
意見の分類番号:(11)

高等学校学習指導要領案「外国語(英語)」に関して、「話すこと(やりとり)」「話すこと(発表)」と「聞くこと」との連関を再考することを求めます。

「第2款 各科目」で示されている「英語コミュニケーション」の全ての科目に当てはまることだが、とりわけ「英語コミュニケーション I」は高等学校の外国語(英語)科目で唯一の「必履修科目」であることから、ここでの記述の持つ意味は大きく、問題も大きい。


「聞くこと」の目標には、「話される速さ」「使用される語句や文」「情報量」についての言及があるが、「話すこと(やりとり)」「話すこと(発表)」においては、「話す速さ」「情報量」について、一般的であれ具体的であれ、言及が一言もない。「使用する語句や文」に関しては、「基本的な」とあるだけで、具体的な言語材料の目安が示されていない。


話す際には何の配慮もしない「情報や考え、気持ち」を「聞くこと」で、「必要な情報を聞き取り、概要や要点を」捉えることができるだろうか?


発表であれやり取りであれ、口頭で行われるコミュニケーションであれば、当然、聞き手を想定して「情報量」「言語材料」を調整し、聞き手の反応に合わせて「話す速度」を調整したり、繰り返したり、言い換えたりする必要がある。即興性が殊更強調される昨今の風潮において、支援の多寡はどうあれ、自分の発話が相手に理解されない場合にそれを言い換えることには、当該言語へのかなりの習熟が要求される。「基本的な語句や文」というものが、中学校までの学習指導要領で示される言語材料(語彙、文構造)のどのレベルを想定しているのか?「情報量」と「速度」は何を持って「多い」「速い」を想定しているのかが不明である。


仮に、中学段階での「話すこと」での「やりとり」で用いることができる「言語材料」のレベルを1,「発表」で用いることが望まれる「言語材料」のレベルを2とした場合に,高等学校段階での「英語コミュニケーション I」では、「話すこと」のうち「やりとり」で用いることができる「言語材料」のレベルは2,「発表」で用いることのできる「言語材料」のレベルを3とする、などの「発達段階」に関わる考察が記述に反映されてしかるべきであろう。では、その「レベル3」の言語材料は、中学段階の「聞くこと」「読むこと」のどの段階で、どの達成度で学習されているか、ということを詰めていくことになるだろう。


以上、今回の案での大きな目玉とも言える「5領域」に関わる重大な課題として再考を強く求めるものである。

「意見提出」は1回に就き一件なので、今後も時間の許す限り、「ライティング」に関わる「やりとり」や「読むこと」の軽視、「ディベート」の言語活動で「読むこと」「書くこと」の具体的な下位技能に言及がないこと、など、「技能統合」を謳っているのに、その足元がガタガタであることを指摘したいと思っています。

英語教育に限らず、教育に「物申し」たいという方は、パブコメの利用も選択肢に入れてみて下さい。

本日のBGM:月と専制君主(佐野元春)

「理由なんかないさ…」

早弥生。

卒業式も終わり、学年末試験も佳境です。
解答用紙を見ていると悲喜交交。

  • 覚えるべきことは覚えてしまわないとね。

  • 覚えるべきことは覚えさせてしまわないとね。

の間には深い川がありますね。

生業である「英語教育」関連で最近した仕事を報告しておきます。

『実践障害児教育』2018年3月号(学研プラス)
連載【英語のつまずきポイントと子どもにつまずかせないユニバーサル指導】
しっかり取り組もう! アルファベット(2) 
村上加代子/松井孝志

村上先生の連載に寄稿しました。見開き2ページですが、入門期、再入門期の指導に関わる多くの「必須」の知識を整理して盛り込みました。
特別支援関係だけでなく、小学校の先生だけでなく、中学校や高校の英語の先生、そして教員養成に関わっている大学人にも読んで頂きご意見をお聞きしたいです。

実践障害児教育 2018年3月号 [雑誌]

実践障害児教育 2018年3月号 [雑誌]

お近くの書店で取り扱いがないという場合には、kildle 版など各種電子書籍もありますので、ご検討下さい。


さて、
以前のエントリーでケンブリッジの Write & Improveの紹介をしました。

http://tmrowing.hatenablog.com/entry/2018/02/16/071840

このときは、中級のお題でしたが、その後、初級レベル (CEFRでいうA1-A2を想定) でも試しています。

Write & Improve / Beginner / A New Town

お題はこのように課されています。

A note: New town
You now live in a new town.
Write a note to your friend Isabel about the town.
(about 30 words)

