「一歩ずつ 登るだけ」

前回のエントリーでお伝えしたように、ファイル容量が満杯となったため、ブログの更新が滞っておりましたが、見通しがある程度立ったので、新たなエントリーです。

2月のパブリックコメントも殆ど「広く国民の意見を受けて…」という既成事実づくりだったかのような、ろくでなし、なし崩しに近い「次期学習指導要領の告示」が行われました。

私のパブコメはこちらに示してありました

「もっとスローにささやいて」
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20170311

で、この意見に対する回答はあったのか、あったとしたらどのようなものだったのか、見に行こうかと思っていたのですが、GWの真っ只中で閲覧は終了なのですね。以下の電子政府のリンクを参考までに。

お寄せいただいた御意見の閲覧について  
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000157167

もし、どなたか、見に行かれるという方がいましたら、ご連絡いただければ幸いです。

今日から本格的に新年度のスタートで終日会議。
明日が始業式です。
今年度は授業の種類が、「総合的な学習の時間」も含めると8種類という教師生活31年で最多となりました。学年を跨る学校設定科目の各学年の配分が1単位ずつだったりするので、なかなかに大変です。
新入生の英語力はおいおい確かめるとして、上級生、特に2年生は、授業内で「学級文庫」の英語関連書籍を読む時間を設定して、個別化対応を少し進めようかと考えています。
昨年は全英連での発表があり、それまで8年続けていた「山口県英語教育フォーラム」に一応の区切りをつけました。その最終回にあたる一昨年の私の発表が、

「英語力の可視化」かくかくしかじか

というものでした。
過去ログだと、

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20151117
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20151118
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20151130

と、そのリンク先の資料をお読みいただければ、私の意図は理解できるのではないかと思います。

呟きのほうでも「ヨンギノー」と揶揄する発言を多数しておりますが、上述の私の発表でも取り上げた、この資料にも (http://4skills.jp/qualification/comparison_cefr.html) あるように、「対照表」だけが一人歩きするかのような「四技能試験」礼賛には懐疑的であり、各種資格試験・英語運用力試験のそれぞれの特徴・特質を無視し、相互を乱暴に対照表にして、CEFRとの対応付けや意味付けをしていることを憂うものです。


先日、広島大学が平成31年度の「一般入試」で外部試験を用いた(新)センター試験英語での「みなし満点」の制度を公表しました。

英語外部検定試験の一般入試等での活用について
https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/38253

ここで示されている、それぞれの外部試験の基準も、上述の対照表・一覧表で示されているものと全く同じものがつかわれています。

3 活用する英語外部検定試験
(1) 種類
活用する英語外部検定試験は平成29年度AO入試(総合評価方式)で本学が指定している英語外部検定試験の一覧(以下の表)と同様とし、適用区分はCEFR(外国語のコミュニケーション能力を6段階(A1~C2)で示す国際標準規格)B2以上のスコア・等級とします。
名称 スコア・等級(適用区分B2以上)
Cambridge English FCE(160~179)以上

そして、次のような但し書きがついています。

(2) 有効期間
 平成31年度入試の場合、平成28年4月以降(2年10か月前から)に受験したものを有効とします。

私の疑問は次のようなものでした。

「ケンブリッジ英検」は、世界のどこで何時受験しても、合格した資格は生涯有効、というのが、最大のポイントだと、私は生徒にも伝えているのですが、この広島大学のように、他の資格・技能試験と横並びで「有効期間」を設定している根拠は何なのか?ケンブリッジ英検側に照会したりして、了解をとっているのだろうか?

というのも、外部試験として、わざわざ「ケンブリッジ英検」しかも、PETではなく、FCEを要求するというのは、その試験としての世界的な評価を認めたからこそではないか、と思うのです。
にもかかわらず、「3年経ったら、ケンブリッジ英検で認めた英語力は低下しているかもしれないから、有効な英語力の資格とは認められない」というかのように、他の試験と一律に有効期限を儲ける広島大学の見解は、ケンブリッジ英検の試験としての妥当性や、信頼性を含む、評価そのものを否定するものではないのか、ということです。

今回私は、広島大学の担当部局と、ケンブリッジ英検の担当部局に照会しました。

広島大学の「入学センター」の担当者Sさんに電話でお聞きしたところ、外部試験を利用する趣旨は2点あるというのですが、その回答は私の疑問に答えるものではありませんでした。

1つ目。高校の現役生を想定していて、高校入学前ではなく、高校での学習成果を見る。

2つ目。「各種試験の英語力を認めない」ということではなく、大学入試の一般入試という枠組みで考えている。

一つ目の趣旨は、Sさんによれば「最近ありますよね、小学生で英検準1級合格とか、そういうのではなく、高校での学習の成果を見たい」という回答でした。ということは、この制度で受験生の資質として評価する主眼は英語力ではない、ということなのでしょうか?

「ケンブリッジ英検では生涯有効な英語力のお墨付きを出しているのに、3年以上前の合格だと、広島大学はその英語力を認めない、ということに関して、ケンブリッジ英検には照会などをしているのか?」という質問には、「これは広島大学独自の一般入試での見解であって、先方に問い合わせたり確認したりはしていない」とのお答えでした。

「外部試験」って、何を証明するための資格試験なのか、よくわからなくなりました。英語力があると認める生涯有効な試験の結果を、なぜ大学独自に却下してしまえるのか?


ということで、次は「ケンブリッジ英検」に問い合わせです。
日本国内の統括のオフィスから、英国の本部へと照会していただくという大変なお骨折りを経て、回答を得ました。
機構本部(Cambridge English Language Assessment) のGlobal Recognition Teamよりの私宛の回答ですが、「私信」ではなく、このブログのようなSNSで公開しても構わないという許可を得ています。
当たり前といえば当たり前ですが、流石は英語の試験の「横綱」とでも言えばいいでしょうか、この回答にはケンブリッジ英検としてのスタンス、矜恃がはっきりと現れていると思いました。

一番初めの回答がこちら。

Cambridge English certificates do not expire. They show that on a particular date the holder demonstrated that they had attained the specified level of language skills. Language skills can however diminish over time, if they are not practised, this is often referred to as ‘language attrition’.

Educational institutions and employers need to take into account a number of factors when considering an applicant’s English language skills – most importantly whether the holder has maintained their use of the language and whether the level of the certificate is suitable for the job or course in question. Universities, employers, professional organisations and government bodies can set their own language requirements and may use their own criteria on any exam’s validity on the basis of timeframe, level and subsequent use of the applicant’s English language skills. They may therefore request additional evidence of current language ability.

The decision of whether to accept older certificates is left to individual institutions, depending on their requirements. So, while our exam certificates do not expire, it is important for all language learners to practise their skills after successful completion of an exam.

IELTSとの違いに関して補足があった二回目の回答がこちらになります。最後の段落でIELTSに言及があります。

Shelf life of certificates
We are sometimes asked how long the Cambridge ESOL certificates last, or whether a candidate who took an exam some years ago needs to retake the exam.

The simple answer is that the certificates do not expire. They show that on a particular date the holder demonstrated that they had attained the specified level of language skills. For most candidates, the certificate is the result of a specific preparation course and serves as a mark of achievement in completing the course successfully.

It is clear, however, that language skills can diminish over time –a phenomenon often referred to as ‘language attrition’. In deciding whether to rely on a certificate obtained some years ago, educational institutions and employers need to take into account a number of factors, most importantly whether the holder has kept up his or her use of the language and whether the level of the certificate is significantly higher than that required for the job or course in question.

There are therefore no hard-and-fast guidelines for the period since obtaining a Cambridge ESOL certificate after which additional evidence of current language ability may be required by employers or institutions.

The Test Report Form provided by IELTS is not a certificate since it is not focused on a particular level of language ability; for this reason, the normal shelf life for an IELTS Test Report Form is two years (see under Results in the IELTS Handbook).


今回、広島大学とケンブリッジ英検にお尋ねして、そのそれぞれから回答を得たわけですが、あらためて、外部試験のスコアや級の比較対照表のようなものが独り歩きしていることに危惧を感じています。

試験それぞれには、それぞれの特徴・特質があります。それぞれの試験で測定している英語力とはどういうものなのか、対照表を「鵜呑み」にするのではなく、今一度、冷静に考えて見るべきでしょう。
私は「ライティング」が専門と自称していますが、ケンブリッジ英検のFCEでのライティングで要求される技能と、日本の「英検」の準一級のライティングで要求される技能とが横並びになる、とはちょっと思えません。

ともすれば、「四技能」というbuzzwordばかりが飛び交っていて、外部入試で「四技能」試験を採用している大学は、個別試験で従来型の大学入試を課している大学よりも進んでいる、優れている、という評価を煽るかのような英語教育の世界ですが、喧伝する声の大きさに躍らされたり、行列の長さに靡いたりせず、それぞれの「試験」を、当然、センター試験(に代わるといわれる新テスト)や、大学の個別試験も含めて、きちんと評価吟味をした上で活用することが大事だと思うのです。

そして、何よりも地に足を付けて英語教育、特に日々の授業に取り組むことの重要性を、中高現場の教師に伝えたいと思ってブログで情報発信を続けている次第です。

外部試験とCEFRの関連に関しては、validationの問題も含め、今一度、2015年の私の発表「『英語力の可視化』かくかくしかじか」をお読みいただければ幸いです。

フォーラム配布資料
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/files/2.yamaguchi_EngForum_matsui.pdf

当日投影資料
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/files/2015_YEF_matsui_presentation%E5%85%AC%E9%96%8B%E7%89%88.pdf?d=download

