”A Bond Born of Brotherhood”

tmrowing2017-01-02

2017年のスタートです。

年末は京都で旧交を温めて、心身共にリラックスできました。

2016年は、「全英連・山口大会」という、私としては極めて稀な、公的性格の強い催し物での分科会企画を引き受けたことで、体調も含め様々なところに歪みが出た一年でした。
肝心の「全英連」も、それに費やした時間やコストを考えると割に合わないものではありましたが、新たな出会いや収穫もあり、後悔はしていません。

ただ、「呟き」の方でもリアルタイムで連投していたように、二日間のプログラムでは、とてもプラスに評価できないものも幾つかありました。
初日の「祝辞」での、自説・持論の開陳でビデオを上映してしまう全能感溢れる文科省の方には呆れましたし、何の論理的整合性もないエピソードや比喩を映像と音楽でパッチワークよろしく繋いで、「感動するでしょ?」とでも言いたげな内容と構成の「基調講演」は正直、いたたまれませんでした。

でも、まあ、このような方々が「英語教育改革」の中心にいるのだなぁ、という「現実」を再認識出来たという意味では有難い機会だったのでしょう。

来年の新潟大会でも茶番が繰り広げられないことを祈っております。

今年は、自由に動き回りたいと思いますので、「研修会の講師」など、このブログの内容を読んだ上で、お役に立てることがあるようであれば、宜しくご検討下さい。私が話すこと、話せることの殆どは、既にこのブログに書いていますので、まずは過去ログをお読みになってからの話しです。

2016年最後のエントリーで「センター試験」にまつわるもろもろをまとめておいたのですが、残念ながらあまり読まれていないようです。

... because I have played them too
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20161228

他では読めないような内容、情報だと思いますので、是非一読を。
巷の「センター試験」の話って、「出題形式の変化」「平均点の上下」「素材文の総語数」「語法としての適否」位しか取り上げられませんから。英語という「ことば」のテストとしてどうなのか?どこかで本気で振り返ってみないと。ということで「総力特集 センター試験とは何だったのか」への伏線ですので、よろしくお願いします。


さて、年末の宿題を片づけておきましょう。
2016年12月23日付けのエントリーで示した4つの「英文」の種明かしです。詳しくはこちらの過去ログを再読されたし。

Did you see the light?
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20161223

a. はスピーキングの基礎力を見ることになっていると推測される「音読」の素材文。
b.とc. はどちらもリスニングによる「概要把握」の出題で用いられたスクリプトです。
d. はライティングのセクションで測る「技能統合」ということなのでしょう。「聞き取り要約」での素材文です。

2015年度の初回も、そして、2016年度の2回目でも、私以外に殆ど誰も指摘してこなかったことなので、何度でも私が言いますが、「聞き取り要約」が出来ないのは、技能統合をこの一題で済ませようという問題構成と設計に無理があることと、素材文自体の「話しが見えにくい」からなのではありませんか?

問題の構成、出題の形式を再度眺めてみると、
a. は音読の前に「黙読」が可能。つまり、読めるので楽です。
b.とc. は、リスニングのテストですから、当たり前ですが聞く段階では素材文を読むことはできません。しかしながら、設問は既に印刷されていて、選択肢も与えられているので、場面や人物の設定、名詞や動詞など、情報量の多い内容を推測するヒントとなる語句を読むことが可能です。
これら3問に対して、d の聞き取り要約だけが、「ノーヒント」で二回聞くことで概要を把握するだけでなく、内容を英語で保持し、要約することを求められています。これだけ、いきなり難し過ぎませんか?

確かに、前回EVPの分析結果を示したように、dだけ、他の英文よりも語彙レベルは低く押さえられています。ただ、語彙レベルが低ければ「技能統合」が可能なのか?ということです。
ここでは語彙レベルが低く抑えられているので、「○○レベルのリスニング力があれば、内容理解には何の問題もない」という弁別が出来るような「聞き取りの設問」が「聞くこと」のセクションにどれだけあったのか、そして、それが「ライティング」の得点とどのような相関があるかが検証されているのかどうか、現在公開されている資料からは全く解らないのです。

b.やc. のように「100語での聞くことによる内容理解」の語彙レベルがdの素材文よりも高いために、d. の聞き取り要約が出来なかった受験者が、「dと同じ語彙レベルで書かれた100語程度の英文」に基づく「聞くことによる内容理解」でどの程度正答が得られたのか、を併せて検証する必要がある。

というのが私の考えです。それを考えるためにも、問題は小問にいたるまで全て公表されてしかるべきです。

もっと突き詰めて言えば、「技能統合」で測定している技能の「下位技能」にあたるものを、単一技能の試験のそれぞれできちんと測定しておかないと、技能統合での失敗、不具合、機能不全が何によるものなのか、が全く分からないために、「対応」「対策」の施しようがない、ということになります。

ですから、以前、私が指摘したように、少なくとも「書くこと」のセクションでは、

1. 100語の英文の読み取りに基づく30語程度の要約課題

2. 50語の英文の聞き取りに基づく15語程度の要約課題

3. 4コマ漫画に基づくナラティブの描写課題

4. お題を与えての意見陳述課題

というように、複数の設問で段階的に「スキル」を問うべきだと思うのです。

技能統合にしても、「聞くこと」に基づくは内容の要約が出来ないものが、「読むこと」に基づく内容の要約ならできるかも知れないのですから。

ということを、なぜ「英語教育」の有識者たちも、現場の教員も2年にわたって指摘しないのか、本当にこの業界の危機的状態だと思っています。


「ヨンギノー」外部試験特需に浮かれる人たちからも歓迎されているのか、「英検」のライティングセクションに関わる、この情報がSNSで話題となっていました。

ライティングテストの採点に関する観点および注意点
(1級・準1級・2級)
https://www.eiken.or.jp/eiken/exam/2016scoring_w_info.html

年末の12月27日に追加された資料です。

少し驚いたのは、「ライティングの指導に役に立ちます」という指導者と思しき人たちからの声がTLで散見されたこと。

この英検の資料では、「英検2級」を想定した解答例に基づき、「ダメ出し」がされているのですが、ここで指摘されていることの殆どは、私がかれこれ十年近く、巷の英語本や学参、問題集の解答例の不備として指摘し続けてきたことでもあります。

ようやく、「世間」がここまで来たのか、という溜息交じりの感想です。

こちらの過去ログなどを再読して下さい。

まだまだ改善されない「ライティング」解答例公表と過去問対策
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160224

本当に大切なことなら、それを「ことば」に
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160315

「英検」の話が出たついでに、再度この話をして終わりたいと思います。

「好きなもの、人、こと」について「理由」を論じさせる出題を止めて下さい。
好き嫌いの「感情」と「論理」とは整合性が低いのだから。
そもそも英語に限らず、「好きなもの、ひと、こと」について語るなら、「理由」を複数上げて、言いっ放しで終わるのではなく、如何に好きなのか、その主題を支持するのに一番ふさわしい個人的なエピソードなどを、的確なことばを用いて、読み手と共有できるように表現することを練習すべきでしょう。
関連する過去ログはこちら。

好きこそ、もののあはれ
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20141030

ということで、今年も「群れずに、連なれ」を心に実作に励みます。

本日のBGM: The Pact (The Divine Comedy)

... because I have played them too

今年も残すところあと3日。
昨日までは課外講座。
本日は外部講師を招いて、進学クラスの3年生から1年生まで全員を対象とした講演会でした。
これにてご用納め。
年が明けると、2週間で「『大学入試センター』試験」です。一般には「センター試験」と略していますけど。
受験生やその指導者の方たちは対策に余念がないことでしょう。
この過去ログの中から、「センター試験」の出題の講評、センター試験そのもの問題点の指摘にあたるエントリーをまとめてみました。
例によって、「解法指南」ではありませんので、そのつもりでお読み下さい。センター試験の得点アップにはすぐにはつながりませんが、テストが問うているはずの「英語力」「スキル」そのものを考えるには役立つのではないかと、私は思っているのですが、私の「目利き」が信頼できない、という方は読まれない方が賢明でしょう。

もうずーっと言ってますけど、『英語教育』(大修館書店)が「増刊号』を出してでも組むべき特集は、「総力特集『センター試験』とはなんだったのか?」ですよ。共通一次試験を経て私立大も参入し、国内最大の「英語のテスト」として毎年実施されてきたこのテストを数年後に葬るわけですから。きちんと悼まないと。

年度の新しいものから再録していますので、一番下からお読みなるのがわかりやすいかと。

2016年

”What’s wrong with this picture?”
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160211
2016年の「センター試験」に関して、高2の「センター試験を覗いてみる」という授業日誌。
「ディスカッションもどき」の出題を再考し、第6問を扱っています。

What’s the story?
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160131
2016年「センター試験」のリスニング問題、第2問以降を扱っています。一番大事な指摘は、これかしら?
ということで、当事者の前提条件が明らかでない状況で、やりとりを重ね、自分の発言を組み立てるのは結構難儀することがよく分かる対話でした。正答は得られたけど、話の細かな内容はよく分かっていない、という人も多かっただろうと思います。でも、センター試験ってその程度でいいということなのでしょう。私たちが生きている現実世界の方が、もっと複雑な前提をもとに、もっと多様な選択肢を想定しているわけですから、日常をきちんと生きている人にとって、テストで問われる世界は狭いものになっているはずです。裏返せば、そのような日常でことばを使いこなせていない人が、会話文頻出表現とか日常会話の決まり文句などをいくら覚えても、あまり御利益はないのだと思います。「空気を読む」とか「気を使う」ということではなく、私たちの現実の、日常での言語使用を「きちんと」行うことが何よりのテスト対策といえるのではないでしょうか。