In your note:

  • tell Isabel where your town is
  • say what the main attractions in the town are
  • tell her about your favourite place in the town
  • and why you like it

以下、生徒に書いてもらったものを手直しして放り込んで出てきた評価などを並べていきます。分量が増えると基礎点が高くなる傾向があるように思います。順を追って見ていき、最後の方で分量を50 語程度に減らしたものが最初のA2評価の英文とどのように違うのか、を考えてみることに意味があろうかと思います。

1. About 50 words; A2-1

A new town I now live in is in A City in Yamaguchi Prefecture. The main attractions are B and C in the town. My favorite place is D Park. There are cherry blossoms over 100 along the river and they are in full bloom in every spring.

2. About 120 words; B1-3

It is almost a month since I started living in a new town, called A, in Yamaguchi Prefecture. It is located on the hill in the western part of Yamaguchi. My neighbors recommend some attractions in the town, such as a museum or an amusement park, but I do not find them so attractive. My favorite place, instead, is B Park in the center of the town. There are a lot of cherry trees along the river C, which flows by D. In late March or early April, they are in full bloom and you can enjoy cherry blossom viewing over 100m of both sides of the river. The beautiful cherry blossoms make me feel that spring has come!

That’s very good! You improved your writing. You can make more progress. Make more changes and click Check again!

3. About 150 words; B1-5

Dear Isabel,
It is almost a month since I started living in a new town, called A, in Yamaguchi Prefecture. It is located on the hill in the western part of Yamaguchi. My neighbors recommend some attractions in the town, such as a museum or an amusement park, but I do not find them so attractive. My favorite place, instead, is M Park in the center of the town. The park is so special because it is famous for the beautiful cherry blossoms. In late March and early April, there are a lot of cherry trees in full bloom along both sides of the river, which flows through the park. I really love and enjoy viewing the cherry blossom in the park. It is said that these are the very best cherry blossoms in Yamaguchi Prefecture. I believe that they are the main attraction that make our town so special.

We do not have any more sentence-level or word-level feedback for this writing.

Good work! Your level is the same, but your writing improved. Read your work and the feedback again. Think about other ways to improve your writing. Make new changes and click Check again!

4. About 160 words; B2-1

Dear Isabel,
It is almost a month since I started living in a new town, called Mine, in Yamaguchi Prefecture. It is located on the hill in the western part of Yamaguchi. My neighbors have recommended some attractions in the town, such as a museum or an amusement park, but I do not find them so attractive. My favorite place, instead, is M Park in the center of the town. The park is so special because it has really beautiful cherry blofssoms. In late March and early April, there are a lot of cherry trees in full bloom along both sides of the river, which flows through the park. I really love and enjoy viewing the cherry blossom in the park. Some people say that these are the very best cherry blossoms in Yamaguchi Prefecture and I could not agree more! I believe that the cherry blossoms in the spring are the main attraction that make our town so special.

We do not have any more sentence-level or word-level feedback for this writing.

B2! Congratulations! You raised your level. You’re making great progress. Pay attention to the feedback. What changes can you make? Click Check again when you are ready. Good luck!

5. 55 words; A2-4

Dear Isabel,
It is almost a year since I started living in this new town. It is located in the western edge of Japan. My favorite place is M Park. I love the cherry trees in the park. In the spring, they are in full bloom. I will go and enjoy them with my neighbors.

We do not have any more sentence-level or word-level feedback for this writing.

Well done! You improved your writing. Make more changes and click Check again!

6. 51 words; A2-5

Dear Isabel,
I'm sorry I haven't written to you almost a year. I moved to a new town. It is located in the western part of Japan. My favorite place is M Park, which is visited by many tourists. I love to see the cherry trees there are in full bloom.

We do not have any more sentence-level or word-level feedback for this writing.

Well done! You improved your writing. Make more changes and click Check again!