最後になりますが、今回、お忙しいところ時間を割いて回答して下さった、広島大学、ケンブリッジ英検の皆様に御礼申し上げます。

本日のBGM: ノビシロマックス (The Collectors)

ブログの移行を試行しています

足掛け13年綴ってきた「はてなダイアリー」のファイル容量がマックスに達しましたので、「はてなブログ」に移行を試行しております。
ファイルアップロードなど、以前の機能は引き継がれていないため、どこをデータアーカイブにするか、など今後の詰めが必要ですが、とりあえず現時点ではこちらに、新しいエントリーの「更新」をしていくことになるだろうと思います。

第二の住み処ということで、サブタイトルがちょっと変わりましたが、ダイアリー時代と同様にご贔屓にしていただければと思います。

ブックマーク登録や購読などをされている方はこちらをチェックして下さい。

英語教育の明日はどっちだ! tmrowing at second best
http://tmrowing.hatenablog.com/

「もっとスローにささやいて」

かねてよりあたためていた次期学習指導要領案についての「パブリックコメント」の提出を本日済ませました。
奇しくも忘れられない日の提出になりました。もっとも、前日に提出できていたとしても、それはそれで東京大空襲の日に当たったりしますのでね。

以下、意見提出フォームから送信したものの写しです。

小学校の学習指導要領案について

提出意見1

意見要旨
・小学校における「英語」の教科化は時期尚早であり、現状の「外国語活動」を当面維持すること。
・万が一「教科化」されるとしても、それに伴う時間割編成において、「モジュール」と称して研究指定校などで試行されている「短時間の帯活動」をもって、授業の単位時間に含めるという扱いをやめること。


意見詳細
中教審の答申では小学校の週当たり35時間という時間割が満杯で、「新たな科目や活動を『授業』時間内に入れられないから」、という理由をあげて、「外国語活動」や新設の「英語」という科目でだけ、盛んに「モジュール」化を促していたのであるが、今回の小学校の指導要領案の中に「モジュール」という文字列は一切出てこない。

今回の案では次のように書かれている。この(イ)の部分の「短い時間の活用」を「モジュール」と称しているのではないかと推察するものである。

(2) 授業時数等の取扱い
ウ 各学校の時間割については,次の事項を踏まえ適切に編成するものとする。
(ア) 各教科等のそれぞれの授業の1単位時間は,各学校において,各教科等の年間授業時数を確保しつつ,児童の発達の段階及び各教科等や学習活動の特質を考慮して適切に定めること。
(イ) 各教科等の特質に応じ,10分から15分程度の短い時間を活用して特定の教科等の指導を行う場合において,教師が,単元や題材など内容や時間のまとまりを見通した中で,その指導内容の決定や指導の成果の把握と活用等を責任を持って行う体制が整備されているときは,その時間を当該教科等の年間授業時数に含めることができること。
(ウ) 給食,休憩などの時間については,各学校において工夫を加え,適切に定めること。
(エ) 各学校において,児童や学校,地域の実態,各教科等や学習活動の特質等に応じて,創意工夫を生かした時間割を弾力的に編成できること。

多くのメディアでは、このウの(イ)の運用で外国語活動や英語を15分の細切れ活動3回分を合わせて1単位時間に当てるかのように取り上げられているが、ここには外国語活動や英語という但し書きは出てこない。つまり、国語であれ、算数であれ、どの教科でも「モジュール化」で弾力的に時間割を編成できるということに他ならない。にもかかわらず、現時点では、教育関係者も含め多くの一般市民が、時間割からはみだすのは「英語」という思い込みでこの時間割編成を語っているように感じられる。

また、「弾力的な時間割編成」が認められているのは、児童や教員集団の実態に応じて、教育現場の可能性を開くためのものであって、「こういうやり方をとらなければ、時間割からあふれた教科を実施するために現実的な解決策が無い」状況を容認・是認するためのものではないはずである。

新設とされる教科であり、これまでの指導実績のない「道徳」や「英語」を考えたときに、上掲の(イ)にある「教師が,単元や題材など内容や時間のまとまりを見通した中で,その指導内容の決定や指導の成果の把握と活用等を責任を持って行う体制が整備されている」と認められる根拠は答申や有識者会議、ワーキンググループの議事録等で充分に示されてきただろうか?DVD教材を週当たり15分3回見せて活動する、とか学校の教師が充分に指導できない中、地域の人材を活用して活動を行うことが「指導の成果の把握」といえるか甚だ疑問である。

このような状況を考えたときに、小学校での「英語」の教科化は時期尚早であり、人材も予算も有識者の支援も潤沢に得られる環境で試行された一部の学校の成功事例を、全国に2万校近くある一般の小学校の全てに当て嵌め、実施することは無謀であるとさえ言える。

小学校英語の教科化は時期尚早であり、それに伴う、下位学年での外国語活動実施の早期化は見直すべきである。
万が一教科化されるとしても、英語のみを「モジュール」と称した短時間帯活動にして実施することは妥当ではない。英語以外の他教科をモジュール化できないのであれば、英語とて同じことであろう。
小学校での「英語の教科化」そのものの見直しを強く望むものである。


小学校の学習指導要領案について
提出意見2

意見要旨
・小学校における「英語」の教科化は時期尚早であり、現状の「外国語活動」を当面維持すること。
・万が一「教科化」されるとしても、指導目標や内容の取り扱いにおいて、現行の「中学校」の指導内容の前倒しにならないようにすること。
・「聞くこと」と「話すこと」という技能での連関について、指導過程と児童の発達段階を踏まえた充分な記述をすること。とりわけ「やりとり」「伝えあい」ということばで想定している言語活動の実態とその発達段階を明確に記述すること。


意見詳細
文科省による英語力調査の技能別の達成状況では、中学段階でも「聞くこと」の力が不充分であるのに、「話すこと」を重視し、小学校の段階でも「やりとり」と称して「伝え合い」が重視されている。
小学校の案では、聞くことの目標設定で「ゆっくりはっきり」という但し書きがあるのだが、肝心の「話すこと」の指導に関して「ゆっくりはっきり」話すことは一切明言されていない。「ゆっくりはっきり」に配慮できるのは、適切な速度や理解の支障となる明瞭さを既に分かっている英語の運用力の高い児童、または教師などの大人であって、これから英語を学ぶ児童には、何をもって「ゆっくり」なのかという相対化は難しいだろう。
既にスクリプトの決まっている発表での「言いっ放し」を嫌って、「やりとり」という項目を新設したかったのだと思われるが、伝え合う対象は「児童同士」を想定していないかのようである。

「聞くこと」を試される局面で、聞いていてわからないときに「聞き返す」「質問する」ということが可能なのが「やりとり」の最大の利点のはずであるが、では「もう一度、ゆっくりはっきり言ってもらったのに分からない場合はどうするか?」。更に易しい語句で言い直してもらう他には、ボードや紙に書いてもらったり、textingで対応してもらう、という可能性が残されている。これこそ技能連関の好例と思われるが、では、いつ「文字」を読む指導をするのか、といった「技能の連関」に関わる体系やその裏付けとなる理論がよくわからない。

「話すこと」の指導における、「好ましい」「望ましい」発話速度、明瞭性の記述と、その実現のための指導手順、配慮事項を指導要領の中に加えるべきであろう。

中学校の新指導要領案の「聞くこと」では、小学校にあった「ゆっくり」という文言が消え、「はっきりと話されれば」という目標設定となっている。にもかかわらず、小学校でも中学校でも「話すこと」の項目で、とりわけ「やりとり」「伝え合い」の目標設定に、「はっきりと話す」ことについての言及がなく、中学段階では小学校の「ゆっくり」がなくなったことから推察される、「より速い発話速度」をどのように達成するのか、という記述が見当たらない。どのような指導や学習を経て、小学校から中学校までで「聞くこと」の発達がおこるのか、また、「聞き手」としての児童生徒の発達段階の途上において、「話し手」としての発話速度や明瞭性に関する配慮についての言及が全くない。

速度も明瞭さも、児童生徒それぞれ、思い思いの話し方をされてしまっては、単一技能の「聞くこと」の目標さえ達成されようがないのに、「話すこと」の目標設定や言語活動の取り扱いでも、話す速度や明瞭さについての言及がないのは本当に不自然。そんな状態で何を「伝え合う」のか?過日の「英語力(のフィージビリティ)調査」での四技能ごと、技能連関(統合?)の調査結果を見ても分かることだが、「聞くこと」ではごく大まかにしか理解できないのに、「話すこと」では、まとまりやつながりとか、即興性を求めたりしても、「伝え合い」にはならないのではないかと危惧するものである。

「やりとり」「伝えあい」ということばで想定されている「言語活動」と、その活動を支える「スキル」に関して、もっと明確な記述が求められる。


小学校の学習指導要領案について
提出意見3

意見要旨
・小学校での英語の教科化を見直し、現行の外国語活動を維持すること。
・今後、小学校段階で文字指導を導入するにしても、とりわけ「書くこと」において、今回の指導要領案で示されているものでは、指導者、学習者ともに混乱を深めるだけであるので、抜本的な見直しを求めるものである。


意見詳細

今回の学習指導要領案では「教科」として位置づけられた「英語」の中で文字指導を行い、「読むこと」「書くこと」の指導を可能とするような方向性が見て取れるが、とりわけ「書くこと」の目標設定と、その実現のための方策は甚だ合理性を欠き、実現の可能性が低いと言わざるを得ない。