No pain, no gain.
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160130
2016年「センター試験」リスニング問題。高1、高2で「スクリプトを読む」という授業をしています。先取りするよりは、このような「つながり」「まとまり」をしっかりと確認することが必要だと思っています。

細部に宿る神
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160117
2016年。理数科目の先取りを除けば、「新課程」で学んだ生徒が受験する最初の本格的な「センター試験」です。
今回は、大問の5が「物語文」になった、ということが予備校などの「講評」で取り上げられていますが出題の予想が的中したか、ということよりも、「ナラティブ」の基本が身についているか、本当に読めているか、の方が余程大事です。
ということで、2016年の問題ではなく、2015年の追試の「物語文」の出題の問題点を指摘しています。


2015年

ODA?
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20150120
2015年の大学入試センター試験、外国語(英語)の筆記試験、第6問を取り上げて、コメント。
初めは、「近隣の予備校で『なんたらチャレンジ』を受けてきた高2生に、真っ当な解説を聞くチャンスを与えたい」、と思ってまとめていたのですが、なんとインフルエンザ大流行で、学年閉鎖となり、今週の授業がなくなってしまったので、授業での解説以上に、詳しく書きました。

Private Unplugged
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20150118
2015年センター試験の、外国語(英語)の「筆記」の第2問から第5問までを取り上げて、コメントしています。


2014年

”Sometimes it’s rough to stay tough.”
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20141226
この年までの「センター試験批評」の中間まとめのようなエントリーです。
「過去問演習の悲哀」とも言えるでしょう。
冬期課外講座を1年から3年まで担当しています。時期的に3年の比重が高いのですが、「センター試験」の過去問・予想問題演習がつらい。何がつらいって、「予想問題」「類題」として示される素材文の英語が…。

悲劇、それとも喜劇?
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20140206
史上最悪ではないかと思う、2014年センター試験「大問6」。高2生向けに解説しました。
ライターの個性や文体、そして力量も様々。「ライティング」の観点からのツッコミどころは多々あるので、授業ではそこを考えながら進められるけれど、「テスト」を考えると悩みは尽きない。一度手書きで本文を全部書いたあとで、授業での解説のために再読し、メモを書き込んだノートの写しを貼っておきました。

より良い英語で、より良い教材、そして…。
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20140126
メディアで「センター試験」が取りざたされる時というのは、大きく分けて
受験生に向けた「対策」「解法」
前年度までとの「平均点」の比較
くらいなのですね。現に、試験から一週間経った今、センター試験の「中身」について何か建設的な批評や提言をしている人の声はネット上ではほとんど聞かれません。

Odd Ones Out あるいは The best is yet to come.
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20140119
2014年の筆記試験を概観して、気になる出題にコメントをつけています。
もっとも、一番心配なのは、来年度からの「模試」なんですけれど…。
現場の高校英語教師、そして高1の担任として危惧するのは、来年度以降の模試と教材で、このような「新傾向」問題の劣化コピーのような設問に曝されることです。被害を未然に防ぐには近寄らないのがいいのですが、そういうわけにも行きません。お願いするか、祈るか以外にできることは、「英語力」をつけることですね。


2013年

”O Captain! My Captain!”
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20130122
2013年のセンター試験の概評。こんな喩えを持ち出して批評していました。
松田聖子に『小麦色のマーメイド』という松本隆さんが歌詞を書いたヒット曲があります。そのサビの部分で、「私、裸足のマーメイド」という一節があり(ワタシとハダシで韻を踏んでいる)、この曲を初めて聴いた時に、「『人魚』って下半身は魚のはずなのに、足はあるのか?」という違和感を覚えたのですが、そのくらいの違和感ということです。
「ディスカッションもどき」問題での「図書館」の設定がいかに凄かったか、過去問演習している人は気づきましたよね?


2012年

『ゲレンデがとけるほど恋したい』 -
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120116
英語の試験問題の「批評」に関して、あれこれとネット上でコメントが飛び交っているけれど、センター試験って、「学力試験」なのだ、という本質的なことを踏まえた指摘をする人は多くないようです。
試験に出てくる英文、英語表現が次から次へと、自分にとって「リアリティ」に溢れていて、解いていてワクワク、ドキドキする、なんてことはないでしょう。
英語の200点は数学を2科目合わせた200点と同じ重み付けなのですよね。
その部分は納得した上で、個々の設問や「英語そのもの」に関して、気になったところを。
この時のエントリーでは2012年のセンター試験を題材に、高2生への「対策」で何をしているかを書いていました。


2011年

寒中お見舞い申し上げます
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20110116
2011年のセンター試験の出題・作問を取り上げた記事。
新課程を見据えてそろそろ現行の出題形式ともお別れになるのでしょうから、この手の試験で英語力を図れていたのかどうか検討する部署が出てきて良いように思います。公的な機関や部署がないのであれば、テスティングが専門の大学の英語教育学者の方たちに、利害抜き、ルサンチマン抜きでセンター試験の英語のテストの分析講評を宜しくお願いしたいと思います。全国の現場の英語教師も、これまでの変遷を実際に見てきた年配の先生方が声を上げることが大切だと思います。


2010年

酸いも甘いも
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20100117
センター試験の出題・作問に関する寸評では、「辛い」とか「甘い」とか下らない評価はしておりません。
(センター試験では)その問題を解いた受験生の英語力がいったいどのようなプロファイルなのかは全く問われません。例えば、123点は123点という意味しか持ちませんから、第2問で得た30点と、第5問で得た30点と第6問で得た30点は同じ重さです。でも、英語力のプロファイルは全く異なるはず。そう考えると、志ある優秀な英語教師の作成する定期試験の出題とフィードバックの方が受験者に親切です。受験産業の行っている「模試」でもクロス集計をかけて、弁別力などが推測できる程度には分析できます。それと比較した場合に、センター試験は「入学試験の合否」を左右する high-stakes testであり、毎年50万人以上のほぼ同世代の日本の学習者の英語力を分析できる「基礎データ」が得られるのですから、もっと有効利用してもらいたいものです。


2009年

マニア vs. オタク
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20090123
2009年のセンター試験。第6問が、「日本(人)の大学生が書いたコラム」という設定で驚きました。よくまあ、そんな論理の隙だらけの文章を素材文に使おうと思ったものです。ここではcrucialにまつわる「語義」をしつこく扱っています。この日の前後のエントリーも併せてお読みいただけると幸せます。


2008年

One after another or replaced by another?
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20080121
2008年の筆記を中心に。今読み返したら、こんなことを言っていました。今や「外部試験特需」ですからね…。
今回の出題で調べたい英語力が「大学生としてふさわしい英語力」なのだとしたら、センター試験でわざわざ調べるのではなくて、TOEIC Bridgeでも、GTECでも代替手段となる資格試験・技能試験にその役目を譲り渡していいのではないか。センター試験の英語の出題を改善するのではなく、英語については、センター試験での出題そのものを止めてしまうのである。その分、高校の授業は英語力を付けることに専念する、というわけである。実現不可能ではないだろう。もっとも実現するのは何年後かね…。


2007年

You should know better than to say so.
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20070122
2007年の出題。
易化だの難化だのと言うよりは、作問のセンスがないことをこそ問題とするべきではないのか。正答がわかる知識のある生徒には現行のセンター試験の持つ欠陥はあまり大きな意味を持たないだろう。錯乱肢は無視できるから。ただ、これから英語力をつけようという学習者にとっては大いに問題である。このような出題例がデータベースとして教材が作られ、問題演習を通して学習することになる。赤いフィルターなどでの無味乾燥な反復練習の過程では、やはり「なぜ、その答えではダメなのか?」を考えざるを得ない時が来る。ところが、センター試験の錯乱肢の作り方があまりにもお粗末で、明らかに英語として誤っている語法が選択肢に使われていたりして、「頭を使う甲斐がない」のである。この被害が広がらないか心配である。


2006年

リスニング試験は英語の試験
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20060121
2006年は「リスニングテスト元年」。
リスニングテスト元年の今年、終わってみれば案の定「トラブル続出」などの見出しがメディアを賑わすこととなった。相変わらず、リスクマネジメントという発想の希薄な我が国。49万2586人の受験者に対して、425人の再試験者ということは、初期不良の割合が約0.086%ということである。これなら家電の出来としてはまだいい方なのではないのか?ソニーのPS2などは0.1%どころか、数%にも上る初期不良であったと聞く。
ちなみに受験生一人一人が使うメモリー型ICプレイヤーの単価が約2000円。おおよそ1億円が使い捨てである。


2005年

センター試験の外国語
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20050116
記念すべき、このブログでの最初の「センター試験」批評。にもかかわらず英語の設問に関しては殆ど言及せず。
外国語は英語以外にも独仏中韓があり、この出題に関してはあまり話題にならない。来年度からは新課程対応となるので、現行の出題形式は最後になるというのに、この形式に関して何が良くて何が要改善なのか、という建設的な批評を一般の人は目にする機会がないままである。(大学入試センターから発行されている冊子を読んだことのある一般人はほとんどいないだろう)


以上、2005年から、2016年までのタイトルとリンク、そして概要などを記しました。

ご興味ご関心のある方もない方も、是非、一度、リンクをクリックして、それぞれのエントリーをお読み下さい。巷の「解法指南」とは多少なりとも異なる視点が得られることでしょう。

もし、これを読んでいる私のクラスの生徒で不明な点がある場合には、私にお尋ね下さい。もし、他の受験生がこれをお読みになって、ここに書かれた内容に不明な点がある場合は、私ではなく自分が教わっている、信頼の置ける英語の先生にお尋ね下さい。信頼関係を深める良い機会となるでしょう。

本日のBGM: Faith (George Michael)

Did you see the light?