高大接続改革で「四技能」対応の試験が注目されています。
塾や予備校、英語学校などが早速「試験対策」を打ち出しています。
自治体が率先して高校にe-learningの契約を勧めていたりもします。

では、CEFRとの対応・関連付けを考えたときに、「どのようなライティングのプロダクトが、A2ならA2, B1 ならB1のパフォーマンスであると認識・評価されるのか?」という考察や議論はなされているでしょうか?
CBTでのテストを受験した場合、その評価は「自動採点」なのでしょうか「人による採点」なのでしょうか?
前回の「私の一番の映画」での「テクスト」と、今回の「私が新たに住む町」での「テクスト」をたたき台にして、考えてもらえれば幸いです。

現在、私が教えている生徒で、国立大の個別試験の内容と水準で「ライティング」を求められる生徒は限られています。学部レベルで英語圏に留学する生徒も殆どいません。

それでも、私は四半世紀をかけて「英文ライティング」の指導に精根傾けてきました。

そして、

  • なぜ、国立大の個別試験や、5-paragraph essay やアカデミック・ライティングが要求されない高校生にも「つながり」と「まとまり」を求めて、テクストタイプを踏まえた英文ライティングの指導をする意味があるのか?

という、緩慢でまどろっこしい問いに答えようとしてくれる英語教師が増えて欲しいとずっと願っています。

本日のBGM: スローなブギにしてくれ(南佳孝)

♪オーロラより冷たいね♪

2月もいよいよ終わりというのに、氷点下の朝が続きました。
ピョンチャン冬季五輪も閉幕。
来月にはパラリンピックがあります。
で、今回の五輪の話から。

  • もしキム・ヨナさんが現役を続けていたとしたら観に行っていただろうか?

などと考えたこともありました。何しろ、イタリアのコストナー選手は団体戦も個人戦もフル出場ですから。でも、開会式でのあのサプライズ演出で満足しておきます。
今大会を中継で見ての感想ですが、フィギュアスケートは技術と芸術の極みへと近づいたように思います。

女子シングルでは、メドベデワ選手とザギトワ選手、OAR二人の頂上決戦でした。
三位争いに注目が集まりましたが、その頂上二人に一番接近できたのが、ダイナミックさ全開で跳び、滑ったカナダのオズモンド選手だったと言えるでしょう。宮原選手の個人戦は二本揃えたどころか、自己ベストの更新で、4位という結果も、晴れ晴れとした気持ちでみることができました。ただ、この場に、リーザもラジオノワ選手もいないなどとは4年前には想像もしていませんでした。オズモンド選手もキャリアが危ぶまれるほどの怪我からの復帰で第一線に戻り今回の表彰台に、メドベデワ選手も宮原選手もシーズン半ばでの故障明けからの調整での出場です。高難度プログラムが増え、精度を高めるためにトレーニングの強度もあがるだけではなく、各種のアイスショーへの出演もコンディションを整え、ピークを合わせることを困難にしていると思います。

ディック・バトン氏以来、66年ぶりの連覇が羽生選手に集まった男子シングルですが、私が一番期待していたのは「フィギュアスケートの未来」、ネイサン・チェン選手でした。団体戦から今一つしっくり来ていませんでしたが、ショートでは見たことがない崩れ方。そして、ソチでの浅田真央選手を思い出させるかのような、フリーでの爆発的な4回転6本!鮮烈な記憶として、見ている人に焼き付いたことでしょう。

銀メダルは、宇野選手。「眠そう」「起きて!」などとリンク外の挙動が話題となっていましたが、競技そのもので、今シーズンを通しての安定感は驚異的です。羽生選手が個人戦に専念ということで団体戦でも重責を担っていました。フリー冒頭でのミスのあと、しっかりと作品を作り、終えられる希有な才能です。
銅メダルはフェルナンデス選手。(私のワードは、もう、「フェ」と入力すればこの名前がでてきます。)かつて、私はこうつぶやきました。

コレオというかアートとして見たら、フェルナンデスのプロの方が芸術性は高いのだろうけれど、羽生選手の滑りはその1つ1つの技そのものがもう芸術の域に達しているような気がする。
https://twitter.com/tmrowing/status/675067092379545600

五輪シーズン、ショート、フリーといい作品を仕上げて来ましたが、フリーでのミスが響きました。それでも、4回転サルコウで道を拓いてきた彼のジャンプは本当にダイナミックで男性的な美を感じます。

そして、羽生選手。

  • 本当に間に合うのか?