英国など英語が母語環境にある初等教育段階でさえ「文字指導」に関しては、発達段階に見合った適切な指導を積み重ねているのに、なぜ日本の学校教育環境では、たくさん「やりとり」させたり、「読ませたり」すれば自然と文字が書けるようになるというかのような「指導」が広まろうとしているのか、理解に苦しむ。

英語を母語とする各国での文字指導の知見や先行事例に倣うとき、「実際に手で文字を書く」というhandwriting の有識者、専門家の指導助言を取り入れて、小学校段階での文字指導の体系を明確にすることが求められる。

文字指導に関連して、現在の外国語活動の指導では「音韻意識」の育成にも中途半端で、「手書き文字」の指導の体系が全く示されていない状態で、高学年で「書くこと」を取り入れることは、あまりに拙速で混乱や被害が大きくなることが懸念される。英国の National Handwriting Association で提唱している一連の指導手順、体系、左利きの児童やディスレクシアの児童への配慮など、発達段階を考慮した「文字」の扱いと、視認性が高く、手書き文字とのギャップの少ないフォントの採用や四線の間隔で、baselineとx-heightの間隔が、他の間隔よりも広くなった書式で練習するなど、英語が母語の国の初等教育で効果をあげている指導方法を積極的に取り入れるべきである。

小学校での英語の「教科化」そのものを見直すべきであると考えるが、万が一教科化されるとしても、小学校5年で「文字指導」を行うのであれば、全面実施ではなく、学年進行で、指導を積み重ねていくべきである。5年生で初めて文字指導を受ける児童は、その前年、前々年度に、現行の「外国語活動」のような指導を受けていることが条件となる。前年度までの指導とその成果を充分に踏まえた上で、児童が学年進行で、小学校5年生に進級してきてから文字指導を行うことを強く望むものである。

今回の学習指導要領案では、「書くこと」の具体的な内容のうち、「書き写し」の取り扱いに問題がある。

「書くこと」の「言語活動」の中に、(イ)(ウ)と「相手に伝えるなどの目的を持って(中略)を書き写す活動」というcopyingの活動が2つ取り上げられている。書き写しの一番の目的は「相手に伝えること」だろうか?
寧ろ、ペア活動などで「相手から伝え聞いた内容や概要、キーワードを忘れないように」するために書く方が、実際の教室での言語活動のねらいや実態に即しているのではないだろうか?「やりとり」「伝え合い」の焦点化、前景化が、いろいろなところで歪みを生むのでは、と危惧する。

当然、他者から伝え聞いたことだけではなく、「自分が言ったこと」や「言おうとしていること」を忘れないように、記録に残したり、学んだことを確認したりするためにも「書くこと」は有効。「書く」という技能は、「コミュニケーション」のためだけにあるわけではない。「コミュニケーション能力の養成」にだけ目を奪われていては、発達段階に見合った適切な指導の機会を(見)失う可能性がある。

以上、「小学校の学習指導要領案」に関わる3つの意見を提出してきました。
これからweb上で意見を送ろうという方は、3月15日(正午)までに、

「学校教育法施行規則の一部を改正する省令案並びに幼稚園教育要領,小学校学習指導要領案及び中学校学習指導要領案に対する意見公募手続(パブリック・コメント)の実施について」

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/29/02/1382218.htm

からどうぞ。指導要領案のpdfでは、アの(ア)など、階層を表わす記号で一部半角カナが使われていますので、コピペで文言を貼り付ける際には、くれぐれも気をつけて下さい。意見提出フォームでは丸数字や半角カナを受け付けませんから。

本日のBGM: Rock'n Rouge (松田聖子)

♪制服の胸のボタンを、下級生たちに…♪

昨年度の卒業式は大雪に見舞われましたが、今年の卒業式は放射冷却の影響か、凍てつく寒い朝でした。
無事に卒業生を送り出し、早めの帰宅。翌日から在校生は学年末試験です。

国公立前期試験の結果発表もまだ先ですが、「ライティング」系の出題をいくつか眺めての感想をば。

入試だけではありませんが、日本のライティング試験の「お題」設定って、本当に「書くこと」が分かっている人の声に耳を傾けて改善すべき時期だとあらためて感じています。

過去ログを再読されたし。

Solo, duo or trio?
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20140929

問題に関しては、新聞社の提供している国公立大入試情報などを御覧ください。

神戸大は「一体何だったんだ昨年度は!」というライティングのお題になりました。
で、この問題文にある「バンドワゴン効果」の定義の英文内容はこれで適切ですか?
あと、解答で想定されるパターンは
・10代>大人
・10代<大人
・どちらとも言えない
の3つがあるはずなのですが、恐らく予備校等の解答例では上2つしか上がっていないのでは。

http://mainichi.jp/ch160190036i/%E7%A7%81%E5%A4%A7%E3%83%BB%E5%9B%BD%E5%85%AC%E7%AB%8B%E5%A4%A7%E5%AD%A62%E6%AC%A1%E8%A9%A6%E9%A8%93+%E5%85%A5%E8%A9%A6%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%81%A8%E8%A7%A3%E7%AD%94

いつもいつもいつも思うことなのですが、所謂「自由英作文」で意見を述べさせることに対する「願い」を見直す時期に来ているのでは? 60語程度の語数制限をつけて「意見とその理由を2つ」書かせたって、一つ一つの理由づけは不十分で論理は深まらず、何も「支持」出来ないだろうと思うのです。

もし60語程度の英語で書かせたいのなら、

10代>大人
10代<大人
どちらとも言えない

という紋切り型の文を「和文英訳」三題で与えるので十分だと思います。

本当に「英文ライティング」「英作文」の力も含めて英語力を診たいのであれば、政治や経済、消費行動関連の英文資料を読ませて、その本文中にある事例とパラレルな「バンドワゴン効果」の個人的なエピソードを80語程度で書かせる。その後に、この神戸大のようなお題で持論とそのサポートを150語から200語くらいで書かせれば高等教育に耐えうる英語力は測れるのではないでしょうか?

当然、限られた時間での受験ですから、受験生の労力に見合う配点設定は要再考でしょう。英文資料のコピペ、引き写しにならないように解答に制限を設けるとすると、英文資料の読解→ライティングで「慶應大・経済」型に、リスニング→ライティングで「東外大」型に落ち着くのかな、というのが私の感想(「願い」?)です。

神戸大の「ライティング」に関して、河合塾の解答速報から気になるところを。

http://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/nyushi/honshi/17/kb1-11c.pdf

「バンドワゴン効果」とは,複数の選択肢があるときに,注意深く考えることなく付和雷同で1つの選択肢を選んでしまう傾向について述べた言葉で,マーケティングなどで用いられる用語の1つ

そうなの?

思いつくまま、webで得られる情報を。

What is the 'Bandwagon Effect'
http://www.investopedia.com/terms/b/bandwagon-effect.asp

Riding the Bandwagon Effect | Psychology Today
https://www.psychologytoday.com/blog/media-spotlight/201512/riding-the-bandwagon-effect

次の記事でも、最初の一文の定義が不十分だからこそ、その次の実例の一段落が必要で、This is … なのですよ。

Bandwagon Effect Definition & Example | Investing Answers:
http://www.investinganswers.com/financial-dictionary/stock-market/bandwagon-effect-6144#.WLIpFiaVVic.twitter

この「具体的なエピソード」を想定する、という観点では、意外な方が神戸大・ライティング出題を的中させていた、と言えるでしょうか?

https://twitter.com/mappy_pipipi/status/831270656603885569

不十分な分量と雑なお題で「自由英作文」を課すくらいなら、3択の和文英訳を、と書いた6年ほど前の過去ログがこちらになります。再読されたし。

To whom it may concern
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20101222

2007年にも神戸大の出題を取り上げて「和文英訳三題」を提唱していたことに気が付きました。これも何かの縁でしょうから、神戸大さん、来年の出題はそうしてみませんか?

そうだ、J・Jといえば植草甚一がいたじゃないか!
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20070728

東大と阪大のライティング出題での「お題設定」にも悩みました。

http://mainichi.jp/ch160190036i/%E7%A7%81%E5%A4%A7%E3%83%BB%E5%9B%BD%E5%85%AC%E7%AB%8B%E5%A4%A7%E5%AD%A62%E6%AC%A1%E8%A9%A6%E9%A8%93+%E5%85%A5%E8%A9%A6%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%81%A8%E8%A7%A3%E7%AD%94


東大の2(B)の出題ではJunの祖父のファーストネームがなぜMarleyなのか?

阪大のIIIでは、特に英語が嫌いで勉強したくない「中2」の子に、英語でアドバイスをして読めるのだろうか?

どちらも素朴な疑問ですが、「シナリオベース」のように、場面や状況、人間関係の設定をするときに、「もっともらしい」設定をすることによって、更なる疑問が生じてくるケースがあるのです。

「外部試験」に切り替える(?)までの、わずか数年の間にもまだまだ「入試問題」には改善点があることがわかってもらえるでしょうか?