この一年の間に起こった良いこと、悪いことなど、いろんなことが思い起こされる、12月も半ばを過ぎて、文科省のサイトで次の資料が「公表」されました。

平成27年度英語教育改善のための英語力調査事業報告
http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1377767.htm

過去ログの、ここで「速報版」について論評を加えています。

空の上はいつも青空(当たり前)
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160325

これが平成27年度(2015年度)末の3月末の発表でした。
それから、この2016年の12月までの間、8ヶ月以上も文科省は何を精査し、明らかにする情報と、そうではない情報との峻別を図っていたのだろうか、と訝しくなるほど、遅きに失した情報の公開です。

私が「遅きに失した」というのは、もう既に、新指導要領での英語教育の動き、科目の再編、教育課程編成の方がメディアにはリークされ、ここで発表されたことは、誰も検証しないまま、「既定路線」のように、「改革」は進んでいるからです。

例えば、全国規模の商業誌である『英語教育』(大修館書店)では、2007年1月号の第2特集は、

  • 「次期学習指導要領に向けて、あらためてCan-do を考える」

というものです。

ちょっと待って下さい。
「次期学習指導要領」って、まだ正式には何も決まっていないんですよ。
その決まっていないことをあれこれ「忖度」して、先取り対応などをする前に、「中教審」、その下部組織の「作業部会(WG)」での審議内容や、提言、答申、「たたき台」を精査吟味し、広く世論に問うのが、この類いの雑誌の存在意義だと思うのですが、既に編集部にはそのような気概を持った人はいないようで、「御用」の性格が側面どころか、前面に出てきています。

「たたき台」に対しての「パブリックコメント」で私は次のように書いています。新聞やTVの「教育担当記者」や「論説委員」の発言や論評と比較して下さい。右だの左だの、といったイデオロギーではなく、「言語教育」の原理原則に則って、「適否」を議論するべきだろうと思っています。

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20161002

さて、
今回の文科省の調査結果「報告」に関して、数多あるツッコミどころのうち、「書くこと」とその関連領域に関してのみ、言及し、問題点を指摘します。


まずビックリしたのが、文科省のtwitter アカウントでのこの呟き。

平成27年度英語教育改善のための英語力調査事業報告を掲載しました。高等学校での「書くこと」の得点者は,全体の約82%とH26年度に比べ約12ポイント以上増加し改善が見られました。中学校では,全体の85%以上でした。
https://twitter.com/mextjapan/status/809685937953251328

このブログでも、呟きでも、何度も指摘していますが、

「改善」というけれど、「絵も写真も文字のヒントもない聞き取り要約」→「お題作文」という前年のものから、「お題作文」→「聞き取り要約」へと単純に解答順を逆にしたことで、解答者の「諦め」「虚無感」「絶望感」が減ったからでは? 同じテストと言えるの? そういう分析はしているのかしら?
https://twitter.com/tmrowing/status/809855372248825856

この2014年、2015年の2回のテストを本当に、同じテストとして扱っていいのか?受験者の立場、心理的、認知的負担を考え合わせて欲しいものです。

過去2年に渡るフィージビリティ調査のフィージビリティに対する疑義に関しては、面倒でも冒頭で示した過去ログを一度はお読み下さい。

空の上はいつも青空(当たり前)
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160325

今年の「四月馬鹿」の日には、こんなエントリーも書いています。

英語力フィージビリティ調査のフィージビリティ検証に着手
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160401

いくら「四月馬鹿」の企画だからと言って、何をバカなことを!とお叱りを受けるかも知れませんが、このエントリーの中で、大事な提言を一つしていますので再録します。

「調査に用いられた問題の難易度と内容が、受験者の英語力の実態と乖離していたのではないか」という有識者からの指摘がくり返しなされていた「書くこと」の領域では、大幅な刷新が見込まれているようです。
以下、現時点で想定されている、「書くこと」の出題形式・構成・内容です。
「話すこと」と同様に、「書くこと」も各学校で1クラス分に当たる生徒を抽出して実施する。
設問は、次の4つの小問で構成される。

  • 1.イラスト、写真、4コマ漫画などの資料に基づき、英文の空所を補充する形で物語文を完成する課題
  • 2.質問形式で課題が与えられ、賛否や問題解決など個人の意見を述べる課題
  • 3.約100語の英文の読み取りに基づく30語程度の要約課題
  • 4.約50語の英文の聞き取りに基づく15語程度の要約課題

「書くこと」の設問は僅かに2題しかありません。「音読」という課題を取り入れることでA1層2相当すると思われる受験者を拾うことを狙った「話すこと」と比べても、段階的な測定が難しい構成となっています。

2016英語力調査問題構成.jpg 直
聞くことは36問.jpg 直
書くことは2問 話すことは6問.jpg 直

「書くこと」の2問のうち、「聞き取り要約」は、「聞いて理解できる」ことが前提ですから、「聞く」能力に依存しているのは明らかです。

ところが、「聞くこと」そのもののテストの設問には、それぞれ絵や事前の質問で既に内容理解のヒントが与えられているのに対し、「聞き取り要約」ではノーヒントなのです。本当ですよ。
「聞くこと」、では、

高3聞くこと その1.jpg 直
高3聞くこと その2.jpg 直

しかも、「聞くこと」の設問は複数の問題で構成され、その全てが多肢選択での解答です。
CEFRの能力指標でA2から測定できるように設計されている、といわれたときに、「なるほど」と思えるテスト設計です。

肝心の、「書くこと」では、何を測定しようとしているのか、というと、

高3書くこと その1.jpg 直
高3書くこと その2.jpg 直

だそうです。

なぜ、「直接測定」の書くことでは「段階的」に設問を課さないのでしょうか?「2カ年の比較をする」というお題目を掲げたがために、初年度のテスト設計のミスを改めるチャンスをむざむざ捨ててしまったように思えてなりません。

次に大きな問題だなと思う点は、出題される「英語そのもの」、「質」に関わるものです。

語彙レベル
トピックとジャンル
つながりとまとまりなどの話型(話形)

の観点で英文を精査したとき、「聞き取り要約」は、2カ年ともに、語彙レベルを低く保つ反面、奇妙な話し、内容スキーマを簡単には類推出来ないようなテクスト構成を取っています。

私は、Cambridgeの EVP を採用した、Text Inspector を普段の教材研究や試験作成、勤務校の入学試験(高校入試)の作成の際にも活用していますが、その語彙レベル判定をみてみましょう。

出題は、

1.「聞くこと」のセクションから、聞き取りによる内容理解のスクリプト
2.「書くこと」のセクションから、聞き取り要約のスクリプト
3.「話すこと」のセクションから、音読で用いる素材文

です。以下の4つの短い文章を、それぞれ、1〜3のどの出題で用いられたものか、当てて下さい。

a.

Some air pollution has natural causes, like windstorms and volcanoes, but most is the result of human activity. A blanket of dirty air covers most cities of the world. It mainly comes from cars and trucks and from factories that burn coal. The polluted air makes people sick, and it's especially bad for young children and aged people. Is this why countries are making rules to reduce air pollution? (69 words)

b.

Some people associate bats with frightening things, such as Halloween and scary movies. However, they are actually helpful creatures. Bats, in a similar way to bees, help flowers breed, so some people are happy to have them live near their homes.
Also, the sounds of hunting bats can be heard by many insects that are harmful to gardens, which then avoid the area. Another reason people welcome bats into their gardens is that bats eat insects that carry diseases deadly to humans, like mosquitoes. In fact, research reveals a single bat can eat more than 600 mosquitoes in an hour! (100 words)

c.

Although the human population on Earth's increasing, the number of languages spoken is decreasing. One language disappears every two weeks. Sometimes even natural disasters cause language loss. For example, in Pakistan, an Asian country, the world's entire population of Domaki language speakers lived in Shishkat, a remote mountain village by a river. In 2010, land fell from a nearby mountain and blocked the river. This caused a flood that destroyed the village. All the village people were forced to move to whatever housing was available. With the few remaining Domaki speakers living separately, their language is likely to die out. (100 words)

d.

Many farms just sell one thing. But have you ever heard of a pizza farm? A pizza farm is a farm that grows everything that is needed to make pizzas, such as tomatoes and onions. Pizza farms also make cheese. It is easy and useful to be able to quickly buy everything that you need to make a pizza in one place.
But do you know an interesting thing about pizza farms? Pizza farms are in the shape of a pizza! If you look down on a pizza farm from a plane, you will see that the farm does not have four straight sides like a box, but is round like a pizza. And each field on the farm has only three sides, almost like a triangle. Each field is like a piece of the pizza. Something different grows in each field. Yes, it's amazing! Pizza farms are in the form of a pizza! (154 words)


如何でしょうか?
長いから難しい、短いから易しい、ということが一概には言えないことは直ぐに分かりますが、「つながり」「まとまり」の濃淡、適否については、やはり「目利き」に聞くのが一番だろうと思うのです。

答えは、文科省サイトで公表されている資料を精査するか、日を改めて書くことになるであろう、続編をお読み下さい。

本日はこの辺で。


本日のBGM: Hello, it’s me (黒沢健一)

乾いた風には襟を立てて

tmrowing2016-12-13

先行実施の2年生に続いて、1,3年生の期末試験も終了。
長かった。
実作の振り返りはまた後日。

本業が休みの間に、東京と大阪へと自分へのご褒美&自分の視座を確かめる旅。
プライベートでは東京も大阪も充実した時を過ごしたのですが、生業の英語教育関連で覗いたイベントは、東京のARCLEのシンポジウムではいささか落胆し、大阪のLETメソドロジー研究会ではその可能性に多いに期待を高めて帰ってきました。