誰もがそう思っていたであろう、故障からの復帰初戦どころか初演となるショートプログラム。
圧巻の演技。
五輪に魔物がいるとすれば彼のことではないのか?とさえ思いました。
あれだけ滑れるのだから、あれだけ跳べるのだから、と期待が募るフリーでは、後半に危うさを見せながらもお手付きもせずに終演。他を寄せ付けない「強さ」を見せつけたといえるでしょう。

記者会見では、まだ痛み止めを使わなければ着氷すらできない、完治にはほど遠い状態での試合だったことを明らかにしました。
それでいて、ショートでの3Aの流麗な美しさ、フリーでは冒頭の4S以上に、今ではジュニアでも跳んでいる4回転ジャンプである、4Tで、これまでに見たことのないような完成度の高さを見せてくれたことに感謝しています。
羽生選手の連覇はまだ歴史の序章なのかもしれません。

ペアでは、ロシアのスト&クリが、まさかのIOC裁定で出場が認められず、中国、ドイツ、カナダの争いに。ショートでの痛恨のミスで、表彰台からも…と思われた「ドイツ」のペア、サフ&マソが大々逆転の金メダル。ちょっと泣きました。スイ&ハンの五輪頂点は次回の北京で、と期待しています。

「ヴィカ様のいないアイスダンスなんて…」と思っていた、アイスダンスでの頂上決戦は、ショートダンスでの悔やみきれない「事故」もあり、少し落ち着いてから振り返りたいと思います。

今回の五輪で競技者としての現役に別れを告げるスケーターも多いことでしょう。また、各国の出場枠の関係で、混戦の代表選考で惜しくもワールドに回った樋口選手など、まだまだ「五輪」という舞台で見たかったスケーターたちはたくさんいます。一人のファンとしては、皆がそれぞれの「アリーナ」で自分の理想を追い求める環境を得られることを願っています。

スケーターといえば、こちらも忘れてはいけません。

スピードスケート。
応援していた高木選手も団体追い抜きで金メダルを獲得。
小平選手は勝つべくして勝つことを「体現」してくれました。「己を成す」ということですね。

選手団も帰国、記者会見など祭りの余韻はしばし続くことでしょう。
私は週末から学年末試験。
まずは作問を成します。

本日のBGM: 素敵なパメラ(南佳孝)

名詞は四角化で視覚化 2017-2018

かれこれもう20年以上やっていると思われる、私の授業の「定番」といえば、

  • 名詞は四角化で視覚化

ここ10年でも大きく動きを見せ、最近は記号づけのシステムでこだわるところと、こだわらないところの見極めが、少なくとも自分の中ではついてきたので、名詞句の限定表現を学ぶ上で、「悩みどころでは悩みなさい」「迷いどころでは迷いなさい」「躓きどころでは躓いておきなさい」という指導の中で、「戻れる確かな足場」を提供することが出来るようになったと思っています。

今年度、主として高1と高2の指導で使った「四角化ドリル」を公開します。
ただし、四角などの記号がついていないものです。
当然、このドリルはシラバスの中で使われ生きるものですので、「なぜ、この項目をひとまとめにしているのか?」「なぜこの名詞句を選んでいるのか?」「なぜ、これがあって、あれがないのか?」などなど、このブログのあちこちで記されている、私の授業での活動を併せて見ていただくことが不可欠かと思います。

ということで、一つ一つを解説したりはしませんので、「テクスト」としての「名詞句」の選択と配列、そしてその扱いを行きつ戻りつ眺めて下さい。
分かる人には分かりますから。
商用の流用は不可。二次使用の際には、出典明記でお願いします。モラルです。

名詞は四角化で視覚化 2017-2018 - 英語教育の明日はどっちだ! tmrowing at second best http://tmrowing.hatenablog.com/entry/2018/02/21/185812

その1からその6

ここまでのpdfはこちら↓
[file:tmrowing:2017「名詞は四角化で視覚化」 ドリル_1-6.pdf]

その7からその15と号外

ここまでのpdfはこちら↓
[file:tmrowing:2017「四角化ドリル」_7_15.pdf]

その16からその20

ここまでのpdfはこちら↓
[file:tmrowing:2017「四角化ドリル」_16-20.pdf]


2018年2月23日追記:
本日の記事とあわせて読んで欲しいのは、このリンク先の記事の中にある蔵出しファイルの内、特に「得手不得手」のリストと一覧表です。

tmrowing.hatenablog.com

さらには、こちらの記事での「名詞句の拡充」のファイル関連で「目的語」の扱い。

tmrowing.hatenablog.com


本日のBGM: 素敵なイルサ (Mamalaid Rag)