昨年度、話題となった金沢大、一橋大は、今年は「物語」や「描写」ではなくなりました。
でも、風景、人物の描写であれ、グラフ図表の説明であれ、事実や現象、しくみを的確に述べる練習は高校段階でもっとしておくべきだとずっと思っています。別に東大や一橋大や広島大の入試ライティングで出題されなくても、です。

そして、ライティングを身につける基本段階から、「ナラティブ」をきちんと位置づけることが望ましいとも思っています。

英語での発話で、過去の事実・行動を表す過去形を的確に使えるか、というのは初級から中級へのハードルと言えるだろうからです。

その際に、主語や目的語の名詞句の可算不可算が的確に使えるか、というのは見過ごされがちだけれど、同等、またはそれ以上に重要な英語力の指標の一つと捉えています。

可算名詞ということは知っていても、当事者同士の前提や文脈で、限定詞を適切に選択できるか、となると、怪しい人が多くなるのでは?
特に無冠詞複数形の「実感」に課題を残している人が多そうです。

例えばこの映画のタイトルがカタカナになると…。

http://www.imdb.com/title/tt0099348/

新し目の映画だと、こちらのタイトル。 the Trump (トランプ家;トランプ夫妻)と同じ解釈はしないでしょう?

http://www.imdb.com/title/tt3923750/

こちらはCOCAの "a meeting with members" での検索例ですけれど、ここでの "members" は一見、ただの無冠詞複数形ですが、全て後置修飾で制限がついていることに注意が必要です。memberという語が、そもそも所属先を必要とする語ですから、全く制限のない一般論を述べているわけではありません。


画像はこちらから。↓アイコンをクリックするとダウンローでできます。
member.jpeg 直

同じくCOCAの検索例から、"a meeting with reporters" のもの。先程のmembersと少々異なり、言って見れば「不特定多数いる」のが前提のreportersだとこうなります。日本の「記者クラブ」のように、取材できるジャーナリストに所属の制約があるところは別の世界の話ですけど。


画像はこちらから。
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ディベートやディスカッションをする前に、自己表現を求める前に、「事実や出来事を的確に述べる」際の留意点、トラブルスポットにもう少し光を当てる必要がある、というのが四半世紀英文ライティング、英作文を主として担当してきての「願い」です。

本日のBGM: 卒業(斉藤由貴)

Cubing---Descriptive passages への対応---

現在、この「はてなダイアリー」で、ダウンロード可能なファイルとして文書などを貼り付ける容量がなくなってしまったので、授業で使っているプリントをベタで打っておきます。出典を明記していただければ、ご自由にお使いいただいて構いません。過去ログでも幾つか該当箇所はあるかと思いますが、以下、プリントの内容です。


説明文や定義文を英語で書くときに、5W1H などと呼ばれるQuestioningの手法が用いられることが多いが、質問の答えを文章化する段階で多々難点があるので、英語の流儀に則った発想を保つことがより大切である。今回はCUBINGといわれる手法を用いてidea generationを行う。
“cube” とは立方体・さいころのこと。動詞でcube = 立方体をつくる、という意味があり、その動名詞がcubingとなる。展開図の6面のそれぞれを組み立て、立方体を完成すると、そこにはしっかりした中身 = contentをもつ作文が出来上がる、という考え方である。

CUBING

1. Association(連想・イメージによるつながり)
そのトピック・テーマを聞いて思いつくものは何か?もしそこからさら広がるとすればどんな考えが思い浮かぶか?(基本は1学期にやったclusteringと同じ)

・ A has an image of B.
・ A implies B.
・ A brings to mind B.

2. Comparison/Contrast(比較・対比)
似ているものは何か?また対照的な反対のものは何か?
(例1)  jam と marmalade
(例2) 「年賀状」→ 似ているもの → クリスマスカード
          ≠ 異なるもの  → 暑中見舞い

・ A is like B / A and B are alike
・ A is similar to B in +観点
・ A is different from B in +観点
・ A is equivalent to B in +観点

※ この観点を表す in の用法は確実に身につけておきたい。
in appearance
in color
in content
in degree
in form
in function
in opinion
in quality
in size
in that S+V (SがVである、という点で)
in … aspects (…の点で)

・ A is not simply B, but also C.
・ A is used for B while C is used for D.

3. Description / Definition(描写・定義)
そのトピック・テーマを定義づける。または詳細に描写する。この項目は日本人学習者の弱点でもある。
人か物か出来事や事柄か、道具か材料か、など、まず「より大きな種族(属)・分類」を示すことが大切。(次項目の4.の分類を参照)
他には、色・形・大きさ・味・臭い・音・重さ・温度 など語感で認識出来る要素を考えてみる。また、数・量などで定義してみる。ルーツ、起源、出身などを用いる、など、いい英文をしっかり読んで “盗む” ことが大事。

・ A is a kind [sort] of B
・ A is used for + 目的・用途
・ A comes from + 出典・起源
・ A started in + 起源
・ A dates back to + 起源・年代

4. Analysis / Classification(分析・分類)
そのトピック・テーマで示されているものが、どんな要素で構成されているか分析・分類してみる。

以下のようなキーワードが身についているか、をまず確認しておくこと。

class, category, kind, group, type, classification, division
classify, divide, categorize, include, belong to, fall into, distinguish
one, the other; some of, most of, all of

・ A is made of + 素材・材料
・ A is composed of + 素材・材料
・ A consists of + 要素
・ A is (a) part of B
・ A has B, C, and D (in it)
・ A is[are] divided into three categories: A, B, and C.

5. Application(応用・実地)
アイデアだけでなく実際に行う、実地に移すとすればどうなるかを考える。また、どんなことができるか、と考える。
・ A is something that you use when you do B
・ A is something that you can use to do B
・ A is made [designed] for B.
・ A serves as + 役割
・ A works as + 役割

6. Argument(主張・立論)
自分の意見・主張などをまとめて立論する。定義文・説明文ではあまり活躍することはないが、課題によっては重要な要素である。

助動詞(should/must)だけでなく、主張・判断・断定を表す助動詞的な働きをする動詞、形容詞、(necessary, essential, inevitable, desirableなど)、文修飾副詞 (clearly, probably, obviouslyなど)で正確に語法を把握している語句のレパートリーを増やしていくことが大切。

引用以上。

具体的な「お題」で、どのように扱うか、詳しくは拙著(共著)『パラグラフ・ライティング指導入門』(大修館書店、2008年)をお読み下さい。

本日のBGM: マイ・ホームタウン(浜田省吾)

Give credit where credit is due.

「もしも」の話、ではなく、模試、模擬試験の話です。

学校によっては1週遅れで実施するところもあるかもしれませんので、閉じられたSNSでだけ、反応を伺い、拡散やシェアはせずにいましたが、この度、回答が寄せられ、さらに、ブログでの公開も了承いただきましたので、こちらで公開します。

ベネッセコーポレーションの「進研模試」、高1の1月実施回での、いわゆる「長文読解」の素材文で「?」となったので、解説冊子にあった出典を調べて比べてみました。

で、原文を一読して愕然。
私の頭の中に浮かんだのは、以下のようなもの。

原文は1300語以上ある文章で、語彙も表現・修辞も、高1では歯が立たないものが多いかと思います。

取り上げられる探検家など、日本人に馴染みのない人物をカットするのは、ありかもしれません。

主題をきちんと追えるようにと、長さを縮めるために、カットしたり、難しい表現を優しい語句で言い換えるとか、そういうのは教育的配慮でわからなくもないですが、原文にないSteve Jobsなどの内容を書き加えていいものなのでしょうか?

模試出題

模試出典情報

オリジナル雑誌we版

オリジナルテキスト変換版

pdfにまとめたもの。ダウンロード可。
Failure Is an Option.pdf 直

ベネッセへは次のように、お問い合わせページから書き込み送信し、併せて電話をかけました。

2016年度進研模試高1の1月実施分、英語での出題に関するお尋ねです。
第6問は所謂長文読解なのですが、素材文の出典には、Hannah Bloch という米国のベテランジャーナリストが2013年9月のNational Geographic Magazineに寄せた記事、Famous Failures とありますが、こちらのサイトを見ますと、タイトルは、Failure is an option: Where would we be without it? とあり、その記事全体の見出しに Famous Failures が使われているようでした。

http://ngm.nationalgeographic.com/2013/09/famous-failures/bloch-text

お尋ねしたいことはここから後です。
このサイトの原文には第6問の素材文の第5段落で用いられているエピソードのSteve Jobs も Apple Newton も一切出て来ません。

質問1:これは、出典にない内容を問題作成者が書き加えたということでしょうか、それとも、web版ではなく、Hannah Bloch が雑誌として発表された版には、その件が書かれているのでしょうか?
質問2:質問1で、出典にない内容を書き加えたものであるならば、それは、著者のHannah Bloch に改編の許諾を得ているのでしょうか?
質問3:もし、質問2の解答がNo だとするならば、著作者人格権のうち、同一性保持権の著しい侵害ではないかと思われますが、いかがでしょうか?