東京のシンポジウムで私の隣の席に座っていた方は、吉田研作先生の講演(公演?)中は話を聞きながらメモをとったり、ハイライターで資料にマークしたりと、本当に慌ただしく動いていましたが、次の「事例報告」では、根岸雅史先生が欠席だったこともあるのか、ほとんど寝ていたのが印象的でした。「わかったつもり」にさせる講演(者)の熱心な聴衆に支えられて、こうした「お祭り」は維持されていくもなのでしょうかね。

大阪は風が冷たかったのですが、「部外者でも参加できます」、という暖かいお言葉に甘えて、立ち寄らせていただいた「メソ研」では、発表者だけでなく、参加者(企画者?)の質疑でのことばや学びを捉える視点の鋭さ、足場の確かさに刺激を受け、参加して大正解でした。誤用でも、御用でもなく、現場の教員の視座を少し組み換えることで、こういった研究の成果を活かすことは可能なのではないかな、と思いつつ、中座させていただきました。

そんな二週にわたる遠出でしたが、どちらも私と比べれば「若手」に属するであろう世代の俊英の「仕事ぶり」に少しだけ接し、その才能の大きさを再認識することもできました。その大いなる才能が「善き方向に」活かされて欲しいと切に願っています。

もう少し頭の整理が出来たら、何か書くかも知れません。

上述の「メソ研」でも活躍中の静岡大の亘理陽一先生のブログでは頻繁に「新入荷書籍」の情報が更新されていますが、その中にかなり懐かしい名前を見たので、ご紹介。

http://www.watariyoichi.net/2016/12/05/arrival-103/

  • B.G. デイビス・R. ウイルソン・L. ウッド(香取草之助 監訳)『授業をどうする!カリフォルニア大学バークレー校の授業改善のためのアイデア集』(東海大学出版会、1995年)

初版は1995年12月20日。私の持っているのは、1996年1月29日、第三刷。ひと月あまりで三刷というのは当時でもかなり反響があったということではないかと思います。密林のリンクを開いて、未だ絶版ではないことにちょっと驚きました。※因みに、ここでは書名なので直していませんが、Berkeleyの発音はカナ表記すれば「バークリー」に近いと思います。

私の「犬耳」は第5章までに多くありますので、当時の私の興味関心のありかもしみじみと。
本日冒頭の写真がその犬耳模様。見事に第5章までに集中しています。

[file:tmrowing:授業をどうする.jpeg]

最後には、Minute Paper と呼ばれる、授業の振り返りを記録するマークシートがあるのですが、この刊行から20年。東海大学でその後はどうしているのか、どうなったのか、今度、N先生にでも聞いてみようと思います。


呟きで知りましたが、四軒家忍先生のブログで、TED Ed の活用法が説かれていました。

アカデミックなリスニングに有効な動画のご紹介

TOEFL対策をする方はもちろん、英語力向上を考えている方も是非お読み下さい。

私も授業でTED Talksを紹介したのはかなり早かった方だと思います(過去ログ参照 http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20090901)が、いかんせん十数分というのは長いので、「授業内」で活動の中に位置づけるのは難しく、近年の授業では殆ど見せていません。私が見てきて、授業のテーマに深く関連するところだけを紹介する、というのが主で、高3の生徒には、

当面の目標としては、このインタラクティブなトランスクリプションを使えるだけの、音声の処理能力を高める基盤、前提として持っていなければならない「読解力と語彙力」を身につけることでしょう。

とは言っています。

もし、高校段階(中学段階?)で積極的に授業で活用している、授業で活用したい、または、ご自身の英語力の向上や講義力の向上のために、こんな使い方をしているという方がいらっしゃいましたら、情報交換をしたいと思いますので、プロフィール欄の最後にあるメールアドレスまでご連絡をいただければ幸いです。

このブログのコメント欄は、かつては開いていて、数多くの有益なコメントが寄せられ、良い学びの機会となっていたのですが、その後、心無い方による執拗な嫌がらせがあったため、期間限定で開放する場合には、その旨を告知しますが、原則閉じたままにしています。何卒、ご理解下さい。

フィギュアスケートのグランプリファイナルも終了しましたが、日本のTV局の競技の中継、放送のあり方など、考えさせられることが多々あるので、競技の振り返りも含め、また日を改めて書こうと思います。
本日はこの辺で。

本日のBGM: 月の虹(さいとうみわこ with 綿内克幸)

「それは美しいゴカイ」

「呟き」で大量に投下していましたが、この一週間は「山口県英語教育フォーラム」の足跡を振り返っていました。昨年までの8回のフォーラムの述べ参加者数は、今回の全英連・山口大会の参加者と同数くらいなんでしょうね。

そんなことを考えていた今週の実作をば。

高2は、一足先に期末試験。範囲は「条件節のタイプ2と3」「even though とeven ifの使い分け」「しくみ」の3項目です。
最後の授業では、「目の見えるしくみ」で相応に苦労しましたね。その甲斐があるといいのですが。

高3は、writing a better argumentative passage とでもいうべき「学び」。
まあ、何のことはない、巷に 蔓延る 溢れる「大学入試『自由英作文』問題の解答例」にダメ出しをし続けて、よりよい「つながり」と「まとまり」を感じるだけです。

これまでにも、このブログで紹介してきましたので、再録はしません。ただ、このブログで指摘するだけではなく、密林レビューでも、「呟き」の方でも指摘しつづけて、古いものではもう十年近く経とうとしているのに、旧態然というか、英語に成り切れていない「エイブン」を解答として用意し、そこから逆算で後出しじゃんけんをするような教材が新刊で出てくる状況を見ると、「ライティング」はやはり、英語の目利き腕利きの教師と共に、教室で課題に取り組み、自分の目と腕を鍛えないと上手くいかないのではないか、という思いを強くしています。

私のシラバスでは、

テクストタイプ別の指導
テクストタイプ別のアイデアジェネレーション
テーマ語彙の指導
同輩間並びに教師からのFBをもとに書き直し
「誤りログ」の記録と見直し
授業と並行して取り組む「表現ノート」

とでもいうものが基本となっていましたから、

  • 「テクスト」としてのダイナミズムを感じられない、ただ5W1Hのquestioning を行う

とか、

  • 主題への収束を自ら難しくするような、「マッピング」と称した、ただのアイデアの拡散

には全く魅力を感じません。

今日の授業では、前日に、四軒家忍先生と「呟き」でやりとりをした、ディスコースマーカー、つなぎ語、などと呼ばれる語句に関する「戒め」を。
私も、拙著『パラグラフ・ライティング指導入門』では「頭だしチャンク」のリストを紹介していますが、あれが活きるのは、「テーマ語彙を充実に基づく内容の確からしさ」と「アイデアジェネレーションに時間を掛けたことによる論理の確からしさ」があればこそです。

四軒家先生も、ご自身のブログで同じ項目を取り上げ、書かれていました。問題意識を共有できる方がいるのは嬉しいことです。

拙ブログのこのエントリー (http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160224) でも指摘しましたが、まだまだ「つなぎ語」の空所補充のような指導で終わっている指導者や教材が多い気がします。

ということで、「つなぎ語、指導するならこんな風に」とでもいう練習問題。


ダウンロードはこちらから。↓
on the other hand.jpeg 直

これは、拙著の英文の再加工で、呟きの最中に急いで拵えたものですが、とかく、1 のような空所補充で、適切なディスコースマーカーを選び英文を完成して「論理」が分かったというような錯覚が積み重なっているように思います。同じ空所補充なら、まだ2 のタイプの方がマシかと。

その後、9年以上前の過去ログの山岡大基先生の研究授業での取り組み (http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20070928) を印刷して、高校生の目指すことができる「英文ライティング」の姿を眺めつつ、「地道に英文を読む」ことの重要性を説いて終了。

高1は、「リスニングテスト制覇の旅」の続き。
「つながり」と「まとまり」を支える、「話型(話形)」の重要性をずーーーーっと説いています。

今日は、これまでに扱った「素材文」で「つながり」と「まとまり」が保たれている(希有な?)ものはそのまま、主として私がリライトしたものを使って「対面リピート」。中には、200語を超えるものもあるので、一つのピースで5分間に区切ってやってみました。当然、復習の覚束ないところは読み手もしどろもどろとなりますから、リピートどころではなくなります。
まあ、それに気づいた後で盤石の基礎を築く取り組みへとつながるか、が一番重要なのですけれど。

英語が苦手、という以前に、「人の話」を聞いてその内容や主題が掴めない、という生徒を多数見てきたので、この活動を高1で行っているわけです。

例えば、先日紹介した「バスツアーでのアナウンス」(http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20161125) を考えてみると、その話型(話形)は、

ガイドの自己紹介
ツアーの目的(地)
所要時間
見どころ
遵守事項・禁止事項
質疑

などとなることが多いでしょう。

これが、「修学旅行」になれば、

班別・個人での自主研修の諸注意
集合時間
緊急連絡先

などが加わるか、と思いますが、そう思うのは、「そういう文化」「そういう社会」の実体験や常識を持っているからです。

「公立高校入試リスニング」あるある出題とも言える、「ALTの離任挨拶」であれば、

帰国のお知らせ
在任期間
着任のbefore / after での心境
学校行事での想い出
地域社会での悲喜交交
「最後の授業」とでもいうべきアドバイス
感謝のことば

などが「典型的な話型(話形)」となるでしょう。問題の解法などは後でやればいいので、まずは、その「ベタな」話しをしっかりと追っていき、話しを聞けることが重要だと思います。

石川県の2013年の出題がこちら。

Hello, friends. I’ve had a great time with you here at Ishikawa High School. I came here last September. This was my first visit to Japan, and everything was new to me.

I can’t forget the school trip to Tokyo last year. It was wonderful. We went to Shibuya and enjoyed shopping there. And we went to Asakusa, too. Some people were wearing kimonos. They were really beautiful. I remember that night at the hotel in Ueno very well. I enjoyed talking with two girls. We had some language problems, but I tried to understand them and they tried to understand me. We talked and talked in our room. And we became good friends.