以上、それぞれの質問に対しての、「進研模試」としての責任ある回答をお願い致します。

その後、編集部から電話があり、ことの経緯をお知らせいただきました。
なんと、ナショナル・ジオグラフィック・マガジンの記事を、進研模試出題者(問題作成者、ライター)が書き換えたのではなく、センゲージラーニングがナショナル・ジオグラフィック社とコラボして出している「英語教材」の英文素材をまるごと使って、その語彙を高1向けに易しく書き換えて使っていたのだそうです。市販教材からの使用許諾を得ていて、その際は著作権者側から指示されるクレジットを表記すればいい、ということで著作権上は問題はないとのこと。

Reading Explorer 3
http://ngl.cengage.com/search/productOverview.do?N=4294918503+200+4294891625&Ntk=P_EPI&Ntt=143914416812210029957443461732120208358&Ntx=mode%2Bmatchallpartial

ということで、Steve Jobs の件も、模試作成の段階ではなく、その前のセンゲージの教材作成の際に加筆され、全体もかなり平易に書き換えられていると推察されます。
ただ、著作者人格権と同一性保持権の問題意識は進研模試の編集部にも再度喚起しておきました。

その翌日、ベネッセの編集部より寄せられた回答メールを、許可を得て、そのまま転載します。
英語の編集長という肩書の方からです。
以下、転載。

時下,益々ご健勝のことと存じます。平素より弊社教材には格別のご高配を賜りまして,厚く御礼申し上げます。
先日お問い合わせいただきました進研模試1年1月の長文読解の英文素材の件につきましては
ご指導いただきまして誠にありがとうございます。
Reading Explorer3(2015)における英文の添付とともに
昨日,口頭でお伝えしたことをメールにてお送りいたします。

■英文素材について,許諾の経緯
進研模試(1年1月)第6問の英文に関してはNational Geographic LearningとCengage Learningが共同で出版しているReading Explorer3(2015)の英文を基にしております。著作物の利用に関しては,まず,本書籍の著作物に関する問い合わせ先として指定されていたCengage Learningに照会をしております。その際に,該当の記事に関する権利はNational Geographic Magazineにあるという連絡がきたため,著作物の利用に関してはNational Geographic Magazineに許諾を取っております。さらに,出典表記(クレジット)に関しては,National Geographic Magazineが指定したものを,進研模試(1年1月)第6問の解説に記載しております。
※なお,Reading Explorer3に掲載されている記事はNational Geographic Magazine, September 2013に掲載された記事に追記・改編された形となっていますが,National Geographic側が追記・改編をしたのか,Cengage Learningが追記・改編し,それをNational Geographic Magazineが認めているのか,については定かではございません。

■ベネッセとして
出典表記(クレジット)に関しては,権利者が指定してきた場合はそれを掲載することが義務づけられておりますが,今回のケースでは,進研模試で参照した英文はReading Explorer3のものであると補足が必要であったと考えております。さらに,先生からご指摘がございました通り, Reading Explorer3の英文で加えられている具体例が唐突に付け加えられている印象があるにも関わらず,模試の素材選定の際にそれを見抜けておりませんでした。今回の事例を社内外のスタッフと共有し,素材選定にはより一層の配慮をしてまいりたいと思います。
改めまして,この度は進研模試の出題に関しまして
ご指導いただき,誠にありがとうございました。
今後とも何卒宜しくお願いいたします。

という次第です。
英語教育の現場を預かる身としては、「読む甲斐のある英文」で、英語力、英語の学力の有無、多寡を問うてほしいと願うばかりです。
もう一つは、かねてより力説していますが、教材であれ、テストであれ、「優秀なライター」を確保して、きちんとした対価を払って、英文を書いてもらう、という商習慣をこの英語教育の業界に定着させて欲しいということです。

本日はこの辺で。

本日のBGM: Landslide (Musument w/野見山睦未)

(この)記事の名(=タイトル)は?

前回のエントリーに続いて、

2017年「大学入試センター試験」外国語 英語・筆記(第4問〜第6問)

の寸評をば。

第4問
A 所謂「グラフ・図表」問題。グラフが一つになって拍子抜け?
本来は非連続テキスト(グラフ・表など)と連続テキスト(文章)との行ったり来たりができる読解力を見るための問題だったと思います。PISA型読解力とかが騒がれた頃には注目されていたのだろうとは思いますが、今年の英文は「比例・増減」「割合とその変化」など、英語の数量表現として気をつけなければいけないものがそれほど含まれておらず、「易しくなった」というだけでなく、グラフと融合させてまで読む問題なのかな、という印象です。

問1は According to the passage とあるので、グラフではなく文章のテクストから読み取る。第2段落の定義と具体例を読むだけ。

問2はグラフと文章の対応。第3段落の中盤から、それぞれのAreaの説明が始まるけれど、この第3段落のAll, Children, Adolescentsの説明をきちんと確認しておくことが大事。

グレーっぽい網掛けがAll。説明部分のspent most of the timeを読めば、一番バー(=棒)の長い(=活動が長時間)エリアがSolid Surfaceで、それに続く(= followed by)のが、Multi-court で、その次(=then)がGrass、とあるので、A&Bは決定。残り二つのうち、”with the average for All students in Playground being just over two minutes” と付帯状況を述べているので、左のバーが2分を僅かに超えている D がPlayground 、最後に残るCがNaturalとなるはず。

問3 はこの文章そのものの目的・狙い。
「読者層」を答えさせる設問が来るかな、と予想していたけど、見事にハズレ。
第2段落の冒頭の研究の目的を述べる部分で、”in order to investigate how much different types of schoolyard areas were used and whether students were active or passive in those areas” の意味をきちんとつかんでいれば大丈夫でしょう。

問4
文を超えたつながりとまとまりの設問(のはず)。
でも鳥の目で全体を眺めて「論理的展開」や「構成」を読み取らずとも、最終文の “Let us now take a look at these relationships.” のthese が何を指すかが虫の目でわかれば解決なんですけどね。

B 省略。

第5問
今年も物語文。
今年は「朝起きたら猫になっていた」という文章。SNSでは、「『君の名は。』の影響」などという声がチラホラありましたが、登場人物(猫物?)同士が入れ替わっているわけではありません。『とりかへばや物語』、『転校生』や『君の名は?』というよりは、 カフカの『変身』に近い、ナラティブ耐性の弱い受験生には過負荷か?という意表をついた設定でした。

本文に書かれている、心情とその原因(または感情の発露とその結果)を表す表現を丁寧に押さえて読めば解答は容易なのですが、それができずに「自分の思い」を重ねて読んでしまう高校生が多いわけです。

私の「ライティング」の授業では、古いタイプのStory Grammarを用いて、ナラティブな文章を読み、自分でも書くことを指導していますが、単純な5W1Hでは、物語の「ダイナミズム」が反映されませんので、工夫が必要だと思います。
私の使っている物語文法は1980年代までの知見に基づいています。最近の研究までを知る方たちは、もっと有効な「物語文法」の枠組みを用いているでしょうが、私にはこれが一番馴染んでいるので、参考までに。

(1) setting(場面設定):登場人物、場所、社会的時代背景、役割設定
(2) initiating event(出来事の始まり):主人公の反応を促す出来事、相手の言動、周囲の状況変化
(3) internal response(内的反応):主人公の思い・考え・ねらい・目標
(4) attempt(試み):主人公が目標達成のためにとる言動
(5) consequence(結果):目標の達成または不成功を示す出来事・言動・状況の(不)変化
(6) reaction(反応):目標達成(または不達成)に関しての主人公の感情の表現、言動)

で、今回の出題へ。
『とりかへばや物語』であれ、『転校生』や『君の名は。』であれ、「主人公」が入れ替わり、重なるとすると、「読者」からすれば、丁寧な読みが必要となるだけでなく、「感情移入」の幅や奥行きも広がることになります。そういう多層的、多重的な物語はエンターテイメントには向いていても、テストでの「読解力」の測定に向くのかどうか…。

文章で気になったのは、序盤で、2行目の、”With a big yawn I woke up.” と、4行目の、”I noticed the smell of coffee coming up from downstairs.”

この部分の記述は、「主として命令文で、北米のくだけた話し言葉で使われることがある」と言われる、

Wake up and smell the coffee.

という表現を踏まえているのだろうか、ということ。

  • = become aware of the realities of a situation, however unpleasant (ODE)
  • = used to tell someone to recognize the truth or reality of a situation (LDOCE)
  • = used for telling someone that they need to pay attention to what is happening in a situation they are in, usually a situation that is not good (MED)

という意味に何か掛けて、上手いこと描写した、という感じなのかな?
確かにこの慣用表現がわかっていると「主題」の把握は一層容易になりますからね。

後半の “There’s a cat in the dining room!” という「人間の私」のセリフには少し驚きました。「飼い猫」であれば、名前で呼ぶでしょうから、この猫は「飼い猫」じゃないのに、どこから紛れ込んだ設定なのか?というところ。でも、「紛れ込む」とか、そもそも想定していない、荒唐無稽なフィクションなのでしょうね。そもそも「飼い猫」との入れ替わりなら、「猫」にもキャラクターが割り振られているのでしょうから、『君の名は』と比較して面白がる気持ちもわかりますが、この場合だと、やっぱりカフカ的と言った方がいいでしょう?

一つ不満なのは、最後の「夢オチ」で、文字通り「窓の外にジャンプした」行為の落下点、落とし所の描写が弱いところ。”The human I” とか、前半は凝った描き方&書き方をしていたんだから、”Bump!” だけでなく、「あれ、全然痛くないぞ…」「オモテに出たと思ったのに…」とか、「自分の手が毛むくじゃらじゃなくてホッとした」の前に「生きててよかった」とか、もうちょっとちゃんと設定や伏線を活かして書きましょうよ。

ということで、今年の追試ではどんな英文が出題されるのか、楽しみではあります。追試も物語文になるのかね?

第6問
論説文とか評論文などと分類される文章が用いられることの多い、この大問。今年はどうだったでしょう?

この問題は例によって、私の読解系の授業と同じく、手書きコピーのアップをするつもりでしたが、現在、この「はてなダイアリー」のブログのファイル容量が一杯で画像をダウンロードできるファイルとして貼り付けられない状況なので、中くらいの大きさでベタで貼りますので、スマホやタッチパネルの方は拡大して、そうでない方は目を凝らしてご覧下さい。の写しをアップしておきます。
※2017年1月18日追記:何とか空き容量を作って画像ファイルとしてダウンロードできるようにしました。画像の下にあるリンクの[↓]を押して下さい。

第1段落

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第2段落

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第3段落

2017_6_3.jpg 直

第4段落

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第5段落

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第6段落

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English Vocabulary Profile の分析もReadingとWritingの両方でしてみたのですが、その画像ファイルは貼れませんので、日を改めて何かでお伝えできればと思います。

今晩にでも、「データリサーチ」などで、平均点などの情報が公表されることでしょう。
平均点の上下に右往左往するのではなく、英語のテストとして、英文としてどうだったか、それを踏まえて「きちんと読めましたか?」という部分を問うて欲しいと思っています。

昨年も高1、高2の授業で行っていた、「リスニング問題のスクリプトを読む」という作業は、今年もやっていますので、その様子も後日お伝えできればいいな、と思います。
では、この辺で。


本日のBGM: Don't know what it means (Tedeschi Trucks Band)

”Let me get by”

2017年「大学入試センター試験」外国語 英語・筆記
に関して、簡単にコメントしておきます。

全体として見れば、過去4年、5年で、最も易しかったのではないかと思います。

Odd Ones Out あるいは The best is yet to come.
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20140119

の2014年の過去ログでも書いていましたが、例年は60分かからないくらいで解答を終えていたのに対して、今年はおおよそ45分で、しかも、解答に際して「?」が浮かぶものが全くありませんでした。あくまでも「解答に当たって」であって、英語(表現・論理展開・文体)としての「?」とは別ですよ。

2005年から2016年までの「センター試験」批評はこちらにリンクをまとめていますので、お時間のあるときにでも是非。

... because I have played them too
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20161228

で、2017年です。
第1問 所謂「発音・アクセント問題」 
おそらく、全体の総得点との相関が最も低い大問なのではないかと思っていますが、そういうデータはDNCは出してくれないんですかね?毎年全国で50万人以上が参加する一大イベントなのにね。

私はかねてより、廃止を訴えている設問なので、授業でも「過去問演習はしませんよ」と伝えています。いや、発音と綴り字の関係は丁寧に教えますし、授業での調音や強勢は結構厳しく指導していますよ。でも、こういう問題で対策を立てたりはしないということです。

A の「他の3つとは異なる一つを選ぶ」、という「音声化」の知識を見る設問ですが、
問1の選択肢、appear / fear / gear / swear の4つであれば、例えば、earとwearをそれぞれのグループリーダーとしてその仲間を押さえておく、というような知識の整理が問われているわけですが、なぜ、グループリーダたるearの発音はそうなっていて、wearの発音はそうなっているのかは詮索してもあまりご利益はありません。強いて、授業で扱うとすれば、tearのように、「発音が異なると違う語=違う語は発音も違う」あたりですかね。で、当然のことながら、このtearという語の発音(音声化)の知識は、この形式では問えないわけです。

近年、「カタカナ語」で定着している音の知識と英語本来の音声とのギャップが問われる出題も見られましたので、問2の 最初の語を目にしたときに、ちょっとドキっとしました。

  • attaché

のわけはないよな、と思いましたけど、最近、『現代例解国語辞典・第5版』(小学館)の「アタッシェケース」(同辞典、p.26) の日本語コーパスに基づいたコラムでの情報が頭にあったから。当然、こういうのもテストには向かないわけです。

問3の -ss- の発音に関しては、選択肢の3と4を並べている時点で、お粗末でしょう。下線部の位置が、3だけは語尾で、4(も含めて他)は語中なんですから。せめて、assessくらいを準備しないと。

Bは、いわゆる「アクセント」。
これも、「他の3つと異なるもの」を選ぶわけですが、自分が分かる3つのなかに異なる語が一つあれば、残りの一つの語を全く知らなくても正答は選べてしまいます。ただ、4音節以上の語で、特に形容詞や名詞の場合には、その語の置かれた環境によって強勢は移動する(この言い方そのものが、面白い言い方なんですけど)ことが多々ありますから、英語の運用力は高いのに、このように語を「裸」にされるとかえって分からなくなる、という生徒もいることを忘れないようにしています。
今回の出題だと、definitelyは容認できるけれど、independence / democratic / resolution は再考した方がいい、ということです。COBUILD系の辞書を普段使っている人には釈迦に何とやらですね。

https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/definitely
https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/resolution

第2問
大幅に易化。大丈夫か?と思うくらいだけど、それだけ「文法・語法」の知識さえ定着していない受験生が増えたということの反映なのでしょう。
A
問5の所謂「分詞構文」と時制のズレですけど、私の授業では「助動詞の番付表」をずっとやっていますから、<大関+小結の合体ロボ>で瞬殺ですね。それよりも、Rameshって誰なのかが気になって仕方ありませんでした。

画像検索の結果をば

https://www.google.co.jp/search?q=Ramesh&client=firefox-b&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=0ahUKEwjh0uSHu8PRAhUJXrwKHThiCsUQ_AUICCgB&biw=1280&bih=611

近年出題の2枚抜きの問題も、問9、問10は選択肢の 2, 4 のthan, have がお粗末。
問9 はその直前に as kind とあり、問10では文末にlast Saturday とあるのだから。


B
対話文になっている必然性が本当にあるでしょうか?選択肢だけで解けてしまっては意味が無いと思うのですが…。
問1は、整序する最後の下線部の右の itが何を指すか?という確認ができていればいいかな。

問2 は動詞 cost の意味順で二つ目の「だれ・なに」スロットが確認できていれば大丈夫。

問3は how come …? の語順と形合わせなので、知らないとちょっと困るかな。


C
この「8択」形式はもう止めて欲しい。廃止を求めます。
問1 remember のあとに to原形か、-ing形かで意味に差が生じる、というのは理解できますが、realizeは、同じ「ワニ使い動詞」の仲間であっても、コトガラとしては「名詞」か「名詞節」を取るわけですから、錯乱肢として機能していません。よって、解答に当たっての選択肢の 1から4は意味が無いことになります 。

問2 空所の後に “for you, too” がある時点で、interested は消えるでしょ?その時点で、奇数番は消えることになります。

問3 規範的な立場からすれば、I wonder の後の節であって、疑問文ではないのですから、最初の how can we は不適切なものとして除外することになると思います。話しことばではよく聴きますし、「呟き」などではよく目にしますけどね。あとは、persuadeの目的語に it が来るのはどんな場合?まさか「性別の分からない赤ちゃん」?「高度に発達したAI」?という、それこそ Wonders will never cease!

第3問
A
ここでもまた対話文陥穽、いや完成。

問1 学生と教師の対話。教師の最初のセリフに “I don’t have time today” とあり、最後のセリフに “before you come” とあるのだから、ねぇ?

問2 渡辺謙とイーサン・ホークの対話(?)。イーサンは最後に “I know, but ….” といっている割には、どこにあるのか全然知らないという。「随分遠いね」とか「交通費が高すぎる」とか、行きたくない理由を作りたかっただけなのでは?この後の展開で予想されるのは、「では、いっったい予算は幾らくらいまでなら出せるのか?」ということでしょうね。そこを問題にすれば会話のやりとりのセンスが診られるのに…。

B
所謂「不要文指摘」問題。本来は、パラグラフライティングで、「つながり」と「まとまり」の力を診るための代替的な問題としてよく使われるもの。まとまった記述をさせることができないので、その代わりに複数題の出題をする、というもののはず。
比較的新しい出題で、「ライティング」教師の立場からは歓迎していた問題ですが、今年は、これまでで一番簡単なのでは?

問1 下線部の前に、「何の話しなのか?」という主題が決まらないとダメでしょ?「足の悩みを減らすための proper shoes; the right shoes の選び方」なのだから、この時点で主観的形容の fashinableが外れます。

問2 第2文で「利点と欠点がある」と言っているのだから、利点を述べていないものや、欠点を述べていないものがあれば、それは除外ですよね。

問3 第1文の読みが全て。「記憶の定着とそれを最初に覚えた場所」が主題なのだから…。


C
私の生徒も大好きな「ディスカッションもどき」問題。
これだけ長年に渡って批判してきた甲斐もあって、ついに登場人物が増えました。パチパチ…。
高1,高2の課外授業で「地域住民の集会があって、施設の再利用とか、地域の再開発に対して意見を集約するのに、発言する住民が3人、司会者気取りが一人ってどういう地域社会なの?私の住んでいる自治会だって20世帯以上あると思うよ。」という話しを1月14日の土曜日にしたばかりでした。まあ、増えたと言っても、Alice, Tom, Carol, Rick, Leslie, Ellenの僅かに 6人なんですけど。

  • 誰と誰が同じ意見か?

という部分を考えるだけで、今までと全く同じです。Aliceは市長から取りまとめ役を委嘱されたにしては、Carolがいきなり持論を言い始めて、すぐさまRickが同意して盛り上がってるし、せっかくAliceがその二人の話しをまとめたと思ったら、今度は間髪入れず、LeslieとEllenが勝手に反対意見を言い始めて、Aliceはよく怒らずに司会を続けているなぁ…、というよりも、サッカーやラグビーの審判宜しく、ディスカッションをもっとコントロールしないとダメなんじゃないの?