Today is my last day here at Ishikawa High School. I have to go back to America tomorrow. I’ve had a very nice stay in Japan. I’ll never forget you all. Thank you for everything. (149 words)

私のリライト版がこちら。

Hello, friends. I’ve had a great time with you here at Ishikawa High School. I came here last September. This was my first visit to Japan, and everything was new to me.
I can’t forget the trip to Tokyo with you during New Year’s holidays. It was really wonderful. We went to Shibuya and enjoyed shopping there. A lot of girls walking on the street looked like Kyarry Pamyu Pamyu. And we went to Asakusa for something traditional. As we had expected, there were some people wearing kimonos. They were really beautiful.
I remember that night at the hotel in Ueno very well. I enjoyed talking with two girls, Tomoyo and Kumiko. We had some language problems, but I tried to understand them and they tried to understand me. We talked and talked in our room. And I feel we became a little closer to each other.
Today is my last day here at Ishikawa High School. I have to go back to America next week. I’ve had a very nice stay in Japan. I’ll never forget you all. Thank you for everything. (183 words)

この石川県との比較対象で、こちらの大阪の2011年の出題を。こちらがオリジナル。ツッコミどころ満載なのは大阪だから?

Hello, everyone. I will leave Japan tomorrow. I enjoyed teaching you English for three years. I came to Japan five years ago and lived in Kyoto for two years before coming to Osaka. I could not speak Japanese well when I came to Japan but I tried to speak Japanese with many people. People around me were always nice to me. I enjoyed speaking Japanese with them and my Japanese is much better now. So, when you learn English, please enjoy speaking English. Do not think it is difficult. When I go back to America, I am going to tell many people about Japan. Thank you.  (101 words)

次に示すのが私のリライト版。これは、以前、達セミや福岡県の私学教員対象のセミナーでも紹介していたかと思います。
「大阪に来る前の京都時代の話が何もないのは、なぜ?」という私自身の素朴な疑問に自分で答えたものです。
あくまでも話型(話形)をハッキリと理解させるための脚色であって、京都の方に対しての他意はありませんので、何卒ご理解を。

Hello, everyone. I have to say goodbye to you today. I’ll leave Japan next week. …. Yes, so soon. I’ll come back home. I have been teaching you English for four years, and I’m loving every minute of it.
I came to Japan five years ago and taught English to high school students in Kyoto for a year. I couldn’t speak Japanese well, and I always tried my best to communicate with the local people, but …. I don’t want to talk much about the year in Kyoto, though.
Then, I moved to Osaka. I hoped that people in Osaka would be cheerful and friendly. And here, I met you. …. In fact, everyone was really nice to me. Here in Osaka, I enjoy, for the first time, yes, it’s true, I enjoy talking with you in Japanese. My Japanese is much better now. I’m really happy I have been with you for four years.
Now, I’ll give you one last advice…, or that could be a kind of request. When you have some trouble about learning English, don’t think it’s too difficult. You don’t have to enjoy “speaking” English. Go and look for someone who you can enjoy “being with”. If you “are” with such people, you will soon start talking with them. That’s what I have learned here in Osaka.
When I come home, I’m going to tell my family and my friends a lot about Osaka, the city I’m most proud of. Thank you. (247 words)


最後には、生徒への私自身のメッセージも込められています。ただ「楽しめ」と言われて、楽しめるくらいなら誰も苦労しませんって。そこに至る道だって、「それぞれ、それなり、そのうち」ですから。

本日のBGM: ぼくらが歌をうたう理由 (Musement featuring 野見山睦未 & 鈴木祥子)

”What is it that I’ll be achieving?”

今週の実作のハイライトをば。

高1は、恒例の「全国縦断リスニングテスト制覇の旅」だけれど、タイトルとは違って、行きつ戻りつ。
先輩達がやっていない新しいものから、ということで、今春の2016年の出題からいくつかを聞かせてみました。

まずは、北から。
北海道 2016年スクリプト

Last month I had three-day work experience at a hospital.
First, the doctor and the nurses told me about their jobs. And I helped them by talking with sick people and taking them to their beds. I was very glad when I saw their smiles. Then, a nurse showed me around the hospital building. She said doctors and nurses are not the only workers in hospitals and many other jobs help sick people there too.

On the last day, I worked with an old man taking care of the hospital garden. When I was helping him, he said he likes his job because sick people in the hospital look happy when they see the beautiful garden.

At first I didn't think the garden was important for helping sick people, but after talking with him, I found his job also makes them happy. Through this experience, I learned each job in hospitals is important and helps sick people in different ways.
(160 words)

2006年のものと比べると、この10年で大きな変化があったことが分かります。
でも、いかに新課程とは言え、このスクリプトの隅々まで分かる中学生は極々少数に留まるでしょう。ただ、より英語に近づいたのなら大歓迎。リライトの必要がなくなりますから。


もう一つ興味深かったのは、都立国際高校の独自問題。
沢山課されるリスニング問題のうちの最後が、ある程度まとまった分量のアナウンス。アナウンスですから、モノローグで230語以上ありますが、一回しか聞けません。しかしながら、私が面白いと思ったのは、その難しさではなく、話しのつながりとまとまり、そして話型(話形)とでもいうものでした。

こちらがオリジナルのスクリプトになります。

都立国際 2016
Welcome to the Animal Tour Bus. Hi, my name is Kelly and I will be your guide today.
Our tour is one of the most popular tours in the world. More than ten thousand people from all over the world visit our park every month. There are about five hundred different kinds of animals in the park. Our park is the second largest natural park in the country.
Before we begin, I'd like to tell you some rules we would like you to keep during the tour today.
First, please do not eat anything on the bus. Before the tour starts, please put any food you have in this box, animals will come near you if they see that you have food.
Next, please keep children under six away from the windows because it is very dangerous. The bus sometimes shakes very much. Please keep your arms and legs inside the bus at all times, and don't stand up while it is moving.
Also, please turn off any sounds from your phone because animals will be surprised at the phone sounds.
However, you can use your phone to take pictures and movies. And please wear the caps that we are passing out now, especially when you get off the bus to rest. If you need any help during the tour, please raise your hand. The tour is going to start soon. We hope you enjoy it.
(236 words)

結構長いので、受験生にとっては気が抜けないのですが、設問は内容一致選択なので、まだ対処可能なレベルですかね。


で、この「バスツアーガイド」の話題に似たものが過去に他県で出題されているのでした。
岩手県の2013年の出題。オリジナルはこちら。

Welcome to the Forest Bus Trip. My name is Mike. I'm very happy we have many people on the bus. Today we will go into the forest, so you will see such animals as birds, monkeys, deer, and foxes. There are over 50 animals. The trip takes about 30 minutes. Before we start, I’m going to tell you some important rules. First, this is a long trip, so you can eat and drink in the bus. Second, some animals will come near the bus, but please don’t give any food to them and please don’t put your hands out of the windows. Of course, you cannot get off the bus. Third, don’t stand up while the bus is moving because the bus may stop suddenly. Any questions? Now, let’s go!
(130 words)

話しのつながり、まとまりがちょっと欠落していて、短いのに分かりにくい話しとなっています。


このアナウンスを私がリライトしたものがこちら。
2014年から授業で使っています。達セミでも一回披露していたかしら。

Welcome to the Forest Bus Trip. My name is Mike, your guide today. I’m very happy we have so many people on the bus who are interested in wildlife.
Today we will go into the forest, where you can see a variety of animals: birds, monkeys, deer, and foxes. Sorry for you, but we do not have any lions or tigers. No elephants or giraffes. There are over 50 kinds of animals, though. The forest is so large that the trip takes about 90 minutes.
Before we start, I’m going to tell you some rules here. If you don’t follow these rules, you may risk your life. So listen very closely.
First, do not get off the bus until we get back. Animals, even small birds, may attack you if they feel threatened.
Second, some animals will come near the bus, but please don’t open the windows. You may not put your hands out of the windows or give any food to them.
Third, this is a long trip but we do not have a bathroom on board. There is no public bathroom along the course. Please make sure you go to the bathroom before departure.
Fourth, keep seated while the bus is moving. We drive safe but the bus may stop suddenly.
Any questions? Now, let’s go and enjoy the forest!
(221 words)

都立国際のスクリプトとほぼ同じ話型(話形)になりましたね。バスツアーのガイドが提供するアナウンスでの典型的な話型(話形)って、こういうものになるんじゃないのかな、とも思います。

「話しの内容を理解する」ということがAI以上に苦手な中学生や高校生は、このスクリプトの違いや類似性に「気づく」ことも難しいのかも知れません。高校教師として、中学校の教育内容や成果に注文をつけても仕方ありませんから、自分のところで教えて育てるまでのことです。


高2は、「もののしくみ」第2弾。
前回の「耳が聞こえるしくみ」のあと、グループごとに違うネタを割り当てて、というのが年度当初の目論みでしたが、残り授業時数との綱引きで、クラスで一つだけ扱うことに。グループリーダ同士のじゃんけんで、見事「目が見えるしくみ」になりました。
例によって、学級文庫の「お子様用」から「大人の楽しみ用」まで、図鑑・図解・百科事典を読み比べての四則演算。いいとこ取りで英文を完成させます。まずは、「お手本」となる英語表現をしっかりと読むことから。英作文眼ですね。

how eyes work_1.jpeg 直
how eyes work_2.jpeg 直
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週明けに、代表作品決定で、期末テストへ突入です。



高3は「ディスカッションもどき」の続きで、センター試験の過去問から。
英語の表現で crucial という語が出てきたので、”AAO” について語っておく良い機会だからと、2009年の所謂「長文読解」、第6問の英文を読むことに。
過去ログの抜粋と『英語青年』の拙稿を印刷して事前配布。

「隔靴掻痒」
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20090119

「英英の弱り目、和訳の効き目」再録
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20110210

この2009年の出題の素材文は、英語としては2014年以降の英文よりはまだマシかな、と思いますが、それでもちょっと無理のある設定だったと思います。

私たちは、外国語や第2言語として日本語を学ぶ人の「読解力」の試験で、日本語を学んでいる大学生の書いた日本語を素材文として使うでしょうか?また、日本語を母語とするとしても、一般の大学生4年生が書いた文章を、大学入試の国語の試験で課すでしょうか?
何故、日本の大学4年生の書いたエッセイを読まされて、英語の学力を問われるのか?
日本人の英語での表現力のお手本、というのだったら、「ディスカッションもどき」の方でやっておくべきネタでは?という気がします。

例によって、私の手書きコピーを。

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いつものことですけど、「より良い英語で、より良い教材」「より良い英語で、より良いテスト」なんです。

この後、「ディスカッションもどき」で「定義」ネタが扱われた、2010年の本試験を読んで、教室であれこれ考えてみました。
この「…もどき」の出題は、センター試験では測定することのかなわない「ライティング」の代替出題と考えれば、テクストタイプで、narrative, descriptive, argumentative をカバーすることが望まれますから、この年のような「定義」を扱う議論というのは非常に面白かったとは思いますけれど、多分、不評だったんでしょうね。生徒には、もうセンター試験はなくなることが分かっているんだから、何が出題されても慌てないように、とは言っています。
最近は「高大接続」や「ヨンギノー」の観点から、有識者に散々ダメだしされています。でも、そんな酷い言われようをしている「センター試験」をまだ数年間、作らなければならない人たちがいるわけです。本当に、作問チームのモーティべーションをどう保っているのか、頭が下がります。
私もセンター試験に注文をイロイロつけていますが、私はどうせ課すなら、「エイブン」ではなく「英文」で、ということで、毎年「改善のために」批評をしていますので、先の「有識者」たちと一緒くたに語られるのは迷惑です。作問チームにとっては、どちらも歓迎したくないという点では同じ輩に映るかも知れませんが…。

本日の授業日誌はこの辺で。


本日のBGM:Fair Share of Breathing (Paul Heaton + Jacqui Abbott)

something between the ears

全英連・山口大会の終了から一週間。
腹筋が裂けるのではないかと思うくらい酷かった咳も、抗生剤とせき止めのおかげで治まってきました。ようやく胃腸の調子も回復し、平常運転に戻りつつあります。
いくつか「お座敷」の声もかかっていますが、英語教育に関して言えば、私のやってきたことは流行とは無縁の実作ですから、気長にお付き合いください。あと、英語本や英語教育関連書籍で出版前の原稿をお送りいただき、意見を求められることもありますが、私が言えることは、その殆どが既にこのブログに書いてあることですから、あまり多くを期待しないで下さいね。

で、その実作。
高1は、「全国縦断公立高校入試リスニングテスト制覇の旅」の福島県。リライトの英文を元に、ディクトグロス。さらにはシャトルラン。高1レベルへと一段階難しくなった語句などの手当てとして、「英英辞書的定義」とのマッチング。

高3は、入試過去問素材の「読解」で、これまでの私の教材研究用手書きノートの写しを参考にして、授業中に自分で書きだしてみる課題。

  • 名詞は四角化で視覚化
  • ワニの口
  • 助動詞の番付表

など、これまでの授業で身についたものを総動員することが求められます。もっとも、生徒には1学期に既に、これを渡して、初見の英文を読むときのチェックポイントは明示しています。

[file:tmrowing:2016高3読解のガイドライン.pdf]

今回の素材文は私の手書きノートの写しでご確認を。





「ライティング」系の課題は、argumentative passage へと進んでいますので、センター試験の「ディスカッションもどき」の過去問を使っての、「議論」の定番となる「話型(話形)」と「表現」の確認。「解法」にはあまり深入りしませんが、巷の学参や問題集、さらには模擬試験の解説でよく見られる「本文には言及なし」「本文ではそのようなことは言っていない」という部分には注意させています。では、なぜ英語が苦手な生徒は、その設問で誤答してしまうのか?どこを読み誤るから、読み飛ばすから、読めていないのにごまかすから、その設問で錯乱肢の方を選んでしまうのか、ということを少なくとも教師は考えておいた方がいいのではないかと思っています。
授業では、ワークシートに本文を印刷します(スキャン&OCRのおかげです)が、選択肢は印刷せず、空所のままにしておきます。

課題1. まず「お題」を読む。「ゴール」と、登場人物と、それぞれの立場は?
課題2. 空所に入れるのに最も適当な内容を、日本語で考える。
課題3. 英語表現の言い換え、要約、具体例に気をつけて選択肢を見る。

というような手順です。

手始めの課題として、近年、最も難しかったのでは?と思える、2008年の追試問題から。案の定、生徒は手こずりました。
でも、丁寧に解説した後で、2009年の追試をやったら、瞬殺。同じ「センター試験」の同じ大問なのにね。


高2は、条件節の3タイプの導入を済ませ、次の課題へ。

  • the way things work

「定義のミカタ」の姉妹版というか、従姉妹版、といったところでしょうか。英語ネイティブの子供用から大人用まで、学級文庫の書籍を横断して、「いいとことどり」で英文を拵えるグループ課題です。これをレポートとか、論文とか、何かの発表原稿で使えば「剽窃」となるのでしょうが、教室内で、「英語の表現」に習熟するため、「お子ちゃま」レベルの英語から成長・成熟させるために使っています。

今回の「お題」は “the way ears work” 耳が聞こえる仕組みの説明です。
ドラフトがこちら。白板の上にコピーが貼ってある本から、足し算引き算掛け算割り算して作成しています。おおよそ、左から右へと、言葉の発達段階も上がっていきますので、どこに自分(たち)の足場を作っておくかは結構大事です。

FBを踏まえた書き直しがこちら。

グループで一番習熟度の低い生徒でも、読んで、聞いて理解できる英語でまとめるように指示しています。
このあとは、音読から対面リピートまで、一連の活動が待っていますが、英語を身につける上で本当に大事なのは、学級文庫を活用し、グループでなら、「ここまでできる」というのがわかったわけですから、「自力で」何をするのか、ということです。高3の授業傍用の「表現ノート」につながるかどうかは、ここからの主体的な取り組みにかかっていると言えます。

入試を考えた学習内容の先取りなどしなくても、きちんとやるべきことをやっていれば英語力は高まるものです。椅子取りゲームのように我先に、と争うより、共に学び合う「仲間」をリスペクトしつつ、「それぞれ」「それなり」「そのうち」を心がけて欲しいと切に願います。

本日はこの辺で。

本日のBGM: Musical Chairs (METAFIVE)

全英連・山口大会第19分科会御礼

去る2016年11月12日(土曜日)、山口学芸大学にて行われた、全英連・山口大会の分科会は、200余名の参加を得まして、無事終了いたしました。有難うございます。大学関係者、実行委員の皆さんにもあらためて感謝したいと思います。

私、松井が、先週より咽を痛め、直前の木曜日の授業でも声が出ない状況で、どうなることかと思いました。山口の地に赴いてから最大のピンチだったのですが、耳鼻咽喉科での処方が効き、何とか当日を迎えることが出来ました。当日もまだ充分には声のでない状態でしたので、お聞き苦しい点が多々あったかと思います。また、会場が体育館ということで机がないことや、配布資料と投影スライドでは異なるものが多いことなど、メモなども取り難かったであろうことをお詫びいたします。

指導助言者の田地野彰先生には、授業参観も含め、多大なご支援、ご助言を賜り、今回の発表に漕ぎ着けました。本当に有難うございます。当日の私の発表時間が少し延び、田地野先生のご助言の際に館内アナウンスが入ったため、「意味順」そのもののお話が途切れ途切れになったことを大変申し訳なく思っています。参加者の皆さんにおかれましては、下記の公開された資料を活用していただければ幸いです。

ほぼ一週間経ち、ようやく回復してきましたので、分科会に関連する資料で公開できるものを以下にリンクしておきます。
この資料を授業や研究でお使いになることは構いませんが、二次使用の際には、出典を必ず明らかにすることをお願いします。

また、「アイデアをアレンジした」「発想をカスタマイズした」などと言って、商用や論文での流用は堅くお断りいたします。


発表資料

松井分

・ 発表スライド関連
2016全英連山口大会松井公開用.pdf 直
・ 名詞句の限定表現類型
得手不得手.pdf 直
・ 四角化ドリル抜粋
四角化ドリル2016年版抜粋.pdf 直


田地野彰先生分

・ 発表スライド関連
意味順 PPT 全英連資料 20161118.pdf 直

当日、分科会に参加された方で、松井担当分に関する疑義のある方は、節度あるメールをよろしくお願いいたします。コメント欄を使っての質疑応答や議論は考えておりませんので悪しからず。


本日のBGM: 男子畢生危機一髪 (eastern youth)

De-day-da or デレデレ?