今年は、第2問までに4分ちょっとかかって、第3問はどうかな?と進んできたら、ここはA, B 併せて約3分, Cで4分で終了。前半の第3問を12分弱で通過しました。

とりあえず、前半にあたる第3問までを駆け足で。
以下、第4問からは、また日を改めて。

本日のBGM: Anyhow (Tedeschi Trucks Band)

”A Bond Born of Brotherhood”

tmrowing2017-01-02

2017年のスタートです。

年末は京都で旧交を温めて、心身共にリラックスできました。

2016年は、「全英連・山口大会」という、私としては極めて稀な、公的性格の強い催し物での分科会企画を引き受けたことで、体調も含め様々なところに歪みが出た一年でした。
肝心の「全英連」も、それに費やした時間やコストを考えると割に合わないものではありましたが、新たな出会いや収穫もあり、後悔はしていません。

ただ、「呟き」の方でもリアルタイムで連投していたように、二日間のプログラムでは、とてもプラスに評価できないものも幾つかありました。
初日の「祝辞」での、自説・持論の開陳でビデオを上映してしまう全能感溢れる文科省の方には呆れましたし、何の論理的整合性もないエピソードや比喩を映像と音楽でパッチワークよろしく繋いで、「感動するでしょ?」とでも言いたげな内容と構成の「基調講演」は正直、いたたまれませんでした。

でも、まあ、このような方々が「英語教育改革」の中心にいるのだなぁ、という「現実」を再認識出来たという意味では有難い機会だったのでしょう。

来年の新潟大会でも茶番が繰り広げられないことを祈っております。

今年は、自由に動き回りたいと思いますので、「研修会の講師」など、このブログの内容を読んだ上で、お役に立てることがあるようであれば、宜しくご検討下さい。私が話すこと、話せることの殆どは、既にこのブログに書いていますので、まずは過去ログをお読みになってからの話しです。

2016年最後のエントリーで「センター試験」にまつわるもろもろをまとめておいたのですが、残念ながらあまり読まれていないようです。

... because I have played them too
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20161228

他では読めないような内容、情報だと思いますので、是非一読を。
巷の「センター試験」の話って、「出題形式の変化」「平均点の上下」「素材文の総語数」「語法としての適否」位しか取り上げられませんから。英語という「ことば」のテストとしてどうなのか?どこかで本気で振り返ってみないと。ということで「総力特集 センター試験とは何だったのか」への伏線ですので、よろしくお願いします。


さて、年末の宿題を片づけておきましょう。
2016年12月23日付けのエントリーで示した4つの「英文」の種明かしです。詳しくはこちらの過去ログを再読されたし。

Did you see the light?
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20161223

a. はスピーキングの基礎力を見ることになっていると推測される「音読」の素材文。
b.とc. はどちらもリスニングによる「概要把握」の出題で用いられたスクリプトです。
d. はライティングのセクションで測る「技能統合」ということなのでしょう。「聞き取り要約」での素材文です。

2015年度の初回も、そして、2016年度の2回目でも、私以外に殆ど誰も指摘してこなかったことなので、何度でも私が言いますが、「聞き取り要約」が出来ないのは、技能統合をこの一題で済ませようという問題構成と設計に無理があることと、素材文自体の「話しが見えにくい」からなのではありませんか?

問題の構成、出題の形式を再度眺めてみると、
a. は音読の前に「黙読」が可能。つまり、読めるので楽です。
b.とc. は、リスニングのテストですから、当たり前ですが聞く段階では素材文を読むことはできません。しかしながら、設問は既に印刷されていて、選択肢も与えられているので、場面や人物の設定、名詞や動詞など、情報量の多い内容を推測するヒントとなる語句を読むことが可能です。
これら3問に対して、d の聞き取り要約だけが、「ノーヒント」で二回聞くことで概要を把握するだけでなく、内容を英語で保持し、要約することを求められています。これだけ、いきなり難し過ぎませんか?

確かに、前回EVPの分析結果を示したように、dだけ、他の英文よりも語彙レベルは低く押さえられています。ただ、語彙レベルが低ければ「技能統合」が可能なのか?ということです。
ここでは語彙レベルが低く抑えられているので、「○○レベルのリスニング力があれば、内容理解には何の問題もない」という弁別が出来るような「聞き取りの設問」が「聞くこと」のセクションにどれだけあったのか、そして、それが「ライティング」の得点とどのような相関があるかが検証されているのかどうか、現在公開されている資料からは全く解らないのです。

b.やc. のように「100語での聞くことによる内容理解」の語彙レベルがdの素材文よりも高いために、d. の聞き取り要約が出来なかった受験者が、「dと同じ語彙レベルで書かれた100語程度の英文」に基づく「聞くことによる内容理解」でどの程度正答が得られたのか、を併せて検証する必要がある。

というのが私の考えです。それを考えるためにも、問題は小問にいたるまで全て公表されてしかるべきです。

もっと突き詰めて言えば、「技能統合」で測定している技能の「下位技能」にあたるものを、単一技能の試験のそれぞれできちんと測定しておかないと、技能統合での失敗、不具合、機能不全が何によるものなのか、が全く分からないために、「対応」「対策」の施しようがない、ということになります。

ですから、以前、私が指摘したように、少なくとも「書くこと」のセクションでは、

1. 100語の英文の読み取りに基づく30語程度の要約課題

2. 50語の英文の聞き取りに基づく15語程度の要約課題

3. 4コマ漫画に基づくナラティブの描写課題

4. お題を与えての意見陳述課題

というように、複数の設問で段階的に「スキル」を問うべきだと思うのです。

技能統合にしても、「聞くこと」に基づくは内容の要約が出来ないものが、「読むこと」に基づく内容の要約ならできるかも知れないのですから。

ということを、なぜ「英語教育」の有識者たちも、現場の教員も2年にわたって指摘しないのか、本当にこの業界の危機的状態だと思っています。


「ヨンギノー」外部試験特需に浮かれる人たちからも歓迎されているのか、「英検」のライティングセクションに関わる、この情報がSNSで話題となっていました。

ライティングテストの採点に関する観点および注意点
(1級・準1級・2級)
https://www.eiken.or.jp/eiken/exam/2016scoring_w_info.html

年末の12月27日に追加された資料です。

少し驚いたのは、「ライティングの指導に役に立ちます」という指導者と思しき人たちからの声がTLで散見されたこと。

この英検の資料では、「英検2級」を想定した解答例に基づき、「ダメ出し」がされているのですが、ここで指摘されていることの殆どは、私がかれこれ十年近く、巷の英語本や学参、問題集の解答例の不備として指摘し続けてきたことでもあります。

ようやく、「世間」がここまで来たのか、という溜息交じりの感想です。

こちらの過去ログなどを再読して下さい。

まだまだ改善されない「ライティング」解答例公表と過去問対策
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160224

本当に大切なことなら、それを「ことば」に
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160315

「英検」の話が出たついでに、再度この話をして終わりたいと思います。

「好きなもの、人、こと」について「理由」を論じさせる出題を止めて下さい。
好き嫌いの「感情」と「論理」とは整合性が低いのだから。
そもそも英語に限らず、「好きなもの、ひと、こと」について語るなら、「理由」を複数上げて、言いっ放しで終わるのではなく、如何に好きなのか、その主題を支持するのに一番ふさわしい個人的なエピソードなどを、的確なことばを用いて、読み手と共有できるように表現することを練習すべきでしょう。
関連する過去ログはこちら。

好きこそ、もののあはれ
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20141030

ということで、今年も「群れずに、連なれ」を心に実作に励みます。

本日のBGM: The Pact (The Divine Comedy)

... because I have played them too

今年も残すところあと3日。
昨日までは課外講座。
本日は外部講師を招いて、進学クラスの3年生から1年生まで全員を対象とした講演会でした。
これにてご用納め。
年が明けると、2週間で「『大学入試センター』試験」です。一般には「センター試験」と略していますけど。
受験生やその指導者の方たちは対策に余念がないことでしょう。
この過去ログの中から、「センター試験」の出題の講評、センター試験そのもの問題点の指摘にあたるエントリーをまとめてみました。
例によって、「解法指南」ではありませんので、そのつもりでお読み下さい。センター試験の得点アップにはすぐにはつながりませんが、テストが問うているはずの「英語力」「スキル」そのものを考えるには役立つのではないかと、私は思っているのですが、私の「目利き」が信頼できない、という方は読まれない方が賢明でしょう。

もうずーっと言ってますけど、『英語教育』(大修館書店)が「増刊号』を出してでも組むべき特集は、「総力特集『センター試験』とはなんだったのか?」ですよ。共通一次試験を経て私立大も参入し、国内最大の「英語のテスト」として毎年実施されてきたこのテストを数年後に葬るわけですから。きちんと悼まないと。

年度の新しいものから再録していますので、一番下からお読みなるのがわかりやすいかと。

2016年

”What’s wrong with this picture?”
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160211
2016年の「センター試験」に関して、高2の「センター試験を覗いてみる」という授業日誌。
「ディスカッションもどき」の出題を再考し、第6問を扱っています。

What’s the story?
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160131
2016年「センター試験」のリスニング問題、第2問以降を扱っています。一番大事な指摘は、これかしら?
ということで、当事者の前提条件が明らかでない状況で、やりとりを重ね、自分の発言を組み立てるのは結構難儀することがよく分かる対話でした。正答は得られたけど、話の細かな内容はよく分かっていない、という人も多かっただろうと思います。でも、センター試験ってその程度でいいということなのでしょう。私たちが生きている現実世界の方が、もっと複雑な前提をもとに、もっと多様な選択肢を想定しているわけですから、日常をきちんと生きている人にとって、テストで問われる世界は狭いものになっているはずです。裏返せば、そのような日常でことばを使いこなせていない人が、会話文頻出表現とか日常会話の決まり文句などをいくら覚えても、あまり御利益はないのだと思います。「空気を読む」とか「気を使う」ということではなく、私たちの現実の、日常での言語使用を「きちんと」行うことが何よりのテスト対策といえるのではないでしょうか。

No pain, no gain.
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160130
2016年「センター試験」リスニング問題。高1、高2で「スクリプトを読む」という授業をしています。先取りするよりは、このような「つながり」「まとまり」をしっかりと確認することが必要だと思っています。