怒濤の日々。
全英連・山口大会が刻々と迫ってきます。
全英連の分科会会場となる大学のご厚意で、祝日を返上して使用機器のリハーサル。
私の分科会だけ体育館での実施なので、組み立て式のスクリーンの準備から。
以前、山口県英語教育フォーラムで使用したこともある200インチでビニールのシートを「ぴんと張る」というよりも「ぎゅぎゅぎゅっと張る」タイプ。難儀しました。大人5人がかり。おまけに指は切るし。

プロジェクターは大学の備品は4000ルーメンの大型でしたが、レンズでのズーム/テレがないので、焦点距離が遠く、持参した高校英語科の備品を使うことに。会場は200人ということなので、着席した前の人の頭越しに見えるエリアなどを検討し、スライドのフォントの大きさなども修正。最終的に、配布資料をスライドの抜粋として、スライドの文字などがあまり見えなかった方にも概要は掴めるように配慮したつもりです。指導助言者の田地野彰先生の「意味順」概説&適用例の資料も一緒に印刷するべく、土曜日に業者に入稿。10日には製本され上がってくる予定です。

日に日に寒さが増してきているので、土曜日の朝の気温が心配になってきます。体育館には暖房はなかったと思います。私の分科会に参加される方は、マフラーやスカーフ、コートなど、着脱できるような寒さ対策をご検討いただきますようお願いいたします。暖かければ「空振り」でいいのですが、寒くて縮こまって話を聞くどころではない、というのは避けたいと思いますので。

今回は、13年ぶりの全英連発表ということになります。異なる都道府県で複数回発表した人って、どのくらいいるんでしょうか?
2003年当時は、まだ名前のついていなかった、私の授業の「定番」も紹介する予定です。「対面リピート」も「イカソーメン」も、今では私よりも、鹿児島の有嶋宏一先生の方が上手いと思いますので、今回全英連に参加される方も、都合がつかなかったけれども興味のある方も、こちらのDVDをお買い求めの上、取り組んでみては如何でしょうか?

Interesting, Funny, Empowering ENGLISH LESSONS
http://www.japanlaim.co.jp/fs/jplm/gd3611

授業者:有嶋 宏一(鹿児島県立甲南高等学校)
◆Read the passage(本文の導入)
◆[Task 1] Phrase hunt
◆[Task 2] Find words with following definitions.
◆[Task 3] Are the sentences true or false? If false, correct the sentences.
◆[Task 4] Answer the questions
◆[Task 5] Summary: Fill the blanks.
◆[Task 6] Reading aloud, and write it away!
・Summaryで使用したシート(答えを入れたもの、日本語を入れたもの、単語が抜けているもの)を使用して音読
・Quick Writing
・対面リピート
◆[Task 7] Grammar: Fill the blanks.
◆IKASOMEN
(4〜5文からなる1段落を用意し、グループに1文ずつランダムに渡し、文の順番を考えさせる)
◆[まとめ:解説]What kind of English Lessons should we have?
(61分)
2011.11

個人での購入にはいささか高額かもしれません。英語科の予算での購入など、ご検討よろしくお願いします。

イベントではない、肝心の日々の実作はというと、高1は、これまでの恒例となっている「全国縦断公立高校入試リスニングテスト制覇の旅」の簡略版、抜粋版を始めています。入学者の英語力が低下しているだけでなく、これまで以上に、習熟度のばらつきがあるので、イカソーメンもなかなか苦労します。初めは、「シャトルラン」の多様で復元完成を試みています。ただ、学年が違っても「同じ素材文」を扱うことで、「差」が見えてくることもあるので、古い年度のものも捨てずに使い続けています。
自分で作っておいてこういうのも変ですが、この「…旅」の最大の課題は、入試リスニングテストの設問に答えることでも、原文を聞き取りなどの活動を通して復元することでもないように感じています。その後で、より「つながり」と「まとまり」のある英文に、私が書き換えた(書き直した)英文を読み聞きし、原文と比較することによる「気づき」が得られるかどうか、そこにかかっていると思っています。

作成したことのある人には重々承知のことでしょうが、公立高校入試の素材文は、様々なというか、物凄い制約のもと作られています。使用可能な語彙、構文、一文の長さ、全体の長さ、などなど…。とりわけリスニングテストでは「注」が付けられませんので、さらなる縛りがあると思います。
その分、「つながり」や「まとまり」が犠牲になっていることも多いというのが偽らざる感想です。
設問も、local / global の軸で揺すぶられることは稀ですから、local & literal で直ぐに正答がわからないように、選択肢は若干書き換えてある、という程度だと思います。
高校に入学し、高校の教科書などの「素材文」に面食らうのは、初出の語彙や構文を難しい、と感じるだけではなく、「文章」「段落」「談話」の緊密さ、とでもいうようなものへの違和感もあるのだと思います。ただ、近年の高校の教科書では、レッスンによって、その英文の「質」にバラつきが大きいようにも感じています。

高2は、「副詞節シリーズ」を経て(まだ身についてはいないので「終わって」はいません)、「条件節」、「if の3タイプ」へ。これまた、定番の授業なのですが、過去ログをみていただければ分かるように、年度によって、高1の終わりに扱っていたり、高2のこの時期に扱っていたりと、まちまちです。生徒の英語力(とその伸び、そして伸び代)を勘案し決めています。
先輩達が残してくれた「白板のモノ」の記録がありますから、その資産運用に成功すれば、簡単にクリアーできる、と思いがちですが、やはり個々の「学び」には階段、発達段階があるのでしょう、時間は掛かることを覚悟してやっています。今日の私の板書はこちら。3タイプの概説です。

If のタイプ1 and 2.jpeg 直
Ifのタイプ3.jpeg 直

高3は、「意見文」「説得文」の課題と並行して、「易しめ」入試読解問題の素材文を読む活動。
以前、取り上げた Unit 11 の「経済社会学」の英文での、私の取り扱い、解釈に対する質問が「呟き」で寄せられていたので、「メールでお願いします」といったら、丁寧なメールで質問が来ましたので、そこでの「疑義」を教室で生徒に投げかけ、私の考えとの照らし合わせ。私からの返信も、生徒に示しておきました。過去ログでも、補足となる「追記」をしていますのでご覧下さい。

「追記」はこのエントリーの最後になりますが、素材文と私の手書き部分と照らし合わせて読まれることをオススメします。
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20161026

今週新たに扱った英文は、短め。ただ、「これで終わったの?」というような居心地の悪さは残ります。
例によって、私の手書き。

Unit 14_1.jpeg 直
Unit 14_2.jpeg 直
Unit 14_3_1.jpeg 直
Unit 14_3_2.jpeg 直

「英語ネイティブの発想」とか安易な一般化には慎重でありたいと思いますが、文章のキーワードの適切・正確な理解は、筆者の論理展開だけでなく、その筆者が用いる表現の選択の予測・予想にも役立ちます。英英辞典をただ引くのではなく、「活用」する、複数の辞書で定義を引き比べる、というのは中級以上の授業や学習で取り入れる価値のある方法だと思っています。

今回、shyという語を辞書で確認していた者は殆どいなかったと思います。でも、この語の適切な理解がある者とない者が、この文章を読み進めていく中でみる「景色」はかなり違うのではないか、というのが教師としての私の考えです。

やはり、一つ一つ読み進めるのが一番なのでは?


さて、以下はフィギュアスケートネタですので、とばしたい方はご随意に。
フィギュアスケートのGPSもカナダ大会に続いてロシア大会まで終了しました。
カナダ大会のアイスダンスでは、「テサモエ」こと(っていうか日本での愛称ですね)、テッサ・ヴァーチュ&スコット・モイア組が優勝。ショートダンスを見た時は、正直言って「ブランクって何なのさ?!」と思いました。フィニッシュ後の二人のローファイブとでも言うのでしょうか、バチッと手を叩きあった時の表情が良かったです。

  • やっぱり私たちって良いよね!

とでもいうかのようでした。フリーダンスではまだ持久力の面で十分ではないのか、若干ミスがありましたが見事総合での優勝。
僅差での2位には「チョクベイ」こと、マディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組がつけました。チョクベイは総合順位こそ2位でしたが、フリーダンスでは堂々の1位。テサモエよりも上に行ったことを確認したチョック姐さんの嬉しそうな顔が今も鮮やかに蘇ります。
先週末で終了のロシア大会は、波乱あり、大逆転劇ありと、悲喜交交の結末となりました。
男子シングルは、SPで自己ベストの大幅更新で首位に付けた日本の宇野選手に、フリーでミスが出て2位でフィニッシュ。世界選手権2連覇のハビエル・フェルナンデス選手が、フリーで200点超えの圧巻の滑りで大逆転。
「王者の貫録」というのは簡単ですが、注目のジャンプも高さ・幅・流れ、そして入りのステップと出での流れと次のエレメントまで、トータルな演出がなされていました。ジャンプだけが目立たない強い滑り。
男子は「4回転ジャンプを3つ入れる」とか「難度の高いジャンプ構成で攻める」という戦略では勝てない時代なのかもしれません。

注目のアイスダンス、チョクベイの2戦目は、ロシア覇者「ボブソロ」、エカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ、そして、今季コーチをニコライ・モロゾフに代えてきたカナダの「ウィバ・ポジェ」、ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェの三つ巴が予想されていました。
SDを終えて、2位のボブソロに僅差の首位で発進のチョクベイでしたが、FDのツイズルでベイツ選手の痛恨のミスが響き総合で2位に終わりました。SD, FDともきちんとまとめてきたボブソロが逆転で優勝。あらためてボブロワ選手(愛称は「カーチャ」です)のアスリートとしての資質の高さを認識させられた演技でした。この素晴らしい選手に、ドーピング疑惑がかかり、昨季の世界選手権での演技を見られなかったことを本当に残念に思うと共に、次期五輪まで、怪我なく続けてくれることを願っています。
2位に沈んだベイツ選手は、キスクラでも痛々しかったのですが、彼らのフリーダンスの曲目は、

  • Under Pressure

自らを追い込むのではなく、バネにできるのが彼らの強みのはず。まだシーズン序盤で、歌声に負けている部分もみられますが、この曲で強く滑り切れば、名プログラムになりそうな予感はあります。ファンは信じて応援するのみです。