細部に宿る神
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160117
2016年。理数科目の先取りを除けば、「新課程」で学んだ生徒が受験する最初の本格的な「センター試験」です。
今回は、大問の5が「物語文」になった、ということが予備校などの「講評」で取り上げられていますが出題の予想が的中したか、ということよりも、「ナラティブ」の基本が身についているか、本当に読めているか、の方が余程大事です。
ということで、2016年の問題ではなく、2015年の追試の「物語文」の出題の問題点を指摘しています。


2015年

ODA?
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20150120
2015年の大学入試センター試験、外国語(英語)の筆記試験、第6問を取り上げて、コメント。
初めは、「近隣の予備校で『なんたらチャレンジ』を受けてきた高2生に、真っ当な解説を聞くチャンスを与えたい」、と思ってまとめていたのですが、なんとインフルエンザ大流行で、学年閉鎖となり、今週の授業がなくなってしまったので、授業での解説以上に、詳しく書きました。

Private Unplugged
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20150118
2015年センター試験の、外国語(英語)の「筆記」の第2問から第5問までを取り上げて、コメントしています。


2014年

”Sometimes it’s rough to stay tough.”
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20141226
この年までの「センター試験批評」の中間まとめのようなエントリーです。
「過去問演習の悲哀」とも言えるでしょう。
冬期課外講座を1年から3年まで担当しています。時期的に3年の比重が高いのですが、「センター試験」の過去問・予想問題演習がつらい。何がつらいって、「予想問題」「類題」として示される素材文の英語が…。

悲劇、それとも喜劇?
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20140206
史上最悪ではないかと思う、2014年センター試験「大問6」。高2生向けに解説しました。
ライターの個性や文体、そして力量も様々。「ライティング」の観点からのツッコミどころは多々あるので、授業ではそこを考えながら進められるけれど、「テスト」を考えると悩みは尽きない。一度手書きで本文を全部書いたあとで、授業での解説のために再読し、メモを書き込んだノートの写しを貼っておきました。

より良い英語で、より良い教材、そして…。
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20140126
メディアで「センター試験」が取りざたされる時というのは、大きく分けて
受験生に向けた「対策」「解法」
前年度までとの「平均点」の比較
くらいなのですね。現に、試験から一週間経った今、センター試験の「中身」について何か建設的な批評や提言をしている人の声はネット上ではほとんど聞かれません。

Odd Ones Out あるいは The best is yet to come.
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20140119
2014年の筆記試験を概観して、気になる出題にコメントをつけています。
もっとも、一番心配なのは、来年度からの「模試」なんですけれど…。
現場の高校英語教師、そして高1の担任として危惧するのは、来年度以降の模試と教材で、このような「新傾向」問題の劣化コピーのような設問に曝されることです。被害を未然に防ぐには近寄らないのがいいのですが、そういうわけにも行きません。お願いするか、祈るか以外にできることは、「英語力」をつけることですね。


2013年

”O Captain! My Captain!”
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20130122
2013年のセンター試験の概評。こんな喩えを持ち出して批評していました。
松田聖子に『小麦色のマーメイド』という松本隆さんが歌詞を書いたヒット曲があります。そのサビの部分で、「私、裸足のマーメイド」という一節があり(ワタシとハダシで韻を踏んでいる)、この曲を初めて聴いた時に、「『人魚』って下半身は魚のはずなのに、足はあるのか?」という違和感を覚えたのですが、そのくらいの違和感ということです。
「ディスカッションもどき」問題での「図書館」の設定がいかに凄かったか、過去問演習している人は気づきましたよね?


2012年

『ゲレンデがとけるほど恋したい』 -
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120116
英語の試験問題の「批評」に関して、あれこれとネット上でコメントが飛び交っているけれど、センター試験って、「学力試験」なのだ、という本質的なことを踏まえた指摘をする人は多くないようです。
試験に出てくる英文、英語表現が次から次へと、自分にとって「リアリティ」に溢れていて、解いていてワクワク、ドキドキする、なんてことはないでしょう。
英語の200点は数学を2科目合わせた200点と同じ重み付けなのですよね。
その部分は納得した上で、個々の設問や「英語そのもの」に関して、気になったところを。
この時のエントリーでは2012年のセンター試験を題材に、高2生への「対策」で何をしているかを書いていました。


2011年

寒中お見舞い申し上げます
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20110116
2011年のセンター試験の出題・作問を取り上げた記事。
新課程を見据えてそろそろ現行の出題形式ともお別れになるのでしょうから、この手の試験で英語力を図れていたのかどうか検討する部署が出てきて良いように思います。公的な機関や部署がないのであれば、テスティングが専門の大学の英語教育学者の方たちに、利害抜き、ルサンチマン抜きでセンター試験の英語のテストの分析講評を宜しくお願いしたいと思います。全国の現場の英語教師も、これまでの変遷を実際に見てきた年配の先生方が声を上げることが大切だと思います。


2010年

酸いも甘いも
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20100117
センター試験の出題・作問に関する寸評では、「辛い」とか「甘い」とか下らない評価はしておりません。
(センター試験では)その問題を解いた受験生の英語力がいったいどのようなプロファイルなのかは全く問われません。例えば、123点は123点という意味しか持ちませんから、第2問で得た30点と、第5問で得た30点と第6問で得た30点は同じ重さです。でも、英語力のプロファイルは全く異なるはず。そう考えると、志ある優秀な英語教師の作成する定期試験の出題とフィードバックの方が受験者に親切です。受験産業の行っている「模試」でもクロス集計をかけて、弁別力などが推測できる程度には分析できます。それと比較した場合に、センター試験は「入学試験の合否」を左右する high-stakes testであり、毎年50万人以上のほぼ同世代の日本の学習者の英語力を分析できる「基礎データ」が得られるのですから、もっと有効利用してもらいたいものです。


2009年

マニア vs. オタク
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20090123
2009年のセンター試験。第6問が、「日本(人)の大学生が書いたコラム」という設定で驚きました。よくまあ、そんな論理の隙だらけの文章を素材文に使おうと思ったものです。ここではcrucialにまつわる「語義」をしつこく扱っています。この日の前後のエントリーも併せてお読みいただけると幸せます。


2008年

One after another or replaced by another?
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20080121
2008年の筆記を中心に。今読み返したら、こんなことを言っていました。今や「外部試験特需」ですからね…。
今回の出題で調べたい英語力が「大学生としてふさわしい英語力」なのだとしたら、センター試験でわざわざ調べるのではなくて、TOEIC Bridgeでも、GTECでも代替手段となる資格試験・技能試験にその役目を譲り渡していいのではないか。センター試験の英語の出題を改善するのではなく、英語については、センター試験での出題そのものを止めてしまうのである。その分、高校の授業は英語力を付けることに専念する、というわけである。実現不可能ではないだろう。もっとも実現するのは何年後かね…。


2007年

You should know better than to say so.
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20070122
2007年の出題。
易化だの難化だのと言うよりは、作問のセンスがないことをこそ問題とするべきではないのか。正答がわかる知識のある生徒には現行のセンター試験の持つ欠陥はあまり大きな意味を持たないだろう。錯乱肢は無視できるから。ただ、これから英語力をつけようという学習者にとっては大いに問題である。このような出題例がデータベースとして教材が作られ、問題演習を通して学習することになる。赤いフィルターなどでの無味乾燥な反復練習の過程では、やはり「なぜ、その答えではダメなのか?」を考えざるを得ない時が来る。ところが、センター試験の錯乱肢の作り方があまりにもお粗末で、明らかに英語として誤っている語法が選択肢に使われていたりして、「頭を使う甲斐がない」のである。この被害が広がらないか心配である。


2006年

リスニング試験は英語の試験
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20060121
2006年は「リスニングテスト元年」。
リスニングテスト元年の今年、終わってみれば案の定「トラブル続出」などの見出しがメディアを賑わすこととなった。相変わらず、リスクマネジメントという発想の希薄な我が国。49万2586人の受験者に対して、425人の再試験者ということは、初期不良の割合が約0.086%ということである。これなら家電の出来としてはまだいい方なのではないのか?ソニーのPS2などは0.1%どころか、数%にも上る初期不良であったと聞く。
ちなみに受験生一人一人が使うメモリー型ICプレイヤーの単価が約2000円。おおよそ1億円が使い捨てである。


2005年

センター試験の外国語
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20050116
記念すべき、このブログでの最初の「センター試験」批評。にもかかわらず英語の設問に関しては殆ど言及せず。
外国語は英語以外にも独仏中韓があり、この出題に関してはあまり話題にならない。来年度からは新課程対応となるので、現行の出題形式は最後になるというのに、この形式に関して何が良くて何が要改善なのか、という建設的な批評を一般の人は目にする機会がないままである。(大学入試センターから発行されている冊子を読んだことのある一般人はほとんどいないだろう)


以上、2005年から、2016年までのタイトルとリンク、そして概要などを記しました。

ご興味ご関心のある方もない方も、是非、一度、リンクをクリックして、それぞれのエントリーをお読み下さい。巷の「解法指南」とは多少なりとも異なる視点が得られることでしょう。

もし、これを読んでいる私のクラスの生徒で不明な点がある場合には、私にお尋ね下さい。もし、他の受験生がこれをお読みになって、ここに書かれた内容に不明な点がある場合は、私ではなく自分が教わっている、信頼の置ける英語の先生にお尋ね下さい。信頼関係を深める良い機会となるでしょう。

本日のBGM: Faith (George Michael)