波乱は女子シングル。
SPを終わって、ロシア女子が上位を独占。ポゴリラヤ、ラジオノワ、そして3位につけていたのがユリア・リプニツカヤ選手でした。
私は個人的にはエレーナ・ラジオノワ選手の大ファンなのですが、SPの演技開始で画面に映し出されたリプニツカヤ選手のその容姿に「怖いくらいに美しい」と思いました。怪我の影響でアメリカ大会は欠場していたので、コンディションが心配されていましたが、ジャンプも高さ、流れとも素晴らしく、定評あるスピンもバリエーションが増え、新たなステージに入ったという印象でした。
期待の膨らんだフリーでの滑走順が、リプニツカヤ→ラジオノワ→ポゴリラヤ。
そのリプニツカヤ選手の演技途中で、まさかの中断。左足か左の股関節か、下半身の左側の異変を訴えて、ジャッジ席とフェンス越しにコーチのウルマノフさんのところとを往復。かなり長い中断のあと、途中から演技を再開し、ジャンプで転倒しながらもフィニッシュ。キスクラでは、涙をこらえていたであろう表情が映し出されていました。会場のお客さんでも泣いている人が…。
あのウルマノフさんがついているのだから、多分大丈夫だと思います。じっくり直して復活してくれることを信じています。
私のイチ推し、ラジオノワ選手は、この2シーズンで伸長が12センチも伸びました。世界ジュニアを2連覇した155cmから、現在の167cmへ。これって、大変なことなんです。
立ち位置での目の高さ、ジャンプでの目の高さが変われば、自分に見える「景色」が一変します。回転の軸を細くして、回転速度を高めることでスピンやジャンプが安定するのですが、身体の中心から末端までの距離が長くなればなるほどコントロールは難しく、スピードを上げようと無理な力が入れば軸は崩れます。
得意のレイバックでこれほどトラベリングするのを見たのは初めてです。昨シーズンから、最も得意とする3回転ルッツ・3回転トゥーのコンビネーションジャンプで、着氷時のフリーレッグのブレードのつま先部分が氷を擦るようになっていたのも、身長の伸びへの対処に苦しんでいたことの現れでしょう。
しかも、フリーでは、直前滑走者のリプニツカヤ選手のアクシデントでのかなり長い中断。ジュニア時代から切磋琢磨してきた二人ですから、精神的にも動揺はあったと思いますが、そんな中でも、最小限のミスでとどめて滑り切ったのは流石です。惚れ直しました。

優勝は、ショート、フリーと2本とも情熱溢れる滑りを見せた、アンナ・ポゴリラヤ選手。
ソチ五輪シーズン後、競技レベルから離れている、イタリアのカロリーナ・コストナー選手の温度をさらに上げたような演技、といえば少しは伝わるでしょうか。素晴らしかったです。

ラジオノワ選手の身長の話しをしたので、ついでと言ってはなんですが、ここでちょっと整理を。

公式プロフィールの身長と、実際に演技を見た大きさとはなかなか一致しないモノです。
ロシア女子だと、ポゴリラヤ選手が167cmでラジオノワ選手と同じなんです。リプニツカヤ選手が160cm、メドベデワ選手が157cm。ジュニアからシニアに上がったソツコワ選手と、ジュニアのトップのツルスカヤ選手が170cm。アメリカだと、グレイシー・ゴールド選手が168cm、ポリーナ・エドマンズ選手が169cm、スウェーデン女子のヨシ・ヘルゲソン選手が171cmです。日本では大型と言われる本郷選手、トリノ五輪覇者荒川静香さんが166cmなんです。
男子では、日本のスター高橋大輔さんが165cm、三冠王者羽生結弦選手が171cmです。アメリカのジェレミー・アボットが179cm、バンクーバー五輪の覇者エヴァン・ライサチェクが188cm。超人エフゲニー・プルシェンコが178cm。ロシア期待のマキシム・コフトゥンが180cm。現世界王者ハビエル・フェルナンデスが173cmなんです。

次回、TVなどで見る時に、ちょっと思い起こしてみて下さい。

本日のBGM: Under Pressure (David Bowie & Queen)

「このままでは、気がかりだけど…」

フィギュアスケートのシーズン開幕で充実した「スケオタ」の夜を過ごしています。
先日のスケートアメリカの興奮がまだ続いていますが、男子シングルのヴォロノフ選手のフリーを、今朝、あらためて観て、ちょっと涙腺が緩みました。特に、3回転ルッツの着氷を決めた後、フェンス際でのカメラに映った口元の笑みが最高でした。ヴォロノフ選手は、コーチをゴンチャレンコさんに代えての新シーズン。本当に良いスタートになったと思います。ゴンチャレンコさんのところには、同じく男子シングルで、コフトゥン選手も移籍しています。ラジオノワ選手など、ゴンチャレンコ門下の若手選手に良い影響が出てくれることを願っています。

一方の日本ではプロ野球の「日本シリーズ」真っ只中。
久しぶりに野球の試合を観ましたが、面白いじゃないですか。「煽りバラエティ」をしなくても、選手の動き(仕事)自体、試合自体が面白ければいい、という基礎基本を再確認しました。ありがとうカープ。ありがとうファイターズ。

さて、
生業の英語の授業の方はというと、高3の『易しめ入試過去問を(少々)加工して再録した問題集』での悩みが尽きません。

いつものように自分で視写しながら、第4段落までは、まあまあ、癖があってもスムーズに進んだのですが、第5、第6で、「ムムっ?」となり、例によって、原文捜し。
これですね。

Freakonomics: A Rogue Economist Explores the Hidden Side of Everything

Freakonomics: A Rogue Economist Explores the Hidden Side of Everything

私の買ったkindle版だとこんな表紙です。

Freakonomics 表紙.png 直

癖があるのはいいのですが、最終段落の次のところなど、句動詞の buy off (≒ bribe) でモノゴトを目的語とするのがちょっと「?」。

But there was another problem with the day-care center fine. For just a few dollars each day, parents could buy off their guilt. Furthermore, the small size of the fine sent a signal to the parents that late pickups weren’t such a big problem. If the day-care center suffers only $3 worth of pain for each late pickup, why bother to cut short the tennis game? Indeed, when the economists ended the $3 fine in the seventeenth week of their study, the number of late-arriving parents didn’t change. Now they could arrive late, pay no fine, and feel no guilt.

あと、Ifで始まる、第4文の、sufferの主語に「デイケアセンター」が来ているので、最初は「これ、suffer (≒ (to) experience something unpleasant) ではなくて、cost ってことなのでは?」と思って再読し、親の側の負担と、デイケアセンター側の負担で、辛苦と小銭のバーター、トレードオフの関係を述べているのだろうな、と納得はしましたが、雰囲気で引っ張っている(押し通している?)感じは否めませんでした。

原文と照らして、「一番の問題だな」と思ったのは、教材の第4段落と第5段落の間に、原文では、kindle版にして、約5頁分(PB版でも2,3頁分?)の英文がカットされているということ。これでは、「つながり」は薄れるでしょう。

冒頭部分(第1段落).png 直
第2から第4段落.png 直
教材の第4段落に続く部分(その1).png 直
第4段落に続く部分(その2).png 直
第4段落に続く部分(その3).png 直
第4段落に続く部分(その4).png 直
第4段落に続く部分(その5).png 直
漸く第5段落へ続く部分.png 直
第6段落の最後とその続き.png 直
まだまだ続きます.png 直

さらには、最後の写真を見てもらうとわかるように、教材の第6段落は、セクションの終わりなどの「キリのいい」ところではなく、この後もまだまだ、話は続くところである、というのも「?」。これで、「統一した主題」が掴めるような、「まとまり」は感じられるでしょうか?この『問題集』にも、当然のように解答や解説、さらには全文訳までついていますが、本当にそれを頼りにしても大丈夫でしょうか?

教材の解説.jpeg 直
教材の日本語訳.jpeg 直

問題のsufferのところの日本語訳に「???」。
「もしお迎えに遅れるたびに託児所がたった3ドル分の苦痛しか受けないのなら、なぜわざわざテニスの試合を途中で切り上げる必要があるだろうか。」で日本語として意味&論理が整合すると思っているとしたら、そこまでの人ですね。

今回のレッスンの私の手書きノートの写しはこちら。

Unit 11_1&2.jpeg 直
Unit 11_3&4.jpeg 直
Unit 11_5.jpeg 直
Unit 11_6.jpeg 直

皆さんは、どうお読みになりますでしょうか?

いつものことばでお別れです。

より良い英語で、より良い教材。

本日のBGM: Bye Bye C-Boy (佐野元春)

※20161106追記
上記の教材の第6段落の英文に関して、呟きの方で疑義がでていましたが、私の授業の際に高3に解説したものを補足しておきます。

第6段落の
If the day-care center suffers only $3 worth of pain for each late pickup, why bother to cut short the tennis game?
は、本来親の独白で、疑問文は反語・修辞疑問になるもの。親の心の中の声を補うと、次のようなものになるであろう。
1. If I arrive late for picking up my child, the day-care center will fine me.
2. Even if they fine me for each late pickup, it only takes $3.
3. They will take the trouble to take care of my child for the extra time only for that small amount of money.
4. Then, why do I have to hurry?
5. I can leave all the trouble for the time to them.
6. They are willing to suffer the trouble as long as they fine me $3 for each late pick up.
7. I can buy my time for tennis games only for that small fine.
8. That’s the deal.

これは、ここまで読んできた人が読みたい「解釈」。でも、書いてあった字句は、教材の通り。
私が「雰囲気で引っ張っている」と書いたのは、そういうことです。

私だったら、当該の一文は次のように書くでしょうか。

If all the trouble the day-care center accepts is only worth $3 for each late pick up, they will or do suffer very little, then why do I have to feel guilty about being late or feel sorry for them?